【ライブレポート】Nakamura Hak、絶唱

会場のTOKYO NODE HALLは、終始、緊迫感が張りつめていた。修正、編集一切なしの新人シンガーソングライター・Nakamura Hakによる、初のオンラインライブ<TOKYO NODE × maximum10 pre. Nakamura Hak – Plugless Live>。オフィシャルYouTubeチャンネルにて無料生配信された同公演の現地会場に、一部の関係者が招かれた。
虎ノ門ヒルズ ステーションタワーを高速エレベーターとエスカレーターで46階まで上がるとたどり着けるTOKYO NODE HALLは、ステージの背面がガラス張りで、どの座席からも東京の夜景を臨むことができる。上手(かみて)側に見える東京スカイツリーは、橘色を基調とし、縦のラインで3つの面に大きな旗が掲げられる様子を表現した“幟(のぼり)”のライティングが施されていた。

抜群の眺望に心を奪われながらふとステージに目を落とすと、エフェクター、シールド、アンプなどは一切なく、中央の縁に生配信用の小さなマイクがセットされているだけだった。空っぽのステージを目の当たりにし、いまからここでNakamura Hakの声とギターを直で浴びるのだと実感がこみ上げる。
必要最小限の収音マイクで生配信することから、歓声や拍手が禁止である旨の注意喚起がなされた後、ほどなくして場内が暗転する。東京の夜景を背負ったステージの中央にスポットライトが当たると、下手(しもて)よりアコースティックギターを肩にかけ、白いオーバーサイズのアウターのフードを深く被ったNakamura Hakが登場した。木製のステージを踏みしめる静かな足音にも息を呑む。

光の真下についた彼女は、静かにギターをつま弾き始める。中央ブロック4列目の客席から聴くその生音は、想像よりもはるかに微かなものだった。それが電気的に音を増幅しないプラグレスライヴという実態をより生々しく映し出し、彼女から発せられる音をより近くで感じようと、彼女の一音一音に神経を注いだ。
1曲目は5月20日にリリースされたばかりの1st EP『白い夢』の1曲目「十七」。独り言のように訥々と歌い始めると、終盤ではさめざめと涙を流して願うように悲痛な気持ちを言葉に乗せる。「はじめまして。Nakamura Hakです。よろしくお願いします」と一言挨拶をすると、「白は夢」へ。繊細なアルペジオとかきむしるようなストロークが、曲に刻まれた心の傷に陰影をつけてゆく。魂を削るようにギターを弾き、歌う彼女の肉声が心を突き刺すと同時に、プラグレスゆえにその音は透明な分厚い壁に阻まれるように、たっぷりとは届かない。だからこそ曲にしたためられた彼女の痛みや無念が、こちらに色濃く届くような感覚に陥った。
カポを動かして軽くチューニングをすると、6月10日リリースの1stシングルの表題曲「ただ美しい呪い」を披露する。ギタープレイで楽曲をドラマチックに展開させ、それを追い風にするように東京の夜空を背負って歌う姿は、天に向かって祈るような切実さを感じさせた。そこからおもむろにギターを弾き始め、「砂のお城」のリフへとつなげる。彼女の鋭利な歌とギターの音色は、あふれ出して止まらない噴水のような透明感と威力を放っていた。夜空の下の高層ビル群の光と、闇に包まれたフードの奥からとめどなく湧き上がる本音。そのふたつが作り出す不思議な親和性に意識を吸い取られるようだった。

ギターの弦の上に指を滑らせて音を止めた後、その手は感傷的なコードを隙のない高速ストロークで刻み出し、「善と悪」へとなだれ込む。ギターの音色はアスファルトを打ち付ける雨粒や吹き荒れる嵐を彷彿とさせ、Nakamura Hakのフード姿も相まって、彼女が雨に打たれながら絶唱しているようにも見えた。雨を傘で凌ぐように、音楽を掲げて世の中の不条理に抵抗していく彼女の姿には、満身創痍ながらに自身の足で立ち続ける不屈の精神や逞しさが溢れていた。
柔らかいアルペジオを奏で出すと、「夜に浮かぶ」を歌い出す。落ち着いた声とギターの音色は闇の中で静かに光る星のようで、まさに歌詞のとおり光の粒が浮かび上がるようだった。最後の一音まで歌い切ると、彼女は一歩前に出て、頭を下げてステージを後にした。会場が明転しても、しばらくその余韻が解けることはなかった。
当日のアーカイヴ映像が、早くもNakamura HakのYouTubeチャンネルにアップされている。さらに、1stシングルCDのリリースから3日後となる6月13日(土)の24時から<境 界>と題したオンラインライブ第2弾を開催予定である。会場のBLACKBOX³ studioは大型4面LEDスタジオであり、NODE HALLとはまた異なる趣のなか彼女の音楽を味わえる機会となるだろう。2026年9月から2027年1月にかけて全国12会場で行われるアウトストア・ライヴに先駆けて、彼女の歌と音の可能性を体感してほしい。
取材・文◎沖さやこ
写真◎小杉歩
◾️1st Single CD「ただ美しい呪い」
2026年6月10日(水)リリース
CTCM-65137 / ¥1,320(税込)
EC:https://maximum10.lnk.to/NakamuraHak_001
全曲試聴映像:https://youtu.be/KFxDFvnJ2ew
〈収録内容〉
1.ただ美しい呪い / TVアニメ「とんがり帽子のアトリエ」エンディングテーマ
2.夜に浮かぶ / TVアニメ「とんがり帽子のアトリエ」第3・5話 エンディングテーマ
3.光り / TVアニメ「とんがり帽子のアトリエ」第8話 エンディングテーマ
4.ただ美しい呪い – Anime ver.
5.夜に浮かぶ – Anime ver.
6.光り – Anime ver.
〈先行デジタル配信〉
Debut Digital SG「ただ美しい呪い」配信中
Streaming/DL:https://maximum10.lnk.to/nakamurahak_str_tadautsukushiinoroi
Music Video(Anime ver.):https://youtu.be/OXeF_qXb3do
2nd Digital SG「夜に浮かぶ」配信中
Streaming/DL:https://maximum10.lnk.to/nakamurahak_str_yoruniukabu
Music Video(Anime ver.):https://youtu.be/ppq5i9HAHfE
「光り」Music Video 公開中(サブスク含めデジタル音楽配信はしておりません)
Music Video(Anime ver.):https://youtu.be/K-a399qldGI
◾️<2nd Online-Live「境界」>
2026年6月13日(土)24:00 配信スタート
※ 無料オンラインLIVE / YouTubeにて
配信リンク:https://youtube.com/live/Gxi5V7KdTMo
1st Online-Liveのアーカイヴ映像を無料公開中
https://youtu.be/as5e9wWVsNM
◾️<Plugless(Out-store)Live Tour「異端」>

2026年9月13日(日)【東京/下北沢】DY CUBE
2026年10月18日(日)【京都】音まかす
2026年10月25日(日)【愛知/名古屋】RAD mini
2026年11月1日(日)【北海道/札幌】Space Art Studio
2026年11月8日(日)【新潟】WOODY
2026年11月15日(日)【宮城/仙台】BARTAKE
2026年11月29日(日)【大阪】雲州堂
2026年12月13日(日)【岡山】表町シェルター
2026年12月20日(日)【香川/高松】RUFFHOUSE
2027年1月17日(日)【福岡】public space 四次元
2027年1月24日(日)【島根/松江】MUSIC BAR Birthday
2027年1月31日(日)【東京/下北沢】WAVER
全公演 17:30 開場 / 18:00 開演
CD「白は夢」の購入者は無料入場できるアウトストア・ライブ
※ 各会場、定員に達し次第〆切 / 先着申し込み順
※ 申込方法などの詳細は、CDの封入チラシに記載







