【インタビュー】10-FEET、TAKUMAが語る極上ギターサウンドの秘訣「魔改造が止まらない」

2025.09.24 12:00

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■剣道の試合に真剣を持ったやつが来たぞ!
■あいつヤバいぞ”ってぐらい(笑)

──そしてギブソンのレスポールスタンダードは?

TAKUMA:こいつは非の打ち所がないですね、ほんまに。買ったときのノーマルの状態から完成度が高かったですけど、これも今、ピックアップは交換していて。ギブソンの60sバーストバッカーに落ち着いたのかな。わりとP-90っぽい感じでシャキッとした音ですね。バーストバッカータイプ3ほど歪みを強調していなくて、モダンとヴィンテージの中間ぐらいの出力。なおかつP-90みたいに音の輪郭がしっかりしたまま前に飛ぶという、めちゃくちゃいいピックアップだと思います。最近のギブソンSGを楽器屋さんで試奏したらめちゃくちゃ良くて。調べてみたらピックアップに60sバーストバッカーが載っていたので、今、所有しているギターのうち3本ぐらいは60sバーストバッカーを載せていますね。

▲Gibson Les Paul Standard

──最近の新顔は、ボディーとネック&指板にメイプル材を使っているギブソンのロウパワーSGです。

TAKUMA:これ、メルカリで買ったんですよ。コメントを見たら元バンドマンの子が売りに出してて。「以前はバンドやってたけど、結婚してやらなくなったから、使う人に弾いてもらったほうがいいと思って、売り出します」みたいなコメントだったと思うんですけど。それに加えて「ボディ裏にはステッカーの痕も残ってます」みたいなコメントがあって、たしかに四角いでっかいステッカーを貼ってた痕があって、僕はその上からステッカー貼ったんで、ちょっと写真では見えづらいですけど。除光液でステッカーを取ろうとしたのか塗装もちょっと痛んでいて、ステッカー焼けしてるんです。けど、そこもバンドマンっぽいなって。色もカッコ良かったし。

──サテンオリーブグリーンですね。

TAKUMA:はい。僕、10-FEETがバンドとして走り出したとき、チェリーフィニッシュのギブソンSGを弾いてたんですよ。エクスプローラーに憧れながらも買えずの懐事情だったので。その後、エクスプローラーを買ったんですけど、10-FEETを始めたときはSGだったからということもあって、ブラックフィニッシュのSGも以前から所有しているんです。チューニング違いの曲でSGを使ったり、常に活動の傍にはSGがいるっていう感じ。なので、元バンドマンが売りに出してて、「まだまだこのギターを弾いてやってください」って想いと、珍しい緑色っていうこと、それにボディもネックも指板も全部がメイプル材ってところにも惹かれて買いました。弾いたらすごく音も良かったし、今では愛着も湧いてます。もともとセイモアダンカンのJBっぽいピックアップが載ってたんですよね。ただ、音は普通に鳴るんですけど、ポールピースの位置が弦とズレてて。どうしてかな?と思ったら、ストラト用のハムバッカーが載っていたという。

▲Gibson SG Raw Power

──ああ、セイモアダンカンのトレムバッカーみたいに、ハムバッカーのポールピースの位置をストラトとかのシンクロナイズドトレモロやフロイドローズ等の弦間ピッチに合わせて、幅が広いという。

TAKUMA:そうそう。でも、それも若い頃のバンドマンあるあるで。“ストラト用やけど、ええねん”って、無理やり載せ換えて使ってた感じもまた、“ああ、バンドマンだな”って感じられていいんですよ。そういうことが連想できると、さらに愛着が湧いて、“責任を持って魔改造して使います”という気持ちになる。もちろんリアのピックアップは交換しましたけどね(笑)。そのメルカリの出品者は、最近までバンドやってた感じもあるから、どこかで知り合いのバンドマンと出会いそうですけどね(笑)。

──いいですね、いろんなストーリーとロマンがあるSGで。でもメイプル材だから、王道のSGとは違う音ですか?

TAKUMA:やっぱりマホガニー材のSGよりもシャープですね。モダンなアンプであれば、そのシャープなところもふくよかにできるパワーがあるので。結果、おもしろいサウンドになっていると思います。

▲Fender American Professional II Stratocaster

──あと「深海魚」などではフェンダーのストラトを使っていますよね。Zepp Hanedaのときは2本のストラトがスタンバイしていました。ナチュラルフィニッシュのストラトはプロフェッショナル IIですね。

TAKUMA:そうです。Push/Pushでリアをハムっぽい音(フロントピックアップをON)にもできるシリーズです。ただ、速攻でその機能を排除して、リアを別のピックアップに換えましたけど。

──ははは。

TAKUMA:僕がピックアップ交換とかを始めた当時、東京スカパラダイスオーケストラの加藤さんから「もう俺が使いそうにないピックアップをあげるよ」って幾つかもらったんですよ。そのうちのひとつが、米国テキサスのリオグランデというブランドのムイグランデだったんです。それを載せたんですが、これがむちゃくちゃいい。ハムバッカーとP-90の間みたいな音で。張りもパワーもあって、めっちゃカッコいいんです、音が。目立ちすぎってぐらい力強くて、逆に使いどころが難しいほどで。

──テキサスらしく、太く歯切れのいいエッジ感ですか?

TAKUMA:いや、“剣道の試合に真剣を持ったやつが来たぞ! あいつヤバいぞ”ってぐらい(笑)。威力があり過ぎて、使いどころを探しているんですけど、ムイグランデは奇跡のピックアップだなと思ってて。ストラトを3本持っているんで、他のギターに載せてみたらどんな音になるのか聴いてみたくて、通販で探すんですけど、本当にないんですよ、絶版だから。ブランド直のホームページも見つけたんですけど、どうやらやってない。となると、メルカリとか通販しかなくて…でもいくら探しても出てこない。

──今の時代、ネットで買えそうですけど、ないんですね。

TAKUMA:そう。メルカリとかを使えば、多少は出てくるはずなんですけど、ムイグランデがあったとしても、テレキャスター用とかハムバッカーなんです。僕、テレキャスターは所有してないけど、こうなったらムイグランデを付けるためだけにテレキャスを買おうと。それでテレキャスター用のムイグランデを出品しているネットショップから買ったんですよ。かなり状態も良さそうな商品写真だけど、中古だから6,800円だったんです。

──それは安いかも。

TAKUMA:めっけもんでしょ? ほとんど未開封の箱に入った状態のものが2セットあるってことだったので、“こんなレアなピックアップが箱に入った状態で、しかも2個!”ってことに少し不思議な気持ちになったんですけど、“はよ買わななくなる”って思ったので買ったんですよ……詐欺でした。

──そんな。

TAKUMA:買った直後に“在庫が切れてます”って通知がきて。“いや、在庫ないって、俺もう入金したやん”と。“しかも、2個売ってたやんけ。在庫切れっていうけど、1個は残ってるやろ”って。そうしたら“すぐに返金しますので、まずLINEでお友達になってください”となって。……もうね、なんとかペイで返金しますってのは、今の時代、全部詐欺なんですよ。その瞬間、うわ〜ってなった…みたいな(苦笑)。まだ、Nintendo Switchの新しいやつとか、プレステ5とか、みんなが欲しがっている商品だったら分かりますよ。ところが、世界でそいつしか出品していないような、レア過ぎて誰も買わないようなピックアップですよ。これ欲しい!ってなったのは、世界で俺だけかもしれないのに。

──ムイグランデを探してる人なんてそうはいません。

TAKUMA:そうですよね(笑)。“そんなもんを詐欺に出すなよ”と。“そんなもんに引っかかってんなよ、俺”と。そう思うしかないっていう。結果、“もう買えない“ってなったわけですよ。買えないんだけど、ムイグランデが素晴らしすぎるから、どうしても欲しいと思っていたときに、スカパラの加藤さんは、なんとピックアップをくれただけじゃなくて、先ほどお話ししたGRINNING DOGのピックアップ巻き名人の岸本さんを紹介してくれたんです。そして、ここから岸本さんが大活躍してくれるんですよ。

──この物語にどんな続きがあるんですか?

TAKUMA:「リオグランデのムイグランデが欲しいけど、手に入らないんです」って相談したら、岸本さんが「OK、作るよ」と。「えっ、作れんの? えっ!!」と。しかも「もうちょっとローがあったらいいとか、もうちょっと歪みがあったらいいとか、要望があったら言って」とまでおっしゃってくれて。細かく要望を伝えたら、岸本さんはその通りのピックアップを作ってくれたんです。とんでもないピックアップが出来上がってきたわけで。それが今、サンバーストのストラトに付いてます。

▲Fender American Standard Roadhouse Stratocaster

──Zepp Hanedaで撮影した当時はミニハムバッカーでした。

TAKUMA:そのときはまだミニハムでしたね。「深海魚」ではフロントとセンターのシングルコイルを使っているんですね。でも、もし他のギターがトラブったときに、リアをハムにしておけば他の曲でもサンバーストのストラトを使えるかと思って。

──載せ換えてみて、やはりヤバいサウンドだと。

TAKUMA:“深海魚”がめちゃくちゃ強いシーラカンスみたいになった(笑)。リオグランデの地位を脅かしてます。めちゃくちゃ音がいいです、ほんまに。最高峰だと思います。それくらい岸本さんのピックアップはすごい。

──職人中の職人ですね。

TAKUMA:そうなんです。でも、そこまで高くないんです。岸本さんはピックアップで20万円ぐらい取ってもいいぐらい。ジャーンと弾いたとき、僕、飛び上がりましたもん、「なんじゃ、こりゃ!」って。それに、「ハムバッカーだったら、TAKUMAくんにはこんなのがいいと思ったんだよ」って作ってくれたピックアップも、もう良すぎて。それはギブソンの’76エクスプローラーに載せてます。エグいです、めちゃくちゃ音がいいです。

──本当にギターをカスタマイズしまくりの日々なんですね。

TAKUMA:ハンダを使う改造には一生手を出さないつもりでいたんですけど、ピックアップをたくさん交換するようになってから、自分で作業できたほうがスピードも10倍ぐらい上がるなと思って。もちろん楽器屋さんにお願いすれば、仕上がりもいいし、音もいいので、“このピックアップはメインで使えそうだな”と思ったら、京都のBIG BOSSさんかワタナベ楽器さんで交換してもらうんですけど。試行錯誤の段階では、ほとんど自分で改造してます。リハのときも楽屋で5分ぐらいで交換して音決めしてとか、そんなこともしてます。

──敏腕テックさんみたいですね。

TAKUMA:このボディとピックアップの組み合わせで、このアンプを鳴らす、というのだけは自分でできるようになろうと思ったので。いや、楽しいですよ、本当に。今、自分が必要としている音に対して、必要なパーツとか機材が自分の周りにめちゃくちゃ転がっているんで(笑)。やればやるほど、ライブでもレコーディングでもいい音が出るし、いいことづくしやなと思ってます。

──成果を得られるって楽しいですよね。

TAKUMA:そうなんです。時間は掛かるんですけどね。でも、いつしかそういう改造に取り組む時間も減っていくと思うんですね。今もいろんな答えがどんどん出ていくから、各項目で試してみたいことが今後減っていくわけで。ただ、最高点を見つけたとしても、別に旅が終わるわけではなくて。自分の好みも変わっていくし、新たなアンプやピックアップも出てくるので。これからはある程度、目的を持って、そこに向かった改造が増えていくと思う。ここまでめっちゃ面倒臭くて、時間もお金も掛かっているけど、沼にハマって良かったと思います。

──ますます極めていくわけですね。

TAKUMA:だから、ギター友達の相談にもめちゃくちゃ乗れると思う。「こういう音にしたいんやけど、誰か答えてくれへんかな。そんな人がおらへんかな?」ってとき、僕は、そんなおじさんになっているはず(笑)。けっこう力になれますよ、めちゃ詳しくなっているから。

──ちなみにですが、ギブソンのエクスプローラーもレスポール・スタンダードも、ピックガードはすべて黒ですよね。ところがレスポール・スタンダードのハニーバーストフィニッシュって、通常はアイボリーカラーのピックガードだと思うんですが、これって?

TAKUMA:京都のBIG BOSSにオーダーして、黒を作ってもらったんです。おっしゃる通りクリーム色のピックガードだったんですけど、黒に換えました。そこもこだわりのひとつですね。