【ライブレポート】Nikoん、ツアーファイナルで示した連帯「少しでもギャーギャー騒ぎたてられる場所を作りたい」

2025年8月27日(水)、東京・渋谷 CLUB QUATTROにて、2023年結成の2人組・Nikoんが<RE:place public tour 2025>のツアーファイナルを迎えた。
2024年に産み落とした1stアルバム『public melodies』を改めて携え、2カ月で全30箇所へ巡礼した本ツアー。ここではNo Busesをゲストに迎え、ひとつの旅を終えたステージの様子をレポートする。
◼︎No Buses

No Busesはこの日、全12曲を包含した大曲「imagine siblings」を届けてみせた。これはつまり、ライブ冒頭に同ナンバーの中盤までを、ショータイムの最後に中盤からクライマックスまでをプレイしたということであり、「sunbeetle」から「home」に至るまでの計12曲は「Imagine Siblings」にサンドイッチされる構成だったのだ。
軽妙なハイハットが足元をグラつかせる中、スタートした旅路は、時に膨張しライオットを発生させ、またある折には矢庭にミニマムな囁きとなり、もがきあがきながら可能性を模索し続ける生き様を表明していく。こうした試合運びにはソナタ形式における展開部の存在も想起してしまうところだが、いかなる場合であれども彼らが「Imagine Siblings」の求心力をマキシマムに拡大せんとしていることは明らかだ。


「Imagine Siblings」へ連なった「Sunbeetle」では、ハウリングを合図に近藤大彗(Vo, G)の歌唱が叫びへと転化していく。単語の意味はもはや極限まで漂白され、ただ何かをシャウトしているという事実が、否応なく身に迫る。フラフラと舞台上でぶっ倒れたり、深く被っていたキャップを放って喚く近藤の様子は情けないほどに赤裸々で、だからこそ我々も彼らの声に耳を傾けんとするのだろう。
トリプルギターがざわめき、会場を満たした「Uni」を経てドロップされた「Our Broken Promises」も、No Busesの作品群がリスナーを惹きつける理由を象徴。ロングトーンをスローに鳴らす3本のギターが土台を形成すると、その隙間に近藤の歌が配されていく。3本のギターが前景化する分、歌唱は鳴りを潜めるのだが、雲の隙間からそっと光が降りるみたいに言葉が確かに顔を出してくるのである。

こうしたボーカルとアンサンブルの関係はライブ終盤に披露された「Kaze」にも通ずるもので、マイクから離して口ずさまれるメロディーは、どこまでが肉声で、どこからが増幅されたものなのか分からない。楽譜を埋め尽くす楽器隊の隙間を縫ってこの声をプレゼントするのか、それとも柔らかな合奏用に加工されたボーカリゼーションを混ぜ込み、ひとつの楽器として自らの喉を使っていくのか。繊細かつエアリーなメロディーを前提に、こうした双方の選択肢を自由に往復しているからこそ、No Busesのミュージックは「ここを踏み外したらどうなるのか?」と幾重にも問い直すような緊張感と緩和を宿している。
そしてそれは、Nikoんが彼らをツアーファイナルの地に呼び寄せた一因だったのではないか。ライブ中盤、近藤が放った「Nikoんも健やかにバンドをやってくれたら、嬉しいです」の言葉。祈りを込めたその一言は、息苦しいことに満ちた社会において、何とか目の前にいる人と視線を交わそうとしている2組の共鳴を裏付けていた。
◼︎Nikoん

「謝罪会見」を標榜した2025年1月ぶりにクアトロの地へ帰還したNikoんは、「Vision-2」から静かに幕を上げた。3人のシルエットが濃く浮かぶ中、シンプルでゆったりとしたビートが徐々に熱を加えていく。かと思えば、一気にオオスカ(G, Vo)のギターが火を吹き、「激しく始めるか」「準備できてんのか」とバチバチに煽りながら「bend」「step by step」を連投。「Vision-2」でオオスカのざらついた歌声を、そして「bend」で開演前の弾き語りからオーディエンスを魅了していたマナミオーガキ(B, Vo)のボーカルを、「step by step」で絡み合うコーラスワークを見せつけることによって、2人のシンガーから成立するNikoんのスタイルを可視化していく。と同時に、一貫して存在感を放つオオスカのソリッドなギターこそが、彼らを彼らたらしめるひとつの構成要素である。Nikoんは、オーディエンスそれぞれが抱くフラストレーションや生きづらさに対して、代わりに中指を立ててくれるバンド。ギターを掲げるだけで湧きあがる怒号にも似た歓声は、まさしくそんな事実を証明していた。

とはいえ、彼らは決して私と俺の代弁者になろうとしているわけではない。《too bad superに飛び込めtoo bad》とスリリングに告白する「とぅ~ばっど」は、今が最高に最悪な状態だと伝えているだけとも取れるし、《光を 光を 光を 正しく見てる》と綴られた「ghost」だって、ひたすら真っ直ぐに世界と正対しているのだと記しているだけ。あくまでもNikoんのど真ん中を貫いているのは、オオスカが「やりたいことをやっているだけなんで」と語ったその言葉通りの信念である。彼らのやりたいこととは、そそくさと道を往く人が一瞥さえくれないような小石でど派手に転んで、脳の奥が焼けるくらいに考え抜いて、「私は、俺はこうありたいと思っています」と宣言を打ち立てることなのだろう。

だからこそ、その態度にリスナーは自らの生き方を問われ、時に共感し、折に反発するのだ。そうそう、必ずしも彼らの全部を受容しなくてはならないわけではなく、NOを真っ向から突き付けることが許されているのもNikoんのシグネチャーのひとつ。この日展開された2ndアルバム『fragile Report』のレビュー企画も、アンチ上等の掲示板も、彼らが思想の強制ではない対話の場を設けるための企画であるわけだし、「珍しいんですけど、友達の曲をやります」と「Tic」のカバーから「ゲストを迎えてやろうと思います」とNo Busesの近藤大彗を迎えて「public melodies」を投下したワンシーンからもそのモットーは垣間見ることができた。近藤の肉声と同期による自由自在なビートチェンジがプラスされる中で放たれる《誰かを愛した生活が根を広げてく 誰かを許した生活が根を広げてく》の2行は、まさしく2人が自らの絶対領域へ近藤とNo Busesという存在を受け入れた証左であり、先述した数々の企画でファンに対して試みてきたことともダイレクトに連結するようにも感じた。

マナミが「これからも種を蒔いていこうと思うし、水やりもしようと思うから、“ちゃんとやってんのかいな”って見守ってくれたら嬉しいです」と伝え、「今年の夏、Nikoんが完成させます」と雪崩れ込んだ「さまpake」からのラスト3曲は、いずれもマナミの歌唱が牽引するナンバー。ゴスペルの香り漂う「(^o^)// ハイ」の荘厳なメロディーも、「グバマイ!!」の晴れやかなアカペラも、紡がれるメロディーは一段と強いポップネスを放つ。それはこれからのNikoんの足取りを照らしていたわけだけど、「グバマイ!!」のクライマックスはあくまでも2人がボーカルだったことにグッときた。オオスカが叫ぼうとも、マナミが歌おうともNikoんは2人とその仲間たちによるバンドなのだ。

アンコールでは、これまでサポートドラムとしてツアーを共に巡ってきた有島コレスケ(arko lemming)とItsuki Kun(Fallsheeps)をギターに迎え入れ、5人で再び観客の前に姿を現すと、オオスカはこのツアーを始めた理由を「自分って自分の言葉で喋れなくなってると思ったんですよ。格好付けてしか喋れなくなってると思って。自分の言葉じゃない言葉がどんどん入ってきているのに、それを自分の言葉みたいに語っているのが嫌だなと思ったんです」と話し、こう続けた。

「このツアーが始まるまでは「知らしめてやるぞ」と思っていたんですよね。俺たちがやっているバンドが日本で一番格好良いと言うためのツアーだと思っていた。でも、そんなことなくて。自分の弱さをやっと自覚させられたというか。自分はロックスターでもなければ、優れた人間でもないんだなって。声が潰れて、直してを何十カ所もやって、納得もできないライブもありましたけど、不思議と恥ずかしくはなかったんですよ。今の俺はこういう人間で、こういうバンドをやっていますと言えるようになったんです」
不格好であろうとも、そのままの姿でしゃんと胸を張って立つこと。その清々しさと誇らしさを手にした彼らは、「俺と同じように格好付けているけど、本当は自分の弱さが分かってて、分かっているのに認められないヤツもいると思うんですよ。そういうヤツのために歌って、バンドをずっとやっていくとは思わないですけど。でも、そいつが少しでもギャーギャー騒ぎたてられる場所を作りたいと思っています。そういう場になれたら幸せです」とNikoんが目指す姿を宣言。


ラストは「mouton」と「新曲」で終止符を打つ。「mouton」で有島とItsuki Kun、オオスカのギターが連動する様子は、揺らされる弦の一音一音を通じて会話を重ねているよう。わざわざ5人で舞台に立った意味とは、単に同じバンドワゴンに乗ってロングツアーを駆け抜けてきた戦友と共にゴールテープを切るためではなく、人と人が言葉で、あるいはギターで、そして音楽を通じて醸成するコミュニティの姿を刻むためだったのではないか。5人の連帯とアンサンブルを通じたやり取りは、2人のNikoんが5人のNikoんへと拡大していくプロセスとオーバーラップしていたのだ。

ライブハウスで交わされる汗だくの肉体同士によるぶつかり合いを経て、強固な握手を交わしてきたNikoん。次なる行く先は、『fragile Report』を掲げ、またもや全国津々浦々を巡るツアー『アウトストアで47』。彼らは「お前らの言葉を聞かせてくれ」と、その耳を澄まして君とあなたの声を待っているはず。だからこそ、私は自らの生を込めてこの拳を掲げたい。
文◎横堀つばさ
写真◎雨宮透貴
◼︎No Buses NEW ALBUM『NB2』

配信リンク:http://tugboat.lnk.to/NoBusesNB2
1.Uni
2.Our Broken Promises
3.Slip, Fall, Sleep
4.Inaho
5.Bloom
6.Hope Nope Hope
7.Eyes+
8.I’m Your…
9.Kaze
10.Them Us You Me
◼︎Nikoん 2ndアルバム『fragile Report』

2025年9月24日(水) リリース
※ 初回限定封入特典「47都道府県ツアー招待券」付き
予約:https://nikon.lnk.to/fragile_report
収録曲:
- fragile report
- bend
- nai-わ
- 靴
- dried
- さまpake
- とぅ~ばっど
- グバマイ!!
- (^。^)// ハイ
◼︎Nikoん <2nd Album「fragile Report」購入者特典LIVEツアー「アウトストアで47」>

2025年
【関東/甲信シリーズ】
01-①. 10/15(水) 東京都
- 10/16(木) 神奈川県
- 10/18(土) 栃木県
- 10/19(日) 長野県
- 10/20(月) 山梨県
- 10/24(金) 群馬県
- 10/26(日) 茨城県
- 10/27(月) 千葉県
- 10/31(金) 埼玉県
【東北シリーズ】
- 11/01(土) 宮城県
- 11/03(月) 山形県
- 11/05(水) 岩手県
- 11/06(木) 福島県
- 11/11(火) 秋田県
- 11/12(水) 青森県
【北海道シリーズ】
16-①. 11/14(金) 北海道
16-②. 11/20(木) 北海道
【北陸シリーズ】
- 12/02(火) 石川県
- 12/03(水) 福井県
- 12/04(木) 新潟県
- 12/05(金) 富山県
【関西・東海シリーズ】
- 12/07(日) 滋賀県
- 12/12(金) 三重県
- 12/13(土) 愛知県
- 12/14(日) 静岡県
- 12/17(水) 岐阜県
- 12/18(木) 大阪府
- 12/19(金) 京都府
- 12/23(火) 和歌山県
- 12/24(水) 奈良県
- 12/25(木) 兵庫県
■ 2026年
【四国シリーズ】
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- 01/16(金) 高知県
- 01/17(土) 愛媛県
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- 01/19(月) 岡山県
- 01/21(水) 広島県
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【九州シリーズ】
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- 01/29(木) 熊本県
- 01/30(金) 大分県
- 01/31(土 )宮崎県
- 02/01(日) 鹿児島県
【東京ファイナル&沖縄公演】
01-②. 2026/02/15(日) 東京都
- 2026/02/20(金) 沖縄県
※ 各会場、定員に達し次第〆切 / 先着申し込み順
※ 申込方法などの詳細は、CDの封入チラシに記載
<Nikoん × Apes presents『Risorgimento』Nikoん Re:TOUR -チッタ360 ->
2025年10月30日(木) at 神奈川・川崎 CLUB CITTA’
OPEN 18:00 / START 19:00
出演:Nikoん / Apes
先行チケット販売(先着順)
期間:9/2(火) 12:00 ~ 9/30(火) 23:59
URL : https://eplus.jp/nikonxapes/







