【レポート】⼟岐⿇⼦、川⼝⼤輔とのタッグによるスペシャルライブで「すべてがSerendipity」

2025.11.11 18:00

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⼟岐⿇⼦が11月2日、東京・日本橋三井ホール公演にて<⼟岐⿇⼦ SPECIAL LIVE “Serendipities!” feat. 川⼝⼤輔>を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。なお、同公演は12月4日にWinter Editionとしての追加公演開催も決定している。

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11月2日、日本橋三井ホールで土岐麻子のライブを観た。よく似合っていた。まろやかな音の鳴りもそうだし、モダンな中にどこか懐かしさを感じる会場の佇まいも好相性。そんな環境面にぴったりの選曲もなされていたのだが、その要となっていたのが川口大輔の存在である。昨年に土岐が同会場でライブをした際、川口と一緒にやりたいと思って日程を押さえたというエピソードもライブ中に明かされていたが、土岐と川口のタッグが生み出してきた洗練されつつもメロウで、ダンサブルな要素も多く含んだ楽曲の数々は、会場の環境や場の空気にピタリとハマっていたのだった。

定刻を過ぎたあたりで照明もBGMもそのままに、すっと川口⼤輔とバンドメンバーが姿を現した。フロントにセットされた鍵盤に川口がスタンバイ。後ろを固めるのは、近年の土岐のライブではお馴染みとなった高木大丈夫(G)、井上薫(Key)、林あぐり(B)、伊吹⽂裕(Dr)という盤石の布陣だ。

暗転すると同時にスタートした緩やかなインプロヴィゼーションを合図に⼟岐⿇⼦が登場、1曲目の「トーキョー・ドライブ」が始まる。まろやかなエレピの音とシュアなリズムセクションによる軽やかなグルーヴが放たれ、土岐の歌声が朗らかなニュアンスをもって響く。

この日の選曲は、昨年リリースされた最新アルバム『Lonely Ghost』収録曲「KAPPA」「August」「Lonely Ghost」、定番曲「Gift~あなたはマドンナ~」とカバーソング2曲を除き、あとの10数曲は川口大輔が作曲を務めた曲たちが並んだ。土岐麻子 × 川口大輔の作品がとりわけ多くリリースされていたのが2000年代終盤から2010年代前半にかけてなので、必然的に懐かしさを覚える曲や普段のライブではなかなか聴けない曲も多く、ファン垂涎のセットリストである。

「SUPERSTAR」から「smilin’」へ、さらには「prism boy」のアカペラでのハモリをイントロにした「乱反射ガール」へとライブは展開していき、ソウルやR&Bにファンク、ジャズといったブラックミュージック由来の要素に加え、どこかしら煌びやかな華を忍ばせた楽曲の数々がライブを加速させていく。

最初のMCでは、土岐と川口が小学校の同級生であったこと、大人になって再会したら音楽の方向性が一致しており、ともに作品を制作するに至ったことが語られた。住んでいた地域が近かったことはたまたまだろうから、土岐の発言を借りれば、たしかに「すべてがSerendipity(=思いがけない発見や偶然の幸運)」だけれど、こうして両者の奏でる音に触れると、なんだか全てが必然であったようにも思える。

そして本人曰く「演奏するみんながイメージ等を共有していないと成立しないタイプ」である川口の楽曲を、譜面通りに弾くだけでは醸し得ないノリやグルーヴ満載で届けているバンドの面々が土岐の音楽に触れたきっかけこそ、川口との初タッグだった「ファンタジア」だというのだから、もう出来過ぎなくらいの話じゃないか。

そんな演奏面の完成度を堪能できたのは「Kung Fu Girl」。オリエンタルなイントロからディスコビートが弾み出せば、場内からは自然とクラップが湧き起こる。鍵盤が2名いる編成によってより重層的となった音と絶妙にマッチするリリックも映え、言語だけでなく音としての面白さも味わえる歌である。

中盤にはバラードの数々も披露され、その中で“個人的にひどく落ち込んでいた時期に書き、メロディに合わせて土岐がこの歌詞を乗せてくれたことが嬉しかった”と川口が語ったのが「夏の横顔」だ。寂寥感を滲ませつつも、どこか慈しみにも似たニュアンスを感じさせる土岐の歌声が素晴らしい。ピアノメインで届けた「ホロスコープ」然り、ノスタルジックではあるもののメランコリックには傾かず、包容力たっぷりにまとめあげていた。

観客とのシンガロングでピースフルな時間となった「NEW YEAR, NEW DAY」からライブは後半戦。16分の緻密なシンバルの刻みから8分でどっしり推進するベース、ワウを効かせたギターがエキサイティングなプレイを繰り広げた「Flamingo」を経て、川口がアレンジを手がけたカバーソングとして真心ブラザーズの「サマーヌード」を投下。リムショットを用いたパーカッシヴなドラムにボサノバ系のコード感は、川口のルーツにあるというラテンミュージックの香りが濃い。土岐のスキャットやアウトロでの各パートのソロなど見せ場も十分であった。

ラストは「Gift~あなたはマドンナ~」によって一際晴れやかな空気が場内を満たし、ステージを後にする面々を送る拍手はすぐさまアンコールを求める手拍子へと変わる。

アンコール1曲目はASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ソラニン」カバー。カバーアルバム『HOME TOWN ~Cover Songs~』に収録された際に、編曲を川口が手がけていた曲だが、なんとも不意をつかれた感がありテンションはさらに高まる。メロディこそ原曲に忠実なもののサビで大胆に音数を減らしたり、ラストへ向けてオーケストラの如く壮大に白熱していくアレンジは、ライブ現場ですさまじい破壊力を発揮していた。

続く「Lonely Ghost」をしっとりと歌い上げた後は、ラストに満を持しての「ファンタジア」。あらゆる素敵な偶然を必然へと変えてゆく、洒脱なAORサウンドがホールに響き渡っていた。

土岐麻子と川口大輔。名タッグによる贅沢な一夜にはまだ続きがある。舞台は12月4日の東京・恵比寿 ザ・ガーデンホール。<土岐麻子 “Serendipities!” Winter Edition feat.川口大輔>と題した追加公演の開催が既に決定している。MCでも語られていた通りクリスマスも意識したPOPでゴージャスなX’MAS LIVEとなるそうなので、また違った装いのセットリストや構成となるはずだ。

取材・文◎風間大洋
撮影◎SUSIE

 

■<⼟岐⿇⼦ SPECIAL LIVE “Serendipities!” feat. 川⼝⼤輔>2025年11月2(日)@東京・日本橋三井ホール setlist
01 トーキョー・ドライブ
02 SUPERSTAR
03 smilin’
04 prism boy
05 乱反射ガール
06 KAPPA
07 Kung Fu Girl
08 夏の横顔
09 City Lights Serenade
10 ホロスコープ
11 僕は愛を語れない
12 NEW YEAR, NEW DAY
13 Flamingo
14 サマーヌード(真心ブラザーズカバー)
15 August
16 Gift~あなたはマドンナ~
encore
17 ソラニン (ASIAN KUNG-FU GENERATIONカバー)
18 Lonely Ghost
19 ファンタジア

 

■<土岐麻子 SPECIAL LIVE “Serendipities!” Winter Edition feat. 川口⼤輔>
12月4日(木) 東京・恵比寿 ザ・ガーデンホール
open18:00 / start19:00
出演:⼟岐⿇⼦
Band Members:川⼝⼤輔(Key)、⾼⽊⼤丈夫(G)、井上薫(Key)、林あぐり(B)、伊吹⽂裕(Dr)
▼チケット
全席指定 7,700円(税込)
※お⼀⼈様4枚まで購入可能
※未就学児童⼊場不可 / ⼩学⽣以上チケット必要
受付URL:https://eplus.jp/tokiasako/
主催・企画:ワイズコネクション

 

関連リンク
◆土岐麻子 オフィシャルサイト
◆土岐麻子 オフィシャルTwitter
◆土岐麻子 オフィシャルInstagram
◆土岐麻子 オフィシャルYouTubeチャンネル