ザ・バード&ザ・ビー、超ガーリーなエレクトロ・ポップの光線銃がリスナーを撃つ!

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2007年、シングル「アゲイン&アゲイン」が日本中のラジオを席巻するほどの大ヒットとなり、一度聴いたら耳から離れない病み付きソングで一躍スターになったザ・バード&ザ・ビー、約2年ぶりとなる待望の2ndアルバム『ナツカシイ未来』がリリースされた。

ザ・バード&ザ・ビーは、ガーリーでキュートな歌声のイナラ・ジョージとカイリー・ミノーグやリリー・アレンも手掛ける売れっ子プロデューサーのグレッグ・カースティンからなる2人組。個々のソロ活動を経てさらなる成長を遂げ、最新鋭のエレクトロ・ポップスを聴かせてくれる。

今回は日本先行発売で、日本盤にのみコーネリアスとの共演で話題の日産MOCO・TV-CFソング「ハート&アップル/ザ・バード&ザ・ビー&コーネリアス」、そしてビージーズのカヴァーで映画『セックス・アンド・ザ・シティ』劇中挿入曲『愛はきらめきの中に』を収録している。日本のファンは大喜び、欧米のファンはガックリという、近年よくある現象がここでも起きている。

このアルバムのサウンドのほうだが、何か懐かしく、ほろ苦く、ほんのり甘く、そして切ないという、味と香りの色とりどりのキャンディが入ったお菓子箱のよう。テクノ、プログレ、ジャズ、古いタイプのポップスなど、さまざまなジャンルの音楽が混在しているのに、食当たりなくスルスルっと喉を通っていく心地よさを味わえる。

このアレンジとイノラのエンジェル・ヴォイスのミックス具合が絶妙で、何度でも聴きたくなるまさに“病み付きソング”と言える。懐かしいのに未来っぽい、まさにタイトル『ナツカシイ未来』そのままの中身が詰まったアルバムだ。

ちなみに、ヴォーカリストのイナラ・ジョージは、70年代に旋風を巻き起こしたバンド、リトル・フィートの中心人物であったローウェル・ジョージの娘。そしてイナラの名付け親は、かのジャクソン・ブラウンという、まさに音楽をするために生まれてきたような人なのだ。

もう一人のグレッグ・カースティンは、輝かしい功績を持つ敏腕プロデューサー。2人はイナラのソロ作『All Rise』の制作中に知り合い、初めてのリハーサル以降、スタンダード曲を片っ端からカバーし、セッションするほど意気投合した2人は、オリジナル曲の制作に取り掛かかった。ヴォーカル・パートはイナラ、インストゥルメンタル・パートはほぼグレッグがこなし、60年代のブラジル音楽やバート・バカラックのような古き良きアメリカン・ポップスに独自のエッセンスを持ち込んだ楽曲で、2007年1stアルバム『ザ・バード&ザ・ビー』をリリースした。

さて、その2人のインタビューが到着している。これを2回に分けて紹介しよう。

◆ ◆ ◆ ◆

――セカンド・アルバム完成、おめでとうございます。どうですか、今の気分は?

グレッグ・カースティン(以下、グレッグ):今の気分? いやぁ、すごくハッピーなんだけど、何がハッピーかって、終わってくれたことがすごく嬉しいんだ(笑)。正直、終われたことが自分でも信じられないくらいでさ。出来にはとても満足しているよ。早くみんなに聴いてもらいたい。

――何か意識的に変えてみたこと、チャレンジしてみたことはありますか。

グレッグ:う~ん、レコード全体として前作よりも進化していることは間違いないと思うけど。ダンスな要素…っていうのかな(笑)、そっちに少し傾いてると思う。リズム的に、1stレコードほどソフトじゃなくなってる気がする。

――本とか音楽とかで今回、インスピレーションを受けたものは。

イナラ・ジョージ(以下、イナラ):タイトルは、“60 MINUITE”っていうニュース番組で光線銃(ray gun)について取り挙げていたのがきっかけだったの。光線銃は軍が開発したもので、実物は私たちが想像するような、ひとりの人間に狙いを定めて撃つ…みたいなものとはちょっと違うんだけれど、あの番組を観ていて思ったのは、恐らく光線銃という名前はSF作家か誰かが思いついたもので、その人が考えた未来のイメージを別の誰かが実現してしまうなんて、考えてみるとスゴイことだなって…。あの曲の歌詞は、そんなふうにして私が考えたものなのよ。

――グレッグは数々のプロジェクトを手掛けていますが、その中で特に印象に残っているものはありますか。

グレッグ:う~んそうだなぁ、どれだろう…。やっぱり時間をかけたという意味でリリー・アレンのレコードは印象深いね。。あとは…何があったっけ? プロデューサーとしてではないけど、サイドマン的な形でレコーディングに参加したものとしてはBECKのレコードが楽しかったな。そういえば、あれもインスピレーションを受ける経験だったんだ。あの時のスタジオにすごく古いピアノがあって、僕はそれを弾いたんだけれど、あまりにもステキだったんで、自宅にも古いピアノを買ってしまったという(笑)。僕は人のレコードに参加して演奏するのが基本的に好きなんだよ。プロデューサーとしてではなくて、いちキーボード奏者、あるいはピアニストとして顔を出せるというのがいいんだろうね。あれは楽しかった。

――イナラは、ザ・バード&ザ・ビーでは必ずしも自分自身ではないキャラクターを曲の中で演じる自由があって、それが楽しいということを前作のインタビューで言っていました。今回の曲でも、そういう感覚はありましたか。

イナラ:もちろんよ。ザ・バード&ザ・ビーでは、私も遊べるというか、自分を色々なコンセプトで作り出すことができるような気がする。それは例えばオリビア・ニュートン・ジョンだったり(笑)。わかる? とにかく遊べるのよ。シアトリカルっていうことかな。

――具体的に、こんなキャラクターを演じたという曲はありますか。

イナラ:そうね、魔女を演じた曲がひとつあるわ(笑)。キャラクターを演じ分けるというのではなくて、キャラクターとしてはどの曲もだいたい同じなんだけれども、いわゆるヴォーカリストになりきっているという感覚。オリビア・ニュートン・ジョンって言ったのも、そういう意味なの。あとは、60年代のシンガーたちもそうだったと思うんだけど、ああいうモードが最近、私は好きなのよ。歌い手であることを楽しむというのかな。う~ん、説明するとなると難しいなぁ~。例を挙げるとすると、ローズマリー・クルーニーとか、オリビア・ニュートン・ジョンとか、ダスティ・スプリングフィールドとか…ああいうモードね。ドナ・サマーもそう。ああいう感じを出そうっていう意図が、ちょっとあった。彼女たちの歌の個性っていうより、存在感みたいなものを言ってるんだけど。

――スタジオの中身に変化はありませんか。新しいオモチャを手に入れたとか。

グレッグ:新しいピアノを手に入れたのと…、これは、さっきも話した古いピアノで1893年のスタインウェイのアップライト・ピアノなんだけど。

グレッグ:それを少しだけアルバムでも使ってる。“Diamond Dave”で弾いたんだ。あとは何かあったかな…。キーボード類は他にも買ったものはあるんだけど、今回は使わなかったし。EMSってのを買ったんだけどね、まぁ、これは自慢したくて言ってるだけだけど(笑)。

イナラ:次のレコードで使うって予告にしておけばいいじゃない。

グレッグ:うん、次のレコード用だ(笑)。ブライアン・イーノがよく、ROXY MUSICとかデヴィッド・ボウイの『RAW』とかのレコーディングで多用していたもので、これも超オタクな機材なんだよ。でも、買ったのはこのレコードがほぼ完成した頃だったんで…。でも、次のレコードはこのキーボードを主役にしようと考えている。

イナラ:(笑)

続く

インタビュー:内本順一

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