【インタビュー】10-FEET、アニメ『ウマ娘 シングレ』オープニング主題歌に常識の打破「概念をも塗り替えるような音楽作りを」

2025.10.11 18:00

Share

■イレギュラーなものを作りたいってことでなく
■アイデアの種が出てきたときに、どう活かすか

──リアルタイムで今の10-FEETを表現しようってことですよね。実際、プレイ的にもアレンジ的にもアイデアも詰め込んでますよ。1番と2番でオブリフレーズを変えていたり、歌うベースラインがあると思えば、ファンキーに攻める箇所もあったり。サビでドラムの手数も多めにしていたり。もう次から次へと。しかもAメロ、Bメロ、サビなどの一般的な曲構成ではなく、メロディラインを変化させたり、半分に減らしたり。アイデアの宝庫みたいな感じです。すごくクレバーでありつつ野性味もあって、これが今の10-FEETということですか?

KOUICHI:ライブをより意識した制作やドラムというのが、今回は特に強かったと思います。ライブでやったらどうなるか?って。ライブってことに対して、この曲をどう料理するか、みたいな。そこはメンバー3人で話しながら作っていきました。

──サビに出てくるスネアで刻むようなリズムが、疾走感を出すポイントにもなっていますね。

KOUICHI:そう感じ取ってもらえたなら嬉しいです。

▲KOUICHI (Dr / Cho)

──NAOKIさんも、やり倒してますよね。どういう狙いでベースのアプローチを考えていったんですか?

NAOKI:TAKUMAの作ってきたデモから最初に感じたのが、ベースで曲をどうウネらすか。ベースは、ギターとドラムの間をつなぐ役割というか、音階のあるリズム楽器みたいな面もあるじゃないですか。ギターとドラムの隙間をどうやって作っていくかを、ベーシストっぽく考えるのではなく、どうすれば楽曲が一番映えるのかという感覚で組み立てていったのかな。TAKUMAがデモ段階でイメージしていることも考えつつ、曲全体がよりウネるように、というのはテーマではありました。

──それがAメロのベースラインであり、サビのフレージングであり?

NAOKI:そうです。自分のイメージが仕上がっていく感じや、その過程は楽しかったですね。

▲NAOKI (B / Vo)

──Aメロの前にある、10数秒のイントロ部分がまたいいんです。イントロの感じで盛り上げていくかと思わせて、Aメロでパッと切り替わる展開にハッとさせられる。

KOUICHI:こういう感じは、たぶん今までの僕らの曲になかったですよね。あのイントロの感じのままAメロに突入しても、全然イケますけど、Aメロでニュアンスを急に変えるという。TAKUMAのアイデアです。

TAKUMA:今回、よく“Aメロの場所”という会話をしながら、3人で作っていったんです。

──ああ、ずばり“Aメロ”ではなく、“Aメロと言われる場所”ですよね。

TAKUMA:そう。ロックの“サビ”の概念だと、激しめで勢いがあってカッコいい、そして印象的というのが、わりと多くのパターンなのかなと思うんです。でも、“サビ”って日本特有の表現なんですかね? 語源は調べてないですけど、いわゆる曲の一番重要で、おいしいところって意味じゃないですか。

▲TAKUMA (Vo / G)

──曲の中で最も印象的で覚えやすく、繰り返し歌われるメロディーラインという、いわば曖昧なものですね。

TAKUMA:例えばMR. BIGの代表曲「To Be With You」は、日本人の言うサビというのは“♪I’m the one who wants to be with you”ってところですよね。だけど僕は、個人的に胸がグッとなるのは、マイナーコードを弾いて、いきなり“♪Hold on, little girl”と歌い出だしの部分。そこでやられるんですよ。だったら、“♪Hold on, little girl”が「To Be With You」のサビやんって思うわけで。あとMR. BIGの「Green Tinted Sixties Mind」は、“♪A green-tinted sixties mind”って歌うメロディとハーフテンポリズムの絡みがサビだと言われるけど、曲タイトルを言われた瞬間に思い浮かべるのは、MR. BIGが好きな人ならイントロのタッピングのギターフレーズが流れると思うんです。じゃあ、それがサビやん、みたいな。

──重要でおいしいところをサビと呼ぶなら?

TAKUMA:そう。印象的であり、音楽的な力を持っているところ。あと前後関係によって力を持つ場所が作られたりもしますよね。静かなところから急にドーンとなったりするところとか。そういう意味では、「スパートシンドローマー」はイントロと呼んでいる部分もサビやし、Aメロもサビだし。唯一Bメロはベースが接着剤のような役割になって、ギターやドラムなどを引き立て合う場所であるかなと。

──なるほど。

TAKUMA:それにAメロ、Bメロ、サビとか、そういった概念をあんまり考えずにやりたかったんですね。イレギュラーなものを作りたいということではなくて、最初のアイデアの種が出てきたときに、これをどう活かすか。並びが問題じゃない。どこにあってもいい。アウトロの瞬間に2秒出てくるだけでも、それが一番印象的ならそうしなくちゃいけないと。その結果、こうなったんです。僕はAメロが一番印象に残るかもしれないと思ったんで、Aメロがサビでもいいなって捉え方。サビだから、どこにあっても、何回出てきても、違う種類であってもいいと。そういう作り方です。そこはメンバーで共有してました。