【ライブレポート】Awesome City Club、活動休止前ラストライブ開催「死ぬ前に思い出すほど美しい」

2026.02.02 15:37

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1月29日、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて、Awesome City Clubが活動休止前ラストライブとなる<Awesome Talks Live House Tour 2025-26>ファイナル公演を開催した。

全20曲披露したうち7曲は、翌日1月30日にリリースしたニューアルバム『Cheers to 10!!』収録の新曲たち。そんなセットリストも演奏自体も、今がバンドとして最高な状態であることを表していた。最後には、脱退したマツザカタクミ(B, Rap)、ユキエ(Dr)を迎えて、初期メンバーで演奏するというサプライズも。2013年の結成から13年、メジャーデビューから11年、一度も止まることなく歩み続けたAwesome City Clubは、ピークを迎えたまま、3月31日より活動休止期間に入る。

以下、Awesome City Clubをデビュー前の2014年から追いかけてきた音楽ライター・矢島由佳子による、オフィシャルレポートをお届けする。

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何度もここでライブを観た、Awesome City Clubにとってホームグラウンドのひとつである恵比寿LIQUIDROOM。会場に入り、初期から変わらない『Awesome Talks』のロゴが吊るされているステージを見て、彼ら彼女たちの中にある変わらないもの、ブレないものに思いを馳せながら開演を待っていた。

開演の合図とともに暗転すると、Flaming Lips“Race for the Prize”が流れる中、光が乱反射する衣装を身に纏ったatagi(Vo, G)、PORIN(Vo)、モリシー(G)が登場。活動休止前ラストライブの幕開けに選んだ楽曲は、「ファンファーレ」だ。《ああ 世界は美しい》《笑って 切ない気持ちはサヨナラさ》という歌詞が挨拶代わりに響く。その後のMCでatagiが「ぶっちゃけ活休前最後のライブって、どんなテンションで見たらええんやろうってお客さん自身も思っているんじゃないかなって思うんですけど、僕らが出している音や言葉、パッションを受け取ってくれたらいいな」という言葉があったが、笑顔で過ごす前向きな夜にしたいという意志が込められているオープニングだった。

2曲目は、atagiが「みんなの手が上がったのを見て心底ホッとしました」と付け加えた「アウトサイダー」。PORINが腕を上げると同時に、オーディエンスたちも呼応し腕を左右に揺らしたフロアは、全員がこの日を全力で楽しもうとするポジティブなエネルギーに満ちていた。

そしてPORINがボーカルを取り、高橋久美子(ex. チャットモンチー)と歌詞を共作した「Vampire」。PORINのふくよかな歌が体内に流れ込み、atagiとモリシーが並んで切れ味のいいカッティングをカマす姿を見て、Awesome City Clubは今が最高な状態であることを確信した。昨年9月のインタビュー記事にも「今が一番自由」「今が一番脂乗っている」と綴ったのだが、13年間の成功も失敗も喜びも悔しさも学びも葛藤もすべて積み上がった上で、自分たちがやりたいことを思いっきりやっているのが「今」のAwesome City Clubだ。

そんなことを思っていたら、次に歌ったのは「On Your Mark」。《「ここじゃ終われない」/何度も心に誓った夜を乗り超えてきたんだろう》《泥臭くてもカッコ悪くても/進む人はきっとヒーロー》──その言葉たちに、Awesome City Clubをなくしたくない一心で走り続けてきて(活動休止発表時のPORINのコメントより)、キラキラしているように見えて実は泥臭い3人のここまでのストーリーが見事に重なった。

5曲目には、結成当初に作った楽曲であるが、ラップパートがあるためマツザカ脱退後は“封印”していたという「愛ゆえに深度深い」を解禁。タイトルがコールされると、PORINが思わず「リアクションいいね!」と漏らすほど、オーディエンスからは喜びが爆発した歓声が湧いた。そして、「夏のうだるような暑い夜の街を闊歩する風景」(atagi)を描いた「スロウ・サマー」、冬の匂いが漂う「雪どけ」、秋の花と惑星の意味をタイトルに冠して「たくさん傷ついても誰かとつながりたいと思ってしまう気持ちを書いた」(PORIN)という「cosmos」。Awesome City Clubは、四季折々の情景と、さまざまなライフステージにおける人間の感情や場面を切り取ってきた、至高のポップスバンドであることを示した流れだった。

その後は「ダンスゾーン」と呼びたくなるような、とにかく踊らせてくれる時間だ。atagiのファンクのルーツが色濃く見える「STEP !」から、「journey」、「シャラランデヴー」、「ダンシングファイター」、「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」と続けた。フロアの盛り上がりはどんどんと更新され、「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」では、1番の終わりにPORINから「ありがとう!」とシャウトが飛び出すほどの熱狂が巻き起こっていた。atagiからは「本当に最高です。死ぬときに思い出すんだろうなと思うくらい美しい光景です」という言葉も。Awesome City Clubはこれまで、多種多様なリズムやグルーヴを取り入れることに挑戦し、多彩な音の快楽を生み出してきたバンドであることを改めて感じさせるゾーンだった

終盤の3曲は、「特にオーサムにとって楔のように深く刺さって抜けない、すごく意味合いの強い曲をやらせていただきたい」というatagiのMCから始まった。1曲目は、「Catch The One」。メンバー間でバンドの方向性をひたすら話し合い、atagiがインタビューで「バンドをやめようとしていた」とも語った時期に、どうにかこの曲でメンバーと支え合いながらバンドの歩みを進めようとして書いたものだ。2曲目は、『紅白歌合戦』出場曲にもなった「勿忘」。PORINはこの曲に対して「レコーディングで歌っているときから泣きそうになった」「この曲で売れてよかった」と過去に語っているが、やはりこの曲には、「音楽の力」としか言えないような特別なパワーが宿っている。自身の代表曲としていろんな場で演奏してきた曲であるが、次はいつ演奏するかわからない──丁寧な歌と、モリシーの迫真のギターには、すべての人と曲自体への感謝と、そういった気持ちが込められているように聴こえた。

ついにラストソングを迎える前、PORINは「まだまだオーサムで見たい景色があるので。武道館とか。カムバックしたときにはまたそういうステージに立てたらなと思います」と、未来への夢を語った。「ちょっと立ち止まって、自分らしさとか、これからの人生とかにじっくり向き合って、もっと素敵な音楽家として戻ってこられたらなと思います」。そしてatagiから「最後は最新のナンバーをお送りしたいと思います」という、やはり今が最高で、今表現したいことがあることを語る言葉があり、「僕から僕へ、メンバーへ、あなたへ、活動休止に際して溢れてきたいろんな思いを綴った歌」だという「100年後の僕たちへ」で締めた。

中盤で歌った「Run and Run」では、こう歌われる──《笑顔で満ち足りた世界に 今決別の合図を》。そして「100年後の僕たちへ」で《君はいくつもの愛を知ってまた歩き出せる》という言葉を3人が声を重ね合わせると、ステージは清らかな光を放っているように見えた。悩んでもがいた挙句、自分の大切なものを握りしめて一歩外へと飛び出す勇気を持った人間は、なぜこんなにも美しいのだろう。

感動は、ここで終わらなかった。アンコールに呼ばれた3人は、「青春の胸騒ぎ」と「Don’t Think, Feel」を届けてくれた。そして《Maybe one more time 巻き戻そうよ》という「青春の胸騒ぎ」の言葉とともに、本当に青春が巻き戻ってきた──初期メンバーであるマツザカタクミとユキエを迎えて、「GOLD」が演奏されたのだ。昨年夏に執り行われたマツザカの結婚式にて、モリシーを除く4人で久しぶりに演奏する機会があり、秋頃にPORINから「もう一回みんなでやりたい」という話があったという。「『なんでやめちゃったの?』『5人の時代の方が』とか、いろんな声があるのは知っていた。あえて触れはしなかったけど。そういう人にとってもホッとできる瞬間になったらいいなと思っていますが、どうですか?」というatagiの問いかけにはフロアから温かい拍手が起こり、「続けていたらこういう夜もくるんだね」という言葉には私も大きく頷いた。5人の人間性が音に出て、それらが響き合う、「バンド」としか形容のできないものが溢れた約5分間。《熱狂のラストシーン》という言葉もやたらとこの瞬間を表しているし、《響くファンファーレ》はこの日の冒頭の伏線回収のようで、すべてが必然のごとくつながって輝いていた。

活動休止前ラストライブの最後に紡がれた言葉は、《GOLDの光は消えない 永遠に GOLDの光を心に》だ。13年前から今日までに得た光は、Awesome City Clubにとっても聴き手にとっても、心の中で消えないまま休止期間に入る。また逢える日まで。「正しい選択」というのは、実はこの世に存在しない。在るのは、自分の選択を正しいものにすることだけだ。Awesome City Clubの3人はこれまでの道のりで、それを十分に知っている。最後、PORINはピースサインを高く掲げた。

文◎矢島由佳子

『Cheers to 10!!』
2026年1月30日(金)配信リリース

  1. STEP ! 
  2. 深海
  3. cosmos
  4. Run and Run
  5. スロウ・サマー
  6. journey
  7. Miracle
  8. ファンファーレ
  9. 100年後の僕たちへ 
  10. 群鳥