【ライヴレポート】Petit Brabancon、ツアー<CROSS COUNTER -02->ファイナルに1時間20分の濃密で熱い時間

Petit Brabanconが9月25日、東京・渋谷Spotify O-EASTにてライヴシリーズ<CROSS COUNTER -02->のツアーファイナルを開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
凄まじいライヴだった。2024年9月、名古屋のライヴ評で「間違いなく過去最高だった」と書いたが、その1年後に、その最高記録はいともあっさりと更新された。どれだけハードで強靱な演奏でも決して力任せのマッチョなものにはならず、むしろ繊細で中性的で美しいとすら感じる。ほとんどMCらしいMCもなく、インターバルもなく、フルスロットルで駆け抜けた1時間20分。休むことなく動き、叫び続けたメンバーから、一瞬たりとも目が離せなかった。息もつかせぬ濃密で熱い時間だった。これがロックのライヴというものだ。

<Petit Brabancon「CROSS COUNTER -02-」>も最終日。この日はPetit Brabanconのワンマンライヴである。ライヴシリーズ初日Zepp DiverCityでの凜として時雨との対バンライヴも見たが、凜として時雨のギリギリ切羽詰まった狂気とも言えるパフォーマンスとプチブラのヘヴィでアグレッシヴなライヴの激突は非常に見応えがあった。おそらくは対バン相手を強く意識してとりわけハードな曲を中心にセットを組んだとおぼしい凜として時雨に対して、泰然自若とばかりに受けて立ち、王道のライヴを堂々と展開したプチブラは、バンドとしてきわめて高いレベルで“安定期”に入っていると感じたが、最終日となるワンマンライヴで果たしてどんな姿を見せるのか。

yukihiro作の「move」をSE代わりに登場するオープニングはここのところ変わりないが、登場していきなり演奏したのがまだタイトルのついてない新曲だからこちらの気分もぶち上がる。この曲も含め、この日は3曲もの新曲がプレイされたのは、彼らのクリエイティヴィティが依然旺盛であることを示すが、それ以上にバンドとして絶対に守りに入りたくない、毎度お馴染みの曲を予定調和にプレイするだけの怠惰なライヴにおさまりかえりたくないという強い思いがあったはずだ。さきほど“安定期”などとうっかり書いてしまったが、彼らがもっとも忌み嫌うのが“安定”とか“安住”という言葉であるのは間違いない。新曲が演奏されるたびライヴが加速していく、その刺激とドライヴ感が強烈だ。

彼らのライヴの凄さは、これが最高、これ以上はないと思わせながらも、その高度と深度と激しさと刺激を、やるたびにそのつど更新していくことだ。そしてその高密度のライヴを引き出し盛り上げているのは、間違いなく客の熱狂的な反応である。演奏だけではプチブラのライヴはここまでの高みに到達しないだろう。
Petit Brabanconはオーディエンスにハダカになることを要求する。すべての仮面を脱ぎ捨て、腹の中にある弱さも劣等感も醜さも惨めさも汚濁も絶望も孤独も鬱憤も怒りも悲しみも、すべて洗いざらい吐き出してみろと言う。ふだんの生活では決して見せることのないそれらの感情をすべて吐き出せばお前は自由になれると挑発する。つまりプチブラのライヴはカタルシスであり、魂の解放区なのだ。リスナーの魂を解き放ち自由にすることが彼ら最大のエンタテイメントなのである。だからこれだけヘヴィでハードで重苦しいサウンドが連続しながらも、そこには奇妙なほどポジティヴな解放感がある。そうして解放されたオーディエンスのエネルギーがバンドの演奏をさらに加速させ、会場のヴォルテージは上がるばかりだ。

この日のライヴでは要所で大合唱が起こっていた。京はしばしばマイクをフロアに向けて歌うことを促してもいた。だが決して我々は彼らの歌詩の細かい意味を逐一くみ取って納得したり共感したりしているわけではないはずだ。京の歌と、断片的に聞こえる言葉と、バンドの演奏と、サウンド全体が爆音で訴えかけてくるものをカラダ全体で感じることで、自らの肉体の奥底に眠っている言語化できない衝動や本能のようなものがたたき起こされるのである。それこそがプチブラの得がたいロック性である。だからこそ私たちは彼らのライヴでハダカになれる。彼らはCDに歌詩カードをつけないし、インタビューなどで歌詩の細かい意味やメッセージを説明することもしない。オーディエンスの熱気と一体化したライヴの轟音の中にこそ彼らが全身で伝えたい真実があるのだ。それが痛いほどわかったライヴでもあった。「非人間、独白に在らず」「刻」と続いたヘヴィ・ドローン・ノイズの連続には息が詰まりそうになった。

年内のプチブラのライヴはこれが最後だという。次のライヴは2026年3月のツアー<If You Just Stare Then Headbang or Die>──”見てるだけならヘッドバングするか死ね”とでも訳すのだろうか──となる。その時には新曲もタイトルがつけられ、形になっているかもしれない。震えて待て。
取材・文◎小野島大
撮影◎Cazrow Aoki/尾形隆夫

■<Petit Brabancon「CROSS COUNTER -02-」>2025年9月25日(木)@東京・渋谷Spotify O-EAST セットリスト
OP move
01 新曲
02 BATMAN
03 dub driving
04 a humble border
05 新曲
06 I kill myself
07 眼光
08 主張に手を伸ばす修羅
09 Common destiny
10 新曲
11 非人間、独白に在らず
12 刻
13 渇き
14 OBEY
15 Micky
16 Don’t forget
17 疑音
18 Vendetta

■<Tour 2026「If You Just Stare Then Headbang or Die」>
▼2026年
3月06日(金) 東京・Zepp DiverCity
open18:00 / start19:00
3月08日(日) 宮城・仙台 RENSA
open16:00 / start17:00
3月12日(木) 京都・KYOTO MUSE
open18:30 / start19:00
3月13日(金) 京都・KYOTO MUSE
open18:30 / start19:00
3月15日(日) 岡山・岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
open16:30 / start17:00
3月21日(土) 大阪・なんばHatch
open16:00 / start17:00
3月22日(日) 愛知・名古屋 DIAMOND HALL
open16:00 / start17:00
3月28日(土) 福岡・福岡 BEAT STATION
open16:00 / start17:00
3月29日(日) 福岡・福岡 BEAT STATION
open16:00 / start17:00
※詳細後日発表
関連リンク
◆Petit Brabancon オフィシャルサイト
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