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キャロル・グレイソン
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──日本でもゴスペルの人気が高くなってきておりサークルも各地にできていますが、まだまだ一般的な音楽ではありません。ゴスペルとは何なのか、簡単に説明してもらえますか?
キャロル: ゴスペルっていうのは、人種という枠を超えて、自分に降りかかった困難を乗り越えていくためのインスピレーションでありモチベーションだと思ってる。私たちにとっては、“神”というものに答えがあり、そこに助けを求めていくというのが私たちのやり方ね。日本の人たちには、言葉はわからなくても、私たちの身体や涙、そして声。それらを見て聴いて感じてほしい。フィーリングね。
──ARCゴスペル・クワイアに参加するまでのいきさつを教えてください。
キメット: 私はずっと薬物依存だったの。ARCのことを知ってたから行ってみただけで、特にARCに行きたかったわけじゃなかった。でもARCでの生活は魅力的なものだったわ。ゴスペルが元々好きだったというのはあったんだけど、ゴスペル隊は仲間がみんな私と同じような問題を抱えている人ばかりだったので、同じように気持ちよく歌えた。仲間意識が芽生えたの。私はニュージャージーに住んでいたんだけど、クワイアの近くにいたかったからニューヨークに引っ越したのよ。
リッチー: 僕は、このクワイアに来たのは運命だと思ってる。僕も薬物依存症で、それを治すためにいろいろなプログラムをやってきたんだけれども、どれもうまくいかなかった。だけど、ARC独自のスピリチュアルなサポートが僕を助けてくれた。僕に必要だったのはそういう精神的な支えで、父が死んだ時もそれがなくて薬物に逃げてしまってたんだ。ARCのクワイアに入ることで、自分の中にスピリチュアルなものが戻ってきた。ちゃんとした人生に戻るためのレールを敷いてくれたんだと思う。
キャロル: 私はARCのことなんか知らなかったの。私は落ちるところまで落ちた生活をしていて、たまたまARCのプログラムに参加したのよ。でもARCのパフォーマンスを見て、精神的に“ハイ”な状態になれた。それで薬物をやめる決心がついて、ゴスペルを歌うことで得られる精神的な高揚感をキープしたいなと思ったの。
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リッチー・ガイルス |
──ゴスペルのどういうエッセンスが、あななたちを苦しみから解放したんですか?
リッチー: 僕はずっと独りきりでいて、仲間の中にいたことがなかったんだ。クワイアに入ることで、自分に欠けていたものを見つけられた。それで自分の悪いところが見えてきて、自分の人生が実りのないものだったということがわかったんだ。クワイアに入ることで、歌で何かを他の人に伝えるという責任が僕にできた。そういうことをARCにもらったと思ってる。
キメット: ゴスペルを歌ってて一番いいのは、神に近づけるってことね。あと、毎週コンサートをやることで人に感動を伝えられて、感動した人を見てまた私も感動してしまうの。嬉しくて涙が出るっていうエモーションを伝道できるってことね。日本に来るなんて、いままで夢にも思わなかったことができるのも嬉しい。ARCに来るまでは、私の生活に規律なんてものはなかった。でもここでは、週に2回練習があるし私の責任を全うしなきゃいけない。そういう責任感も生まれたし、私自身が成長できたなと思う。
キャロル: ARCを創立したジェームス・アレンの指示が私の指標になったわ。すごく厳しいんだけど、彼からの忠告が私の支えになった。クワイアのスピリチュアリティというのもあったけど、厳しい規律が私には必要だったのね。それはクワイアの中だけじゃなくて、人生や社会でも通用するものばかりだった。