【インタビュー】逹瑯(MUCC)、悪役を意味する新曲「VILLAINS」に「自分の正義に徹するダークヒーローの色気」

2025.09.10 11:00

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■敵ってだいたいカッコいいですよね
■その中にどこか儚さもないといけない

──「VILLAINS」というテーマは、曲が出来上がってから見えてきたんですか?

逹瑯:そうです。曲が出来上がって、そこから脳味噌を刺激されるポイントとか、イメージする景色、空気感、感じる匂いを探っていって。その要素を重ね合わせながら、どんなストーリーかな、どこに落としどころを持って行くべきかな、と考えていきました。この曲は、ダークなんだけど色気があって、黒じゃなくて紫なんだよなっていうイメージがあって。じゃあそのカラーにハマるストーリーとキャラクターはなんだろう? 思想はなんだろう?というところから、どの方向に持っていって歌いたいのかな?という繋げ方でした。

──これまではダークな曲だと社会的な悪意やドロッとした感情を描くことが多かったですが、「VILLAINS」はまた違うアプローチですよね。

逹瑯:この曲で感じた色気とかダークさって、悪意じゃないんですよ。本人にとっては正義だけど誰かにとっては悪になっている存在の若干悪寄りの感じ。自分の筋を通している色気を感じたので、“エネミー”ではなく“ヴィラン”だなと。似た言葉で“ヒール”もあるけど、ヴィランのほうがデコラティブなイメージとかキャラクター性、ストーリーに繋がりやすいから、そこでキャッチーさを出したかった。

MUCCメンバー完全プロデュース生誕公演 2025<逹瑯四十六大祭『宿儺』>

──納得です。自分の正義を貫く悪役は映画や漫画によく出てきますけど、やっぱり魅力的ですよね。

逹瑯:日本人の国民性とか遺伝子が、そういうものを好きなんだと思う。漏れなく自分も大好きなので、曲に落とし込んでみたいなと。そのままアーティスト写真やジャケット写真でも遊べるし、そっちに舵を切って突き進んだ感じですね。

──ちなみに逹瑯さんの好きなヴィランキャラクターというと?

逹瑯:敵ってだいたいカッコいいですよね。『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーとか、『機動戦士ガンダム』でもシャアが人気だし。『るろうに剣心』の志々雄真実とか、『僕のヒーローアカデミア』の死柄木(弔)もカッコいい。あと、ここ最近の作品でヴィランの捉え方で一番衝撃だったのが、『チ。 -地球の運動について-』のノヴァク。

──ああ、主人公サイドを追い詰め続ける異端審問官。強烈なインパクトでしたね。

逹瑯:そうそう。あれが結構衝撃だったんですよ。あんなに怖いキャラクターなのに、最後の最後に「嘘だろ、俺はこの物語の悪役だったのか」と言って死ぬという。本人は完全に正義、神の名の下に動いていると思っていて、悪だとはまったく思っていなかったのに、「そんな馬鹿な……」っていう終わり方がめちゃくちゃ悲しいなって。主人公はどんどん変わっていって思想が受け継がれていく中、ずっとひとりだけ残っていくし、“『チ。』ってノヴァクの物語じゃん!”と思うくらい衝撃だった。津田健次郎の演技も怖いし、すごいなと思ってアニメを見てたので、その衝撃は影響してると思います。

「VILLAINS」TYPE-A

──究極の存在ですよね。歌詞にはそういうしっかりした世界観がありながら、歌い方は綺麗でまっすぐな印象で。

逹瑯:曲が雰囲気たっぷりだから、歌もこってりするとくどくなってしまうと思って、歌は素直に歌いました。スッと、なるべく癖をつけず。あんまり熱く歌いすぎても違うというか……熱く歌うとヒーローになってしまうんですよね。熱い想いはヒーローに任せて、ヴィランはちょっと力を抜きつつ、自分の正義を隠して冷静に徹するところがカッコいいので(笑)。

──ちょっと余裕がある感じですよね。

逹瑯:でも、やっぱり最後には負けるから、その中にどこか儚さもないといけない。そういう意味でも、あんまり熱くなりすぎないほうがいいなと。

──サウンドも歌い方もこれまでのソロにない新しさを感じました。アーティスト写真がダークなのもソロでは新鮮ですよね。MUCCが昔、寫眞館ゼラチンで撮っていた写真のような雰囲気で。

逹瑯:そうですね。こういうパキッとした白黒の写真は、それこそゼラチンさんに撮ってもらって以来なかったので、ちょっと撮りたかったんですよ。だから、ソロのアーティスト写真をずっと撮ってもらっているカメラマンに「こっち系も撮れます?」と相談して、細かく打ち合わせしながら、シチュエーションを決めて撮りました。衣装も全部自分で調達して、楽しかったです。

──青空の下で撮ったり、ビビッドな色合いにしてみたり、毎回いろいろなテイストを取り入れていますが、その自由さはソロならではですね。

逹瑯:いろいろ思いついたまま、好きにやらせてもらってますね。特に今回はアルバムじゃなく、シングルの色が1曲に凝縮されているので。そのテーマに目掛けてしっかり作り込んだほうがいいかなと思って考えました。

「VILLAINS」TYPE-B

──コンセプトがしっかり伝わってきます。と言いつつ、カップリングの「DRIVE!!!」がめちゃくちゃ明るい曲で驚きましたけど。

逹瑯:そうですね(笑)。この曲は、ソロのグッズとして、スマホで読み込んだら曲がダウンロードできるレコード型のキーホルダーみたいなやつを作りたくて、それ用に作った曲なんですよ。ライヴでもやっていたんですけど、別名義というかたちだったので、いつかちゃんとリリースしようと思っていて。今回タイミングが良かったというだけです。

──1曲目とのギャップを狙ったわけではなく?

逹瑯:いや、全然狙ってないです(笑)。

──そうでしたか。

逹瑯:「DRIVE!!!」は、もう何も考えず、ただ楽しいときに聴く楽しい曲を作りたいなと思って作ったんです。ライヴでもいい感じに盛り上がるようになってきたので、そろそろちゃんとリリースするかっていう。個人的にも好きな曲だし、ノリ的にはもうサザエさんのエンディングテーマみたいな感じで。どこかに出掛けるときに聴いてもらったり、一緒に楽しい時間を共有してくれたらっていう曲なので、メッセージ性とかは全然ないです(笑)。

──結果的に振り幅が凄まじいシングルになりましたね。この二面性が逹瑯さんらしいなと思えるところがすごいですけど。

逹瑯:ありがとうございます(笑)。時間をもっと上手に使えていれば、カップリングにもう少しアッパーなエイトビートのロックみたいな曲を作りたかったんですけどね。MUCCのツアー<MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」>が6月に終わったあと、のんびり羽根を伸ばしすぎて時間がなくなっちゃって(笑)。ちょっと制作する気になれなかったので1曲になりました。