【インタビュー】Veiled in Scarlet、自他共認める最高傑作をリリース。完全体となった彼らが放つ哀哭のメロディ

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今や伝説的な存在とも言えるSERPENTを率いていたKeija(ds&key)が立ち上げたVeiled in Scarletが、3枚目のフル・アルバム『Atonement』を去る11月21日にリリースした。これまで幾度ものメンバー・チェンジを経てきたバンドだが、本作はサポート参加していたShin(vo)が正式加入した“完全体”として制作された第一弾作品であり、一聴すれば、「最高傑作」との評価が各方面から聞こえてくるのも頷けるだろう。彼らはいかにしてこの新たなマスターピースを生み出したのか。ここに至るまでの歩みを含めて、それぞれ作曲と作詞を手掛けるKeijaとShinの2人に思いを訊いた。

■同じメロデスをやるバンドとして
■日本にもこんなバンドがいるんだなって


――初めてVeiled in Scarletを知る人のために、基本的なことから改めて伺います。まずKeijaくんがこのバンドを始動させるとき、どのような構想があったのでしょう?

Keija:音楽的にはメロデス(メロディック・デスメタル)をやろうというのは決めていたんですが、SERPENTとはちょっと毛色の違う、もっと硬派な感じにしようかなとは思ってましたね。SERPENTがとにかくメロディで押していたスタイルだとしたら、もっとリフを強調したようなものですかね。ただ、最初はバンドではなくて、個人プロジェクトの予定だったんですよ。でも、ファースト・アルバム(『Idealism』/2012年)を出すことになったレーベルから、バンドのほうがいいんじゃないかという提案があって。そこで、急遽、メンバーを集めたのがキッカケですね。だから、もともとライヴをするつもりもなかったんですよ(笑)。

――ただ、その後、メンバーが固定しない状況が、つい最近まで続きましたよね。

Keija:そうですね。辞めた人たちもそれぞれ事情はあったんですが、なかなかいい人がいなくて、ずっと手探りでやってきましたね。でも、やっと今作で固まった感はあります。


――Shinくんはサポート・メンバーとして、音源制作やライヴに参加してきましたが、このタイミングで正式加入したのは、どういった理由だったんですか?

Keija:それは僕が慎重すぎたんですよ。入っては辞めて、入っては辞めての繰り返しやったんで、ホントに信頼関係できるまで待とうと(笑)。

――それなりに時間がかかりましたね(笑)。

Keija:そうですね(笑)。もともとはTHOUSAND EYESのDOUGENくん(vo)がShinを紹介してくれたんですよ。

Shin:DOUGENがVeiled in Scarletのサポートをずっとやってたんですが、僕は彼とは昔から仲が良くて、2人で飲んだときとかに、「今はこういうバンドをやってるんだけど、多分、お前のほうが合うよ」って話を前からされてたんですよ(笑)。そのうちに、ゲスト・ヴォーカルを呼んでライヴ(2014年10月)をするというイベントにVeiled in Scarletが出ることになって、そのときにDOUGENを介して僕を呼んでもらったんですね。そこから何かいろいろとつながるようになって。

■気づいたらデスメタルをやっていたんですけど
■気分はロックスターなんです


――それまではどんな活動をしていたんですか?

Shin:以前はBLEED OUTっていうバンドで歌っていたんですけど、そこから数年間は表立った活動はあまりしてなかったんですよ。だから、Veiled in Scarletのサポートをすることがキッカケでシーンに戻ってきた感じですね。BLEED OUTをやっている頃からSERPENTは普通に知ってて、カッコいいなと思ってたんです。同じメロデスをやるバンドとして、単純に凄いな、日本にもこんなバンドがいるんだなって。今もVeiled in ScarletのライヴでSERPENTの曲をやったりするんですけど、まさか自分が歌うことになるとは、そのときは思ってませんでしたね(笑)。だから、Keijaさんと初めて会ったときは、元SERPENTという肩書もあったので、めちゃくちゃ緊張しましたけどね(笑)。当時はDOUGENがずっとVeiled in Scarletのゲスト・ヴォーカルをやってたので、正直、下心的にはヴォーカルのポジションが空いてるんだな、気に入ってもらえるといいなみたいなところもあって(笑)。

――とすると、そのイベント・ライヴのときが2人は初対面になるんですか?

Shin:そうです。いきなりライヴだったんですよ(笑)。リハもなかったですし。これをやるからって、曲だけ教えてもらってて、とにかく当日までに必死に練習して(笑)。

Keija:ぶっつけ本番でね(笑)。その日のライヴで初めて会って、2曲ぐらい合わせたんですよ。そのときに上手いな、リズム感がいいなと思ったんですよ。それがキッカケで、音源を一緒に作ろうかって話になり、シングル(『The Underworld』/2015年)で歌ってもらったんですね。そこでちゃんとした音で聴いて、(Veiled in Scarletに)合ってるなとは思ったんです。DOUGENから紹介されたときに、一応、BLEED OUTの音源はもらってたんですけど、実際に一緒に音を出してみないと、馴染むかどうかってわからないですからね。その後、別のヴォーカリストが正式に加入して『Reborn』(2016年)というアルバムを出したんですけど、ライヴをやる前に脱退してしまって……。そこでShinにサポートを即お願いすることになったんですよ。

――そのままの流れで、『Lament』というミニ・アルバムを同年にリリースすることになりましたよね。

Keija:もともと『Reborn』の後、年末にもう一枚出そうという話をしていたんですよ。でも、その『Lament』を制作しているときのShinとのやりとりが、むちゃくちゃスムーズだったんですよね。その後のライヴもそう。だから、次からは正式に加入してもらおうと。そういう自然な流れでしたね。

Shin:『The Underworld』もそうでしたけど、一緒に新しい音源を作ろうと声をかけてもらったときは嬉しかったですね。全力でやろうと思いましたし、そのときからすでに、作詞も任せてもらえたんです。結果的に『Lament』はかなりいい出来になったんじゃないかなと思ってて。『Reborn』のツアーも廻って、ワンマン・ライヴも経験する中でバンドに馴染んでいったところも、作品に表れたなと思ってはいますね。僕の中では、『Lament』の時点で、気持ちとしてはすでにメンバーのつもりでやってたんですけどね(笑)。

――そもそもヴォーカリストを志したキッカケは何だったんですか?

Shin:中学生の頃からロックが好きで……一番尊敬するヴォーカリストはスティーヴン・タイラー(AEROSMITH)なんですよ。それでカッコいい、ヴォーカルになりたいと思ったんですけど、気づいたらデスメタルをやっていたんですけど、気分はロックスターなんです。

■やっぱり新しいことをしたいなぁと
■今までとはちょっと違った感じの曲も入ってますよね


――それは大事なことですね。今回の『Atonement』に関しては、いつ頃から構想をし始めたんですか?

Keija:曲作りを始めたのが去年の6月ぐらいからなんですね。その年のうちにもう1枚出したいと思っていたので。でも、曲が全然できなかったんですよね。今年1月のライヴで「Blind Crow」はやったんですけど、2月頃にやっと2曲できたぐらいで。そこで書けた「Prisoner’s Sorrow」から、(アルバムの全体像が)見えてきた感じはありましたね。実際、そのときに、僕は「秋に出す」って公言しちゃったんですよ、自分のケツを叩くために(笑)。そこから5月ぐらいまでの間に全曲を書き上げたんです。曲は時間があればできるというものでもないんですよね。作曲モードというのがあって、そこに入ったら早いんですよ。

――音楽的にはどんなことを考えていたのでしょう?

Keija:やっぱり新しいことをしたいなぁというのがあって。今までとはちょっと違った感じの曲も入ってますよね。たとえば、その「Prisoner’s Sorrow」とかはリフでガンガン押していくタイプですし、「Dark Prayer」のような3連の曲って、これまでやってこなかったんですよね。最後の「Roar The Winter」に関しては、初めてメジャー調を意識して書いた曲です。

――確かにその辺りの曲が入ってきたことで、アルバムの印象がこれまでと明らかに違いますもんね。Veiled in Scarletの強みが、よりわかりやすく伝わってくると思うんです。

Keija:あぁ、それは嬉しいですね。

――『Lament』では、聴き応えはありながら、同時に何か次のものを模索しているような感触を覚えたんですよ。

Keija:そうですね。『Reborn』では、自分が理想としている音楽、作りたい音楽を作った感はあったんですよ。なので、その先が見えてなくてというのはありましたね。それが『Lament』に出ているのかなというのはありますね。

Shin:やっぱり、Veiled in Scarletの曲は、Keija節がかなり強いじゃないですか。そこは残しつつも、今までと違う切り口の曲が結構入ってきていて、なおかつ、ハイクオリティで保たれているんですよね。次々と曲が送られてくる中で、これはヤバいアルバムになるなというのは内心思っていたんですよ。だから、ヴォーカル・ラインとか歌詞とかを含めて、このクオリティの曲をさらに高みに上げるヴォーカルを作らなきゃいけないというプレッシャーは、曲が届くたびに思いましたね。「うわっ、またいいのが来たな!?」って感じで(笑)。

――歌詞については、今までにないようなストーリー作品という捉え方でよいのですか?

Shin:一応、アルバム全体でストーリーが続いているというわけでもないんですけど、世界観としてはそんなに違いはないですし、あまり意識しなかったんですけど、結果的に何となくつながっているような感じにはなったんですよね。

――いや、完全につながっているのだろうと思って、歌詞を読み込んでいましたよ。

Shin:そうなんです。でも、確かにイントロと最後の曲とかは完全にリンクしてますしね。基本的に歌詞は曲を聴いたイメージから出てくる物語なんですけど、やっぱりKeijaさんの中でそれぞれの曲の明確なイメージがあったからこそ、結果的に一つの物語になったのかなと思います。

Keija:僕が曲を書くときに見えているものって景色なんですよね。それをShinに投げて、ストーリーを考えてもらう。その捉え方は信頼してますし、実際に曲にマッチしてると思いますね。

Shin:でも、そういう(歌詞が一つの物語になっているのではないかという)感想は多いですね(笑)。

Keija:昔からそうなんですけど、僕は一つの作品を映画的に作りたいというのがあるんですよ。結果的にそうなったのはホントに嬉しいですね。

Shin:曲順もいいですよね。

Keija:曲順も僕が決めたんで……それも歌詞を意識して考えたものではなくて、自然とそういう流れになったという。

Shin:奇跡ですよ、そしたら(笑)。

Keija:しかも、今までは、全部、僕がタイトルを考えて曲をヴォーカリストに投げてたんですよ。そこからインスピレーションを受けてもらって歌詞を考えるみたいな。でも、今回は「Atonement」だけで、あとは「01」とか「02」とかの番号だったんですよ。

――とすれば、なおさら奇跡的な結実を迎えたとも言えますし、その点も含めて、充実した手応えのあるアルバムになったのは間違いないでしょうね。

Shin:やっぱり、手応えはありますね。最終的にできあがったものを聴いても、これはどこに出しても恥ずかしくないなと。

Keija:そうですね。僕も作っている最中は、ホントに感動しなくなるぐらい根詰めて作業をするので、いいのか悪いのかわからないのが正直なところだったんですけど、他の2人も最高傑作やって言ってますね、やっぱり。

――現時点では東京公演のみ明らかになっていますが、他の地域もブッキング中とのことですし、今後のライヴがますます楽しみになりますね。

Shin:バンドとしてはかなりまとまった状態になっていますしね。僕としても、今回の『Atonement』も前作の『Lament』もそうですけど、自分なりにVeiled in Scarletの曲を解釈して作った曲が増えてきているので、ライヴにはそういった親和性も表れてくると思うんですね。

Keija:やっぱり、一つの作品を一緒に作り上げたというのは、団結力が違ってきますよね。

――Veiled in Scarletのライヴを観たことがない人に、自分たちのライヴの特徴を説明できる言葉もありますか?

Shin:モッシュが起きるとかそういうライヴではないんですけど、ヘヴィメタルならではのアグレッシヴさはもちろんありますし、さらに美しい、哀しいメロディを聴かせることもかなり意識しているんですよね。こちらもすごく感情を込めてステージに立っているので、観てくれる人たちも気持ちが昂ぶると思います。それに今まではコール&レスポンスじゃないですけど、観客を巻き込んでみたいな曲はあまりなかったんですよね。でも、僕はわりとライヴでの盛り上がりを意識した作りをしているところもあるので、お客さんも一緒に歌うような、楽しい要素も出てくると思います。

取材・文●土屋京輔


リリース情報

■『Atonement』
11月21日発売
WLKR-037 3000円(税抜)

ライブ・イベント情報

2018年12月15日=東京・渋谷Cyclone
2019年1月12日=東京・新宿Wildside Tokyo
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