| ロック雑誌を定期購読しているようなリスナーには、すでにBUMP OF CHICKENの名前も、音楽も、その類まれな個性も認知済みだろう。しかし、世間一般的に“ブレイク”と言うにはまだちょいと早く、ファンにとっては、今がいちばん楽しい時期だろうと思う。
「知ってる？ BUMP OF CHICKENっていうバンド、すごいんだよ」などと、言いふらしたくて仕方がない気分。この日の渋谷AXに集まったオーディエンスのほとんどがそうだったはずで、バンドを見守る視線がやけにあたたかい、恵まれた空間がそこにあった。
その前に出演したfra-foa、キセルもいいバンドだが、この日のイベントの主役は、間違いなくBUMP OF CHICKENだった。
Vo：藤原基央 |
演出も何もなく、ゆっくりとステージに現われた４人が楽器を手にとり、チューニングを始めた瞬間から大歓声が鳴り止まない。フロアを埋め尽くしたオーディエンスがステージに押し寄せ、期待が波のように高まったその頂点で演奏が始まる。
１曲目は、去年の９月に出たシングル「ダイヤモンド」のカップリングだった「ラフ・メイカー」。女性ファンの嬌声に加えて、驚いたことに男のファンが多く、揃ってコブシを振り上げるさまがかなり意外だ。
続いて「ノーヒットノーラン」「グロリアスレボリューション」と、過去のアルバムからの代表曲を並べ、こまめなチューニングをはさんで「ランプ」「ナイフ」、さらに「ダイヤモンド」「とっておきの唄」とたたみかける。ヴォーカルの藤原が、ぶっきらぼうなトーンで時折MCを入れるが、いつも、言いたいことがうまく言えないから曲に行っちゃえ、といったオチなのがほほえましい。
「つらいことも楽しいこともたくさんあるけど、すぐに過去になります。だから俺は、今を大切にします」
最新シングル「天体観測」で歌われた＜今の瞬間を君と生きる＞というテーマ、そのまんまのMCを経てその「天体観測」へ。初期の代表曲「リトルブレイバー」を歌い、「グングニル」を歌ったところで全10曲、１時間強で本編は終了。鳴り止まないアンコールに応えて２曲「ダニー」「ガラスのブルース」を演奏し、ここで本当にジ・エンド。
彼らの大きな魅力である、センチメンタルで勇気に満ちた寓話的な歌詞の世界は、ライヴでは伝わりにくい、という難点をしっかりとカヴァーして、演奏には勢いと安定感がある。
難しいことは何もしていないが、ヴォーカリスト・藤原の魅力的な歌声を活かすためのサポートとして、メンバーそれぞれの存在価値がはっきりしている。
ただ、ひとつだけ気になったのは、オーディエンスを圧倒してしまう強い緊張感が、ずっと途切れずにみなぎっていたこと。観ていると次第に息がつまってきてしまうので、もう少し緩急をつければさらに良くなるだろう。
完璧なストーリーよりも、感情移入できる隙間があるほど、ロックは聴き手の胸に深く入り込んでくるはずだから。
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