<FRF'05>ニュー・オーダー、過去を越え“現在”を表現

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この日のニュー・オーダーは、グリーン・ステージを埋め尽くした観客のマックスにまで高まった期待を、更に上回る素晴らしいライヴで魅せてくれた。

そもそも、「ニュー・オーダーはライヴを見るより、音源を聴くほうがいいから」という残念な声を今回、幾度耳にしたことか。確かに演奏力を売りにしているバンドではないし、'01年フジにおける「リグレット」のイントロがトラウマになった人もいるだろう。だがしかし。それを理由に今回のステージを見逃した人は、一生後悔するはずだ。なにしろ新加入したフィル(G)の八面六臂の活躍により演奏面では誰も落胆させず、何よりステージから溢れ出てくる前向きな衝動が温かなヴァイブとなって人々を踊らせるさまは、壮観の一言に尽きたのだから。

むろん、“温かさ”をヌルさとイコールにしないあたりは、このバンドが辿ってきた壮絶な歴史のなせる業だろう。歴史。伝説。――膝下でベースを鳴らすフッキー(B)のスタイルといい、タイトに寡黙にリズムを刻み続けるスティーヴン(Dr)といい、ジョイ・ディヴィジョン曲を4曲も演奏(一度に4曲もやるのは初めて)したベスト・ヒット選曲といい、確かに“伝説”を目の当たりにしているという実感もある。バーニー(Vo&G)の青くみずみずしい歌声も不変だし、何しろ、彼らが書いてきた曲そのものが普遍の輝きを変わらず放ち続けているのだから。

だが、この日のライヴが感動的だったのは、バンドが過去や伝説を越え、“現在”をより強く感じさせていたからに他ならない。かつてやるせない思いや周囲への違和感、刺々しい攻撃性など、さまざまな形の若者の心境を赤裸々に歌い支持された、ニュー・オーダー。そういった原点を持つ過去の切ない曲たちが、彼らが再始動後の2作で描いた温かな曲たちと同じ温度で鳴っている。知らず知らずのうちに、温かなものがこみ上げた。

バーニーは公約通り「クラフティ」の前半を日本語で歌っただけでなく、最後のフレーズもとっさに日本語で歌い、観客を沸かせた。「トランスミッション」をサラリとイアン・カーティスに捧げる一方で、「みんなはもっと、踊れる曲を聴きたいかもしれないけど……」というMCでスタートした「ラン・ワイルド」で切々と、全ての生命を祝福する。そのさまに、もはや滂沱の涙だったのは私だけではないだろう。死から出発したニュー・オーダーだからこそ、シニシズムや鬱を脱ぎ捨てた現在の“生”への想いは、どこまでもリアルに背中を前へと押してくれる。ノリノリでステージを降りてベースを弾き続けるフッキー、MCではジョークを連発し、謎の踊りも披露するバーニー。どの瞬間にも、生命力が満ちていた。

アンコールの最後に演奏された「ブルー・マンデイ」まで、全14曲。泣きながら笑顔で踊り続けるかのような、えもいわれぬ幸福なパーティー空間が、この夜のフジで生まれていた。

取材・文●妹沢奈美
Photo/Barks
※写真中段:「ラヴ・ヴィジランティス」イントロで鍵盤ハーモニカを吹くバーニー

NEW ORDER2005/7/31 GREEN STAGE

CRYSTAL
REGRET
LOVE VIGIRANTES
KRAFTY
TRANSMISSION
ATMOSPHERE
RUN WILD
WAITING FOR THE SIRENS’ CALL
TRUE FAITH
BIZARRE LOVE TRIANGLE
LOVE WILL TEAR US APART
TEMPTATION

(ENCORE)
YOUR SILENT FACE
SHE’S LOST CONTROL
BLUE MONDAY

BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
FUJI ROCK FESTIVAL '05特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000001735
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