メガデス来日中!「孤高のカリスマ」の刺激的な“今”を体感せよ

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最新アルバム『ユナイテッド・アボミネイションズ』の発表から約半年、メガデスのジャパン・ツアーが去る10月30日に開幕を迎え、同日、渋谷・C.C.Lemonホールでの初日公演を観た。スペシャル・ゲストとして迎えられたジブラルタル出身の新鋭、ブリード77(出演は東京公演のみ)の、やや粗削りではありつつも資質の高さと“根”にあるものの熱さを感じさせるパフォーマンスを経て、デイヴ・ムステイン率いるメガデスがステージに登場したのは時計の針が午後8時をまわった頃のこと。オープニングに据えられたのは最新作の冒頭を飾っていた「スリープウォーカー」だった。

まだまだ公演そのものが残されているので詳しい演奏内容や曲目などについては触れずにおくが、この夜、改めて痛感させられたのは、メガデスというバンドの特異さであり、いわゆる構築美とは一線を画する機能美とでもいうべきものの鋭利さだった。

実際のところ、ツアー初日ということもあってか音響面では不満の残る部分もあった(が、これは公演を重ねるごとに解消されていくことだろう)し、「この曲を聴くことができたのは嬉しいが、何故あの曲をやらない?」といった疑問もなくはなかった(が、ムステインは「セット・リストは毎晩変える」とあらかじめ明言しているらしい)。さらに言えば、お馴染みのロゴが描かれたバックドロップ以外、いわゆるステージセットめいたものは皆無。言葉を選ばずに言えば、かなり殺風景なステージでもあった。が、それは逆に、ステージ中央で淡々と演奏し、歌うムステインの放つオーラさえあれば、他には何も必要なかったということでもある。

メガデスは相変わらずエンターテインメント型のバンドではないし、規則正しく4曲おきに設けられたMCタイムでは「ゲンキデスカ?」「サイコーダゼ!」といった日本語を織り交ぜながら笑顔と拍手で観衆を称賛してみせるムステインの姿が見られるものの、いざ演奏が始まればどのメンバーも“持ち場”を離れることはあまりないし、メンバーたちの表情も髪の毛に隠れてほとんど見えない。静止画像とまで言っては言い過ぎだろうが、大半の時間、観衆は“仁王立ちして頭を振りながら定位置で演奏する3人+要塞に囲まれたドラマー”を見守り続けることになる。が、考えてみれば彼らは昔からこういうバンドだった。そうした淡々とした空気のなかで、尋常ではない狂気とかイビツさといったものを感じさせてくれるのがメガデスのライヴなのである。

実際、何ひとつ具体的な不足を感じることはなかった。敢えて言うならば、ムステイン以外のメンバーたちにもう少し色濃い存在感が欲しいという気もしたが、彼と同じだけのオーラを全員に求めようとすること自体に無理があるだろうし、彼らの堅実さが現在のメガデスを支えているという部分もあるはずだ。おそらくそうした僕個人の感触も、次にこのバンドに触れるときにはまた変わっているに違いない。なにしろメガデスは、伝説のなかに埋もれているわけではなく、今も前進を続け、精度を高めつつあるのだから。

途中、最新作がすでに前作の実績を超えている事実をあげ、オーディエンスに感謝の言葉を投げかけたムステイン。そんな言葉なら、今後何回でも聞いてみたいものである。本日以降の公演にも、要注目だ。

増田勇一

<今後の公演日程>
11月1日(木)東京・SHIBUYA-AX
11月4日(月)東京・中野サンプラザホール
11月5日(火)名古屋・Zepp Nagoya
11月6日(水)大阪・厚生年金会館
http://www.udo.co.jp/artist/Megadeth/index.html
※ブリード77は名古屋/大阪公演には出演しません。

編集部注:当日のライヴ写真が、後日掲載されます。お楽しみに。
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