ラグフェア、CD発売記念ロング・インタヴュー第二部

2004.09.06 08:49

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奥村政佳:
ヴォーカル
パーカッション


加納孝政:
ベース


土屋礼央:
テナー


荒井健一:
テナー


加藤慶之:
ハイテナー


引地洋輔:
バリトン





「加納君は崩れてないもんだと思って、僕たちはそこにコーラスを入れていきますから」(土屋)
──レコーディングでは、緻密にアレンジをしてから録っていくんですか。

加納:そうですね。でも1曲だけものすごく大雑把に作ったのがありますよ。「Dip! Dip!
Dip!」です。メロディの構成以外は何もできてなかった。

土屋:アレンジができない僕が作ったからですよ。いろいな複雑なことをやるというアカ
ペラの面白さもありますが、とりあえず大声で誰でもハモれるぞっていう気持ちよささえ
伝わればいいや、という気持ちで作ったんです。僕がワンフレーズ歌って「気持ち良いと
ころで適当に一緒に歌ってよ」ってカンジで。知識がないぶん、そういうやり方ができた
。けっこうそういう例外担当です。

──今回のアルバムでは、アコースティックギターやストリングスなどが入る曲もありま
すが、楽器が入るということに関してはどうですか?

引地:楽器があると安心ですね。

土屋:楽器が入ることによってアカペラらしさがなくなるぶん、どこでRAG FAIRらしさを
出すかがシンプルに問われますよね。

荒井:楽器を入れ始めたのが’02年10月の「あさってはSunday」からです。どう入れるかは
いろいろ考えたんですが、豪勢なバンドサウンドの上で歌うのはどうも似合わないと皆が
思ってました。結局落ち着いたのは、6人の声と一つの楽器の組み合わせでいってみよう
かと。アカペラの良さを壊さずに、音の広がりを足してもらえる。これがいいラインなん
じゃないかなと落ち着きましたね。

引地:歌ってるところに楽器が遊びに来ました、みたいな。

──楽器のオケが先ですか? それともアカペラを先に作って、そこに楽器を足していく
んですか?

奥村:基本的には楽器が先です。ピッチの問題があって、楽器のチューニングに声を合わ
せる必要がありますからね。

加納:声に合わせて楽器を録ろうとすると、楽器にチューニングを変えなきゃならないで
すから。通常は、ベースとパーカッションは常に先に録っちゃいますね。バンドと同じで
す。

土屋:昔は逆もあったんですよ。ビックリでした。コーラス録ってからリズム入れたこと
あったよね。

加納:全員がヴォーカルっていうのが、レコーディングで面白く出てきますね。奥村君は
周りに音がないとリズムを打ちづらいというのがあるらしくて。だからリズムの基礎を作
るっていう発想じゃないんです。やっぱり歌う人なんだよね。先に歌があった方が助かる
って言うんですから。

奥村:スネアのピッチとか、周りを聴きながら打った方がしっくりくるんですよね。馴染
むっていうか。

──加納さんのベースパートも、そういう風に後で録り直すんですか?

加納:これは有無を言わさずというカンジで一番最初に録るんです。リズムと音の基準が
全部自分にかかってくるんですよね。

土屋:加納君は崩れていないという信頼度がありますから。崩れてないもんだと思って、
僕たちはそこにコーラスを入れていきますから。すごくハードルの高いところで彼はやっ
てますよ。

加納:一回録っちゃうと修正がきかないんですよ。それを基に皆が作っちゃうから。「あ
あっ」と思いながらも、もう変えられないから。

土屋:うちは、ベース、ドラムス、コーラスっていう順番に録るんです。普通はドラムが
先ですよね。

──どういう形で曲を持ち寄ってくるんですか?

奥村:フレーズ集のように持ってくる人もいれば、歌詞も作ってアレンジもして持ってく
る人もいますね。

土屋:奥村君はほとんど自分で全部やって持ってきます。

奥村:ひとりアカペラで。

土屋:でも、全部やってもらわなきゃ困るっていうくらい独創的なんで(笑)。最初は理
解できなくて採用されなかったんですけど、この3年間で何回かやっていくうちに最近は
信頼度も増してきて、「コイツはこういうことを思って、こういうものを作ってるんだ」
というのがわかってきたので、よく意味がわからないけど、まずはついていくかってこと
になりましたね。彼の頭の中で鳴っているものは教科書では説明できない。そんなドラム
パターンないだろっていうのとか。すごいですよ、ホントにすごい。

奥村:全部多重録音で録ってくるんです。家にマイクの置いてある防音室があるんで、そ
こにこもって録音してます。僕は鍵盤が弾けないからコードっていうのがわからないんで
すよ。だから、それっぽい音や音階を重ねていって、それを皆に聴いてもらうんです。

土屋:あり得ないときがありますもん。でもあり得ないものを貫き通すと、あり得ること
になっちゃうんです。これはこれで一つのジャンルだなと。

奥村:アルバムでは「A.MAZE」です。72拍目に元に戻ってくるっていう。リズムとコーラ
スがバラバラに進んでいって、たまたま72拍目で合ったんです。

引地:え、偶然だったの? 狙って作ったんじゃないんだ(笑)。それは衝撃的だな。

奥村:うん。「あ、気持ち良い」みたいな。「きたーっ」みたいな。「こうだこうだ」って。

全員:爆笑

土屋:だから逆に知識を身につけて欲しくないなって、身内としては思いますね。

奥村:勉強する気ナシ!

引地:いやそれはどうだか(笑)。ま、6人のうち一人くらいはそんなのがいてもいいか
なって。

 

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