【ライブレポート】シド・マオ、<MAO TOUR 2025 -夜半の銃声->閉幕。「笑顔でライブがやれるのは、ダメなときもみんなが見守ってくれていたから」

シドのボーカルをつとめるマオが、最新作EP『夜半の銃声』を携え、<MAO TOUR 2025 -夜半の銃声->と題した全国ツアーを実施。8月24日に東京・SHIBUYA WWW Xで行なった公演で、本ツアーを締めくくった。作詞だけ行うシドとは異なり、全曲作詞・作曲を手掛けるソロ。『夜半の銃声』では自分が好きな、今やりたい音楽をより全面に打ち出し、ソロ第2章へと足を踏み出したマオ。ファイナル公演では、熱気渦巻くライブハウス空間を目線1つで自由に操りながらポップスからロック、様々なテイストのバラードまで幅広い楽曲を見事に歌いこなし、オーディエンスの心を打ち抜き、翻弄しまくった。
“ギューパン”とマオがXでつぶやいていた言葉通り、最後方まで人、人、人で埋め尽くされた満員のフロア。開演時刻を迎え、BGMが流れるなか、マオバンドのサポートメンバー、nishi-ken(Key)、DUTTCH(Dr)、Leda(G)、Shoyo(B)が次々と姿を現わす。「マオ~!」と叫ぶ黄色い歓声を浴びながらマオ(Vo)が登場。早速ステージからフロアの柵へと足を伸ばし、目線で気合いを飛ばし、ライブは新作の1曲目「体温」で幕を開けた。イントロから瑞々しいサウンドが場内に放たれていき、そこにマオのヴォーカルが加わる。届いてくる声はあきらかに芯のある美声を取り戻していて、キャッチーなメロディーをさらに爽やかに彩っていく。そのキラキラした歌声とライブでの再会を喜び合う歌詞で、ファンをときめかせたあと、マオが「いけるか渋谷!」と叫ぶと照明が真っ赤になり、骨太なバンドサウンドが鳴り響き「夜半の銃声」が始まると、いきなり不穏な空気が流れ出す。マオがキレキレのシャウトを入れたロックな歌唱と鋭い視線でフロアを煽ると、激しく拳を突き上げていた観客のエネルギーはさらにパワーアップ。間奏のギターソロが終わると、マオは手で作った拳銃で観客を次々と撃ち抜き、“離れていてもこの歌が勇気となれ”という熱い気持ちをライブならではのパフォーマンスで届けてみせた。
至近距離でファンの熱量を確認したマオは「イェー! マオです。スゴいね。めちゃめちゃ盛り上がってていいじゃん!」とフロアに呼びかけ、今日がツアーファイナルであることを伝えると「GUILTY」を投下。ゆったりとしたテンポのヘヴィなサウンドに歌が絡まりあい、場内に重苦しいムードが立ち込めていったあとは「縄と蝶」へと繋いでいく。お立ち台に立ち上がったマオは妖しい表情を浮かべながらムチを振る動作を繰り返し、重苦しい空気を妖艶な雰囲気へと変えていく。こうして観客たちを曲の世界観へと陶酔させていったあとは、バンドメンバーを交えたMCが始まった。
この日はどのメンバーもテンションが高く、Ledaは「マオバンド、結束を高めた集大成を見て下さい」と叫び、マオのソロでは10年来タッグを組んできたバンマスのnishi-kenも「マオさんの新しいビジョン、新しいステージ、そのエネルギーが放出されるのを感じて欲しいですね」と自信満々に伝えると、それを側で聞いていたマオは「いいバンドだよね」とつぶやいて幸せそうな笑みを浮かべる。レコーディング、本ツアーを経て、バンドがマオとの連帯感、人間的にも距離を縮めていったことをなによりも感じたのがこの後のポップスブロックだった。
「朝帰り」のアレンジは美声が戻ったマオの今の歌声に合わせて、よりポップテイストを押し出したものになっていて、それが歌と見事にマッチ。しっとりと聴かせていたバラード「違う果実」は、驚くほどアーバンなテイストに振った煌びやかなアレンジへと変更。マオの哀愁をにじませた歌声に、上品で大人びたテイストを添えて届けてみせたのだ。ファンはそんな新しいヴィジョンのマオのパフォーマンスに目を輝かせながら釘付けに。
そんなファンに向かって、マオは「ノリノリな曲ではよくあるけど、こういう曲で体ではなく心が1つになっていくような感覚がありました。ありがとう」と、すぐさまその手応えを言葉にして伝えた。そして、この流れからMCへ。マオのトークに「ああ~」とか「おお?」とテンポよく相槌を入れていくファンに対して「お前ら、通販番組の裏でやってるアレ(サクラ)だろ?」といってマオが茶化すと、観客もメンバーもこれには大ウケ。気をよくしたマオがこのあと通販番組の司会者に扮し、ファンと息の合った掛け合いを楽しんでいると、会場から「かわいい!」という声があがる。「はいはい。AIがいってんだろ?」とマオが再びからかうと「違う~」、「本物」、「本当にかわいい」とファンが反論。この日はより近い距離感でファンをいじりながらフロアの君主となり、気さくでユーモラスな一面をたっぷり感じられるMCでも観客を支配していった。そうして「このあとはしっとりと」といって、ライブは「深海」から再開。
照明の演出でブルー色に染まった幻想的な空間。静謐な音像のなか、ピアノの調べとしっとりとした柔らかなタッチのマオの声にそっと導かれるように、オーディエンスはどんどん海へ潜っていくような錯覚に陥いる。だが、それも束の間。余韻に浸る間もなく、マオが「ウォー」と渾身のシャウトを入れ、曲は続けて「枯渇」へと展開。エモーショナルな低音ボイスと、ものすごいスゴい熱量を内包したバンドサウンドが場内に放出されると、観客たちはぼう然とした表情で立ち尽くす。最後にバンドサウンドが途切れ、静寂に包まれた中、マオが今にも泣きそうな声で“な~み~だぁ~”とエンディングをアカペラで歌い、ドラマチックに曲を締めくくると、場内に渦巻いていたせつない気持ちがマックスに高まり、観客たちは拍手をするのも忘れてその歌声に聴き入った。
こうして対極にあるような2曲のバラードを届けたあと、マオは改めてフロアを見渡し「今日は男も結構いるね」といい「俺、Xで“今日のかわい子ちゃん”とか書いてるけど、あれ、男も含まれてるからね」と男性ファンには甘口対応で話しかけてみせる。Xの話題は続き、ライブ後のエゴサで自分のことを褒めちぎってくれる子のプロフィールを見にいくと「○○、○○、マオって。だいたい俺の名前を3番目に書いてる子が本当に多いんだよ(笑)。嫌なんだよ! せめて2番手ぐらいに入れて。プロフィール変えるの、今夜の宿題ね!」とファンと約束を交わしたあとは、ライブもいよいよ終盤戦へ。

「ここからいけんのかー!」と激しい口調でフロアを煽ったあと、シャウトで気合いを入れて始まったのは「HABIT」。ライブアンセム投下に、観客たちはもちろん熱狂。拳を振り上げながら叫び、nishi-kenが叩くタンバリンと一緒にクラップを響かせていくと、熱い一体感が場内に生まれていく。間奏ではギターのギュイーンというスクラッチノイズに合わせて、マオが巻き舌でカッコよくシャウトを連呼して「お前らもっといけるだろ?」と叫び、さらなる盛り上がりを作っていく。マオが着ていたデニムジャケットを脱ぎ捨て、続けてパンキッシュなロックチューン「ストロボ」が始まると、観客たちはお立ち台に立つマオの指示に合わせて、手を上げながら右へ左へと一斉に移動し、モッシュを繰り出す。フロントまで出てきたShoyo,Ledaが軽やかにソロを引き継ぎ、フロアを盛り上げると観客たちは一丸となって“オイ、オイ”と叫び声を上げ、マオバンドとファンの熱いバトルが始まる。「アガってきたな、東京! ファイナル、全員でかかってこい!」と叫んだあと、マオが息をたっぷりためこみ、巻き舌でタイトルコールを告げて始まったのは「ROUTE209」。ゴリゴリのベースイントロが鳴り響いたあと、マオが感情むき出しのヴォーカルでフロアに襲いかかると、観客のボルテージはさらに上昇。「もっとこいよ」とでもいうようにステージからフロアの柵へと足を伸ばし、不敵な笑みを浮かべて観客を鋭い目つきで挑発していくマオは、まさにこの場の支配者。本編ラストに「mannequin」をダメ押しで畳みかけると、DUTTCHのバスドラがドコドコと高速で鳴り響き、フロアは狂ったように大暴れ。会場の熱気が最高潮に達したところで、マオがお立ち台に立ち、高らかに中指を立てる。怒濤の攻めナンバー連発で最後の最後まで観客、ライブ空間を支配してきたマオが掲げていた手を下げ、お立ち台から降りたところで本編は終了。
アンコールに呼ばれたマオは、さっきまでこの場を支配していた人格とは別人のような笑顔で「イェー」と声を上げてはしゃぎ、片手に持った自撮り棒でメンバーや客席を撮影しながら登場。みんなで記念撮影をしたあと、アンコールは「chandelier」でスタート。オシャレなポップサウンドにのせて“こっちへおいでよ”と歌うマオに向かって、ファンが指や手で作ったハートを次々と差し出していくと、ハートウォーミングな空気が場内に広がる。「不埒な体温」が始まると観客は再びスイッチが入ったようにクラップとジャンプを巻き起こし、そこにレパートリー屈指のハードなライブアンセム「最低」を轟音で畳みかけると、フロアは秒で狂乱状態に! 舞台上ではマオが咆哮をあげ、メンバーも破壊的なステージを繰り広げ、アンコールでこの日の最高を更新してみせた。
「みんな、いい顔してるぞ!」と観客たちの興奮ぶりを讃えたマオは、このあと、昨年と同じように自身の誕生日である10月23日に東京・恵比寿LIQUIDROOMで開催するバースデーライブ<「20251023」>について触れ、今回はマオ初のHalloween Liveとして「仮装もやるから、これは来てね!」と伝えた。そうして、このあといきなり神妙な面持ちで「ここで1つ、みんなに言わなきゃいけないことがあるんだけど。心の準備はいいかな?」とシリアスなトーンで語り掛けると、場内に緊張感が走る。数秒あけたあと、マオが明るい声で「クリスマスライブをやります!」と言った途端に、マオのイタズラに引っかかった全員がため息を一斉にもらす。そして、そのライブを12月13日、東京・大手町三井ホールで開催すること。さらに、「今年はコンセプトがあって、1番長いライブをやります」と明かすと、それをこの場で初めて知ったバンドメンバーもファンと同じように驚愕。この日は、1部と2部の間に休憩を挟みながら、全曲オリジナルで過去最大の曲数のライブに挑むという話に続けて、同場所で翌日も公演を行なうことを伝えた。「12月14日はライブは無し。4時間ぶっ通し、めっちゃ長いクリスマスパーティーをやります」。今後の予定を次々と発表し、ファンを喜ばせたマオは「俺がこうして笑顔でライブがやれるのは、ダメなときもみんながずっと見守ってくれていたからだと思います」という言葉を添えて、自分の喉が不調だったとき、支えてくれたファンに感謝の気持ちを伝えた。マオは今でもこうして、喉が不調だった過去のことをおおっぴらに話す。隠すのではなく、あの辛い時期があったからこそ今がある。だから、あのときを隠したりなかったことにはしない。これが、マオの生き様なのだ。
「まだ終わりたくないよね」とフロアに話しかけ、最後の曲にいく瞬間を焦らすマオ。「でも、これが終わってもシドがあるから」といって、10月から全国7カ所で開催するシドのツアー<SID TOUR 2025~Dark side~>についても触れ「シドもヤバいよ」という言葉でファンの期待を高めた。シドは<LUNATIC FEST.2025>のDAY1(11月8日)に出演することも決定。年内はこうしてシド、ソロで「ライブやりまくるから。俺のこと“やりまくり”って呼んでいいからね」といってファンの笑いを誘った。そして、このあとは「今日ここでみんなと会えて良かったです。そんな想いを込めて」といって、ロックバラード「君とのこと」をアクト。夏の終わりの締めくくりにぴったりのこの曲を、橙色の照明とミラーボールの光が輝くなか、離れていても忘れないという歌でみんなを包み込んで、この日のライブを感動的に締めくくった。
「こんな風に出会えるのって奇跡的なんです。また次回、会えるときはみんな来てね」という言葉を残すと、去り際にガッツポーズを残して舞台から去っていったマオ。ソロ第2章でつかんだ勢いをさらに加速させるように、2025年は年末までシド、ソロのライブで駆け抜けていく。
文◎東條 祥恵
写真◎袖山 友秀
◾️<MAO TOUR 2025 -夜半の銃声->セットリスト
2025年8月24日(日) 渋谷WWW X
01.体温
02.夜半の銃声
03.GUILTY
04.縄と蝶
05.朝帰り
06.違う果実
07.深海
08.枯渇
09.HABIT
10.ストロボ
11.ROUTE209
12.mannequin
En01.chandelier
En02.不埒な体温
En03.最低
En04.君とのこと
◾️<MAO「20251023」 -Birthday&Halloween Live>
2025年10月23日(木) 恵比寿LIQUIDROOM
OPEN 18:00 / START 19:00
◆バンドメンバー
Keyboard&Bandmaster nishi-ken
Guitar Leda
Bass Shoyo
Drums DUTTCH
◆チケット料金
スタンディング ¥8,000(税込)※逆バースデーカード2025付き
※入場時に別途ドリンク代必要
※未就学児童入場不可
詳細:https://www.maofromsid.com/live20251023.php
◾️クリスマスライブ
2025年12月13日(土) 大手町三井ホール
OPEN 16:00 / START 17:00 / END 20:00予定
※途中休憩あり
※詳細は後日発表
<Mao’s Premium X’mas Party!! 2025>
2025年12月14日(日) 大手町三井ホール
OPEN 14:00 / START 15:00 / END 19:00予定
※途中休憩あり
※詳細は後日発表







