【ライブレポート】ACIDMAN、ツアー<光学>幕張メッセFINALに光の奇跡「あなた自身もスペシャルなんだ」

2026.07.24 19:00

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「いやぁ、すごい!!!!」──ファンキーな「アストロサイト」から、メンバー全員でタイトルをコールするシャウトとともにパンクな勢いもあるロックナンバー「go away」に繋げ、早速、幕張メッセを揺らした直後に大木伸夫(Vo, G)が放った第一声がこれだった。

“光学”の文字がステージのバックスクリーンに浮かび上がり、SE (『光学』の1曲目のインストナンバー「光学 (introduction)」)が流れる中、光の粒子を思わせる映像からバンドロゴが現れるというオープニングの演出を考えると、本来はもっとフォーマルな挨拶を考えていたんじゃないか。そんなことも想像してしまうが、この日6月27日(土)、台風7号と8号が関東地方に接近したため、<ACIDMAN LIVE TOUR “光学”>のツアーファイナルであると同時にACIDMANにとって18年ぶりの幕張メッセ公演の開催が危ぶまれていたのだから、ライブの開催を共に歓ぶ観客の姿をいきなり目の当たりにして、大木が快哉を叫んだのも大いに頷ける。

▲ACIDMAN 画像22点

この日、メンバーは幾度となく奇跡という言葉を口にしたが、そこから今回の開催がギリギリの判断だったことが窺える。メンバーはもちろん、観客、開催に向け、尽力していたスタッフら、開催を願う多くの人達の思いが通じたのか。もちろん自然現象には違いないが、その意味では、本当に奇跡のように思えたということなのだと思う。

「台風という現象だからしょうがないと思いつつ、お客さんはどれくらい来てくれるんだろうと心配していたんだけど、こんなに来てくれた! 本当にありがとう! ずっと台風と対話しながら、“僕らは敵じゃない。もうちょっと弱まってほしい”と願っていたら、無事、開催できました!」──大木伸夫

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▲佐藤雅俊 画像5点
▲浦山一悟 画像5点

安全を考え、来場を諦めた観客と、台風の影響による会場のシステム障害のため、希望するツアーグッズを買うことができなかった観客に対して何らかのケアを考えていると説明しながら、この日、ライブを開催できる感激を伝えきれていないと感じたのか、「(ライブができるなら)『光学』の世界観なんてもうどうでもいい。だって、この景色!」とうっかり口を滑らせてしまった大木はふと我に返って、「とは言え、ここからはやっぱり『光学』の世界観を伝えていきます」と自ら軌道修正。そして、この日、ライブに臨む思いを改めて言葉にする。

「18年ぶりの幕張メッセ公演。18年も経って、この景色が見られるなんて奇跡だと思う。本当に皆さん一人ひとりのお陰でここに立てている。その感謝とともに『光学』、つまり光を学ぶ。光とは何なんだ? 僕達の命って何なんだ? そういうことを考えながら、ただ楽しいだけじゃなくて、みなさんの中に問いが生まれるようなライブをしていきたいと思います」──大木伸夫

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そんな思いとともに彼らがこの日、演奏したのは全18曲。「最高のライブにしたい!」と大木が声を上げ、観客の気持ちを駆り立てた「アイソトープ」やクライマックスに向け、ラストスパートの火蓋を切った「MEMORIES」といった過去曲の存在も見逃せなかったが、セットリストの中心になったのはやはり『光学』からの12曲。

「デビューした時から自分のやりたいことは絶対に全部やってやろうと決めていた」──終盤のMCで大木が言ったその言葉を裏付ける振り幅を持つその12曲を、ステージの3人はツアーファイナルにふさわしい演出を交え、披露しながら、『光学』の世界観、つまり、宇宙、生命の源である光とは何かという問いを突き詰めていったその先で見出したひとつの真実を可視化していった。

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アーバンな「白と黒」が持つジャジーな魅力を、トランペットのブローとともに際立たせたSOIL&“PIMP”SESSIONSのタブゾンビ。「世界はひとつになれると信じている」という大木の力強い言葉とともに披露したバンドの新境地と言えるゴスペルナンバー「feel every love」に祝祭感を加えたクワイアとストリングスといったゲストの存在は、まさにツアーファイナルならでは。

「中指を立てたり、物事を斜めから見たりしていたデビュー当時の僕の感覚からすると、愛を歌うなんて夢にも思っていなかった。でも、この歳になって、一番大事なのはやはり愛だということに気づいた。あらゆるものの最小単位は、光だと言われている。みなさんも僕も細かく砕いていくと、分子になり、原子になり、そして素粒子になり、最後はたったひとつの光になる。最先端の量子物理学の中では、そう考えられている。つまり、今、争い合っている人達も、その人達が手にしている武器も全部、同じ光でできている。そう考えたら、争い合うなんて無意味だと思うはずだし、同じ光からできている者同士、命を感じて、愛を感じて、世界がひとつになればいいと思えるはず。もちろん、きれいごとだとわかっている。わかっているけど、誰かがきれいごとを言い続けたからこそ、今、戦争のない豊かな生活ができている。昔、戦争はもっとあったし、今、世界中で戦争が起きているように感じるけど、長期的に見れば、すごく少なくなってきている。僕らはもっともっと平和を大事にしなきゃいけない。平和を願って、一緒に歌ってください」

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「feel every love」というシンプルでストレートなメッセージに込めた思いを語る大木のMCも胸を打つ。そこから一転、静と動のダイナミクスを大胆に操りながら、たたみかけるように繋げていった「青い風」「龍」「蛍光」ではエモコア、シューゲイザー、ハードコアとも言える轟音の演奏をメンバー3人だけで繰り広げ、バンドが持つ凄みをこれでもかと見せつけながら、観客の度肝を抜いてみせる。

ちなみに「龍」を演奏しているバンドの背後に映し出した光の粒子が舞い上がるような映像を見たとき、“なるほど、「龍」とは生命と宇宙の根源であり、『光学』を作る時の大きなテーマだった光の象徴だったのか”と遅ればせながら筆者は悟ったのだが、それを言うなら、星空の映像やライティングを駆使して、まるで光の粒子を纏いながら演奏しているようにバンドの姿を見せた「光の夜」の演出もひとつの見どころだったと言えるだろう。

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この日、ストリングスとともに演奏したその「光の夜」は、yamaに提供したバラードのセルフカバーだ。先日、yamaのライブで聴いた時も、“なんて、いい曲なんだろう”と胸がいっぱいになったものだが、その「光の夜」と、“流した涙が蒸発して、雲になり、雨を降らせ、その雨が花を咲かせる”といういわゆるバタフライエフェクトをたとえに挙げ、「だから、あなたが流した涙には意味がある。あなた自身もスペシャルなんだと思ってほしい。あなたが生きているだけで宇宙を動かすエネルギーになっていると感じてほしい」というメッセージとともに演奏した「sonet」の流れがACIDMANのバラードが持つイノセントな美しさを今一度印象づけたのは、このツアーファイナルのハイライトのひとつだったと言ってもいい。

しかし、そんな感慨も束の間。「sonet」の終盤、浦山一悟(Dr, Cho)のドラムの連打からバンドの演奏が白熱。そのままなだれこんだ「MEMORIES」から、佐藤雅俊(B, Cho)が観客を煽りながら「造花が笑う」に繋げ、バンドの演奏はテンポアップ。そこからさらに「飛光」とパンクな勢いを持つロックナンバーを、バラードパートからの劇的な展開という演出とともに立て続けに演奏して、観客に拳を振らせると、珍しく大木が観客を煽った。

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そして、「幕張! もう一歩上に行くぞ!」と大木が声を上げ、バンドが観客にぶつけたのが「輝けるもの」だった。20余年のキャリアを持つバンドにとって新たな転機になった渾身のロックナンバーを、観客とともに完全燃焼を目指して、渾身の演奏で披露したのだから、観客の盛り上がりは説明するまでもないだろう。「輝けるもの」を演奏し終えたとき、ぜえぜえと息を切らして、MCを続けることができなかった大木が浦山と佐藤にバトンを渡したことからも、どれだけの熱演だったのか想像してもらえると思う。

「4月9日から全国10ヵ所を回ってきて、今回はやるたびやるたび、どんどん良くなっていったから、最高のファイナルになると思ってましたけど、こうやってできることが奇跡だと思います。本当に来てくれてありがとうございます! それに尽きます」──浦山一悟

「今日もあっという間で、気づいたら「輝けるもの」をやってました。みなさんの真剣に聴くぞというエネルギーがすごかったから、こちらも出しきって、本当にいいツアーにできたと思うし、いいファイナルができたと思います」──佐藤雅俊

ツアーを振り返った二人からバトンを戻され、「自然現象には太刀打ちできない。だからこそ、今日できたことがうれしい」と語った大木は「でも、来られなかった人のことを思うと100%喜べない。だからこそ、ずっとライブをやっていこうと思った。そうしたら、今日来られなかった人に見てもらえるチャンスになる。もっともっとやっていこうと思いました」と続け、観客を沸かせた。

▲大木伸夫 画像10点

そして、「今日はアンコールはやらない」と大木があらかじめ観客に伝えてから、バンドが再びタブゾンビ、ストリングスとともに演奏したラストナンバーは、『光学』の最後を飾る「あらゆるもの」。曲が持つメッセージもさることながら、大木のシャウト、ギターの轟音、佐藤が響かせるベースの重低音、そして浦山が連打するパワフルなビート──テンポをぐっと落として、観客を圧倒するバンドサウンドの迫力もまた、ツアーファイナルのエンディングを飾るにふさわしいものだった。

「あらゆるものが光でできている。つまり、この世にあるすべてが同じものでできている。それがたまたま、あなたになっている。だから、大切に生きてほしいと思う。生きているだけで宇宙の一部になっている。すごくないですか?」──大木伸夫

この曲を演奏する前に大木は、そんなふうに曲に込めた思いを語ったが、この日、アンコールをやらなかったのは、「あらゆるもの」の最後の歌詞=《君が生まれた それだけは正しい事なんだよ》をしっかりと胸に留め、噛みしめながら、観客には帰路についてほしかったからなんじゃないか。

▲ACIDMAN 画像22点

アルバム『光学』を最初に聴いたとき、何よりも、この世界に存在するあらゆるものの最小単位が光であることを知った大木がそこから考えを巡らせ、その1行を見出したことに胸を打たれた筆者は、メンバー達がステージを降りた後もステージで点滅しつづけている小さな光を見つめながら、そんなふうに想像を膨らませずにいられなかったのだ。

取材・文◎山口智男
撮影◎Victor Nomoto – Metacraft/Taka”nekoze photo”/西槇 太一

 

■<ACIDMAN LIVE TOUR “光学”>
2026年6月27日(⼟)@千葉・幕張メッセ国際展⽰場 展⽰ホール9-10 セットリスト

01.光学(introduction)
02.アストロサイト
03.go away
04.アイソトープ
05.Rebirth
06.白と黒
07.feel every love
08.1/f (interlude)
09.青い風
10.龍
11.蛍光
12.光の夜
13.sonet
14.MEMORIES
15.造花が笑う
16.飛光
17.輝けるもの
18.あらゆるもの

 

■<This is ACIDMAN 2026>
10月30日(金) 神奈川・ KT Zepp Yokohama
open17:30 / start18:30
詳細:https://acidman.jp/

 

 

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