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TyreseがロスアンゼルスのBMGビルディングの6階にある部屋に入ってきたとき、沈みかけた太陽が街路樹の並ぶウィルシャーブールバードに影を投げ掛けていた。彫りの深いハンサムな顔で、ブルーのスウェットと腕の筋肉を誇示するような白のスリーヴレスのTシャツに身を包んだ彼は、実際の22歳よりもずっと年上に見える。おそらくそれが彼の身のこなしなのだろう。パンサーのように静かでしなやかに、あたりを見回してじっと待っているのだ。
Tyreseのセカンドアルバム『2000 Watts』は、Jermaine Dupri、Babyface、Diane Warren、Rodney Jerkinsといったプロデューサーのドリームチームのおかげで、ハイエナジーなR&Bと官能的なバラードとの成熟したブレンドに成功している。曲の多くを共作したTyreseは、このアルバムのことを“愛と共感、そして僕の真実”と表現している。
「ファーストとセカンドアルバムが比較されることはないと確信している。だって僕はその時々に感じたままを表現しているからね。このニューアルバムは、いま現在の耳で聴く僕のバイオグラフィなのさ。次のアルバムは……。僕が人間的に成長していれば、ファーストやセカンドと同じタイプの曲が聴かれることはないだろう」
幼少時代、L.A.のワッツ近隣で育ったTyreseにとっての人生のゴールはゴミ収集係になることだった。しかし8年前の14歳の時、初めてショウビジネスに目覚めてすべてが変わったのである。
「僕の歌を聴いた近所の人が盛り上がっちゃって、タレントショウに出場することになったのさ。そこで1等賞をとって、これは自分の天職だと気付いたんだ」と彼は回想する。16歳になるころにはコカコーラの全米向けテレビコマーシャルで歌っていた。
「たった2年歌っただけで大ブレイクを果たしたけど、それ以降もずっとラッキーが続いてるよ」
確かに彼は長い道のりを歩んで遠くまでやってきた。Tyreseは音楽的な活動に加えて、Guessの広告キャンペーンに起用されたり、John Singletonの新作映画『Baby Boy』に主演したりと多忙な日々を送っており、MTVとも向こう2年間の契約を更新したばかりである。
「多くの人たちには分からないことだろうけど、僕は夢のような生活を送っているわけじゃない。ある晩ベッドに入って眠ったら夢に見た、というようなものじゃなくて、現実に僕が生きているライフスタイルなんだ」
しかし、Tyreseは自身のルーツを忘れたわけではない。彼は今でも自分が生まれ育ったワッツのコミュニティに積極的に関わっている。
「僕のチャリティ活動を支えるテーマは、ワッツの子供たちの気持ちを住んでいる家のような小さなところに閉じこめちゃいけない、ということなのさ。家のあるブロックの4つの角よりも外側の世界を思い浮かべることができれば、神の偉業を成し遂げた気分になれるんだ。僕のアルバム1枚1枚のすべての利益から、一部が2000 Watts Foundationに寄付される。集めたお金で最初の2000 Watts Boys And Girls Youth Center Of Wattsを建設するつもりなんだ。実現する日が待ち遠しいよ。それこそが今の僕の夢なんだ!」
By Sibylla Nash/LAUNCH.com |