増田勇一の『今月のヘヴィロテ(4月篇)』
久しぶりの更新です。例によって、4月に国内発売された新譜のなかから、連日聴きまくってきた10作品のラインナップをお届け。今回もやはり脈絡が……なさそうで、あるかも。
●ヘヴン・アンド・ヘル『ザ・デヴィル・ユー・ノウ』
●マストドン『クラック・ザ・スカイ』
●クイーンズライク『アメリカン・ソルジャー』
●デペッシュ・モード『サウンズ・オブ・ザ・ユニバース』
●PJハーヴェイ&ジョン・パリッシュ『ア・ウーマン・ア・マン・ウォークト・バイ』
●ミランダ・リー・リチャーズ『微笑につつまれて』
●ランブリン・ジャック・エリオット『ア・ストレンジャー・ヒア』
●フリート・フォクシーズ『フリート・フォクシーズ+サン・ジャイアントEP』
●ザ・フィルムス『オー、スコーピオ』
●ステッドラー『ステッドラー』
超正統派メタルから今日的ニュー・ウェイヴやフォーク、新世代型ロケンローまで、例によって僕の雑食症状は深刻化の一途をたどっているのだが、実は上記の10作品をこの順番に並べて聴くと、わりと無理のない流れで楽しめる(かも)。クイーンズライクからデペッシュ・モードへ、といういかにも極端そうで掟破りっぽい展開も、僕にとってはわりと普通に気持ち良かったりする(のだが、同じような聴き方を勧めることまではせずにおく)。
ヘヴン・アンド・ヘルとは、言うまでもなくロニー・ジェイムズ・ディオを擁するラインナップによるブラック・サバスのこと。実に17年ぶりのオリジナル作品(名義を重視すればデビュー・アルバムという解釈も可能)ということになるが、これが文句のつけようのない素晴らしさ。生まれながらにしてクラシック。しかもまったく古臭く感じられないし、過去のいずれかのアルバムを焼き直したような作品でもない。歴史的な重みばかりを盾にした威圧感ではなく、枯渇とは無縁のクリエイティヴィティを感じさせてくれるところが何よりも嬉しい。マストドンとクイーンズライクの新作はコンセプト面で共通項があるゆえに同じ括りで語られることも多く、両者の日本での好セールスの裏には、そうしたある種の相乗効果も働いていたようだ。
デペッシュ・モードについては基本的にデイヴ・ガーンの“声ファン”なのだが、ルーツ回帰の匂いと現在なりの質感、レトロと近未来の双方を感じさせてくれる今回のアルバムには、なんだか将来的に名盤として語り継がれていきそうな予感が。PJハーヴェイとジョン・パリッシュの12年ぶりの共演作にはどっぷりと浸れるし、ミランダ・リー・リチャーズにはかなり癒してもらった。
『ア・ストレンジャー・ヒア』は、フォークの神様と呼ばれるランブリン・ジャック・エリオット(1931年生まれ!)によるブルース作品で、とにかく渋い。プロデュースを務めているのがジョー・ヘンリーというのもポイントだ。ようやく日本でのリリースが実現したフリート・フォクシーズについては、輸入盤で実際よく聴いていたのは少し前のことなのだが、バロック・フォークとかいろんな形容がされるこの人たちの音楽の素晴らしさは、伝統継承と実験を同時進行させながら、実は刺激も豊富な音楽をあくまで心地好いものとして紡ぎあげているところだと思う。
そして、ザ・フィルムスは、かのブッチ・ウォーカーのプロデュースによるこの新作で見事に化けたし、「80年代ロックンロールに対する現在からの回答」ともいうべき音が詰まったアトランタ出身の新星、ステッドラーのデビュー作は、とにかく痛快。単なる懐古趣味ではなく、若い世代ならではの前傾姿勢の疾走感を堪能できる。なんだか怪獣みたいなバンド名だが、是非この名前を覚えておいて欲しい。
さて、すでに5月も中旬に入っているわけだが、今月リリース分の新譜で僕が聴きまくっているのが、マニック・ストリート・プリーチャーズの『ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ』。1995年に謎の疾走を遂げたまま依然として消息のわからないリッチー・ジェイムズ・エドワーズが書き残していた散文を引用しながら制作されたというこの作品は、強引な言い方をすれば15年ぶりに4人で作ったアルバムということになる。かの奇才、スティーヴ・アルビニの手で録られていることにも注目したい。あんまりこういう言い方はしたくないのだが、とにかく泣ける。僕的にはもはや年間ベスト・アルバム有力候補という感じだ。5月13日、日本先行発売なので、是非チェックしてみて欲しい。この作品とマニックスについては、また改めてあれこれ書きたいと思う。
また、ザ・フィルムスの新作を手掛け、彼らをオープニング・アクトに従えて全米ツアーを行なっていたブッチ・ウォーカーの新作も、ようやく今月、日本でのリリースが実現する。これについても書きたいことがいろいろとあるので、是非近いうちに。
増田勇一
●ヘヴン・アンド・ヘル『ザ・デヴィル・ユー・ノウ』
●マストドン『クラック・ザ・スカイ』
●クイーンズライク『アメリカン・ソルジャー』
●デペッシュ・モード『サウンズ・オブ・ザ・ユニバース』
●PJハーヴェイ&ジョン・パリッシュ『ア・ウーマン・ア・マン・ウォークト・バイ』
●ミランダ・リー・リチャーズ『微笑につつまれて』
●ランブリン・ジャック・エリオット『ア・ストレンジャー・ヒア』
●フリート・フォクシーズ『フリート・フォクシーズ+サン・ジャイアントEP』
●ザ・フィルムス『オー、スコーピオ』
●ステッドラー『ステッドラー』
超正統派メタルから今日的ニュー・ウェイヴやフォーク、新世代型ロケンローまで、例によって僕の雑食症状は深刻化の一途をたどっているのだが、実は上記の10作品をこの順番に並べて聴くと、わりと無理のない流れで楽しめる(かも)。クイーンズライクからデペッシュ・モードへ、といういかにも極端そうで掟破りっぽい展開も、僕にとってはわりと普通に気持ち良かったりする(のだが、同じような聴き方を勧めることまではせずにおく)。
ヘヴン・アンド・ヘルとは、言うまでもなくロニー・ジェイムズ・ディオを擁するラインナップによるブラック・サバスのこと。実に17年ぶりのオリジナル作品(名義を重視すればデビュー・アルバムという解釈も可能)ということになるが、これが文句のつけようのない素晴らしさ。生まれながらにしてクラシック。しかもまったく古臭く感じられないし、過去のいずれかのアルバムを焼き直したような作品でもない。歴史的な重みばかりを盾にした威圧感ではなく、枯渇とは無縁のクリエイティヴィティを感じさせてくれるところが何よりも嬉しい。マストドンとクイーンズライクの新作はコンセプト面で共通項があるゆえに同じ括りで語られることも多く、両者の日本での好セールスの裏には、そうしたある種の相乗効果も働いていたようだ。
デペッシュ・モードについては基本的にデイヴ・ガーンの“声ファン”なのだが、ルーツ回帰の匂いと現在なりの質感、レトロと近未来の双方を感じさせてくれる今回のアルバムには、なんだか将来的に名盤として語り継がれていきそうな予感が。PJハーヴェイとジョン・パリッシュの12年ぶりの共演作にはどっぷりと浸れるし、ミランダ・リー・リチャーズにはかなり癒してもらった。
『ア・ストレンジャー・ヒア』は、フォークの神様と呼ばれるランブリン・ジャック・エリオット(1931年生まれ!)によるブルース作品で、とにかく渋い。プロデュースを務めているのがジョー・ヘンリーというのもポイントだ。ようやく日本でのリリースが実現したフリート・フォクシーズについては、輸入盤で実際よく聴いていたのは少し前のことなのだが、バロック・フォークとかいろんな形容がされるこの人たちの音楽の素晴らしさは、伝統継承と実験を同時進行させながら、実は刺激も豊富な音楽をあくまで心地好いものとして紡ぎあげているところだと思う。
そして、ザ・フィルムスは、かのブッチ・ウォーカーのプロデュースによるこの新作で見事に化けたし、「80年代ロックンロールに対する現在からの回答」ともいうべき音が詰まったアトランタ出身の新星、ステッドラーのデビュー作は、とにかく痛快。単なる懐古趣味ではなく、若い世代ならではの前傾姿勢の疾走感を堪能できる。なんだか怪獣みたいなバンド名だが、是非この名前を覚えておいて欲しい。
さて、すでに5月も中旬に入っているわけだが、今月リリース分の新譜で僕が聴きまくっているのが、マニック・ストリート・プリーチャーズの『ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ』。1995年に謎の疾走を遂げたまま依然として消息のわからないリッチー・ジェイムズ・エドワーズが書き残していた散文を引用しながら制作されたというこの作品は、強引な言い方をすれば15年ぶりに4人で作ったアルバムということになる。かの奇才、スティーヴ・アルビニの手で録られていることにも注目したい。あんまりこういう言い方はしたくないのだが、とにかく泣ける。僕的にはもはや年間ベスト・アルバム有力候補という感じだ。5月13日、日本先行発売なので、是非チェックしてみて欲しい。この作品とマニックスについては、また改めてあれこれ書きたいと思う。
また、ザ・フィルムスの新作を手掛け、彼らをオープニング・アクトに従えて全米ツアーを行なっていたブッチ・ウォーカーの新作も、ようやく今月、日本でのリリースが実現する。これについても書きたいことがいろいろとあるので、是非近いうちに。
増田勇一
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