【インタビュー】音楽ライブを「ゲーム」として拡張する未来古代楽団の発想はどのように生まれたのか?

未来古代楽団が、2026年11月2日に東京国際フォーラムホールCにて7thライブ<未来古代楽団 祝祭あるいは断章8『氷る世界と燐の君』>を開催する。
「日本のゲーム音楽カルチャーの後継者」としてユニークな存在感を確立し、代表曲「忘れじの言の葉」(スクウェア・エニックス『グリムノーツ』主題歌)を筆頭に数々の人気曲を持つ彼ら。2026年5月にはZepp DiverCity(TOKYO)で開催した6thライブ<未来古代楽団 祝祭あるいは断章6『巨いなる神のオブリビオ』>をソールドアウトさせるなど、動員数も目覚ましく増えている。
その勢いの原動力となっているのが、唯一無二の魅力を持つライブだ。単なる歌と演奏のパフォーマンスではなく、映像やさまざまな演出を通じて、幻想的な世界観にもとづくストーリーを体験できる場として設計されている。さらに、最近のライブでは、観客が物語の分岐を左右するインタラクティブな演出や、事前に公開したミニゲームと連動する内容など、意欲的な試みの数々も話題を呼んでいる。
音楽ライブを参加型の物語体験、すなわちゲーム性を持ったライブエンタテインメントとして拡張する彼らのステージは、どのような発想から生まれたのか。主宰の砂守岳央にインタビューを行った。

──まずはライブについての話を聞かせてください。未来古代楽団のここ最近のライブでは、観客にストーリー分岐の選択をさせるというとてもユニークな試みをしていますが、このアイデアはどういう経緯で思いついたんですか?
砂守:最初に導入したのは渋谷ストリームホールでやった4thライブ<未来古代舞踏祭『瞬き、やがて、永遠』>だったんですけれど、あれはスタンディングのライブだったので、ペンライトを解禁したんです。それまでのライブはペンライトを出せるような場所ではなかったから光り物は禁止というレギュレーションでやっていたんですけど、僕はもともとアニソンDJもやっていたし、声優やアイドルに曲を提供していたこともあるので、ペンライトを振ってもらうのはすごく好きなんです。ペンライトってすごく面白いカルチャーで、推しのメンバーカラーの光をつけたり、ある種、お客さんとアーティスト側との通信手段にもなっている。ただ、いざペンライトを導入したとしても「じゃあ何色をつけるの?」という時に答えがないなと思ったんですよ。曲ごとのイメージカラーを選んでくれる人もいて、それもすごく面白かったんですけれど、こっちとしてもせっかくだから色を選ぶことが参加になる仕組みを考えようと思って。最初はそこからスタートしました。ライブのストーリーとしても「世界の行く末を選ぶ」みたいなものが続いていたので、その物語の結末をお客さんと一緒に決められたら面白いなと思って始めました。
──観客が示した赤と青のどちらの色が多いかでストーリーが分岐するシステムですけれど、あれはどうやって実装しているんですか?
砂守:最初はかなりアナログな形で実装しました。基本的には僕が目視で判断する。僕の手元に赤と青のカードを用意して、それを袖にいる舞台監督さんに見せて、そこからスタッフさんに通信が行って演出が進む。そういう仕組みだったんです。ただ「その判断方法で本当にいいのか」という問題はあったので、今はウェブカメラで赤と青の光を検知して数を調べるシステムを作って、それで判断しています。加えて、オンライン配信もやっているので、そっちでは投票ボタンを押すという仕組みを実装して動かしています。

──これって、単なる演出のアイデアというよりも、ゲーム音楽を由来に持つ未来古代楽団のアイデンティティを考えたらすごく本質的な発想だと思うんです。ライブ自体が参加型のストーリー体験になる、という。そのあたりはどうですか?
砂守:そうなんですよ。たしかに柴さんが言う通り、僕らは『グリムノーツ』というゲームの主題歌から始まったという出自があるし、日本のゲーム音楽のカルチャーを引き継ぐ気持ちでやっているところがあるので。ゲームというのがコアにあるし、ライブでも映像を使っていたり、人形を踊らせたり、いろんな要素がゲームに向いているなという気付きがあって。そこから、もっとゲームに寄せることができないかみたいなことを考え始めたのが、ヒューリックホール東京でやった5thライブ<祝祭あるいは断章4『聖なる月と魔なる星』>です。そこでやりきれなかった要素をさらに突き詰めたのがZepp DiverCity(TOKYO)でやった6thライブ<祝祭あるいは断章6『巨いなる神のオブリビオ』>で。そういう流れの中でだんだんと実装していった感じです。
──ただ、音楽ライブの演出としては、かなり珍しい試みですよね。
砂守:なのでやっぱりスタッフさんたちも大変でした。最初はひとつの質問で分岐するだけの仕組みだったんですけれど、それでも映像とか音響のスタッフさんは「え、どういうこと?」みたいな反応で。でも、やってみたら「意外とできるね」という空気になって。チームとしても「まだまだいけるよ」みたいなムードになってきたんです。そこから質問を増やしたり、パラメーターを増やしたり、観客の参加度を上げていきたいということをずっと考えていて。これは今も考えています。次回のライブはさらにゲーム化を進めたいと思ってますね。
──公演ごとに動員も増えているわけですが、それも含めての手応えはどうですか?
砂守:おかげさまでどんどんキャパも大きくなってるし、そうするとバンドのテンションもスタッフさんのテンションも上がっていくもので。内容的にも、演出もどんどん面白くできているなという自信があって。Zepp DiverCity(TOKYO)はずいぶん手応えがありました。なんとかソールドアウトできましたし。以前は、曲の知名度に比べて未来古代楽団というユニットの知名度がない、未来古代楽団について話している人がSNS上でも少ない、という悩みがずっとあったんですけど、その状態も解消してきていて。エゴサしていても、ライブ後の感想や反応をいただけるようになってきた。ライブでも人形がMCで言ってたんですけど、団長とギタリストはずっとエゴサしてるんで。それはすごくやる気につながりますね。
──今おっしゃったように、最初はユニット名よりも「忘れじの言の葉」という曲のほうが広く知られていたと思います。でも、徐々に未来古代楽団という存在の面白さがフィーチャーされるようになっていった。そのあたりの実感はどのタイミングからありました?
砂守:ひとつは明確なのがあって、2023年に「醒めない夢の微睡みの」という曲をYouTubeに上げた時に、その3カ月後くらいから急に再生回数が伸びたんですよ。その原因はいまだにわかってないんですけど、その時に「忘れじの言の葉」以外でも伸びるんだな、反応があるんだなと思って。やっぱり「忘れじの言の葉」の反応が一番多いんですけれど、他にも100万再生を超える曲も出てきてるし、最近ではいろんな曲にファンがつくようになってますね。最近だと「火火火(feat. ブーケ)」という曲も伸びていて。コメント欄を見ても、複数の曲にコメントを残してくれる人が増えてきている。YouTubeじゃなくてストリーミングのデジタルリリースの数字のほうを見ると、もっとバラけているんです。始めた頃は90%以上が「忘れじの言の葉」の再生数だったんですけど、今はそれが3割くらいになって、残り7割は他の曲を聴いてくれている。そういう流れで認知が進んできたのかなという感覚はあります。
──いろんなボーカリストや歌い手とのコラボレーションからリスナーが広がるというのもありますよね。
砂守:それはもちろんありますね。エゴサをしていると、「このアーティストが好きな人はこれも好き」みたいな中に僕らの名前が入っていることがあるんです。そういう中に、それこそ次回のライブに出ていただくKOKIAさんの名前があったりもする。あと「夜の女王の狼たち feat. krage」でご一緒したkrageさんの場合は、もともと「忘れじの言の葉」を歌ってくれていて。「すごくいい声だな」と思ってお声がけさせてもらいました。
──コラボとしては、先日のライブにも「ごみのうた(feat.新居昭乃)」で参加されていた新居昭乃さんの存在も大きいと思います。新居昭乃さんの存在があることで、文脈が大きく広がったように思うんですが。
砂守:そうですね。特に新居さんは、やっぱり源流に近い存在だと思うし、僕も高校生の頃から聴いている方なので。たまたま僕がやっていたラジオにゲストに出ていただいた時に「出てくれないですか」と言ったら「喜んで」と言ってくださって。そこからお話を進めさせていただきました。僕らとしては「新居昭乃さんが歌うならこういう曲はどうだろうか」というのを提案させてもらって、「歌ったことない感じですね」と言われつつ、やっていただきました。
──それによって新居昭乃さんとVTuberの戌亥とこさんが一緒のステージに立つというようなことも実現する。ジャンルは異なると思うんですが、ファンタジックな世界観を歌う透明感のある女性ボーカルの系譜という文脈においては統一感がある。
砂守:それは面白いですよね。その文脈はかなり意識するようになりました。まさに、そのファンタジーの幻想的な世界観を歌う物語音楽の末裔として自分たちを位置づけると、必然的に流れが見えてくる。僕が通ってきた音楽もあるし、通ってきていないけれども、僕らと新居さんの間にいろんな人がいる。それこそ霜月はるかさんもいる。そうすると、おっしゃる通り流れが見える。ジャンルというより流れですよね。それが見えると「じゃあこの人に声をかけようかな」という風になる。その系譜の先で、僕らなりの新しい表現を切り拓いていきたい。それこそ、新居さんがVTuberと一緒のステージに立つことって、僕ら以外だったらあまりないと思うんです。そういう流れはすごく意識していますし、そういうつながりを一生懸命探してゲストにオファーさせてもらうことも増えました。

──前回のライブでは公演に先立ってミニゲーム『デカトリア防衛戦』も公開されていましたよね。そのBGMをもとにした新曲「始祖鳥(feat. 戌亥とこ)」が披露されるなど、内容もリンクしていました。これはどういう経緯で実現したんでしょう?
砂守:まず前段階として、ヒューリックホール東京の反省に、お客さんに「この内容だと初見でストーリーを理解するのは難しすぎるから、事前に学習させてほしい」と言われたことがあったんです。それでパッと思いついたこととして、僕は小説家なんでウェブ上にノベルを書いたらいいんじゃないかという話になって。でも、僕としてはノベルの体験と音楽の体験には距離があるので。やるなら腰を据えてやりたいし、だとしたら大プロジェクトになってしまう。そうじゃなくて、簡単にパッとストーリーが入ってくるようなものにしたい。そして僕らはゲーム音楽のカルチャーを魂の根底に持っているわけだから「ミニゲームを作ればいいんじゃない?」ということになったんです。というのも、2025年11月ぐらいから、僕がバイブコーディングにハマっていて。「こんなこともできるんだ」って、いろんなものを作っているんですね。で、どんなゲームなら僕に作れるかな、みたいなことを考えた。ストーリーとキャラクターをわかってもらえればいいわけだから、シンプルなものでいい。子供が雑誌の付録でついてきたすごろくで喜んでいたのを見て「すごろくなら作れるな」って思ったんですよ。で、曲作りもそっちのけで1週間ぐらい一生懸命やって作ってみたら、意外と遊べるものになって。バランス調整もして。「そうだ、BGMどうしよう」というところから今回のライブのテーマソングがBGMになると面白いな、となって。それで吉田和人と松岡美弥子に、それぞれ「君はチップチューンバージョンで」「君はオーケストラバージョンを書いてきて」って言って。それをループするやつを作りました。このあたりは僕らの仕事で散々やってきていることなので、すぐできるんです。ループする処理もすぐできる。組み込みもやってみたらすぐできた。そうやって作りました。
──なるほど。まさにゲーム音楽を作った。

砂守:そうなんですよ。だからゲーム音楽のカルチャーを受け継ぐユニットであるっていうアイデンティティが、また更新されたわけなんですよね。自らゲームを作っちゃうという。もちろん本職のゲームクリエイターさんからすると簡単なものだと思うんですけれど。でも、これが、曲があってライブがあって、という流れの中に組み込まれると、これでも十分楽しめてしまう。よく言うことなんですけれど、ゲーム音楽とそうじゃない音楽の最大の差って、聴く回数なんですよ。特に昔のファミコンの短いループの曲とかって、1000回ぐらいみんな平気で聴いてるんです。そんなジャンルは他になくて。当たり前なんですけど、聴けば聴くほど覚えるし、愛着も湧くし、曲の良さもだんだんわかってくるんですよね。いい曲だと思うようになる。だったら、自分でミニゲームを作って、そこで僕らの曲を聴かせて、それで曲が耳に馴染んだ状態を作って、歌バージョンをライブで発表したら、みんなグッとくるんじゃないかと思って。それをやってみたらドンピシャでハマった。だから、次回のライブに向けてのミニゲームももう作りました。システム的にも、もうちょっとゲーム性を高めたものになっていますね。
──加えて、最新のライブでは演劇の要素も増えてきていますよね。
砂守:そうですね。ヒューリックホール東京の時は、ずっと一緒にやってきた盟友の田野アサミさんに出てもらうことになったんです。田野さんは声優なので、がっつり朗読で演技してもらいたい、だったら掛け合いも面白いかなと思って。僕が受けて立つ形でやったら、個人的にすごく面白かったんですよ。これはもっとやれるな、というところで、ずっとお客さんとして来てくれていた松田(悟志)さんに「出ませんか?」って言ったら出てくれることになって。「じゃあ男同士のバトルを見せてやりましょう」と言ってやった感じですね。
──なるほど。実は未来古代楽団がやっていることって「ゲームとは何か」みたいな概念をちょっとずつ拡張してる感じもしますね。
砂守:そうですね。例えばリアル脱出ゲームとか、テーブルトークRPGとか、ファンタジーの世界をリアルな場でやるための仕組みはもともとあるし。それこそイマーシブ演劇みたいに、観客が物語の中に入り込むようなものもあって。そういう中で、音楽ライブもゲームのプラットフォームになり得る、ということなんですよね。あとはチームラボや落合陽一さんのようなアートインスタレーションの文脈もあるし。そういうものをもっと音楽ライブに取り入れてもいいんじゃないかな、みたいなことはずっと思っていたんです。そこにゲームっていうキーワードが入ることで、いろんな拡張ができる。もちろん物理とスタッフと予算の制約があるんで、ちょっとずつなんですけど、そういうものを取り入れている感じですね。
──2026年11月2日には東京国際フォーラムのホールCで<未来古代楽団 祝祭あるいは断章8『氷る世界と燐の君』>が開催されます。ここに向けてはどんなことを思い描いていますか?

砂守:次回は松田さんがまた出てくれるので、ストーリーとしては前回と濃厚にリンクしたものにしたいと思っています。次回は事前に遊べるミニゲームともうちょっとリンクした形になるので、事前にやってきてくれると「これがああなるのか」みたいになって面白いと思います。前回は制作の途中からミニゲームを作れるということに気付いたんですけれど、次回は最初の構想段階からゲームも作ることを決めて考えてるんで、根幹からミニゲームが入り込んでいて。もちろんやらなくても音楽ライブとして楽しめるようにはするんですが、事前にミニゲームをやると、より一段、二段と深い体験ができる、みたいなものにしています。あとは、キーワードとして毎回そのライブハウスの土地の歴史を意識しているんですけれど、今回の東京国際フォーラムは、もともと新宿に移転する前の東京都庁舎があった場所なんですよ。都議会議事堂もあった場所なので、次回はそういう文脈で、皆さんにゲームをしていただこうと思っています。
──やなぎなぎさんとのコラボレーション楽曲「氷と永遠(feat.やなぎなぎ)」の制作も発表されていますが、これも次のライブで披露される?
砂守:そうですね。やっぱり僕らのライブにゲストで来ていただくので、新しい曲を一緒に作りましょうというのがあって。もちろん単体でも聴ける曲という形ではあるんですけれど、ライブのテーマと濃厚に関わった曲になってきますね。
──ちなみに、東京国際フォーラムの先に見据えているビジョンや野望って、今の段階で話せるところでかまわないので、どんなものがありますか?
砂守:僕の野望としては、フェスに出たいんですよ。でも、そのためには機動力の高い演目が必要になってくる。そういうことも考えています。東京以外の場所でもライブをしたいですね。で、来年以降も会場のキャパを増やしていきたいと思っています。僕の計画としては、2028年、2029年に東名阪でツアーをして、2030年に日本武道館でやりたい。そこの1万人全員でひとつのゲームをプレイしよう、というのを目標として見据えています。
取材・文◎柴那典
写真◎伊藤真広(TRANSISTOR)、仲村翼
未来古代楽団 祝祭あるいは断章8「氷る世界と燐の君」

2026年11月2日(月)
@東京国際フォーラム ホールC(東京都千代田区丸の内3-5-1)
開場18:00/開演19:00
GUEST:やなぎなぎ(初出演)、KOKIA(初出演)、朝倉さや(初出演)、安次嶺希和子、ブーケ、HACHI、戌亥とこ、松田悟志(朗読)
一般発売(先着):2026年8月1日(土)10:00より受付開始(予定枚数に達し次第終了)
チケット情報・購入:https://miraikodai.com/link/FoF8_ticket
ライブ詳細・最新情報:https://miraikodai.com/live
未来古代楽団オフィシャルサイト:https://miraikodai.com







