【インタビュー】ゆとりくん、2nd EP『ミラーボールを消して』という衝動に「経営者である自分が音楽をやっている意味」

■短期的には痛んだとしても長く見た時に健やかでいられる
■俺はそのための方法を見つけたんです
──先ほど自分で「暗い」とおっしゃってましたが、私がそう感じたのは、「turn go (feat. YOSHIKI EZAKI)」「PARADOX (feat. KOHEI, Sora)」「feel real me」の3曲でした。
ゆとりくん:そうですね、まさに。特に「feel real me」は、その時の自分の心境に一番近い曲です。
──歌詞の中に《脱がせて》《剥がして》といった表現が多く見受けられるのも気になりました。
ゆとりくん:自ら記号を獲得しに行って、その記号によっていろいろなコミュニケーションが利便化されているわけだけど、その記号のなかに自分が閉じ込められている感覚も当然あって。その自己矛盾感みたいなもの……でも、それって面白さでもあるじゃないですか。ナラティヴだし。それをそのまま表現したのが、「turn go」「PARADOX」「feel real me」で、この3曲は近い時期に作りました。別の取材で“三部作”と言ってもらって。作っている時はそこまで意識はしてなかったけど、確かにこの3曲は連なっているなと思いますね。


──何重にもなっていますよね。自分で仕掛けたことに、自分が揺さぶられている。しかもそれをメタな視点で見ている自分もいる。
ゆとりくん:俺って、いつも“5メタ”くらいしているんですよ。だけど去年の秋冬ぐらいの、暗い曲ばかり書いていた時期は、“2メタ”ぐらいだった。それでも“0メタ”にはならないんです。世の中には“0メタ”とか、“-50メタ”みたいな人もいますけど。
──しかもゼロやマイナスであることが、むしろ強みになるのがアーティストの世界ですからね。
ゆとりくん:分かります。アーティストって、リアリティがめちゃくちゃ大事じゃないですか。自分が本当に思っていることを発信しているのか、という。ゼロにもマイナスにもなれない、この感じこそが俺の面白さだし、経営者である自分が音楽をやっている意味だと思うので。
──メタっている自分も含めて音楽にしていると。「turn go」に出てくる《24》という数字は、起業した時の年齢ですよね?
ゆとりくん:そうですね。あと、この曲を一緒に作ったYOSHIKI (YOSHIKI EZAKI)が今24歳なので。24時間というイメージもあるし、3つの意味を含ませています。

──YOSHIKIさんを見ていて、何か思うことはありますか?
ゆとりくん:焦燥感や若者の持つ歪な力、トゲや尖りを思い出させてくれる存在だなと思います。彼のことを“かわいいな”と思いながら見ている自分もいて、それはつまり、自分はもう初期衝動から距離があるということだと思っていて。でも音楽は、会社を始めたあの頃のような、初期衝動を持ちながら取り組めるものなんです。俺はまだアーティストとして売れているわけではないから、制約もそんなにない。だから感情とか衝動をぶつけられるし、YOSHIKIのような年下の子から教わりながら、地に足をつけてやっている。俺の心持ち自体は、ずっと変わってないんですよ。常に内省しているし、自分のことを懐疑的に見ている。“常に少し陰鬱で、たまに楽しい”という感覚がずっと続いている。ただ、そこに対する“感情的な自分を作品に昇華する”という対処の仕方……人生の転がし方のパターンが一個増えたな、というのが今回のEPを作り終えて思ったことでした。
──というと?
ゆとりくん:暗い気持ちでい続けても、結局何もならないというか。自己陶酔的でいることの良さもあると思うんですけど、俺は“それは悔しい”と思っちゃう性格なので。だったら、そこからカッコいい作品を作ったほうが、自分としても嬉しいし、作品を出せば、みんなからも何かしらのリアクションが来るし。
──たとえ暗い感情が起点でも、そこから成果物ができて、ポジティヴな何かを引き起こせれば、報われるというか。
ゆとりくん:「報われる」という言葉は、僕の感覚に近いかもしれない。そうやって自分の人生を“物にしていく”ことって、すごく大事だなと思いました。

──5曲目の「バブりたい」は、どんな気持ちで書きましたか? けっこうツッコまれやすそうな曲だなと思ったんですが。
ゆとりくん:それは、どういう意味で?
──この曲が経営者から出てくるのか、という意味で。“拡大・発展・成長”の3ワードが、常に付きまとうような世界で生きているわけじゃないですか。だけどこの曲では《甘やかされたい》と歌っているので、“このゲームから降りたい”と思うような瞬間が実はあるのかな……と想像したくなる曲ではあると思います。
ゆとりくん:確かに一見、弱音を吐いているように見えますよね。そもそも俺が『ミラーボールを消して』という作品を作ること自体も、表層的に受け取ると、“ゆとりくんは資本主義に疲れて、音楽をやりたいんじゃないか”とか“もう会社経営には身が入ってないんじゃないか”と思われるかもしれない。
──そうですね。タイトルの“ミラーボール”とは資本主義的なもの、第三者的なものの象徴であり、それが消えたあとに残る、自分自身と向き合って書いた曲が収録されている…というのが、今回のEP『ミラーボールを消して』なので。
ゆとりくん:だけど“降りたい”じゃないんですよ。むしろ全く逆で、長く続けたいからこそ、こういうプロセスを経たい、という感覚で。痛みを創作に変えると、人が自分の曲や歌を好きになってくれて、愛をもらえるわけじゃないですか。そうすれば、短期的には痛んだとしても、長く見た時に健やかでいられる。俺は、そのための方法を見つけたんです。

──この世界での持続可能な戦い方というか。
ゆとりくん:本当にそう。会社とか今やっていることを長く続けたいと思っているからこそ、ある種生存戦略的に、無意識にそっちへ引き寄せられたんだと思います。ゴルフや釣りで息抜きをして、本業に戻る人はたくさんいますよね。俺にとってはそれが曲を作ることだったんです。





