【ライブレポート】<WORLD HAPPINESS 2026>、15組の名演と9年ぶり復活に歓喜「幸宏の集めたミュージシャンが、どんどん立派に素晴らしくなっています!」

前ページに続いては、大いに盛り上がったスチャダラパー、セブンス・ベガ、TOWA TEI、清水ミチコ、MAJOR FORCE、電気グルーヴのパフォーマンスをレポートしよう。
▼スチャダラパー▼



復活<ワーハピ>のセンターステージは、かつての<ワーハピ>でもお馴染みの大定番アーティストばかり。そのため、どうしても同じ表現を繰り返してしまうが、これまた<ワーハピ>に欠かせないアーティストのひとつ、スチャダラパーが今回も大盛り上がりのパフォーマンスを展開してくれた。
サポートのロボ宙とLUVRAWもフィーチャーされた「リンネリンネリンネ」でライブをスタートさせると、落ち着きのある大人なグルーヴで「ライツカメラアクション」、そしてファンク&ソウル感のある90年代の名曲「MORE FUN-KEY-WORD」、さらにそこから「GET UP AND DANCE」が始まれば、会場が大歓声に包まれるのは必然。全席指定席の代々木体育館ながらも、野外フェスを彷彿とさせるように、観客は自由に、そして大人なゆるいスタイルで気ままに踊り出す。この空気感こそが、<ワーハピ>の独自性であり、スチャダラパーの魅力だ。
するとBoseはひと息を入れるかのようにMCを入れ、「(自分たちが) ワーハピに呼ばれた意味を考えて、我々が出来る限りのことをやります」と語ると、サポートギタリストのKASHIFが弾き始めたのは、哀愁漂うYMO「RYDEEN」。観客の大きな笑い声と拍手を誘った。その最後のフレーズで、Boseはギターに合わせて《テクノライディーン♪》と歌い、実はYMOではなく、空手バカボンの「テクノライディーン (来るべき世界)」のカバーだというオチもしっかりつけてくれた。
そこから「ビート道」へつながると、「みんなが知ってる曲、心のトップ10をやってもいいですか!?」と、まさかの「今夜はブギー・バック(LUVRAW REMIX)」に<ワーハピ>世代は狂喜乱舞の様子。そしてラストは盛り上がり必至のサマーアンセム「サマージャム’95」。《夏のせい!》というコール&レスポンスを繰り返し、往年のファンから“初めて生でスチャダラパーを観た!”という若い世代までを歓喜させたステージを締め括った。
▼セブンス・ベガ▼



今回の<ワーハピ>で一番のロックサウンドを聴かせてくれたのが、この夏で結成3年目となる4ピースのシティロックバンド、セブンス・ベガ。スウィングジャズの名曲「Sing, Sing, Sing」をSEにステージへ登場すると、ボーカルのシブヤカンナが観客に媚びることなく、ひと言「セブンス・ベガと申します」と言い放つ。すると、骨太かつ軽快なバンドサウンドで「卵と牛乳とレコード」でライブをスタートさせ、続けざまに疾走感のあるギターポップ「君とParadiso」を堂々たるプレイで聴かせていく。
このステージで彼女たちの存在を知ったという観客も少なくなかっただろうが、ぜひ注目したいのは、大きな可能性を秘める音楽センスと演奏力の高さだ。5弦ベースでスラップ奏法を多用するソラと、タイトなビートを刻むハイブリッドマイマイによるリズム隊、切れ味の良いギターを聴かせるサコティッシュフォールド。そこにフロントマン、シブヤカンナの芯のあるボーカルが重なって生み出されるメロディ&サウンドは、’80sシティポップ感を薫らせつつも、レトロ主義ではなく、2020年代のJ-POP / ROCKとして、彼女たち等身大のリアルな表現として構築されている。しかも全員が、ほぼ楽器初心者でセブンス・ベガを結成したというのだから、地に足の着いたステージングは実に驚きだ。
一方でMCでは初々しさも見せ、シブヤカンナが「敬愛するアーティストさんばかりで、(出演を)楽しみにしていました」と語ると、ソラは「9年前は14歳でした」と笑顔を見せ、観客からは大きな拍手が送られた。こうしてバンドの代表曲「東京ラブストーリー」、そして今年1月にリリースされた新たな方向性を感じさせる「Slump!」でステージを終えたセブンス・ベガ。わずか4曲ながらも、今後の飛躍を感じさせるステージであった。
▼TOWA TEI▼



貫禄のパフォーマンスでアリーナを巨大なクラブへと変貌させたのが、トップDJとして長いキャリアを持つTOWA TEI。広いステージのど真ん中に用意されたDJセットの前に立った彼は、「DJっぽいことを頑張ってみたいと思います」とジョークを交えて挨拶すると、言葉とは正反対のバキバキなDJプレイを展開。AIボイスをフィーチャーしたサウンドから「Magic」、そして「DUBNOVA PT.1」へつないでいく。
そこに一瞬、モータウンソウルの最高峰、ジャクソン5「ABC」を挟むと、すぐさま高橋幸宏バージョンの「STOP IN THE NAME OF LOVE」、そしてこの曲と同時期にリリースされたYMO「NICE AGE」へ。「STOP IN THE NAME OF LOVE」の原曲はモータウンの女王スプリームスの大ヒット曲であり、モータウンに多大な影響を受け、そしてテクノポップを生み出していった高橋幸宏の音楽的ルーツをつなげていく選曲はあまりにもスタイリッシュ。さらに彼自身も参加していたMETAFIVE「Luv U Tokio」が続くという“幸宏リスペクトタイム”に、会場からは歓喜の声が沸き上がった。
だが、真のクライマックスはそこから。終盤には、8月21日にリリースされる最新作『ZAMBIENT』の楽曲がプレイされると、最後はなんと、’90年代ダンスシーンを象徴するDeee-Lite「Groove Is in the Heart」をフルで披露。大歓声が巻き起こる中で彼は、「幸宏さん、ありがとうございました」という言葉を残し、ステージを後にした。
▼清水ミチコ▼



興奮に満ちた観客を一気に笑いの渦へといざなったのは、“モノマネ”のひと言では言い表せられないほどに鋭い社会観察眼と高い演奏力、そして何と言っても品のあるシニカルなユーモアを持つ清水ミチコのステージだ。
今回の復活<ワーハピ>では、4月まで行われていた全国ツアー<清水ミチコのHAPPY PARADISE>の再演&アップデート版といった内容で、冒頭からアグネス・チャンや薬師丸ひろ子、松田聖子、ユーミン(松任谷由実)らのモノマネを披露。先のツアーにも参加していた高田漣がギター、実弟・清水イチロウがベースとピアノでサポートするという、しっかりとした演奏をバックに天才的なモノマネを披露するというコンビネーションに、会場は終始爆笑の渦となった。しかも、単に笑わせるだけでない。絶妙な社会風刺も交えた新ネタを用意したり、最後には井上陽水と森山良子、そして忌野清志郎のモノマネで「風に吹かれて」でステージを締め括るあたりのメッセージ性も流石のひと言。
そんな中でもハイライトは、ピアノとギター、ベースという編成での「RYDEEN」「中国女」「東風 (矢野顕子ボーカルのモノマネ付き)」の“アコースティックYMO”メドレー。「幸宏さんのように正確なリズムを刻めるドラムがいなかったので」と、実家から持ってきたと言うメトロノームを“カチカチ”と代々木体育館に響き渡らせながらの演奏は、本来は大いに笑えるネタであるに関わらず、これがとても心に沁みる実に幸せな時間であった。観客をただ笑わせるのではなく、かと言って湿っぽい回想に浸らせるのでもない彼女ならではの演奏に、気持ちが救われた観客は多かったのではないだろうか。
▼MAJOR FORCE▼



ここからPAの音圧感が大幅にギアチェンジし、強烈なまでの重低音が轟き渡る中で、高木完&K.U.D.OのユニットMAJOR FORCEがレフトステージに姿を現した。MAJOR FORCEは、1988年に高木完とK.U.D.O、それに藤原ヒロシ、屋敷豪太、中西俊夫の5人により設立された日本初のヒップホップ/クラブ・ミュージック専門レーベル。先にセンターステージに立ったスチャダラパーも、このレーベルに見出され、デビューを果たしたアーティストだ。それくらいに現代につながる音楽シーン/カルチャーを知り尽くすキーパーソン的存在であるにも関わらず、MAJOR FORCEの活動休止期間とかつての<ワーハピ>開催期間が重なっていたこともあり、意外にも今回が初めての<ワーハピ>出演となった。
“ならばこれまでの分も”と言わんばかりに、高木完とK.U.D.Oはドープなサウンドで「MURDER FACE」などの楽曲をプレイしていく。映像グラフィックスも非常に刺激的。そしてラストには、MAJOR FORCEの同志・中西俊夫がプラスチックス時代に作った最強の作品「TOP SECRET MAN」をMAJOR FORCEバージョンで披露。高木完がボーカルをとり、強烈なインパクトを残すパフォーマンスを展開してくれた。
なお後日談だが、高木完はこの翌日に腹膜炎で緊急手術を行い、現在療養中。<ワーハピ>当日も激痛の中でパフォーマンスだったことを後にSNSで公表したが、それだけの強い想いを持って<ワーハピ>出演だったのだろう。その気持ちと、この日のDJプレイに、ここで敬意を表したい。
▼電気グルーヴ▼



ヒートアップした会場の熱量をさらに沸騰させ、大爆発へと導いたのは、泣く子も黙る電気グルーヴ。彼らも間違いなく<ワーハピ>に欠かせないアーティストであり、オープニング曲の「人間大統領」から観客のテンションを最高潮に押し上げると、2曲目にして不朽のアンセム「Shangri-La feat. Inga Humpe」と怒涛の勢いで続け、観客たちを躍らせ続けた。
電気グルーヴファンには釈迦に説法だが、彼らのステージは単なるDJプレイではなく、石野卓球とサポートメンバー牛尾憲輔(マニピュレーター)によるシンセやエレクトロパーカッションなどの生演奏要素を取り入れながらトラックが構築されていくライブ感が大きな魅力。さらにもう一人のサポートメンバーである吉田サトシのギターが加わることでリズム感が増強されたうえで、そこにピエール瀧の独壇場のパフォーマンスが加わるのだから、向うところ敵なしの無双状態だ。ビジョンに映し出されるグラフィック映像も凝りに凝っており、「モノノケダンス」で巨大な“モノノケ”が会場の代々木体育館を破壊していったかと思えば、「Fallin’ Down」などの曲では、スクリーンに映し出されるメンバーや観客の映像がリアルタイムにロボットやシンセモジュール、宇宙飛行士のアニメーションに加工さるといった視覚的演出も。
そして電子音とは真逆とも言えるバグパイプの音色でスコットランド民謡のフレーズが奏でられて「富士山」へ。石野卓球はTB-303(もしくはクローンマシンTB-03)を手にステージフロントでパフォーマンスを行い、そのアシッドなサウンドとピエール瀧の「富士山!」の連呼がカオスの坩堝を生み出していく。それが絶頂に達すると、再びバグパイプの音色に合わせて4人は一列に並び、電車ゴッコのスタイルでステージ袖へと退場していった。





