【ライブレポート】D’ESPAIRSRAYの新時代

2026.05.11 18:17

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再臨の刻は歓喜とともにやって来た。本来“RAPTURE”という単語は歓喜や恍惚を意味するのだが、一方で聖書における“RAPTURE”とは、再臨の刻を待ちながら永く眠っていた聖徒の霊が復活の身体を与えられること、また生者は不死の姿へと変えられ、やがて両者が空へと引き上げられたのちに主と出会う、という終末の出来事を指すそう。

そして、このたび<D’ESPAIRSRAY LIVE 2026『RAPTURE』>と冠されZepp DiverCity (TOKYO)にて開催されたD’ESPAIRSRAYにとって約16年ぶりのワンマンライブは、まさに絶望(DESPAIR)に沈む地で永く眠っていた魂が、希望という名のまばゆき光(RAY)を得ることで甦った、奇蹟の一夜となったのではなかろうか。

では、今回の復活をなぜ奇蹟と呼ぶことが出来るのか。まずここではその経緯について振り返っておきたい。そもそも、D’ESPAIRSRAYとは1999年9月9日にHIZUMI(Vo)、Karyu(G)、ZERO(B)、TSUKASA(Dr)の4人によって始動したバンドとなる。

音楽性についてはニューメタルやインダストリアルロックといった洋楽ロックの血脈を汲みつつも、メイドインジャパンのゴシックロックを独自のスタンスで確立していった点も大きな特徴で、当時はもちろん2026年の今に至ってもD’ESPAIRSRAYのサウンドを雑に“ヴィジュアル系”の一派として括ってしまうのはどこか憚られるほどだ。

また、彼らはDIR EN GREYやMUCCに一歩先駆けるかたちで、当時の国内バンドとしてはまだあまり前例のなかった欧州ツアーを2004年に初敢行。つまり、彼らはいちはやく”欧州に向けたVisual-Keiの輸出”という偉業をやってのけることにもなった。さらに、2006年には欧米全8カ国14公演にわたるワールドツアーを実施しつつ、同年夏にはドイツでの大型メタルフェス<Wacken Open Air>に唯一の日本人バンドとして参戦。

そのうえ、2008年には味の素スタジアムでの<hide memorial summit>でも大観衆を相手に堂々たる勇姿を披露し、同年夏にはアメリカを約2ヶ月かけて行脚するツアー型フェス<taste of CHAOS 2008>にMUCC、the Underneath(現defspairalの前身バンド)らと帯同することになり、全米各地にて好評を博していった経験も持っている。その後、2009年には晴れてのメジャーデビューも果たしており、あの当時の彼らは確実に天下獲りへと向けて邁進していたと言っていいだろう。

だがしかし。2010年に入ったところで、突如D’ESPAIRSRAYは運命の悪戯によって窮地へと立たされてしまうことに。あろうことか、HIZUMIが声帯故障というアクシデントに見舞われてしまったのだ。治療を目的とした活動休止期間を経ながらも、その時点ではどうしても声帯のリカバリーが困難だったという状況から、彼らは苦渋の選択を迫られ遂に2011年6月15日付で解散発表へと至ってしまう。

なお、それから約3年後の2014年7月29日にはKaryuが加入したAngeloの主催イベント<THE INTERSECTION OF DOGMA>にゲスト出演する、というサプライズがあったものの……以降は各メンバーがそれぞれ異なるバンドやプロジェクトで精力的に活動。HIZUMIは喉の治療と並行しながら2019年よりNUL.でボーカリストとして復帰し、KaryuはAngeloとH.U.Gで、ZEROとTSUKASAはTHE MICRO HEAD 4N’Sで、さらにTSUKASAは演歌歌手・最上川司としても活躍するようになったのである。

くわえて、2022年にはコロナ禍だったにも関わらず6月に<DEVIL’S PARTY 2022>、9月に<DEVIL’S PARTY 2022 Vol.2>というイベントがいずれも渋谷Spotify O-eastにて開催されたのだが、これらをオーガナイズしたのはD’ESPAIRSRAYの楽器隊3人がTAKA(defspairal)とコラボしたLuv PARADEにほかならない。そればかりか、<DEVIL’S PARTY 2022>ではHIZUMIがデザイナーとして全面協力していたうえ、<DEVIL’S PARTY 2022 Vol.2>にはHIZUMIがMASATO(defspiral)、岸利至と共に組んだユニット・NUL.も参加し、結果的にこうした一連の動きはD’ESPAIRSRAY復活へと向けたひとつの布石となっていたのかもしれない。

つまり、かつて意図しない解散劇に見舞われたはずのD’ESPAIRSRAYは、ここまで約16年の間にメンバー4人がさまざまな伏線をそれぞれに引きながら、ある意味で“時間薬”の最大効果が発揮されるタイミングを虎視眈々と狙っていたとも推察出来る。当然、その流れはマニアと呼ばれるD’ESPAIRSRAYファンも把握していたようで、そう遠くないうちに来るべき時は来るはずだと信じていたはず。それゆえ、昨年5月にD’ESPAIRSRAYが11月開催の<CROSS ROAD Fest>に出演するという吉報がもたらされた時には、SNS上にも歓喜の声が溢れかえった。

むろん、彼らが<CROSS ROAD Fest>で威風堂々の帰還ぶりをみせつけてくれたのは言うまでもない。ただそれでもフェスはまだ序章に過ぎず、マニアたちが心から待ち望んでいたのはこのたびのワンマンライブ<D’ESPAIRSRAY LIVE 2026『RAPTURE』>で、D’ESPAIRSRAYが往時を超える勢いで躍動する勇姿であったに違いない。

《 I want to broken mind… I was born again. 何も恐れはしない》

かくして、奇蹟の一夜を始める1曲として彼らが選んでいたのは「BORN」。2010年12月30日に今はなき横浜BLITZで行われた<Human-clad monsters FINAL>以来となる、5604日(ZEROがXにて5月2日にポストしていた)ぶりとなったワンマンライブの火蓋を切るのにこれ以上ふさわしい曲はなかった。

咆哮するかのように鬼気迫るボーカリゼーションを展開するHIZUMI、派手にくるくる廻ったりしながらも的確なギターワークを崩さないKaryu、左手に演奏精度を上げるためと思われるグローブを着けつつ5弦ベースを巧みに操るZERO、本人の昔からの口癖を借りるなら“感極まった”リズムを力強く叩き出すTSUKASA。4人が目前で活き活きとしたステージングを繰り広げるさまと、そこから生み出される圧倒的な存在感を持ったラウドサウンドに煽られるかたちで、しょっぱなからヘッドバンギングしたり飛び跳ねたりするマニアたち。これぞD’ESPAIRSRAYのあるべきライブの光景!と感じたのは、何も筆者だけではあるまい。

とはいえ、そこに漂っていたのはいわゆる懐かしさの類いではなかった。彼らは「あの頃みたいにカッコいい!」バンドではなく、「今もってこの音は新しいのでは?」と感じさせるだけの輝きをバンドとして放っていたのだ。たとえば、「REDEEMER」の間奏部分におけるブレイクダウンのくだりは近年のV系メタルコアバンドなどがよく使う手法であるし、デジタリックな同期音をバンドサウンドと融合させる絶妙なアプローチにしても、あの頃かなりの最新型だったD’ESPAIRSRAYの音は2026年現在も全く古臭くないのである。それこそ、当時は彼らの作る斬新な音を好むファンに対して“マニア”の名をつけたのは、なかばD’ESPAIRSRAY側からの自嘲的ギャグにも近かったわけだが、この時代においてはむしろD’ESPAIRSRAYの音楽は純粋にハイセンスでハイクオリティなロックサウンドとして捉えた方が腑に落ちやすいかも。

あわせて、歌詞の解釈についても時の流れが良い意味で作用していたケースがあれこれと見受けられた。具体的には「REDEEMER」での《絶望してる時間など無い》《「俺は今、此処にいる…」》や、「TRICKSTeR」での《何ひとつ失わずに手に入れたモノならばくれてやればいい》といった表現は、当時も充分に聴き手の胸へと刺さってきていたものの、彼らが辿ってきたここまでの日々を前提にしてそれらを受け止め直すと、よりいっそうの深みと説得力をそこに感じてしまうというか。今になって聴くD’ESPAIRSRAYの楽曲たちが昔よりも生々しく思えるとは、なんとも因果なもの。

「久しぶりだね、まずはただいま。もう16年とかになるんですかね。バンドが活動を止めてからも、それぞれのメンバーの動向を追って応援してくれていたみんながいたからこそ、またこの場に集まることが出来たと思ってます。感謝してます!まぁ、我々はロックバンドなんでね。恩の返し方っていうのを、ロックでぶっ叩くっていう方法しか知らねぇんだよ。それでもいいか!受け取ってくれるかい!!」(HIZUMI)

有言実行とはこのことか。以降、ここからのD’ESPAIRSRAYはことごとく容赦ないライブパフォーマンスでこの場を翻弄していくことになった。また、本編中盤では今回のライブタイトルとシンクロするニューシングル「RAPTURE」(5月13日リリース)の表題曲が初お披露目されたのだが、これに関してはHIZUMIがMCにて以下のように言及したことも皆様にお伝えしておこう。

「昔のD’ESPAIRSRAYと、新しいD’ESPAIRSRAYの良いところを詰め込んだ作品。って、Karyuが言ってました(笑)」(HIZUMI)

ちなみに、この新曲「RAPTURE」については後日BARKSにインタビュー記事が掲載される予定なので、ぜひそちらもご期待あれ。

かくして、本編後半ではD’ESPAIRSRAYのライブに欠かせない「“Forbidden”」や「DEATH POINT」といったアッパーな楽曲たちが連打されつつ、本編の最後を締めくくったのは2010年にアルバム『MONSTERS』が発売された際、取材にてHIZUMIが「歌詞はまんまD’ESPAIRSRAYのことを歌ってる」と語ってくれた「DEVILS’ PARADE」と、《未だ見えぬ領域を超え》という詞が印象的に響いた「MIЯROR」の2曲。

マニアによる熱烈な“D’ESPAIRSRAYコール”に応えてのアンコールでは、その昔からこの曲ではKaryuがハットを小粋にかぶるのがお決まりな「Reddish」を手始めに、途中にはメンバー紹介がてら4人が順にMCをとる一幕も。

「Zeppのみなさん、こんばんは。感極まってますか!」(TSUKASA)

「ただいま。そしてオマエたちにも言いたい。おかえり。もちろん、初めましての人もいるだろうからはじめまして」(ZERO)

「このバンドは紆余曲折ありつつの順風満帆ではないバンドで、今もいろいろ抱えながらやってますけど、希望を持ってやっていくんで。鞭打ってやっていきますので、これからもよろしくお願いします」(Karyu)

「いやー、ここまで来るのにホントに時間がかかって。とても申し訳ないなという気持ちがあるんですけれども、今日のライブを無事迎えられて、ここまでうまくやれて……いや、うまくやれてなかったところもあったけど(苦笑)。本当に良かったなと思ってます。ありがとう」(HIZUMI)

またもマニアたちがヘドバン大会を繰り広げたアグレッシヴチューン「浮遊した理想」で、D’ESPAIRSRAY側もさんざん暴れ倒しながらこの場を一旦のご破算状態へと導いたあとに、この夜の彼らが最後の最後に奏でたのは「abyss」だった。

《そっと差し伸べる…希望という名の光を見せるだろう》

絶望(DESPAIR)に沈む地で永く眠っていた魂が、希望という名のまばゆき光(RAY)を得ることで甦った、この奇蹟の一夜とは。D’ESPAIRSRAYの新時代が到来したことを告げる、一大叙事詩のようなものであったとも考えられる。歓喜の時代はここから幕開けしてゆくのだ。

取材・文◎杉江由紀
写真・緒車寿一・川島彩水

セットリスト
1.BORN 
2.REDEEMER
3.TRICKSTeR 
4.Dears 
5.in vain 
6.Angeldust
7.Infection
8.PARADOX 5
9.Garnet
10.KAMIKAZE
11.RAPTURE
12.Subliminal
13.Squall
14.Forbidden
15.LOVE IS DEAD
16.DEATH POINT
17.DEVILS’ PARADE
18.MIRROR
=EN=
19.Reddish
20.SIXty∞NINe
21.Hollow
22.HORIZON
23.「浮遊した理想」
24.abyss

<D’ESPAIRSRAY LIVE 2026 RAPTURE>アーカイブ配信情報
https://despairsray0504rapture.zaiko.io/e/despairsray-rapture-2026

チケット販売:2026年5月11日(月)21:00まで
視聴期間:2026年5月11日(月)23:59まで

リリース情報
New Single「RAPTURE」
2026年5月13日(水)発売
販売価格:¥2,000(税込)
https://despairsray.com/contents/376538
https://despairsray.com/contents/378221

ライブ情報
<D’ESPAIRSRAY FC限定LIVE[un]Beautiful>
2026年9月9日(水)LIQUIDROOM
18:00/18:30
チケット詳細後日

<D’ESPAIRSRAY LIVE 2026「CLIMAX」>
2026年12月30日(水)
KT Zepp YOKOHAMA
17:00 / 18:00
https://despairsray.com/contents/382308

◆D’ESPAIRSRAY オフィシャルサイト