NoGoD、伝えたいメッセージを突き詰めた究極のエンタテインメント・アルバム『現実』特集
NoGoD
2ndアルバム『現実』2011.8.3 Release
INTERVIEW
団長:これは、かなり悩みましたね! とにかく俺らの現実を表したかったんですよ。で、ウチらにとってはライヴやステージから発するものが最大のリアリティだから、そこに何か絡められる言葉はないかなぁと考えて。「リアル」とか「ステージ」とかも候補に出たあげく、揉めに揉めて、一回放り投げ、グズッた結果、こうなりました。
Kyrie:4月の「Raise a Flag」から7月の「神風」、そして今回のアルバムを通じて、何か架空の物語を語るんではなく、あくまで自分たちが発信するメッセージにこだわっていたから、そこをどうしてもタイトルで表現したかったんですね。何より今、こうして存在しているNoGoDというバンドが思っていること、伝えたいこと、そして持っている音楽、全てをひっくるめて『現実』と。
団長:いや、もうその通りでございます! リリース時はポップと言われた「Raise a Flag」も、アルバムのパーツとして聴くとハードロック臭の強い硬派な曲に聴こえてくるし。
Kyrie:ライヴやステージを意識したサウンドや構成は、確かに心がけてましたね。もう少しへヴィメタル寄りだった前作の『欠片』に比べて、ストレートなロック・サウンドだったり、ハードロックなところが支柱になっている気がする。そこで音の中心にしたかったのが「downer's high !」で、アルバムのサウンドを1曲で表すならこの曲……っていうふうにしたかったんですよ。
団長:ちょっとヌーノ(・ベッテンコート)の匂いのする、アメリカンな曲ですよね。まぁ、歌メロに関してはアメリカン・ロックがルーツに無いので、俺が歌ったらジェーンズ・アディクションみたいになっちゃったんですけど(笑)。アルバムの支柱になる曲ということで、前半の気だるい浮遊感からサビで一気にワッ!と抜けるメリハリを付けようと、歌詞に合わせて歌い方を変えたり、いろいろ新しいことを詰め込んで頑張りました!
団長:ここまで“パーティしようぜ!”的なわかりやすい歌詞を書くことってなかったんですけど、Kyrieプロデューサーから“もっと振り切っていいんじゃないか”というお達しがあったんで(笑)。もちろん「机上の空論」みたいに“ベタなNoGoD”のメタル曲もあるし、個人的にはコッチも「神風」に並ぶ、もう一つのリード曲だと思ってます。
団長:そうかもしれない。「Raise a Flag」以降の一連の流れの中で、最も女々しくて、人間くさい歌詞だと思うんです。いちばん人の感情をえぐるというか、心の根幹にあるものを歌ってる。
Kyrie:いちばん恥ずかしいよね(笑)。
団長:そもそも「愛してくれ」って、命令形ですからね。恋愛の曲を歌うのは俺の仕事じゃないからこそ、“愛してる”や“会いたかった”が溢れてる今のJ-POPシーンに、あてつけのように“愛”という言葉をタイトルに入れた、これはもうド皮肉です! コンプレックスの塊を吐き出して歌う俺のスタイルの最たる例。でも、そうやって誰もが口に出さない想いを代弁するのがアーティストだと思っているので、いい歌詞が書けたなと。
Kyrie:今回、歌詞を書くにあたって頼んだのが、“団長の伝えたいメッセージや言いたいことを突き詰めて歌ってくれ”ってことだったんです。要は自分のナカにあるものを吐き出してくれと。おかげで“やりやすい”とは言ってたよね。
団長:うん。制作してても、すごく懐かしい感じがしましたね。Kyrieが加入する前の作詞・曲を全部自分でやってた時代の初期衝動が戻ってきたというか。だから初期衝動のまま蒼い気持ちで書けた詞もあれば、逆にバンドを長く続けてきた今だからこそ歌える「恒星」みたいな曲もある。恒星って、自分で輝ける星のことなんですよ。月みたいに、自らは発光できないのに太陽からの反射で輝いて見える存在もあるけれど、俺らはバンドとして内から輝ける恒星になりたい。そんな想いから思わず書いてしまった曲で、一応スケールだけは東京ドーム(笑)。
団長:今回はデモ段階から景色が浮かんだというか、メロディをいじらなくても進められる曲が多かったんですよ。だから歌詞を書いてても、歌ってても気持ち良かったです。
Kyrie:アルバム自体やサウンドのコンセプトに関して、事前に話し合ってた部分も多かったから、最初からイメージを共有できてたんでしょうね。
団長:うん、すごくスムーズだった。「優しさの意味」も、デモでKyrieが歌ってた歌い方を忠実に再現して……。
Kyrie:嘘つけ! 再現されてない。
団長:鳥の首を締めてるようなハイトーンだったんですけどねぇ。
団長:いかにアコギの音をニッケルバックにするか?ってことしか考えてなかったですからね、この人。結局出なかったんですけど。
Kyrie:まぁ……やっぱり空気が違うからね。カナダで弾いてこないと。
団長:カナダは寒いぞ! 歌の内容としては、俺が言うところの“陽の連鎖”を形にしたものになってます。震災後、世の中に否定や批判ばかりの負の連鎖が溢れていたのが、すごく嫌で。悲しい話はやめにして、あったかい気持ちだけを連鎖させていこう!っていうメッセージを、震災の後にずっとブログで発信していたんです。その想いを、アーティストとして作品に残しました。
団長:その二つは“Kyrieの世界”ですね! プログレの「III-実存」は作詞もKyrieだし。
Kyrie:「III-実存」は『欠片』に収録されている「II-懐疑」の続編で、いわば組曲を少しずつ発表していってる形なんですけど。実体験ではなく“もし”という仮定を基にしている作品なので、収録を見送ろうって話もしてたんです。自由であることの意味だったり生きる理由だったり、答えのないことを歌詞を通して“考えてもらう”ことが一つのコンセプトになっている曲だから、受け取って素早く消化できる今回のアルバムとは合わないだろうと。でも……。
団長:俺が“ダメ!”って言ったんです。こういうへヴィなプログレって、なかなかやってる人がいないから、ぜひ、後世に伝えていかないといけない!って。
Kyrie:確かに、そういう要素は今までのアルバムでも必ず入ってたんですよね。なので自分をストーリーの中に組み入れて、またちょっと別の視点から歌詞を書いてみました。
団長:でも、歌は結構ムチャしてるんですよ。もう口が回らなくて、後半ゼェゼェ言ってます!
Kyrie:だから、もうちょっと歌いやすいメロディも提示したのに、団長、自分で苦しいほうを選んだんですよ。
団長:この曲ではKyrieのメッセージを表現するために、あくまでも曲としての聴こえの良さを優先して、自分もヴォーカリストとしての技量に挑戦したかったんです。NoGoDは俺だけじゃなくメンバーそれぞれのメッセージを発信するバンドでありたいので、こういう曲はドシドシやっていきたいですね。
団長:そう! で、全部やろうとして、いつも何かこぼしてる(笑)。
Kyrie:だから、すごく拡散しがちなバンドなんですよ。特にメインで曲を書いてる俺と歌詞を書いてる団長に、その傾向が顕著なんで、下手するとバンドとしての芯がブレてしまうことにもなりかねない。それを防ぐために、あらかじめコンセプトを設けるんです。そうすれば制作上で一つの指針を持てるから。
Kyrie:ヒドい(笑)。まるで気持ち悪い曲みたいじゃないですか! まぁ……出だしの変な声からして確かに気持ち悪いですけど。
団長:あの声はウチのコーラス担当にやってもらいました! これは、どうしても筋肉少女帯の「カーネーション・リインカーネーション」みたいなノリを出したくて、俺が作った曲なんです。確かにサウンドはブッ飛んでますけど、歌詞はアルバムのコンセプトに沿っていて、「机上の空論」にも近い哲学的チックなことを言ってるんですよ。ただ、「机上~」が真摯に答えを出そうとしてるのに対して、“いやいや考えるだけムダよ!”って開き直ってる。だから、ボーナス・トラックにしたんです。
Kyrie:これが本編の最後に来ると、ホントにちゃぶ台ひっくり返しちゃいますからね(笑)。あくまでも作品としては「恒星」で終わっていい。ただ、「アイデンティティー」も団長にとっては一つの現実だろうし、それをちゃんと“らしく”表現できてるところが好きです。
団長:Aメロなんてデスヴォイスとの掛け合いで。ここまでコーラスをフィーチャーした曲も、今まで無かったよね?
Kyrie:まず量が多いよね。だって2小節に1回入ってくるんだもん。
Kyrie:あれは……“罪背生”(ざいばいせい)って言ってます。
団長:つまり、罪を背負って生きるってことです。俺の中のライヴ感って、コール&レスポンスなんですよ。ちょっとした運動会みたいなもんだから、今回はお客さんがシンガロングできる曲が多いですね。
団長:Kyrieの日常が入ってます。朝起きて、猫に引っかかれてたりとか……。
Kyrie:入ってません!「Raise a flag」「神風」のPVにオフ・ショットと。あとは「Raise~」に出演してくれた女優さんとヘアメイクさんに、“俺と団長どっちがいい?”という質問をした結果が収録されてます。
団長:結局、基盤は音楽なんですよね。こんな格好ですけど、決してお笑いをしたくてバンドをやってるわけではない。ただ、エンターテイメントは楽しいほうがいいじゃないですか? 結局、カッコいい演奏や密度のあるメッセージを届けるのも、俺の中ではエンターテイメントの一部分でしかなくて。そこにファニーだったりシリアスだったり、いろんな色があるのは当然なんですよ。個人的には、NoGoDのステージってミュージカルみたいなものだと思っているんですね。場面展開の中で泣ける場面もあれば、お笑いもあって、すべての喜怒哀楽を一つのステージで提供しようとしている。要するに……欲張りなんですよ。俺らは、すごく。
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