」と語っていたけれど、この『Flying colors』が出来上がった時の感触は、きっとガッツポーズどころの騒ぎじゃなかっただろう。よりフレキシブルに、よりヘヴィに、そしてよりメロディアスな轟音サウンドを全10曲の中で存分に聴かせてくれる。
本作の幕開けを飾る1曲目は<Against animal testing(動物実験反対)>と痛烈なメッセージを投げかける「ME,WE.」。言葉の端々に込められた彼の熱いメッセージが胸に突き刺さってくる1曲だ。
続く2曲目はAIRの大事な戦友、Kjこと降谷建志をフィーチャリングヴォーカルに迎えた先行シングル「Right Riot」。Dragon Ashのコアなファンなら、降谷がAIRの音楽を敬愛しているのは周知の事実だろう。
2ndアルバム『Buzz songs』の「Melancholy」という曲の中で、降谷は<Kids are alrightと唱える人 僕に何ができるか考える>と歌っている。
この<Kids are alrightと唱える人>とはまさにAIRのことであり、そのリスペクトに応えてAIR自身もDragon Ashのマキシ「Lily’s e.p.」にリミックスで参加している。そんな2人の真っ向勝負が実現した「Right Riot」は、誰にも止められない強靭なグルーヴを産み出した。
そして3曲目の「8 modern punks」では激しいビートにのせて<毎日が戦場だ>と歌い、4曲目「don’t abuse me」は<強さとはそう優しさであり
強さとはその優しさである>という名フレーズを声高らかに叫ぶ。
5曲目はもう一人の大事な戦友、RIZEのJesseがスクラッチギターで参戦した「I’m sleepy」。畳み掛けるようなJesseのギターに煽られて、AIRも負けじと言葉の洪水を浴びせかける。6曲目の「Put your hands up」では<今ここで唄ってることが全て ただそれだけが全て>と彼なりの思想を力強く表現し、7曲目「夏の色を探しに」は一転してゆったりとした口調で私小説のような美しい物語を奏で、8曲目「only one」は<気がつけば全てつながる軌跡>とスケールの大きなテーマを見事に歌い上げている。
続く9曲目「EVERYTHING, OR EVERYONE AND EVERYTHING, OR PEACE 2001」は、AIRのライヴに欠かせない名曲のニュー・ヴァージョンだ。オリジナルは名曲揃いの2nd『MY LIFE AS AIR』に収録されているが、「EVERYTHING~」はライヴで何度も演奏されるにつれ重要度を増していった曲なだけに、今回よりドラマティックに生まれ変わったことで、今後のライヴ活動がますます充実したものになることを予感させてくれる。
そしてアルバム・ラストを飾るのは、大空を揺蕩う雲のように緩やかなメロディが響き渡るラヴソング「声にならない声に」。車谷の切なく透き通った歌声が美しい余韻を残す、感動的なエンディングとなっている。
最後にどうしてもひとつだけ言っておきたいことがある。
本作に登場する大事な戦友とは、前途した降谷建志とJesseだけではない。AIRのデビュー作からずっとレコーディングやライヴを共に経験してきた凄腕ミュージシャン、渡辺等(ベース)と佐野康夫(ドラムス)の存在だ。この2人なくしてAIRは語れないし、車谷を含めた3人が固い絆と強い信頼関係で結ばれているからこそ、『Flying colors』が最高傑作に仕上がったのだと思う。