【ライブレポート】ダイナスティ、完璧なセットリストで魅せた圧倒的完成度 進化した北欧メタルの現在形

スウェーデン出身のメタルバンド、ダイナスティが約8年ぶりとなる待望の来日公演を果たした。
2009年のデビュー以来、着実にキャリアを積み重ねてきた彼らは、2025年にも9枚目となるスタジオアルバム『The Game of Faces』をリリース。クラシカルな王道スタイルと現代的なモダンメタルを見事に融合させたサウンドに、エネルギッシュなステージパフォーマンスでも高い評価を得てきたバンドだ。

前回の2017年初来日以降は世界的なパンデミックの影響もあり、日本での公演は途絶えていた期間が続いたが、その間も欧州を中心に目覚ましい活躍を見せていた。ヴォーカリストのニルス・モーリンは母国のメタルバンド、アマランスのシンガーとしても並行して活動し、ギタリストのラヴ・マグヌソンも母国のメロディックロックプロジェクトであるクラウンでも活躍中だ。
ダイナスティとしても、近年はサバトン、パワーウルフ、バトル・ビーストといったバンドとのツアーや大型フェスティバルへの出演を重ね、常に確かな存在感を放ってきただけに期待は否が応でも高まっていた。

結論から言えば、その期待を遥かに超える圧巻のステージだった。この8年余りの間に4枚ものスタジオアルバムをリリースした彼らは、今回の来日公演においては一曲を除き、前回とは全く異なる新鮮なセットリストで臨んでいた。それは単純に、彼らの楽曲の多くがライブ映えする優れた楽曲ばかりだということの証明でもある。日本公演は通常、海外でのセットリストよりも長尺になることが多いものだが、彼らは欧州と同じ内容で貫いていた。このセットリストが完璧なパッケージとして完成されていることの表れだろう。



長い間待ち侘びた観客の熱狂に応えるように、ニルス・モーリン(Vo)のパフォーマンスは開幕から圧倒的だった。「In the Arms of a Devil」から始まり、ニューアルバム収録の「Game of Faces」へと続く序盤の流れで、観客の心を一気に鷲掴みにしてしまう。
「日本に戻ってきたよ!」というニルスの挨拶に続いて披露された「Natural Born Killer」では、これまでの豊富な経験値に裏打ちされた自信に満ちた佇まいが印象的だった。
メンバー間の絡みも見事で、ラヴ・マグヌソン(G)とミカエル・ラヴィア(G)、そしてベーシストのジョナサン・オルソンの3人がステージセンターで息の合ったプレイを展開する。ビールを片手にする姿も、もはや彼らのフォーメーションのひとつとなっており、細部まで計算されたステージングからは、彼らの飽くなき探求心が感じられる。

ライブは中盤で大きく表情を変えた構成で展開した。観客を退屈させないメドレー形式でのインストコーナーではラヴ(G)、ミカエル(G)、ジョナサン(B)、ゲオルグ(Dr)の4人がそれぞれフューチャーされながら、メドレーのラストには、ディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」へ繋げるという王道中の王道の演出。




さらに意外性を感じさせたのが、アコースティックタイムだ。ダイナスティの楽曲と驚くほどマッチしており、実に新鮮な魅力を引き出していた。ここでニルスはアカペラまで披露し、その歌唱力の高さを改めて証明してみせる。彼のステージングは、客席に対して正面だけでなく、意図的に横向きの姿を見せるのも実に効果的だ。クールな佇まいの一方で、日本語で「スゴーイ!」「スバラシイー!」を連発して場内を和ませる場面も度々あり、そのバランス感覚も素晴らしかった。

基本的に、このバンドはダンスミュージックで使われる4つ打ちリズムを取り入れたメタルで、バッキングトラックも使用したモダンなアプローチを採っている。しかしながら、ポジティブなメロディライン、ザクザクとした重厚なリフ、流麗なギターソロ、ピッキングハーモニクス、ダンスビートといった要素は80年代のメタルを愛する世代にはたまらない楽しさに満ち溢れている。
終盤は疾走感溢れる「The Human Paradox」、そして個人的に今回のニューアルバムで最もお気に入りの「Devilry of Ecstasy」へと畳み掛ける。フロアの照明もダンサンブルに変化し、会場は最高潮の盛り上がりに達していた。ラストの「Heartless Madness」での掛け合いでは、フロアをセンターから左右に分けて声の大きさを競わせるという、何ともクラシックな手法(笑)も取り入れられ、最後まで楽しませてくれた。

終始、力強さを失わないヴォーカル、華やかなギターソロ、ツインギターのハーモニーやコーラスワーク、優れた楽曲の数々、そしてメンバー全員の長髪が揺れるステージング。これらは単に80年代の良きテイストをアップグレードしただけではない。何かの模倣ではなく、彼ら独自のアイデンティティが完全に確立されたものになっていた。

前回の来日時には、ニルスの歌声はロニー・ジェイムス・ディオに似ている、ラヴのギターはイングヴェイだ、と感じていたのだが、今後は彼らこそが比較対象の基準点となり、新たなアーティストが「ニルスのような」「ラヴ風の」と形容されていく、そんな存在になっていくのではないだろうか。
約90分という時間の中に、近年の作品から組まれた新鮮な楽曲を土台に、インストやドラムソロ、アコースティックまでを含む、現在の彼らの全てが凝縮された完成形だったと思う。

8年という歳月は、更なる高みへと押し上げていたことを実感できる素晴らしい夜となった。
文◎ Sweeet Rock / Aki
写真◎ ShimaZi
< Dynazty 〜 Japan Tour 2025〜>
2025.11.7 AKABANE ReNY alpha
1.In the Arms of a Devil
2.Game of Faces
3.Natural Born Killer
4.The Grey
5.Waterfall
6.instrumental medley(Instict,The White, Highway Star)
7.Acoustic Medley(My darkest hour, The Power of Will, Yours)
8.Call of the Night
9.Firesign
〜Drum Solo〜
10.Presence of Mind
〜Encore〜
11.The Human Paradox
12.Devilry of Ecstasy
13.Heartless Madness
