【インタビュー】大柴広己、デビュー20年目に刻む新たな始まりの『JUNK HOPE』完成「これは未来に繋がっていく希望」

2026.05.05 17:00

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■自分というものにもう一回立ち返って
■向き合っていく1年になるだろうな

──アルバムの1曲目「ええぇぇぇぇああぁい」はどうですか。これは時事ネタというか、タイトル通り、AI社会に対してユーモラスに物申す曲。

大柴:SNSで、ドヤ顔で「AIを使えないとヤバイよ」とか言ってるのはダサいなと思うんですけど、乗り遅れるのも違うし。一応目を通すんですけど、さっき喋ったように、物の価値観ってどんどん置き換わっていくじゃないですか。それも含めて“何を自分の喜びと感じるのか”というと、個人の満足を求めていく世の中に変わっていく気がするんですよね。今までは、大きいものや数が多いものが“すごい”だったんですけど、それを疑う心が入ってきて、違う価値観になってきているので。たとえば「SNSを活用してもっと売ればいいじゃん」とか言われても、それだと自分が喜ばないというか、自分を喜ばせるための方法として何を選択していくのか?というところに、音楽も置き換わっていくのかな、とすごく思うんですよ。

with 1966 GIBSON J-45

──よくわかります。

大柴:だから「ええぇぇぇぇああぁい」も、テーマはAIですけど、全部人力で作ってるんですね。そういうアンチテーゼなところがやっぱりあって、AIに“これをやれるもんならやってみろ”みたいな、そういう感覚で作ってます。それを自己満足と言うならそれでもいいけど、でもこれからは、自分すら満足させられない人間がたぶん出てくると思いますよ。なんでもできちゃうから、達成感も満足感も感じられなくなるんじゃないかと思うし。

──それはありえますね。実感として体に刻まれるものが薄いから。

大柴:まさにそういう世の中になりつつあると思うので、今のタイミングでミュージシャンがどういうことを歌っていくのか?を考えた時に、今回のアルバムは結構いろいろ言ってると思います。

──ガラクタの希望がキラキラ輝いていると思います。そんなアルバムを締めくくるのが、タイトル曲「JUNK HOPE」。

大柴:これは最後に、勝手にできたんです。曲が全部できて、ミックスが終わって、お酒を飲みながら自分のスタジオで聴いている時に、ふとギターを持って弾き始めたら、いきなり“JUNK HOPE 叶えに行こう”のメロディが出てきて、本当に10分ぐらいでこれができた。

──それが見事に、アルバムを要約したような曲になっていると思います。

大柴:不思議ですよね。“ほしいものはいつもドロの中”とか、“世間様が僕を笑っている”というのも、さっき喋ったことと同じだし、“どんな時も自分を忘れちゃいけないぜ”というのも、自分に言ってるんですよね。“Lシリーズ”をやっていた8年間は、自分が見える世界を歌ってきたんですけど……これは前にもお話したかもしれないですけど、僕が神様だったら、人間は絶対にこういう構造にはしないと思うんですね。目の位置はここじゃなくて、後ろも見えるような可動式にして、そっちのほうが全部見えるじゃないですか。でも人間が目をここにつけてるのは意味があると思ってて、自分を自分が見れないようになってるんですよ。逆を言えば、自分のことは誰かに見てもらわないといけない。だから神様はここに目をつけたんじゃないかな?と俺は思っていて。

──なるほど。

大柴:俺は自分のことしか見えてないけど、自分が何をやってるかわからないから、周りにあることに目を向けて、それを自分に取り込んできた。20年目のスタートは、その“目”をもう一回自分の中に取り込んで、自分を見つめる時期になると思います。

──期待してます。そしてデビュー20周年とアルバムリリースを記念するワンマンライブは、6月9日、東京・せんがわ劇場で。一人きりの弾き語り形式ですか。

大柴:そうです。今年はデビュー20周年ということもあって、ルーツを巡る旅をしようかと思っています。8月27日の自分の誕生日に、自分の生まれた町・大阪の枚方でワンマンをやることも決まって、ルーツを振り返ることと、今やりたいことを照らし合わせて、やっていく感じになると思います。自分というものにもう一回立ち返って、向き合っていく1年になるだろうなとすごく思っていますね。

──新生・大柴広己の始まりの年でもある。

大柴:完全に新しく始まっていく感じだと思います。いろんなことを経験して、いろんな人間関係を見て、たくさんの思いをいろんな人から自分に投影できたからこそ、それを持って自分がどう生きるか?が見えてきたし、どういうふうに希望の明かりを灯していくのかを考えて、誰に無意味と言われようが、俺は曲を作り続けます。ひとつの大きな希望へのストーリーが、これから始まっていくなという感じがしていますね。