【ライヴレポート】TETSUYA & The Juicy-Bananas × Like-an-Angel、誕生日公演<THANK YOU>にヴォーカリストTETSUYAとベーシストtetsuya「音楽漬けの人生を送れているのがすごく幸せ」

2025.10.21 11:30

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L’Arc-en-Cielのtetsuyaが10月3日、自身の誕生日に<TETSUYA BIRTHDAY CELEBRATION>と銘打ち、<TETSUYA&The Juicy-Bananas「LIVE 2025 “THANK YOU”」>と<Like-an-Angel「LIVE 2025 “THANK YOU”」>という2つのライヴを恵比寿The Garden Hallで開催した。

前者はバンド“The Juicy-Bananas”を従えたヴォーカリストとして、後者はL’Arc-en-CielのトリビュートバンドLike-an-Angelのベーシストとして、1日に二回ステージに立ったかたちだ。ソロヴォーカリストと、バンドのベーシスト。両方で1日に二度同じステージに立つアーティストは、ほとんどいないだろう。両公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

【TETSUYA&The Juicy-Bananas「LIVE 2025 “THANK YOU”」】

■<1st >ヴォーカルTETSUYAは
■高音域で実力を発揮した

第1部となる<TETSUYA&The Juicy-Bananas「LIVE 2025 “THANK YOU”」>は「Eureka」からスタート。ツインギター、ベース、ドラム、キーボードという編成の“The Juicy-Bananas”のサウンドが、しなやかに楽曲を描き出していく。続く「Make a Wish」ではスタンドマイクを両手で握り歌っていたTETSUYAが、サウンドのブレイクに合わせて、マイクスタンドを斜めに倒れるように身体の右側に持っていきすぐ戻すという、ヴォーカリストらしいアクションも見せた。

「久しぶり~!」と始まったMCでは「どうですか? 進化してる? 止まってる?」と客席に呼びかけ「止まってないよ~!」という客席の声に笑顔を見せる。そしてこうまとめた。「3年ぶりのこのメンバーに会って演奏して。全然止まってないな、さらに進化してるなと」──会場も拍手でレスポンスした。

中盤で「TIGHTROPE」「愛されんだぁ I Surrender」とアップチューンを続けて披露。煌めくメロディーが、観客の気持ちを高揚させていく。ステージ上も観客も、そこにいる全員が笑顔になっていた。TETSUYAが作る曲には、聴く者を笑顔にするポップネスが備わっている。彼のポップネスが、会場を幸福で満たしていく様子が、その場の空気から伝わった。ロマンチックなミディアムチューン「Time goes on~泡のように~」では、サビの最初の高音域でクリアなトーンを響かせる。トーンでクレッシェンドをかけ、最後には力強く声を響かせ、安定したスキルも見せる。後半では澄んだファルセットも聴かせた。

再びMCへ。朝起きた瞬間「お父さま、お母さま、ありがとうございます」と言った、と誕生日らしいエピソードを。次の瞬間「ごめんね、育ちが出ちゃって」と観客を笑わせる。そしてこう続けた。「僕がこうやってステージに立てているのも、お父さま、お母さま、そして(ファンの)みんな、メンバー、スタッフのおかげ。感謝しています」

ライヴは後半へ。カラフルなライトがステージを彩った「lonely girl」、エレクトリックなサウンドを大胆に取り入れたロックチューン「蜃気楼」と続く。TETSUYAは平メロとサビとでは、言葉の発音の仕方を変えており、その滑らかさには、ヴォーカリストとしてのスキルを感じずにはいられなかった。TETSUYAが天を仰ぎながら“Come on!”というジェスチャーで観客を煽った「LOOKING FOR LIGHT」。このアクションが合図だったかのように、客席全体がバウンドしたように動き出す。「READY FOR WARP」のアウトロでジャンプを繰り返すTETSUYA。観客も合わせてジャンプ! 曲が終わると、TETSUYA&The Juicy-Bananasはステージを後にした。

アンコール。本イベントのグッズTシャツを着用したTETSUYAとThe Juicy-Bananasのメンバーたち。ステージ上に準備されていた椅子に腰かけ「最近買ったベースを自慢してもいい?」と、スタッフからベースを受け取る。そして、今回のソロライヴについて「新曲、用意できなくてごめんね」と素直に胸中を吐露した後、次の曲はソロライヴでは初めて演奏する曲であること、でもみんなが知ってる曲だと述べ、「誕生日に、この歌詞を歌いたいなって思った」と締めくくった。

放たれたのは「未来世界」。L’Arc-en-Cielのアルバム『BUTTERFLY』(2012年)に収録された無垢なメロディーが心を浄化するイノセントなバラードだ。そっと歌い始めるTETSUYA。1番はベルの単音とTETSUYAの声だけ。つまり、ほぼアカペラだ。聴き入る観客。途中からバンドのサウンドも入り、TETSUYAは間奏でベースソロを披露。最後はレアなサプライズシーンを観客に刻み付けた後は、彼のソロライヴではお馴染みの曲「白いチューリップ」「Roulette」「Are you ready to ride?」と続け、祝祭を思わせるハッピーなムードの中、ライヴは幕を閉じた。

【Like-an-Angel「LIVE 2025 “THANK YOU”」】

■<2nd>新曲を世界最速披露
■年末からの全国ツアーも発表

開演予定時間を過ぎた頃。第二部の幕が切って落とされた。暗転し、闇に沈んだ空間をレーザー光線のようなライティングが切り裂く。Like-an-Angelのメンバーが順番にステージへ。ヴォーカルのjekyll、ギターのrenoとsaki、ドラムのhibikiがスタンバイ。最後にtetsuyaが姿を現すと、歓声が一段と大きくなった。オープニングを飾ったのは「the Fourth Avenue Cafe」だ。会場からクラップが起こる。sakiがステージ上手の台に上りギターソロを弾く場面では、ベースを弾きながらsakiに目を向けるtetsuyaの姿があった。

「winter fall」「BLESS」と、ヴォーカルの繊細なニュアンスやファルセットが、楽曲のひとつの要になる曲が続く。冒頭の3曲でtetsuyaがjekyllのヴォーカルをさらにビルドアップさせようとしているのがわかった。jekyllは中高音域で倍音のような力強い歌声を聴かせる。これは既にLike-an-Angelの大きな武器だ。そこにtetsuyaは、さらに別の武器を加えようとしているのではないか……そんなことを思わせた序盤の3曲だった。

「Hello、みなさん、こんばんは」と日本語でjekyllが挨拶すると拍手が起こる。続いて英語で、「この日はtetsuyaの誕生日、特別の日だ、だから音楽で一緒にお祝いしよう」と告げると、観客が、わっと沸いた。

「flower」では、ギターの2人が異なるアプローチを見せる。sakiは楽曲のウォームさを、renoは可憐さを表現しているように感じた。間奏のハープは打ち込みだったが、jekyllはちょっとだけハープを吹くようなパフォーマンスを見せ、照れたような笑顔を見せた。

「HONEY」「花葬」「侵食 -lose control-」を続けて披露。3曲ともリリースは1998年だ。3タイトルのシングルを同時リリースしたうえ、3曲ともチャート上位に叩きこんだことで当時話題となった。序盤に続き、セトリだけでサプライズが続く。この大胆さこそ、tetsuyaの真骨頂のひとつ。誰もやろうとしないこと、考えつかないことをハイクオリティーでやってのける。「HONEY」では、hibikiのダイナミックなバスドラが、原曲によりハードな色合いを加えていたのも印象的だった。

ライヴは中盤へ。Like-an-Angelのデビューシングル「Angel beside yoU」が放たれた。2024年10月3日、つまり去年のtetsuyaの誕生日にLike-an-Angelのメンバーが彼にプレゼントした曲だ。観客も一緒に歌っている。そこにいる全員が、この曲を通してtetsuyaの誕生日をお祝いしているかのようだった。

曲終わりでjekyllがマイクをとった。デビュー曲について「どうだった? 好きだった?」と客席に呼びかける。その後、「好きならもっと声を聞かせて」……とばかりに、会場を右、センター、左に分け、順番に「声出して!」と盛り上げていく。jekyllのマイペースさが現れたこの光景に、観客も笑いながら大声でレスポンスした。

「ありがとう」と満足げな笑顔を見せたjekyllが、「次の曲を英語バージョンで演奏する」と告げる。すると「YOU GOTTA RUN -English Version-」へ。tetsuyaのコーラスも走り出し、jekyllがステージ前ギリギリでしゃがみこみ、目の前の観客に視線を向け、時おり手を伸ばしながら歌った。その最後に「Every body!」とjekyllが客席にマイクを向けると“YOU GOTTA RUN”と、観客が大合唱でレスポンス。

「GOOD LUCK MY WAY」では、フロントの4人がステージ最前へ。ステージ向かって左から、tetsuya、reno、jekyll、sakiと立ち台に上がり、それぞれのパフォーマンスで観客のボルテージをさらにあげていく。サビでは会場中がシンガロング。この日のLike-an-Angelのライヴは観客とともにシンガロングするシーンがたくさんあった。

加えて、jekyllがマイクを観客に向けるシーンが以前より格段に増えていたようだ。tetsuyaの誕生日だったからなのか、それとも楽曲を観客と一緒に楽しむために、もっとシンガロングが必要だと思い取り入れたのか。どちらにしろ、これまでの彼らのライヴよりも、エネルギーそのものが躍動するようなステージであったことは間違いない。TETSUYAのソロ曲「I WANNA BE WITH YOU」をLike-an-Angelで演奏するという、まさにこの日だけのサプライズも飛び出した。

しかし、この日、一番のサプライズは次の瞬間に準備されていた。アンコールの声がかかる中、ステージに紗幕が下りてくる。厳かで迫力あるコーラスがSEとして流れる中、スクリーンには“これから演奏する曲はスマートフォン撮影OK!!”の文字。次の刹那、スクリーンにされたのはこの文字だった。

“Like-an-Angel New Song「Crash to Rise」”──薄闇に沈むステージにスタンバイするメンバーたち。SEだと思っていた“Ah~ Ah~”というコーラスが、新曲のイントロにそのまま繋がる。メンバーが演奏を始めると、客席は最初から“Oh~ Oh~”の大合唱になった。新曲を初めて披露する場所がライヴである場合、サビや後半で観客をシンガロングに誘うパターンはあるが、SEから映像の演出で、最初から会場を歌声でひとつにした光景は、これまで見たことがない。

ここに、Like-an-Angelが今、目指しているもの、そしてtetsuyaのプロデュース能力の高さが現れていた。メランコリックなメロディとバンドアンサンブルの抜き差しで、妖艶な趣さえ感じられた「Angel beside yoU」とは一転、作詞をjekyll、作曲をsaki、tetsuyaが担当した2ndシングル「Crash to Rise」は、勢いのあるビートで一気に駆け抜けるアップチューンだ。油断したらこっちが置いて行かれそうな突風のようなスピード感と、タイトでテクニカルなバンドサウンド、既術したシンガロングでのスケール感が魅力の1曲である。そのシンガロングのスケール感は、これからアンセムソングになりそうな予感さえある。

前作「Angel beside yoU」では全英詞だったが、新曲「Crash to Rise」では1番の終わりに“夢を追いかけて、自由へ”、曲のラストで“果てまで、響け”など、日本語が使われていたのも大きな進化だ。英語と日本語の違いを、発音の視点からシンプルにまとめると、英語は子音を強めに発音し、日本語は子音を弱く発音するゆえに母音にアクセントがある。jekyllは、この違いを実に上手に、シームレスに聴かせることに成功していた。特に“ア行”と“エ行”の中間のような発音をうまく使っていて、この発音で日本語は少し英語っぽく聴こえるし、英詞でも日本語を聴いているような感覚になる。これはL’Arc-en-Cielの曲を歌い続けてきた中で、jekyllというヴォーカリストが見つけ出したひとつの答えだと言っていいだろう。「Crash to Rise」で、jekyllはこのオリジナリティーを存分に発揮し、新たな魅力を見せてくれた。デビューシングルのリリース、海外での初ライヴなどの活動が、Like-an-Angelのバンドサウンドを進化させ、さらなる高みへと向かっていることがわかる。

1stのソロライヴでは「新曲もなくてごめんね」と言っていたTETSUYAだが、ここで新曲があるじゃないか。しかもイントロからの大合唱、またしてもしてやられちゃったな……と、口角が上がる思いだった。tetsuyaはいつでも、次のヴィジョンを考えている。いや、もっと先まで見据えている。しかも、アップデートを続けながら。でなければ、新曲のみを撮影OKにはしないだろう。SNSが主要な情報源となった今、情報解禁と同時にLike-an-Angelのライヴ写真や動画という熱量を加えたのだ。

そしてMCへ。tetsuyaがマイクを取った。この日は「会場入りしてから何も食べていないことに、今気が付いた、だからエネルギーが足りない」──とまるで知人に話すような口調で観客に語りかけた後、「こういう時、バナナを食べるといい」と笑った。客席ではこの言葉にあちこちで“MUKIMPOくん”グッズが揺れた。さらに本編で披露された「Angel beside yoU」について、「1年前の今日、プレゼントされた曲」と再び客席に微笑んだ後、こう締めくくった。

「音を奏でるって幸せだなって。そんな僕たち5人の未来を奏でようと思います」──この言葉を受け「ミライ」へ。力強くリズムを刻むtetsuya。他のメンバー4人も、その気持ちに応えようと、丁寧にかつエネルギッシュな演奏と歌声を奏でる。サビでは、ステージから虹色の光が客席を照らしていた。

そして、The Juicy-Bananasのメンバーも参加し、出演者全員で「READY STEADY GO」へ。TETSUYAとjekyllがヴォーカルだ。同曲はhydeの「Are you fu××ing ready~?!」というシャウトをきっかけに始まるライヴのキラーチューン。この日は、TETSUYAが「Are you fu××ing ready~?!」とシャウトし始まるか……と思ったら、バンドメンバーたちが奏でたのは「Happy Birthday to You」。出演者全員とスタッフからのサプライズに、TETSUYAは正面を向いたまま一瞬ストップし、“ちょっとぉ~”というように表情をほころばせた。

ステージにケーキが運び込まれ、ファンとバンドメンバーからのお祝いの言葉が綴られた大きなサテン生地の寄せ書きも渡された。そして客席をバックに出演者全員で記念撮影をすることに。ステージ上では広げきれなかった寄せ書きの布を最前列のお客さんが持ち撮影を遂行。撮影後に寄せ書きを客席から受け取ったtetsuyaは「ありがとね」と、観客の目を見て笑顔でお礼を言っていた。

さらに「ありがとう、みんな。1日でヴォーカリストTETSUYAとベーシストtetsuyaができた!」と喜び、こう続けた。「この1年、リハーサルやレコーディング、いろいろあって。忙しかったけど、音楽漬けの人生を送れているのがすごく幸せ。皆さんのおかげです、本当にありがとう」。

今回の<TETSUYA BIRTHDAY CELEBRATION>は、Like-an-Angelの2ndシングルのレコーディング、TETSUYAソロのリハーサル、Like-an-Angelリハーサルを同時進行で行ったという。この日だけでなく、TETSUYAからtetsuyaに変わる瞬間が幾度となくあった中、プロデューサーとして、そしてバンドのリーダーとして、自分も含めて総勢10人を束ねたのだ。視野の広さ、トレンドに対する敏感さ、多角的な思考は、tetsuyaらしい側面だと思うが、中心人物としてそのすべてをマルチタスクで同時進行し「音楽漬けの人生が幸せ」と笑顔を見せるなんて。ほんと常人じゃない。常人じゃないことができるくらい、彼は音楽が好きでたまらないのだ。

仕切り直しで(?)スタートした「READY STEADY GO」では、イントロでメタルテープが飛ぶ。L’Arc-en-Cielへのリスペクトも忘れていない演出だ。1番をTETSUYAが歌い、2番以降をjekyllが担当。L’Arc-en-Cielではtetsuyaのコーラスパートをjeykillが歌うなど、ふたりのヴォーカリストのスキルで、レアなシーンを作り出していた。ギター4名、ベース1名、ショルダーキーボード1名、ドラム2名、そしてヴォーカル2名で繰り出した「READY STEADY GO」で会場は祝祭のムードに溢れ、観客の大合唱とともに、TETSUYAの長い1日は幕を閉じた。

終演後には、12月17日に「Crash to Rise」がリリースされることに加え、<Like-an-Angel TOUR 2025-2026 “Crash to Rise”>の開催が発表された。12月21日の神戸 Harbor Studioを皮切りに全国4都市8公演。そのファイナルは2026年1月31日の横浜 Bay Hallとなる。

取材・文◎Aki Ito
撮影◎Toshikazu Oguruma/Tetsuya Matsuda

 

■<Like-an-Angel「TOUR 2025-2026 “Crash to Rise”」>
▼2025年
12月21日(日) 神戸 Harbor Studio
12月27日(土) 名古屋 The Bottom Line
12月28日(日) 福岡 DRUM Be-1
▼2026年
01月31日(土) 横浜 Bay Hall
詳細:https://www.tetsuya.uk.com/contents/986594

 

■2ndシングル「Crash to Rise」
2025年12月17日(水)リリース
作詞:jekyll
作曲:saki . tetsuya

 

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