――今は、事務所やレコード会社が違うと横のつながりってなかなかないようですね。
山下:本当? そうなんだ。
大澤:昔はケンカが起きるか、仲良く飲むかどっちかだったよね。客も客で殺気立ってたよね。つまらないとワーっとステージにあがってくるとか、物投げてくるしね。
山下:そんななかハウンドドッグが「正統派ロックンロール」で出てきたからね(笑)。それまでは正統派じゃなくて異端だから(笑)。
――そんな時代を過ごした3人が今回のカヴァー曲として選んだのはキャロル・キングですが、超オーソドックスなスタンダードですね。この選曲は?
山下:私です。これしかないなって思っちゃった。3人でこれをって。本当に3人で”きみの友だち”って言えちゃう関係だし。それにこの曲はいずれ形にしたいなって思ってたんです。大好きな曲だし、アルバム自体も好きで。
――この曲はテーマもそうですが掛け合いも含め、本当に仲良くないと歌えないですよね。
大澤:それぞれ大人になったよね。合わせるようになってきた(笑)。
――このアルバムができたのは、ある意味人間関係からできてきた輪っていうかね。それが音楽になってきたんでしょうしね。
山下:今まで25年間やってきて繋がってきてやってこれたんだなって思いますね。久しぶりに……っていうと語弊があるけれど、ドキドキするレコーディングでしたよ。
――人徳だと思いますよ。来て欲しいなって思っても来てくれなかったらこのアルバムは成立しないからね。
山下:しかも80年代のレコーディングのあり方にすごい近いの。ミュージシャンが来てライヴっぽく、広いスタジオで録ってるねって(笑)。そういうやり方で、古巣に帰った感じ。
――あと、このアルバムの根源は音楽が好きって人が集まってできた気がしますね。
山下:そうですね。清志郎さんも言ってたんですよね。みんな音楽好きじゃないんじゃないの?って。彼が何かやるとワーっと何かやったか!?って感じになってね。で、みんな音楽好きじゃないんじゃないの?って。そうだよね、音楽好きだったら、あれいけない、あれダメってないよねって。これをキッカケにまた好きになりたいって思って。みんなに気づかされましたね。
――四半世紀は長かったですか?
山下:よく言うように、長いようで短いようで気づいたら25年なんだって。でもちょっと落ち着いて考えると振り向けるだけの時間は確かにあったって思うんです。で、今、私がここにいる、さあどうしようって節目にいるなって今は思ってます。
――宝物のようなアルバムですね。久美子さんの人徳と友達の結びつきとでできたアルバム。
山下:あと愛もですね!
取材●佐伯 明
構成●バークス編集部