【インタビュー】グラビティ、新境地のニューシングル「黒」を携えて「今ステージに立ってる理由もみんなに伝えられる」

リアリティを追求した楽曲と奇想天外な活動で人々をあっと驚かせてきたグラビティが、大きな変化を生んだ。その変化は180度違うもの、といってもいいかもしれない。
これまでの7月リリースの「ピンク・ドーナツ」から、煌びやかなバンドイメージはダークなものに一変。メンバーの脱退も経て次にリリースされたシングル「黒」は、さらにそのダークさを強めている。いったいどういうことだろうか。
いまグラビティに起きている変化、そしてメンバーたちの想いを探ってみよう。
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──このたびリリースされるシングル「黒」もそうですが、グラビティは今年に入ってからバンドとしての方向性を大きくシフトチェンジしてきた印象があります。今年9月には8周年という節目も迎えられた中、まずはここに至るまでの背景を少し確認させてください。そもそも、方向性を変えることになった切っ掛けは何だったのでしょうか?
myu(G):流れとしては、今年1月に『tUrn OFF』っていうベストアルバムを出してるんですけど、そこに1曲だけ新曲(「the LI3ght_ON/OFF」)を入れたんですよ。曲調とかサウンドの面でというと、そこから変わり始めた感じでした。そのあと3月にEP『SERAPH1M』、7月にシングル「ピンク・ドーナツ」を出して、今回のシングル「黒」につながって来てます。
六(Vo):ただ、方向性が変わった切っ掛けを言葉にするのは…ちょっとむずいっすねぇ。実は、僕が前の状態だと「もう出来ないな」ってなったところから話が始まってます。
──えっ?!それはかなり深刻なお話だったりしますか?
六:深刻すぎますね(苦笑)。
myu:多分ここから話すこと、全部けっこう深刻です(苦笑)。
六:他のインタビューでも話してるんですけど、当時の自分たちがやってたことは、その時の“正解”だったし、“あの時代”だからこそできたもので。今ちょっと昔の自分たちを見ると照れちゃいます。(笑)今はそれを続けるよりも、ちゃんと今の自分たちの感覚で、今の自分たちの中身に合うものを作りたいって思ったんです。

──それはなかなか衝撃的なお言葉です。キラキラ系を自認していた、あの華やかでハジけたスタイルに限界を感じてしまったということなのでしょうか?
六:あの頃は、ちゃんと結果を出さなきゃっていう焦りが強かったと思います。でもそれを続けていく中で、もっと大事にしたい部分が見えてきたというか。今は、“どう見られるか”よりも“どう感じてるか”を優先したいです。
──なるほど。戦略が先に立ち過ぎたことにより、大事なものを見失いかけてしまっていたのだとしたら。途中でそこに気付けたのは幸いだったのではないでしょうか。
六:いつの間にかピュアな心を忘れちゃってたんだと思います。ふと気付いた時には、自分の中で「バンドの良さってこれじゃないはずなのにな」って感じるようになっちゃってて。明確に「ちゃんと胸張れるものやりたい」っていう気持ちになったんっすよ。じゃないと、あのままいったら潔く散っても散りきれないことになっちゃいそうだな、っていう怖さもある時期からは感じてました。
──いやはや、そこまで追い込まれていましたか。ちなみに、各メンバーは六さんのそうした気持ちを当時どのように受け止められたのです?
myu:六から一番最初にそういう話を聞いたのは僕ですね。去年の6月にツアー(<生きる意味より俺を探せ!!>)をやって、そのファイナルをO-WESTで終えたその日に「おつかれさま。ふたりでゴハン行こうよ!」みたいな感じで誘ったら、店に着いて席に座った瞬間「俺、グラビティを終わらせようと思ってるんだよね」って切り出されて(苦笑)。
──いきなりですか。青天の霹靂ですね。
myu:びっくりしました。こっちは普通に「ツアー楽しかったよね」みたいな感じで和気あいあいとした話になると思ってたんですけど、六は「終わらせ方を考えてるんだよね。このままだったら2年くらいで終わらせたい」って言い出したんですよ。
──六さんが、そこで2年という期限を持ち出したのは何故だったのです?
六:そこはメンバーのことを考えたからっすね。俺はメンバーのこと凄い好きだし、方向転換するとしてもみんなと一緒にやりたいと思ってるけど、もしそれが難しいんだったら2年の間にグラビティで売れ線を続けてお金を稼いで、その後はそれぞれで別のことをやるっていう選択肢もあるなって考えたわけです。もちろん、長い目で見たらバンドとしてはここで方向修正する方が絶対いいし、メンバーみんなにとってもきっといいって俺は思ってましたけど。
myu:だから、その日は六とめっちゃ話しましたよ。「グラビティとは別に、六のやりたいことをほかのバンドで新しくやってみたら?」とか、「方向を変えるんだとしたら、それはどんな風にやっていこうと思ってる?」とか。もう「ツアーおつかれー!カンパーイ!!」みたいな空気一切ナシでした(笑)。で、そこからもスタジオ入るたびに六とは相当いろいろ話し合いましたね。
──その後、メンバー全員にそのお話が伝わったのはいつだったのですか。
六:myuと話したちょっとあとぐらいですかね。
myu:それぞれみんな、六と2人でまずは話をしてると思います。まじまじとやめたいっていうよりかは、もう今の状態が無理なんだよねみたいな感じで。
杏(G):俺は機材車の中で聞きました。
六:当時、次のリリースは2ndフルアルバムにしようかっていう話が出てたんですけど、自分としてはそこにそれまでに出したシングルの表題曲たちを入れたくなかったんっすよ。ライブで歌ってても、なんか嘘つきながらやってるみたいな感じになっちゃうのがイヤで仕方ない状態だったし。どうしても、ここで区切りをつけたいってなっちゃったんです。とはいえ、アルバム出すのに13曲とか必要でそれを全て新曲にする、っていうのは現実的にそこからだと時間的に無理じゃないですか。そこで出て来たのがベストアルバム『tUrn OFF』を出すっていう方法で、そこに以前の曲と新曲1曲を入れて、そのほかの新曲は別にEPとして出そうよっていうことで『SERAPH1M』を出したんです。そういう流れを作れば、方向転換するにもいいんじゃね?って。
──となると、今年9月の8周年ライブを最後にドラマー・宏祐さんが脱退されることになったのは方向転換にまつわる流れの中で出て来たお話だったことになるのでしょうか。
リクト。(B):いや、そこは関係なかったです。
myu:結局、みんな元をたどればカッコいい音楽をやりたくてバンドを始めてるんで。途中まではああいうやり方を敢えてしてましたけど、根底の部分ではみんな同じ気持ちがあったと思います。
リクト。:俺もグラビティを続けた方がいいって思ってたんで、多少やることが変わっても何にも思わなかったですね。
六:そういう意味では、俺らが本当にやりたかったこととか、素直な気持ちでやってることが認められないんだったらまだしも、そうじゃない状態でちゃんとした勝負が出来ないまま、ヘンに落ち目になっていったらそれが一番イヤなんで。だったら、ここで勝負に出て胸張れることやって、それで無理ならちゃんとやめられるだろうし、上手くいけばバンドの呪いっていうんですかね?それも解けるんじゃないかなと思ったんですよ。
──つまり、今となってはその呪いは無事に解けたわけですね。
六:はい。今の方がやってることがみんなに響いてるって感じてるし、俺たちも自信持っていいものを出せてるっていう手応えがあります。
──もっとも、グラビティはもともと音楽そのものに対して実直なバンドであると感じていましたし、たとえば「溶けない雪」のようなシリアスで美しい楽曲、普通にカッコいい曲も以前かいろいろとありましたのでね。かつてのスタイルがカラフルなコーティングを施したドラジェ状態だったとすると、今現在は中身のアーモンド自体の香りや食感や味わいそのものを活かしたようなスタイルになっているということなのかもしれません。備わっていたポテンシャルを、よりわかりやすく提示することが出来るようになったのではないでしょうか。
六:だと思います、ほんとに。以前よりも深いところからの自己表現が出来るようになったし、今の方がバンドやってて楽しいっす(笑)。

──それは何よりです。ただし、方向転換していく過程ではライブ構成をどのようにしていくかという課題も出て来たのではありませんか。
六:とにかく今は今の曲達で勝負したいっていう気持ちを大事にしたライブをやってます。そして今のメンタルでやっていくのが照れる曲たちに関しては、セットリストから徐々に外していった感じですかね。でもそこにはステージからファンの顔を見ていて思うところもあったから、自分的に「これはやってあげたいな」っていう曲も芽生えてやってみたり、って感じです
──では、ここからはいよいよ最新シングル「黒」についてのお話をうかがって参りしまょう。まずは表題曲「黒」の生い立ちを教えてください。
六:9月にやったツアーファイナルで8周年記念でもあったライブのタイトルが<黒>で、先にそっちを決めてたんですね。なんか、黒っていう色が今のグラビティを表してるなと思ったんですよ。前まではメンバーカラーとかあったんっすけど、そういうのも似合わないバンドになりたいっていう気持ちもあったし。それに、色って全部グチャグチャに混ぜるとどんどん黒くなってくじゃないですか。まさに、その状態が今の俺らを表してるような気がしたんです。
──減法混色の原理というアレですね。
六:最初、今回のシングルには違うタイトルをつけるつもりでいたんっすけどね。でも、それも「黒」にしました。しましたっていうか、気付いたら「黒」になってたって言った方が正しいかもしれない。
myu:曲を作っていくうえでのイメージとしては、やっぱり今のグラビティの方向性を打ち出すっていう意味で暗めな曲を作ろう、っていう意識はこのところ随時あるんですよ。だから、わかりやすく言うとほんとに「黒くて沈んだ曲を作りてぇ」っていうモードでやってたのがこれです。別にこれを表題曲に持っていこうとは思ってなくて、最初は普通にグラビティの新曲のひとつとして作ってただけでした。でも、当時の気持ちみたいなものが出てるところはけっこうあるでしょうね。曲を作り出したのが去年の年末とか今年の1月あたりで、完成したのが2月くらいだったのかな。当時はまだバンドとしての方向を変えたばっかだったんで、やりたいことは見えてるにしても、それをやっていてこの先どうなっていくかは分からないっていう不安が音に出てるな、と自分でも思います。
──グラビティにとってのリアルがここには映し出されているのですね。
myu:あと、沈んでいくっていう面では海を思い描いてたところもあります。特に、曲の最初で鳴ってるアルペジオのフレーズに関してはリバーブを深めにかけて深く沈んでいくような雰囲気を出していくようにしました。ただこれ、僕だけで作ったわけじゃないんですよね。「ピンクドーナツ」を六の家でミックスし終わった時に、次のシングルはどうしようかみたいな話になって、ちょうど2番終わりくらいまで出来てた「黒」の原曲を六に聴かせてみたんですよ。そうしたら、その場で「いいね。これ次の表題曲にしようよ」ってなって。で、「じゃあ、この2番終わりの先を作ってみてくれる?」って六に投げたら今の形になって返ってきたんです。
──杏さんは「黒」が出来上がってきた際、ギタリストとしてこの曲とどのように向き合おうと考えられましたか。
杏:この曲って、ギターは歪みの音をほぼほぼ使ってないんですよ。今までクリーンな音ってそんなに使ってきてないから、もう音作りの段階からすげー大変で。今回そのへんはmyuにいっぱい助けてもらいましたね。
──クリーンな音を使ったということは、歪んだ音を使う時よりも、ピッキングや細かいニュアンスの面でプレイもシビアな精度が求められることになったのではありません?
杏:そうなんですよ。クリーンのピッキングって当て方ひとつで音の出方が全然違ってくるから、そこもmyuに「ここはこういうニュアンスで弾いて」っていろいろ言ってもらいながら弾いていきましたね。今回のレコーディングは凄く勉強になりました。
六:こういう曲だから音が歪んじゃうとこうなんじゃないかああなんじゃないかってやり取りして、細かい表現も大切にしたいし、グラビティとして唯一無二なものを作りたかったんで。そこは凄くこだわりました。
myu:この曲は5人でスタジオに入って編曲もしたしね。8割ぐらい出来てたのを、みんなで話し合いながら2割をさらに詰めていったんですよ。
リクト。:なんか、そうやってメンバー全員で向き合いながら曲と向き合えたのが凄い良かったです。
杏:みんなで頑張ったよね(笑)。
リクト。:ここまで8年くらいやってても、今までそういうことってあんまりなかったんで。データのやり取りとか、作曲者とそれぞれのパートがやり取りすることはあるけど、5人全員でみたいなのはほんとになかったから、ひとつのチームとして曲を作れたなっていう実感が凄いあります。音も実際バンド感が強くなってると思うし。そういう曲をシングルとして出せるのも嬉しいです。
──音の成分的にも、打ち込みの比率よりバンドの音の方が断然前に来ていますものね。
六:ウワモノの音を入れるの、最近あんまり好きじゃなくて。リアルなバンドの音を大事にしたいっすね。
myu:前はさー、実はみんな難しいことをやってるんだけどウワモノが多過ぎてよく聴こえない、みたいなことよくあったもんね(笑)。

──あぁ、そういえば。非常に失礼な言い方にはなってしまうのですが、初めてグラビティのライブを観た時に思ったのですよ。当時のカッチリと作り込まれた音源を先に聴いてから拝見したものですから、生で観て「あれ?みんな凄い弾けてるじゃん。これだけ演奏が出来るなら、何もここまで厚く同期をかぶせなくても良いのでは?」と。
一同:(笑)
六:成長ですね(笑)! あの頃はそのサウンドが好きだったのもあります! でも同期の使い方に対しても、そのあといろんなことに気付いたから今があるんだと思います。
──当然、そうした“気付き”は「黒の」歌詞の中にも織り込まれていますよね。くわえて、この詞には六さんの本音が多分にしたたまれているようにも感じます。
六:今までの詞も全然嘘じゃないんですよ。あれも本音で実は赤裸々だったんっすけど、書き方が前とは変わったんですよね。以前は伝えたいことがあったとしたら、それをキャッチーにすることをまず考えたし、ポップな言葉選びをする必要があって、その中に自分の言いたいことをちょっと混ぜるみたいなやり方してたんです。
──それは職業作詞家さんなどがよく使われる手法ですね。
六:わざと答えも出しちゃってたし、この詞は「こうだよ」って決めつけちゃってるところもあって、それもそれで良さではあったんですけどね。それを評価してくれた人もたくさんいて、それもわかってはいるけど、でも今みたいな書き方の方が歌として意味のある歌詞になってるなと自分で思うんですよ。
──「黒」の詞の中でも、ここまでのお話と深くリンクしているのは〈これでいいって思いたい いつか〉というフレーズかもしれません。
myu:今のグラビティにとって〈これでいいって思いたい いつか〉っていうのは、いろんな意味で言えることだしねぇ。この詞をひとつの物語として受け取ってもらってもいいんだけど、聴いてくれるみんながこれをどう受け取るのかな?っていうのが俺としてはけっこう楽しみだったりもします。
──それに、グラビティの昨今にあてはめずとも〈これでいいって思いたい いつか〉というフレーズは、多くの人にとって共感出来るものだとも思いますよ。それぞれの暮らし、日常の中で「これで良かったのかな。いつかそう思えるようになりたい」「きっとこれでいいんだ」と感じるような場面は、少なからずあるのではないでしょうか。
六:うん、ですよね。これは最近の僕が考えてることって感じですけど、こういう書き方だとみんなにもわかってもらえますかね。
──必ずや伝わるかと。ただ、少し気になるのが詞の最後に〈誰か裁いてくれ〉という言葉が置かれていることなのですよ。これはどのように受け止めれば良いのでしょうね。
六:それは僕がテレビで戦争特集を見てて出て来た言葉で、ガザの様子とかいろいろ映ってるのを観ながら、自分は好きなシーシャを家で吸ってるわけですよ。
──シーシャをご自宅で?道具一式をお持ちなのですか?
六:好きな時に吸いたくて(笑)。そんな風に自分は家でゆっくりシーシャ吸いながら曲のこと考えていて、同じ時代同じ時間にこんな大変な思いをしてる人たちがたくさんいて、シーシャを吸うどころか明日を生きるので精いっぱいな人がいるんだ、夢なんか見てる余裕もないんだろうな、と考えたらなんかこれも罰当たりなんじゃないかと……音楽も要は嗜好品で娯楽じゃないですか。
──NO MUSIC NO LIFEという言葉はあれども、厳密な意味で絶対的な生活必需品かといえば難しいところではあるでしょうね。
六:そうなんですよ。でもだからといって僕もここに必死で命を注いでいて何か出来るわけでもなくて。
──〈ミサイルも来ない部屋の中で〉とはそういうことでしたか。
六:ここまで言ってしまうのもよくないかな(笑)? これだけって訳ではないんですけど曲として聴いてもらって感じてほしい部分もあるので
──いえいえ、訊く側としてはとてもありがたいことです。ちなみに、そうした詞を歌っていく時の六さんがどのようなスタンスだったのかもぜひ教えてください。
六:ちゃんと伝わるように歌いたい、っていうのは当然ありました。今ってXとかでポストしたり、いろんなところから発信できる時代ですけど、歌で発信するっていうのはやっぱり特別なことだと思ってるんで。歌って表情が乗るじゃないですか。そこはめっちゃ意識してるっすね。
──タイトルがタイトルだけに、9月のライブ<黒>ではいちはやく「黒」を生披露されたそうですね。その時の雰囲気はいかがでした?
六:一応ステージの後ろに歌詞は出してやったんですけど、ファンのみんなからすると初めて聴く曲だから、「なんかまだつかみきれないけど、良い曲だった」みたいな感じだったみたいです(笑)。そういうような言葉を感想としてももらったし、歌ってる時の空気感としてもそういう雰囲気が伝わってきてました。
リクト。:ライブの最後の方でやったんですけど、曲を全部は覚えられなくても「いい曲だな」っていう気持ちをみんなには持って帰ってもらえたんじゃないかと思います。
myu:あの日は8周年でもあったし、ドラムがあのライブで脱退っていうタイミングでもあったんで、自分的に「黒」の詞が心に刺さり過ぎました。ぶっ刺さり過ぎて、それこそラスサビの〈これでいいって思いたい いつか〉はエモくなりすぎてそれ以降のことをあんまりよく覚えてません。そのくらい刺さりました。
杏:俺はそういうの関係なく、単純に記憶が飛んで2番をミスったっすけどね(苦笑)。今後のライブでは頑張ります!
──今後のライブを通して、きっと「黒」はますます掛け替えのない曲として育っていくことでしょう。期待しております。
六:今のグラビティにとって、この「黒」は最も自信のある曲ですからね。メンバーみんながやってて同じ気持ちになれる曲だし、一時的にとはいえ「このままだったらグラビティ辞めたいかも」って思った自分が、今ステージに立ってる理由もみんなに伝えられる曲になってると思います。ファンの中にはいまだに戸惑ってる人や、どう僕が変わっちゃったのかまだよくわからないっていう人もいるかもしれないっすけど、この曲から何かを感じてくれたら嬉しいです。
──先ほど、六さんは「色って全部グチャグチャに混ぜるとどんどん黒くなってく」と話されていましたが。逆に言えば、黒は何にも染まらない気高き色でもあります。ここからさらに本来の自分たちらしさを貫いていこうとするグラビティの姿勢が、この「黒」という楽曲には凝縮されていますね。
六:ほんと、この曲には今の全てが詰まってます。変わってるけど変わってないところも含めて、いろんなことが伝わるはずなんで。聴いてみて欲しいです。
──なお、今作には表題曲のほかにも「プワゾン」と「黒い街」というカップリング曲たちが収録されております。こちらについても少し解説をしていただけますと幸いです。
myu:「プワゾン」は、六から「ツーマンツアーとか、主催ツアーの時にやるセッションで盛り上がれるような曲が欲しい」って言われて作った曲ですね。だから、これはもうとにかくノリやすくてカッコいい曲にしよう!って思って作りました。「俺のギターを聴け!」っていう曲でもあります(笑)
──杏さんが「プワゾン」を演奏していく際、重視されたのはどのようなことでした?
杏:こっちは「黒」と真逆でゴリゴリに歪んでます(笑)。セッションだけじゃなくて、この曲はフェスとかにも殴り込みに行けるくらいの曲になったと思いますね。ライブでやるのが今から凄い楽しみっすよ。
リクト。:正直、自分的にはそんなに得意じゃないタイプの曲だったんですけどね。でも、ここでこれに挑戦することは自分にとって糧になると思ったんで頑張りました。ライブでやった時にみんなと楽しめそうだな、っていうのが想像出来るところが好きです。

──詞については、ここでの〈プワゾン〉とはDiorの香水のことのようですね。
六:僕がよくつけてる香水っす。ヒプノティックプワゾンっていうやつなんですけど、前に誰かから「それ、バブルの時期の売○婦がよくつけてたよ」って言われちゃって(苦笑)。
──えーっ!それは偏見が酷いですよ。
六:ですよね!僕はめっちゃいい香りだと思ってつけてたのに。しかも、これは先輩から受け継いだ香水なんですよ。勝手に名前を出していいかはわかんないっすけど、CLØWDの猟平さんから。
──バンドマンを経て、今や敏腕プロデューサーの猟平さんですね。
六:僕、猟平さんとキズの来夢さんのローディをしてたことがあるんです。ふたりともその香水を使ってたんで、めっちゃいい香りだったから自分も使うようになったんですよ。で、今となってはうちのファンの人たちにとって僕のイメージはこの香りになってるみたいなんですよね。多分メンバーにとってもそうでしょ?
myu:スタジオ入ってきた瞬間、作業しながら顔あげなくても「六が来たんだな」って香りですぐわかるもん(笑)。
リクト。:遠征中のホテルでも、エレベーター乗ると「あ、さっきまで六が乗ってたな」ってわかります(笑)。
杏:あー。わかる(笑)。
六:僕はそこにいないのに僕を感じられるっていうね。この詞は、そんなプワゾンをモチーフにして書きました。
──もう1曲の「笑う街」は、どのような背景を持った曲でしょうか。
myu:バラードにはしたくないけど、ノリノリにもしたくないっていうところから作っていった感じですかね。替えが利かないタイプの、心にしみるけどしみすぎない絶妙な曲にしたかったんです。ライブでの見せ方も意識してて、僕はいつも照明にこだわってるんですけど、演奏と歌をしっかり聴かせながら、そこに照明をマッチさせていったら絶対に良い光景が生まれるだろうし、メロディーや歌詞もより刺さっていくんじゃないかな、っていうことを想定しながら作りました。
六:この曲に関しては、myuが僕にも「ライブでアコギを弾いて欲しい」って言ってきたんですよ。みんなで楽器持つ曲だから、って。
myu:今それ、言おうか迷ってたんだよね。でも、俺から言っちゃうと六が弾くの確定しちゃうじゃない?
六:いや大丈夫。全然やるつもりだし。
myu:ってことで、この曲のイントロがアコギとボーカルだけにしてあるのはそのためだったんです。六が弾いて歌ってるのを想像して作ったんですよ。間奏も、みんなで向き合ってエモく弾いてるような図を想像して作りました。
リクト。:なんか、この曲はロックバラードっていう感じがします。
──ギターソロも素敵ですね。
myu:テクニック見せちゃってます(笑)。まぁ、この曲はギターが計3人いるんで。全員でコードを同じように弾いてもあれだし、俺はちょっとテクいことしちゃおうかなと。
杏:2Aの後ろで鳴ってるディレイのかかったクリーントーンは俺が弾いてて、この曲も自分なりに頑張りました。ライブではみんなで頑張ります!
六:ライブでやった時、みんなで楽器持ってみんなで同じ気持ちになりたいよね。それでこの歌詞になったところもあるし。この曲には自分の中でちょっと運動家みたいなイメージもあって、ちょっと政治的な内容も入ってるんっすよ。
──1960年代後半から1970年代初頭にかけ、アメリカを発端にして日本でも流行ったフォークソングに通ずるような面があるということなのですかね。
六:これも最近の自分が考えてることですね。政治に対して思うこと、みたいな。ちょっとムズい話に足を突っ込んじゃってます。
──選挙権年齢が18歳に引き下げられて以降、少しずつ若い世代の間でも政治に対する関心は広まってきているように思うのですけれども。その反面では、過剰に「ミュージシャンが政治を語るな」と叫びたがる人たちもいるのが実情です。その中にあって、六さんが素直な気持ちでこの詞を書かれたのはとても意義あることだと思います。政治は特別視する類いのものというよりも、むしろ我々の生活の根幹にあるもののはずですしね。誰にとっても他人事ではすまされないはずです。
六:そう僕も感じてるんですよ。「明日こそラクになれっかな?」っていう希望は持って生きていたいし、なるべく国がいい方向に動いていってくれたらなと思うので。こういう曲を世に出すことで、普段ニュースとか全く興味ないっていう人たちが、ほんのちょっとでも政治に関心を持ってくれたらこれを歌う意味もあるのかなって思ってます。
──かくして、今回のシングル「黒」はグラビティの今現在をありありと映し出す作品へと仕上がりました。これを踏まえて11月からは待望の<グラビティONEMAN 死体蹴り TOUR>が始まりますので、各メンバーからそれに向けてのビジョンを語っていただけますと幸いです。
リクト。:サポートドラマーを迎えての4人体制で臨む初めてのツアーなんで、どうしても来てくれる人たちの中には不安があったり、やっぱ「どうなるんだろう?」っていう気持ちがあるとは思うんですよ。でも、俺たちがやれることはみんなに音楽を届けることなんで。とにかく、今まで以上により良い音楽を届けていくつもりです。音で納得させるしかないな、って思ってます。
杏:4人で廻るのは初めてで、今回サポートドラムさんは2名の方に代わり代わりやってもらうんですけど、そういう新しい変化も含めて楽しんでもらいたいですね。
リクト。:そこは僕にとってもそうですね。いろんなドラムの人と合わせれるっていうのは自分にとって凄い貴重な経験になってくはずだし、けっこう楽しみでもあります。
myu:新しい体制でやっていくからには、ファンのみんなが「ここからのグラビティに対する期待値アガるな!」って感じられるようなライブをやっていきたいし、とにかく今回はシングル「黒」がここ約8年で一番良い仕上がりだなって思えるものになってるんで、「それを聴きに来い!」って言いたいです。絶対いいライブになる確信があるんで、不安も期待も込み込みで観に来てもらった結果、必ず「良かった!」って言わせます。
──そんな幸先の良い中にあって。ツアータイトルに“死体蹴り”との不穏な言葉が冠されているのは何故なのでしょうか。
六:あぁ、それはライブで2度殺す気でライブをしようというところからです(笑)。死体蹴りっていう言葉はゲームスラングでもあって、死んだヤツに追い打ちをかけるみたいな、ダメ押しのことを言うんですね。で、これまでグラビティってアンコールってものをやらないバンドだったんですよ。
──確かにそうでした。本編ですっきりと完結していましたものね。
六:最初からアンコールやるって決めてやるくらいなら、僕は「本編にそれ入れろよ」と思ってましたからね。でも、アンコールの楽しさっていうのもわかるんっすよ。本編が一旦終わって、ちょっと休んで、さらに2曲追い込みで楽しむみたいな。だから、今度のツアーでは今まで固執していたアンコールはやらないっていう考えをやめることにしてみました。前に進んでいくには柔軟なところもあっていいなと思うし、その方が楽しめるんだったらその方がいいし。で、やるならツアータイトルからアンコールがあるよっていうことを演出できた方がいいじゃん、となりました。一回殺してアンコールでも殺す、っていう意味での死体蹴りです(笑)。みんなにも死ぬ気で暴れて、死ぬ気で楽しんで欲しいっすね。そして、共に今を生きましょう。
取材・文◎杉江由紀
「黒」
[発売日]2025/10/22
【A-type】

[型番]GRA-042
[値段]¥1,500(tax in)
[CD]
1.黒
2.プアゾン
3.黒(instrumental)
4.プアゾン(instrumental)
【B-type】

[型番]GRA-043
[値段]¥1,500(tax in)
[CD]
1.黒
2.笑う街
3.黒(instrumental)
4.笑う街(instrumental)
<グラビティONEMAN 死体蹴り TOUR>
詳細:http://gravioffi.com/category/live/
2025年11月1日(土)西川口Hearts(埼玉)
2025年11月9日(日)仙台MACANA(宮城)
2025年11月16日(日)HOLIDAY NEXT NAGOYA(愛知)
2025年11月21日(金)神戸VARIT.(兵庫)
2025年11月22日(土)大阪RUIDO(大阪)
2025年11月29日(土)INSA(福岡)
2025年11月30日(日)INSA(福岡)
2025年12月06日(日)つくばPARKDINER(茨城)
2025年12月07日(日)柏ThumbUP(千葉)
2025年12月10日(水)横浜ReNY(神奈川)
TOUR FINAL
2025年12月21日(日)渋谷WOMB







