【ライブレポート】BAND-MAIDの「バンド力」

2月11日、東京・LINE CUBE SHIBUYAにて<BAND-MAID番外編お給仕>を観た。改めて説明するまでもなく、お給仕というのはBAND-MAIDにとってのライブのこと。そして番外編という言葉は、本来の物語の流れとは一線を画する例外的なものであるということを示している。ただ、そこにはどことなくコアなご主人様お嬢様(=ファン)向けのマニアックな感触も伴っているが、それによって敷居が高くなるというわけではない。たとえばスピンオフ作品の誕生によって本編たる映画やアニメのストーリーに奥行きや拡がりが生まれたりすることがあるのと同じような効果がそこにはあり、同時に、BAND-MAIDの止まらない「進化」の裏側で同時進行している「深化」のあり方が垣間見られる機会になっていたりもする。

記憶を遡ってみると<番外編お給仕>は2025年2月にも行われているが、その際には演奏プログラムにあまりにも大胆なメドレーが組み込まれていた。しかもそれは同系統の楽曲を単純に並べてみせるような次元のものではなく、さまざまな楽曲をナチュラルかつ劇的に繋ぎながら新たな長尺のドラマを生み出すかのようなそのさまは、彼女たちのバンドとしての体力向上、「バンド力」の強さをまざまざと見せつけるものとなっていた。メドレーの試行に踏み切ったことの表向きの理由としては、まず「求められる曲」と「やりたい曲」のすべてを一回のステージに盛り込むことが不可能なほど彼女たちの楽曲数が増えてきたことが挙げられる。しかもそれによって、新たなことにチャレンジするからこその新鮮な刺激や緊張感が得られたり、ある種のマンネリ解消に繋がったりもするのだ。だからこそ1年前を思い出してみると、長尺のメドレーが披露されたこと以上に「バンド力」のすごさを実感させられたことが僕の中では印象に残っているのだ。

そしてそれから1年を経て実施された今回の<番外編お給仕>には“Sessions selection”というサブタイトルが伴っていた。その事実に気付いた時に歓喜の声を上げた人たちも少なくなかったことだろう。そんなことが言えるのは僕自身も思わず「おっ、そう来たか!」と言いたくなった記憶があるからだ。その言葉から想像されるのは当然ながら、これまでのお給仕で随所に盛り込まれていたさまざまなセッション・パート、楽器同士のバトルの場面がふんだんに盛り込まれた演奏プログラムである。それは前回の長尺メドレーへの挑戦以上に「バンド力」を問われるものになるはずだし、逆に言えば、この局面でそれに挑むことを決めたのは、彼女たち自身がその向上について実感できているからであるに違いない。そして実際、僕はそれを見せつけられることになったのだった。

すべての客席が人で埋め尽くされた会場内は、開演定刻の17時半ちょうどに暗転。オープニングSEが流れ始めるのと同時に手拍子が自然発生し、5人のメンバーたちがさりげなく各々の配置に就く。そして最初に炸裂したのは「Unleash!!!!!」。セッションパートがふんだんに盛り込まれているはずのお給仕が、イントロさえ無いまま歌で始まるこの曲で幕を開けることに意外性を感じる。のっけからSAIKI(Vo)の高音の伸びと切れ味が素晴らしい。曲の後半ではKANAMI(G)と小鳩ミク(Vo, G)がそれぞれお立ち台に上がり、さっそくギターバトルを繰り広げていく。しかもこの曲の余韻を残すことなく次なる「FREEDOM」がスタートし、MISA(B)のベースから小鳩とKANAMIのギターへ、そしてAKANE(Dr)のドラムへとコンパクトなソロパートが続いていき、曲の終盤にはさらなるセッションパートが盛り込まれている。

そうした流れを経ながら、3曲目には早々にインストゥルメンタル曲の「Lock and Load」が登場。従来、インスト曲が演奏される際にはSAIKIがステージ上から姿を消していたものだが、昨年10月に発売されたEP『SCOOOOOP』の最後に収められていたこの曲に、彼女はキーボードで参加している。当然ながらそれは音源上に限られたことではなく、ステージ上では5人での演奏が繰り広げられている。各曲にセッションパートが盛り込まれていることもあってか、インスト曲がお給仕序盤の快活な流れの中で浮き上がることもない。そうした流れは以降も続き、定番曲ばかりではなく久しくお給仕で耳にしていなかった楽曲についてもイントロやアウトロ、もしくは曲のなかばにセッションパートを盛り込んだ形で披露されていた。しかも多くの曲がセッションで繋がれながら繰り出され、さらにインスト曲の「without holding back」も「from now on」も登場するという、通常のお給仕ではみられない展開となった。まさに『番外編』という看板に偽りなし、である。

そうした演奏内容だったこともあり、通常のレポートのように全体の流れを時系列で追っていくことが難しくもあるのだが、何よりも強調しておきたいのは、5人が本当に演奏を楽しんでいるさまが、そのたたずまいや表情からも伝わってきたことだ。「演奏を」というよりは「音楽を」と言うべきかもしれない。セッション的な要素を盛り込むにあたって、5人は各楽曲について改めて掘り下げていくプロセスを経てきたはずだが、それによってそれぞれの曲の解像度が上がっているかのような印象も受けた。単純に演奏パートが増えて1曲あたりの演奏時間が長くなっているだけではないのだ。

また、『SCOOOOOP』の誕生と共に世に放たれた「Dilly Dally」のオーディエンスを巻き込む力の強さには圧倒的なものがあったし、お馴染みの「Magie」が「Brightest star」とのマッシュアップ的な形で披露されたことには驚かされた。そしてこの夜のお給仕は、BAND-MAIDにとって現時点での名刺代わりの1曲というべき「Present Perfect」からの「NO GOD」という必殺の流れでクライマックスに至ったが、そこにもたっぷりとセッションパートが盛り込まれていた。

すべての演奏終了後、ふと気付かされたのは、2025年、年間を通じて彼女たちの活動の軸になっていたというべき「Zen」と「Ready to Rock」、「What is justice?」の3曲がいずれも披露されなかったという事実だった。もちろんそうした最新の鉄板曲たちが除外されていたのも『番外編』ならではの趣向だったものと思われるが、そのこと自体が、現在のBAND-MAIDにはそれらの存在なしでも充分すぎるほど濃密なお給仕を成立させることができるのだということを証明していたように思う。

セッションというものについての解釈には人によって温度差があるはずだし、BAND-MAIDにとってのそれは、その場での直感に基づいた即興的なものというよりは、あらかじめ構成を練られたものだといえる。なかにはそれをセッションと呼びたくないという読者もいるかもしれない。ただ、こうした取り組みによってメンバー個々が音楽的なボキャブラリーを豊かにし、楽器同士での会話をいっそう楽しいものにしていることは疑う余地もない。そして重要なのは、「セッションは1人ではできない」ということではないだろうか。ステージにおいてメンバー個々のソロパートをフィーチュアしたり、特定のメンバーだけが長いソロを披露したりするバンドは少なくない。ただ、メンバー全員での音楽的なやりとりをこんなにもたっぷりと楽しませてくれるバンドはむしろ稀有な存在だといえるのではないだろうか。しかもそこで披露される演奏は、各自の演奏技術の高さを見せつけるものというよりは、BAND-MAIDのバンドとしての機能性の高さを感じさせるもの。そうした彼女たちの「バンド力」に僕は惹かれているのだ。

途中、ある楽曲の冒頭で小鳩がエフェクターを踏み忘れ、演奏を一度中断してやり直すという場面もありはした。それについて小鳩は、スライディング土下座でもしそうな勢いで「ゴメンっぽ!」と謝罪し、SAIKIも「皆さん忘れてください。言いふらさないでください!」とフォローを入れていた。それを承知のうえでこの場でそのことについて書いてしまうのは、そうした出来事が現在のBAND-MAIDにとって通常は起こり得ないことであり、そのたったひとつのミステイクによって、逆に全体的な演奏レベルの高さについて痛感させられたからでもある。


読者の多くはすでにご存知のはずだが、2026年のBAND-MAIDは国境を超えながら密度濃いツアーを展開していく。夏には内外のさまざまなフェスにも出演し、11月には彼女たち自身にとっても念願だった日本武道館での公演が二夜にわたり開催される。そして2027年はお給仕を行なわず、15周年のアニバーサリーイヤーにあたる2028年に向けて新たなインプットを溜め込むことに徹するのだという。この夜のステージ上でもそのことが改めて報告されたが、会場を埋め尽くしていたご主人様お嬢様からの反応は、5人のさらなる飛躍に対する期待感に満ちた、とても温かいものに感じられた。

もちろんこうしたセッションパート山盛りのお給仕においても恒例の「おまじないタイム」は通常通りに設けられていたし、すべても演奏終了後、SAIKIが「みんなありがとう! 今年もよろしくね!」と挨拶した後に聞こえてきたのも、小鳩の「それでは行ってらっしゃいませ、ご主人様お嬢様」という言葉だった。そうしたことも含めたBAND-MAIDが生まれながらに持ち合わせてきた特徴的な要素は今も変わっていない。しかしこうした『番外編』などを通じてのさまざまな試行を重ねながら、5人の「深化しながらの進化」もずっと止まらずに続いている。だからこそ彼女たちのこの先の動きから、一瞬たりとも目を離すわけにはいかない。2026年最初のお給仕を観て、何よりも強く感じたのはそれだった。
取材・文◎増田勇一
写真◎伊東実咲

◾️<BAND-MAID WORLD TOUR 2026>

2026年 3月20日(金) Hong Kong Kitty Woo Stadium, Tung Po
2026年 4月11日(土) 神奈川 KT Zepp Yokohama
2026年 5月2日(土) 宮城 仙台GIGS
2026年 5月10日(日) 東京 Zepp Haneda
2026年 6月3日(水) Berlin Columbia Theater
2026年 6月5日(金) Frankfurt Batschkapp
2026年 6月6日(土) Munich Technikum
2026年 6月9日(火) Paris Bataclan
2026年 6月11日(木) London Electric Brixton
2026年 6月27日(土) 広島 BLUE LIVE HIROSHIMA
2026年 6月28日(日) 兵庫 KOBE HARBOR STUDIO
2026年 7月12日(日) 北海道 札幌ファクトリーホール
2026年 7月17日(金) 熊本 B.9 V1
2026年 7月18日(土) 福岡 Zepp Fukuoka
2026年 11月1日(日) 愛知 COMTEC PORTBASE
2026年 11月3日(火・祝) 大阪 なんばHatch
FINAL
2026年 11月13日(金) 東京 日本武道館
2026年 11月14日(土) 東京 日本武道館
※10月に北米、メキシコにて開催予定。日本公演も今後追加予定で、詳細は後日発表。
■チケット情報
▼お盟主様最速抽選先行チケット受付中
【広島、兵庫、愛知公演】
2026年2月21日(土)19:00~
▼オフィシャル先行受付中
【国内公演(広島、兵庫、愛知を除く)】
2026年2月21日(土)19:00~
https://bandmaid.tokyo/contents/1041130
▼チケット一般発売中
【ベルリン、フランクフルト、ミュンヘン公演】
https://www.livenation.de/band-maid-tickets-adp998166
【パリ公演】
https://www.livenation.fr/band-maid-tickets-adp998166
【ロンドン公演】
https://www.livenation.co.uk/band-maid-tickets-adp998166
【香港公演】
https://www.livenation.hk/band-maid-tickets-adp998166
◾️<CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2026>
開催日程:2026年4月3日(金)、4日(土)、5日(日)
※BAND-MAIDは4月4日(土) CENTRAL LAB. DAY1に出演いたします
詳細:https://central-fest.com
■<大港開唱Megaport Festival>

開催日程:2026年3月21日(土)、22日(日)
※BAND-MAIDはどちらか1日の出演となります
詳細:https://megaportfest.com/
■<Download Festival>
開催日:2026年6月10日(水) – 14日(日)
※BAND-MAIDの出演日は6月12日(金)を予定しています
会場:Donington Park, Derby
詳細:https://downloadfestival.co.uk/


