第52回グラミー賞、今回の傾向と対策をじっくり検証

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さらに2009年忘れてはいけない音楽業界で一番のニュースも、ダンスミュージックを後押しした要因のひとつだろう。それは“キング・オブ・ポップ”マイケル・ジャクソンの死去。日本はもちろん、世界中が彼の死を惜しんだ。ノミネートされたアーティストたちも、多かれ少なかれマイケルからの影響は無視できないであろう。アメリカが作り上げた、華やかでゴージャスなエンターテインメント性の高い音楽は、マイケルが礎を築いたと言っても過言ではない。偉大なる父を失い、マイケル亡きあとのエンターテインメント業界を背負って立つヒーロー、ヒロイン、その後継者たるアーティストをリスナーは求めているのだ。最初に挙げたビヨンセやブラック・アイド・ピーズ、レディ・ガガなど、歌はもちろん、ダンスなどのパフォーマンスも含めて、マイケルのようにトータル的に音楽を見せるアーティストだ。今後の「キング・オブ・ポップ」「クィーン・オブ・ポップ」を見つけ出す前哨戦となったのが、2009年の音楽シーンかもしれない。

一方で、ビヨンセに継いで、20歳のテイラー・スウィフトが8部門にノミネートされている。彼女はダンス・パフォーマンスを見せるわけではなく、歌でメッセージを伝えるシンガーソングライターだ。そもそもはカントリー歌手。子供の頃からカントリー・ミュージックが大好きだった彼女だが、そのせいでイジメにも遭ったりしたという経歴の持ち主。アメリカの音楽シーンで、カントリー/ミュージックというのは、実に大きな市場となっているが、一部の若い人にとっては、ダサいものの代名詞とも言われる。だからこそ、彼女はイジメられたわけだが、それに屈せず我が道を歩み、ルーツであるカントリーミュージックを土台に、今では自分の音楽スタイルを生み出した。彼女を支持しているのは10代が中心。芯がブレない彼女の歌に、共感する若い世代が多いのだろう。

キングス・オブ・レオンも、スウィフトと同じく、南部の匂いを感じさせるサウンドを発信する。しかし、彼らは当初、本国アメリカよりも、イギリスで受け入れられた。兄弟と従兄弟で生み出す、彼らの人間性も垣間見えるような、人肌の温度を感じるロックンロール。スウィフト同様に等身大が魅力だ。ダンス・ミュージックが流行る一方では、こうした人間臭い音楽もリスナーは求めていた。いろんなものがデジタル化していくからこそ、こうしたサウンドを聴くとホッとするのだろう。ダンス・ミュージック以外は、そんな手捻りの茶碗のような温度感のある音楽が好まれていたように思う。

また、主要部門以外のノミネートを見ると、ベスト・ソロ・ロック・ヴォーカル・パフォーマンス部門にブルース・スプリングスティーンやボブ・ディラン、ベスト・ロック・アルバム部門にAC/DC、ベスト・ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス部門にジェフ・ベックやスティーヴ・ヴァイなど、ベテラン勢の健在ぶりに感動する。

この流れを見ていると、当然のことながら、2010年以降もポップであろうが、マニアックであろうが、リスナーをワクワクさせる、そんな魅力を秘めた作品が音楽シーンで待ち望まれていることが、改めて思い知らされる。

「独占生中継!第52回グラミー賞授賞式」
2月1日(月)午前9:30~ WOWOWで生中継
ロサンゼルス ステープルズ・センターに開設するWOWOW特設スタジオから案内役のジョン・カビラと滝川クリステルが現地の臨場感たっぷりにお届けする。感動と興奮の瞬間が詰まったグラミー賞授賞式をお見逃しなく。

『グラミー・ノミニーズ 2010』
国内盤発売:2010年2月1日(月)=授賞式当日(日本時間)
TOCP-70828 2,500円(税込) 全20曲 歌詞・対訳付
1.ブラック・アイド・ピーズ「アイ・ガッタ・フィーリング」 *R,A,P
2.レディー・ガガ「ポーカー・フェイス」 *R,A,S
3.キングス・オブ・レオン「ユーズ・サムバディ」*R,S,RP
4.デイヴ・マシューズ・バンド「ユー&ミー」*A,RA
5.テイラー・スウィフト「ユー・ビロング・ウィズ・ミー」*R,A,S,FV
6.コルビー・キャレイ「フォーリン・フォー・ユー」*P
7.ザ・フレイ「ユー・ファウンド・ミー」*P
8.P!NK「ソーバー」 *P,FV
9.ケリー・クラークソン「ウィズアウト・ユー」*P
10.ケイティ・ペリー「ホット&コールド」*FV
11.ビヨンセ「ヘイロー」*R,A,FV
12.アデル「ホームタウン・グローリー」*FV
13.ザック・ブラウン・バンド「チキン・フライド」*N,C
14.シュガーランド「イット・ハプンズ」*C
15.レイディ・アンティベラム「アイ・ラン・トゥ・ユー」*C
16.ラスカル・フラッツ「ヒア・カムズ・グッバイ ~さよならの瞬間~」*C
17.グリーン・デイ「21ガンズ」*RP,RA
18.コールドプレイ「天然色の人生?」*RP
19.U2「アイル・ゴー・クレイジー・イフ・アイ・ドント・ゴー・クレイジー・トゥナイト」*RP,RA
20.エリック・クラプトン&スティーヴ・ウィンウッド「マイ・ウェイ・ホーム」(ライヴ)*RP,RA

*印 各曲のノミネーション関連部門(主な部門のみ)
R=最優秀レコード
A=最優秀アルバム
S=最優秀楽曲
N=最優秀新人
FV=最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス
P=最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム
RP=最優秀ロック・パフォーマンス By A Duo Or Group With Vocals
RA=最優秀ロック・アルバム
C=最優秀カントリー・パフォーマンス By A Duo Or Group With Vocals
CS=最優秀カントリー・ソング

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◆第52回グラミー賞授賞式番組特設サイト
◆第52回グラミー賞 2010 大特集
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