【対談】BAROQUE × ACID ANDROID、時代と表現と音楽「受け継ぎながら繋がっていく」

■音楽のジャンルというか種類は
■リズムで決まるんじゃないかって──yukihiro
──1980年代や1990年代は、新しい音楽とか新しいムーブメントが生まれていた時代でもありました。ご自身が音楽を作る上で、クリエイティヴなことをしようとか、新しいことを実戦してみようという気持ちは、yukihiroさん自身にも強くありましたか?
yukihiro:自分の音楽体験で、恵まれているなと感じるのは、いろんな音楽が出てきては廃れてというのを見てきていることです。リアルタイムで新しい音楽が出てきたから、それを体験できたと思うんですね。
圭:そうですよね。
yukihiro:機材が進化すれば、それに伴って音楽ができたり。たとえば、ターンテーブル2台で音楽を作り出したりとか。そういうことをリアルタイムで見ることができたということ自体、世代として得してるんだろうなと思います。新しい音楽を探すことは、テクノロジーの関係上、現代より難しい時代ではあったと思うんですけど、それが楽しかったんです。だから情報を探し歩いていたという感覚ですよね。
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| ▲ACID ANDROID |
圭:音楽を聴くこと自体も好きだったんですか?
yukihiro:大好きでしたね。毎日レコード屋さんに通ってました。
圭:何か新しいものを見つけようと?
yukihiro:そう。でも店員さんに話しかけるのが苦手で(笑)。多分、“この人、ずーっといるな”って思われていたと思う。お店でかかっている音楽ってアルバムだと大体30〜40分くらいじゃないですか。で、聴いていて“これはイマイチだな”と思ったら、一回お店を出て、次のアルバムがかかるだろう1時間後くらいにまた戻ってみたりとか(笑)。ただ、「今かかっているアルバムは誰のですか?」って店員さんに聴くのが苦手だったので、“現在流しているアルバムはこれ”って掲示しているお店に足繁く通っていましたね。
圭:その情熱がすごい。今だったら、流れている音楽がアプリですぐに検索できるし……そう考えると、逆につまらないですね(笑)。
──つまらないですか(笑)?
圭:すぐ分かっちゃうのって、発掘しがいがないじゃないですか。話は飛びますが、yukihiroさんはドラマーですけど、ブレイクビーツとか、いわゆるドラムマシーン的なアプローチを昔からやっているじゃないですか。ドラマーの人って生の音にこだわるというか、デジタルなものに理解がある人が少ない気がしていたんですけど、最初から違和感はなかったんですか?
yukihiro:僕は、そういう音楽がカッコいいと思ったんですよね。例えば、打ち込みの音楽を聴いていても、“ここで生ドラムが加わったほうがカッコいい音楽ができるんじゃないかな?”とイメージしたりしてました。
圭:もともとそういう発想をお持ちだったんですね。
yukihiro:それを自分でやってみようと思ったことが、きっかけなんです。
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| ▲圭 (BAROQUE) |
──ふたりとも作曲をするので、音への着眼点というのは気になるところです。どういうところを意識して楽曲を作っていきますか?
yukihiro:リズム周りはもちろんですけど、一時期、音楽のジャンルというか種類はリズムで決まるんじゃないかと感じてました。今もそこは意識しますね。こういう音色にしたら、音楽を聴く人はこういうジャンルだっていうことを想像するんじゃないかなとか。このテンポで四分打ちだったらこういうジャンルって思うかなとか。ちょっと粗い音だったら、ブリストル系とかヒップホップの影響とかを感じるかなとか。
──そこでミスマッチな食い合わせにして遊ぶようなこともあるんですか?
yukihiro:出来上がったものがカッコよければいいと思うので、そこもやりながらですよね。クロスオーバーすることで新しいものも生まれると思いますし。
圭:確かにダンスミュージックとかは、BPMでジャンルが決まるところもありますね。
yukihiro:以前だったら、テクノはBPM140くらいないとって感じだったけど、今は130とか120くらいでもアッパーな雰囲気になる。音色の変化もあって、テンポが上ったり落ちたり、というのは結構ありますよね。
圭:テクノも1990年代初頭くらいが好きだったんですか?
yukihiro:レイヴの盛り上がりがあって、ブレイクビーツが出てきて、四分打ちもどんどんアッパーになって、アンダーワールドみたいなアーティストが出てきて、ロックに接近してきたところもあるじゃないですか。逆にロックがそっちに寄っていったのかもしれないですけど。どんどんジャンルの境界が近くなって、いろんな人が手を出しやすくなる。ただ、そうなると終わるっていう気もします(笑)。そういう繰り返しでもあると思いますけどね。
圭:そうですね。僕はちょうど今、古いテクノをいっぱい聴いているんです。今日は9月9日だから“909の日”ですけど、ローランドのTR909とかリズムマシーンが出ると、その音色からいろんな音楽が生まれたり。yukihiroさんがおっしゃったように、こういう機材があったから、こういう音楽ジャンルが生まれたというのも面白いなと思うんです。









