スレイヴス・トゥ・グラヴィティ、トシ・オガワ最新インタビュー【前編】
英国はロンドンを活動拠点とするロック・バンド、スレイヴス・トゥ・グラヴィティのセカンド・アルバムが3月23日、日本コロムビア内に新設された洋楽ロック専門レーベル、インキュベーターからの第1弾アイテムとして日本先行発売を迎えた。『アンダーウォーターアウタースペース』と題されたこの作品は、実に2008年3月にリリースされた『スキャター・ザ・クロウ』(日本発売は同年11月)以来となるもの。ザ・ワイルドハーツとも関わりが深く、過去には彼らの日本公演に同行した事実もあるTHE GA-GA'Sを前身とするこのバンドのベーシストは、トシ・オガワという人物。正真正銘の日本人である。その彼に3月上旬のある日、国際電話で話を聞いた。
◆「Silence Now」PV映像&スレイヴス・トゥ・グラヴィティ画像
まずは何よりも今回の新作について。前作発表当時、英国の専門誌で「ニュー・グランジ」などとも評されていた彼らのサウンドは、今作において目ざましい進化を遂げている。方向転換とか路線変更といった話ではない。そもそもこのバンドが持ち合わせていたダークネスとポップさ、ヘヴィネスとメロディックさ、新鮮さと普遍性といった特徴的要素すべてがあからさまに説得力を増し、あざやかなコントラストを描きだすようになっているのだ。そう指摘するとトシは「そう言ってもらえると、すごく嬉しい」と答え、次のように言葉を続けた。
「もちろんファースト・アルバム(『スキャター・ザ・クロウ』)にも満足はしているし、あの当時の自分たちに作り得るベストなものではあったと今でも思っているんです。ただ、だからこそ自分たちの力だけでは超えられないものというのも見えていた。そこで今回は、プロデューサーの存在が僕たちの限界を押し広げてくれたというか。作曲面でも技術的な部分でもそうだったと思いますね。彼と一緒に仕事をすることによって、新たに気付かされたことというのが多々あって」
前作があくまでメンバーたち自身の手によるセルフ・プロデュースで完成されていたのに対し、今作では、シャインダウンやフィルターからブラック・サバスに至るまでの作品に関わってきた過去を持つ、ボブ・マーレットがプロデューサーとして起用されている。レコーディングはアメリカ人の彼を英国に招き、ウェールズの人里離れたスタジオにこもって進められたのだという。
「雑誌を買いに行くのにも困るような、本当に何もないところで(笑)。逆に音楽に集中するしかなかったのが良かったですね。結果的には前回の半分以下の期間、正味3週間でレコーディングが終わって。それはボブのおかげでもあるし、僕たち自身のヴィジョンが明確になっていたからでもあると思う。前回は、自己分析をしすぎていたというか、顕微鏡で覗き込みながら作っているようなところがあった。THE GA-GA'Sとの違いをカタチにすることに躍起になってしまっていた部分もあった気がしますね。あのバンドを経てきた僕らとしては、人間的にも音楽的にも成長しているところを作品に反映できていなければ意味がないという意識も働いていたし。だけど今回はもっと肩肘を張らずに、しかも自分たちのルーツに忠実に作ることができたと思うんです。自分たちにとってのフェイヴァリット・ミュージックを作るという根本的なところはそのままに、いわゆる王道的なヘヴィ・メタルとも、こっちのティーンエイジャーたちにもてはやされているようなバンドとも違ったものができたんじゃないか、と。どこにも属さない、本当に自分たち自身が誇れるようなものが」
メンバーたちの音楽ルーツは多岐にわたっているが、全員に共通するフェイヴァリット・バンドはガンズ・アンド・ローゼズなのだという。しかもトシの場合、1988年の初来日時に行なわれたガンズの日本武道館公演を目撃したことが、彼のロック人生を決めることになったと言っても過言ではないところがある。
「少年時代、初めて観た海外アーティストのライヴがそれだったんです。それまでに味わったことのない衝撃でしたね。そのときに自分は音楽をやっていくんだと心に決めて…。元々はラモーンズが大好きなんです。彼らの音楽は単なるパンクじゃなく、ものすごく上質なポップ・ミュージックだと思う。僕自身はそういったものをルーツとしながらヘヴィなものも好きだし、グランジが好きなメンバーもいれば、ギタリストのマーク(・ヴァーニー)はデュラン・デュランの大ファンだったりもするし。このバンドにはかなりいろんな要素が混ざってますね。ただ、そのなかで全員に共通するものとして存在するのがガンズ・アンド・ローゼズなんです。マークのギター・ソロとかを聴いてもらえればわかると思います。ときどき、かなりスラッシュからの影響丸出しだったりするんで(笑)」
というわけで、インタビューの【前編】はここまで。続く【後編】では、『アンダーウォーターアウタースペース』という摩訶不思議なアルバム・タイトルの意味や、トシ自身が英国移住を決意した理由などについても触れていく。ちなみに【後編】は週が明けるまでにはお届けするつもりだが、できることならばそれを読む前に、この傑作アルバムの音に触れてみて欲しい。余談ながら、筆者がこのバンドについてTwitterで記述したところ、LUNA SEAのファンから実にたくさんの反応が届いた。その理由は言うまでもなくバンド名にあるわけだが(これ以上詳しく説明する必要はないと思うが、いかがだろうか?)、切っ掛けは何であれ、このバンドの持つ可能性の大きさについては、とにかく一度でもその音に触れたならばご理解いただけるはず。是非、騙されたと思って聴いてみて欲しい。本気で「騙された!」と感じる人は、きっといないはずだから。
増田勇一
◆スレイヴス・トゥ・グラヴィティ・オフィシャルサイト
◆スレイヴス・トゥ・グラヴィティ・レーベルサイト
◆「Silence Now」PV映像&スレイヴス・トゥ・グラヴィティ画像
まずは何よりも今回の新作について。前作発表当時、英国の専門誌で「ニュー・グランジ」などとも評されていた彼らのサウンドは、今作において目ざましい進化を遂げている。方向転換とか路線変更といった話ではない。そもそもこのバンドが持ち合わせていたダークネスとポップさ、ヘヴィネスとメロディックさ、新鮮さと普遍性といった特徴的要素すべてがあからさまに説得力を増し、あざやかなコントラストを描きだすようになっているのだ。そう指摘するとトシは「そう言ってもらえると、すごく嬉しい」と答え、次のように言葉を続けた。
「もちろんファースト・アルバム(『スキャター・ザ・クロウ』)にも満足はしているし、あの当時の自分たちに作り得るベストなものではあったと今でも思っているんです。ただ、だからこそ自分たちの力だけでは超えられないものというのも見えていた。そこで今回は、プロデューサーの存在が僕たちの限界を押し広げてくれたというか。作曲面でも技術的な部分でもそうだったと思いますね。彼と一緒に仕事をすることによって、新たに気付かされたことというのが多々あって」
前作があくまでメンバーたち自身の手によるセルフ・プロデュースで完成されていたのに対し、今作では、シャインダウンやフィルターからブラック・サバスに至るまでの作品に関わってきた過去を持つ、ボブ・マーレットがプロデューサーとして起用されている。レコーディングはアメリカ人の彼を英国に招き、ウェールズの人里離れたスタジオにこもって進められたのだという。
「雑誌を買いに行くのにも困るような、本当に何もないところで(笑)。逆に音楽に集中するしかなかったのが良かったですね。結果的には前回の半分以下の期間、正味3週間でレコーディングが終わって。それはボブのおかげでもあるし、僕たち自身のヴィジョンが明確になっていたからでもあると思う。前回は、自己分析をしすぎていたというか、顕微鏡で覗き込みながら作っているようなところがあった。THE GA-GA'Sとの違いをカタチにすることに躍起になってしまっていた部分もあった気がしますね。あのバンドを経てきた僕らとしては、人間的にも音楽的にも成長しているところを作品に反映できていなければ意味がないという意識も働いていたし。だけど今回はもっと肩肘を張らずに、しかも自分たちのルーツに忠実に作ることができたと思うんです。自分たちにとってのフェイヴァリット・ミュージックを作るという根本的なところはそのままに、いわゆる王道的なヘヴィ・メタルとも、こっちのティーンエイジャーたちにもてはやされているようなバンドとも違ったものができたんじゃないか、と。どこにも属さない、本当に自分たち自身が誇れるようなものが」
メンバーたちの音楽ルーツは多岐にわたっているが、全員に共通するフェイヴァリット・バンドはガンズ・アンド・ローゼズなのだという。しかもトシの場合、1988年の初来日時に行なわれたガンズの日本武道館公演を目撃したことが、彼のロック人生を決めることになったと言っても過言ではないところがある。
「少年時代、初めて観た海外アーティストのライヴがそれだったんです。それまでに味わったことのない衝撃でしたね。そのときに自分は音楽をやっていくんだと心に決めて…。元々はラモーンズが大好きなんです。彼らの音楽は単なるパンクじゃなく、ものすごく上質なポップ・ミュージックだと思う。僕自身はそういったものをルーツとしながらヘヴィなものも好きだし、グランジが好きなメンバーもいれば、ギタリストのマーク(・ヴァーニー)はデュラン・デュランの大ファンだったりもするし。このバンドにはかなりいろんな要素が混ざってますね。ただ、そのなかで全員に共通するものとして存在するのがガンズ・アンド・ローゼズなんです。マークのギター・ソロとかを聴いてもらえればわかると思います。ときどき、かなりスラッシュからの影響丸出しだったりするんで(笑)」
というわけで、インタビューの【前編】はここまで。続く【後編】では、『アンダーウォーターアウタースペース』という摩訶不思議なアルバム・タイトルの意味や、トシ自身が英国移住を決意した理由などについても触れていく。ちなみに【後編】は週が明けるまでにはお届けするつもりだが、できることならばそれを読む前に、この傑作アルバムの音に触れてみて欲しい。余談ながら、筆者がこのバンドについてTwitterで記述したところ、LUNA SEAのファンから実にたくさんの反応が届いた。その理由は言うまでもなくバンド名にあるわけだが(これ以上詳しく説明する必要はないと思うが、いかがだろうか?)、切っ掛けは何であれ、このバンドの持つ可能性の大きさについては、とにかく一度でもその音に触れたならばご理解いただけるはず。是非、騙されたと思って聴いてみて欲しい。本気で「騙された!」と感じる人は、きっといないはずだから。
増田勇一
◆スレイヴス・トゥ・グラヴィティ・オフィシャルサイト
◆スレイヴス・トゥ・グラヴィティ・レーベルサイト
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