【ライヴレポート】清春、恒例誕生日公演<The Birthday>にTOSHI-LOWのサプライズも「マジで嬉しい!」

清春が2025年10月25日、東京・恵比寿ザ・ガーデンホールにて<TOUR 天使ノ詩2025「LOCAL APPLAUSE」『The Birthday』>と題したバースデー公演で名場面の数々を生み出した。
10月30日に57回目の誕生日を迎える清春は、黒夢の再始動など、近年ますます旺盛な活動を展開している。その躍動の集大成とでも言うべきステージにファンは終始釘付けになっていた。


定刻の午後5時を15分ほど過ぎた頃に場内が暗転する。楽器隊が各々の配置につき、たっぷり間を置いてから清春が登場。歓声を浴びる彼がアコースティックギターをかき鳴らして歌い始めたのは「Masquerade」だ。この退廃美に心地好く酔ううちに「EMILY」「slow」「流星」「MOMENT」といった麗しのメロディが次々と放たれる。祝祭にありがちな堅苦しさとは無縁の、普段通りの清春のライヴであることが嬉しい。
今夜の清春をサポートするのは、大橋英之(G)、栗原健(Sax)、加藤エレナ(Pf)、SATOKO(Dr)といった名手たち。確かな技量に基づいた音楽の創造はもちろん、彼らとの軽妙なやりとりも見どころで、いつも以上にトークが弾む清春だった。彼によれば、恒例のバースデー公演の恵比寿ザ・ガーデンホールでの開催は今回で最後となるのだという。「僕を観るより、建物とか足場とか壁のことを思い出して」と独特の言い回しでファンと交流する姿が微笑ましい。




本編中盤、4曲の新曲が披露されたブロックも印象深い。清春のツアーでは、未発表の新曲をオーディエンスと共に創り上げていく過程が肝となっている。美しく空間を揺らすこれらの曲の中でも、「声」と名付けられた楽曲は既にファンの間で人気となっているようだ。また、この日に初披露された「青空暮れてゆく」というリリックが印象に残る曲は次のアルバムの核となりそうな、ドラマティックな包容力を備えていた。
観客を深く、遠い地点へと連れて行く「至上のゆりかご」が響き、清春がステージを後にすると、楽器隊によるセッションが始まる。本編がもう終盤に差し掛かろうとしていることが信じられない。衣装を変えた清春が再び姿を現すと、「A LULU IN THE RAIN」「allow」「Feeling High & Satisfied」が色鮮やかに連発され、最後は「SAINT」で場内の熱気が絶頂に達した。


アンコールでは、THE HARMONIESが清春のお祝いに駆け付けた。枕風(Vo)、サーベル・ミケ・健(Sax)、不知火・キャプテン・エレナ(Pf/Vo)と名乗る3人組は、2024年の清春ツアーのアンコールステージで生まれた新人バンド。彼らは今年、初のワンマンツアーを開催するなど、日に日に存在感を増している。巧みなアレンジで邦楽の名曲群をカヴァーする彼らが今宵の祝宴に選んだのは、安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」だった。SATOKOをコーラスに加えての特別編成で披露された祝福ソングに観衆は驚きと喜びを隠せない。
THE HARMONIESが去り、清春らが再びステージに現れる。楽器隊の「Happy Birthday To You」の演奏を合図にバースデーケーキを運んできたのは、なんと、BRAHMANのTOSHI-LOWだ。当然、場内の熱気も一気に高まった。近年、魂の交流を続けている盟友の登場は清春にとっても不意討ちだったようで、喜びを爆発させている。ここでTOSHI-LOWから誕生日プレゼントとして毛ガニが贈呈されると、フロアは爆笑の渦に包まれた。清春の好物を調査しての贈り物だそうだが、お立ち台に並べた毛ガニを挟んでの和やかなトークは、なんともシュールな光景。そして、2人のカリスマの温かい人柄が十分に伝わる名シーンだった。



「マジで嬉しい! 1曲歌っていってよ!」と清春が促すと、急遽セットリストには入っていなかった「MARIA」が“俊春”のアコースティックアレンジで披露されることとなった。
原曲のグルーヴを情緒豊かに再構築したTOSHI-LOWと清春の歌唱に体を揺らすオーディエンス。友情そのものを体現したアコースティックユニットの歌声が味わい深い。


TOSHI-LOWを笑顔で見送ると、いよいよショウのタイムリミットが迫ってきた。観客の空気を敏感に察知し、こちらも当初の予定にはなかった「忘却の空」が放たれると、フロアの一体感は増すばかり。ここから「ETERNAL」で清らかな詩情を生み出し、「SANDY」で感情を炸裂させるという流れは絶品だ。ラストの「HAPPY」が華やかな余韻を生む頃、時計の針は午後9時前を指していた。
「笑って帰って! 泣いて会いに来て!」──ファンとのしばしの別れを惜しむように清春が叫ぶこの名言は、何度聞いても身にしみる。彼の56歳最後のライヴは、笑みの絶えない、優雅で華麗な場となった。笑っているうちに、いつの間にか涙を流していると言ったほうが正確だろうか。人を魅了する術を知り尽くした、真のエンターテイナーが目の前にいた。
既報の通り、2026年には新ツアー<TOUR 天使ノ詩2026『余る程に楽園』>が開催される。昨年から今年にかけて、約100公演を成し遂げてきた彼の目には今、何が映るのだろうか。しばらく訪れていなかった地方への再訪も含まれる旅で、愛するファンと共にどんな情景を生むのか興味が尽きない。
取材・文◎志村つくね
撮影◎森好弘/石井麻木
■<TOUR 天使ノ詩2025「LOCAL APPLAUSE」『The Birthday』>2025年10月25日(土)@東京・恵比寿ザ・ガーデンホール SETLIST
01 Masquerade
02 EMILY
03 slow
04 流星
05 MOMENT
06 新曲
07 新曲
08 新曲
09 新曲
10 至上のゆりかご
11 A LULU IN THE RAIN
12 allow
13 Feeling High & Satisfied
14 SAINT
encore
15 CAN YOU CELEBRATE? (安室奈美恵) / THE HARMONIES with SATOKO
16 MARIA / 俊春
17 忘却の空
18 ETERNAL
19 SANDY
20 HAPPY



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