【音漬日記】Salyuのニュー・アルバムを聴く
2007.01.×
Salyuのニュー・アルバム『TERMINAL』を聴く。
骨格と声は密接に結びついているゆえ、同じような骨格の持ち主が似た声の持ち主というケースが少なくない。
細かい造作はともかく、似た声の人を見比べてみるといい。
えらの張り方であるとか、額の広さだとかが似通っているはずである。
しかし、そうした獲得形質を超えていくものが、声楽なりの学習であろう。
Salyuの声を最初にライヴで聴いたのは、リリイ・シュシュの時だから、
かれこれ5年ほど前になるだろうか。
明らかに「声の出し方を学んだ」声は、聴く者の気持ちを融かし、
ある種のたゆたうものに置換するという不思議な力を持っていた。
通常、硬い気持ちを融解させる声は、何らかの主張の少ない声だと思われるが、
Salyuの場合はそのまったく逆で、主張をしているのに、
とげとげしくなく、聴くものの気持ちを融解させてきたのである。
そして昨年、足を骨折した彼女がステージから「VALON―1」を歌った際に、
その理由がはっきりした。彼女が、歌う時に拠り所にしているのは、
表層の自分の気持ちの吐き出しではなく、楽曲と出会った縁(えにし)を、
声によって確かめようとする自分の内奥への旅なのである。
その彼女の特異性を把握した上で、本作は、3次元の彼女が持ち合わせている
“可愛らしさ”の表出に力点が置かれている。事実、一青窈が作詞をし、可愛らしい女性を表した
「Apple pie」を歌うことがむずかしかったと、Salyuは答えた。
言い換えれば「歌を通した自分らしきものの表現」に、彼女は慣れていなかったのである。
しかしながら、そのアプローチはSalyuの特色をわかりやすくしたはず。今こそ多くの人に……。
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