KOTORI、3人体制でのフレッシュな進撃を告げるEP「TSUBASA」オフィシャルインタビューが到着

KOTORIが、7月にリリースした現体制初のEP「TSUBASA」を引っさげたオフィシャルインタビューを敢行。自信のオフィシャルYouTubeチャンネルでインタビュー動画を公開した。
オフィシャルインタビューの内容を以下にテキストでもお届けする。EP「TSUBASA」は収録曲に「Ghost」「魔法」「seed」「ハッピーエンド」「Bluemoment」「SKY」の6曲を据えた作品。インタビューではそれぞれの楽曲についての思いのほか、3人体制になるにあたって彼らに訪れた変化についても語られている。
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■より自由に、より大きな音楽の翼を広げて
■3人体制でのフレッシュな進撃を告げるEP『TSUBASA』。
■「3人のもの」ではなく「このバンドを愛するすべての人のもの」として
■新たな音楽生命体に変貌したKOTORI、
■過去を超える巨大な合唱を生み続ける理由を語る。
(取材・文◎矢島大地)
──去年リリースした『KOTORI』というアルバムは、音楽的な自由とバンドの伸び伸びとした空気が突き抜けた作品だったと思います。そこから1年ちょっとぶりの作品が今作『TSUBASA』になるわけですが、『KOTORI』のツアー完遂とともにドラマーが脱退したことも含め、3人になったKOTORIをどう動かそうと思ってここに至っている感じなんですか。
横山優也(Vo&G):それを考える暇もなかったですね(笑)。目の前の壁をひたすら3人で乗り越えていくことしか考えてなくて。僕個人で言えば、KOTORIはこの先どうなりたいのか?と訊かれても、ライヴをやって行きたいっていうだけで変わらないんですよ。そう考えると、僕ら以上にお客さんのほうがKOTORI像をしっかりと持ってライヴに来てくれてるんだなって感じ続けた1年だったかもしれない。特にこの1年は、ライヴをやればやるほど、お客さんにとってのKOTORI像が自分達に跳ね返ってくる感じがして。
──どういうふうに?
横山:お客さんそれぞれの自由度というか。踊ってる人もいれば、静かに音楽を楽しんでいる人もいる。その上でめちゃくちゃ歌えるのがKOTORIのライヴなんだと思わせてもらったんです。そういう人それぞれの自由さを作り出せるのがKOTORIらしさなんだろうなって、今は思ってます。
──メンバーが抜けるというのは、単に100から75になりましたっていう話ではないと思うんです。なんなら一度ゼロに戻るような出来事だったと思う。それでもKOTORIらしさは変わらないままだと実感させてもらったということですよね。
横山:うん、そうですね。
佐藤知己(Ba):僕らだけが10年やってきたわけじゃなくて、もっと広い範囲の人にとっての10年があったんだなっていうことで。僕ら3人だけじゃなくて、KOTORIの音楽を聴いている人にとっての10年もあって、スタッフの人やライヴハウスの人にとっての10年もあった。その歳月によって、全員にとってのKOTORI像ができていると思えましたね。
──自分達だけではなく周囲の仲間も含めてのKOTORIなんだと痛感したのは、初めての経験でしたか。
佐藤:初めてに近いですね。メンバーが脱退して自分達でも『どうする?』って思ったし、『どうするの?』って周りからも言われたし。ここまでバンドが物理的に変わる経験はしたことがなかったので。そういう状況だったからこそ、僕ら3人だけじゃなくて周囲の人もまたKOTORIを形成する大事な存在なんだなって痛感したんですよね。
──ストレートに訊きますけど、何があって細川さんは脱退することになったんですか。
横山優也(Vo&G)「ロック以外の音楽への興味が強くなったという感じですね。
──『KOTORI』というアルバムは自分達のバンド道をクリアにした作品だったわけですしね。
横山:そう、だから余計に『このタイミングで?』ってなっちゃったんですよ。まあ、あの作品で出し切ったところがあったのかもしれないですけどね。そこからはもう、俺らとチームで必死にやるしかなかったです。
佐藤:そういう大変な時にこそ、お客さん、ライヴハウスの人、チームやレーベル、そしてメンバーに対する信頼感がより強くなったところがありますよね。サポートメンバーを誰にしよう?っていうこともすぐに考えなくちゃいけなかったし、とにかく周囲の人に力を借りながらやっていくしかないっていう感じでした。
横山:特に僕は、バンドがやれてライヴをできていればいい人間なので。何かを目指してバンドをやってるわけじゃないからこそ、バンドを止めるなんて考えはなかったんですよね。で、佐藤が言っていたように周囲の人の助けを借りながらやっていこうと思った時に、KOTORIというバンドをみんなで生かしているような感覚を覚えて。もちろん僕ら自身がやっているバンドではありますけど、僕らがKOTORIであるというより、僕らもKOTORIの一部であるっていう感じになってきたんです。そう考えると、メンバーがどうなったとしてもKOTORIという生き物自体は存在し続けるじゃないですか。その生き物を動かすのが僕らであり、それを育てているのはKOTORIの周囲にいる人全員。それが、この1年ちょっとで変化した部分かもしれないです。新しいドラマーはどうするの?とか、この先どうするの?とか、いろんな人に言われたんですけどね。でも10年続けてきたKOTORI、10年で育まれてきたKOTORI像があった上で、そこに新しい人間が加わるのは難しいことで。じゃあ無理をせず、今のKOTORIをみんなで大事に育んでいければいいんじゃないかなと思って。3人で動かせるのなら、周りの力を借りながらやっていこうと思ってます。
──俺達がKOTORIだというより、俺達を含めたチームの真ん中にあるのがKOTORIなんだっていう考え方ですよね。
横山:そうですね。
──上坂さんはこの1年、どうでしたか。
上坂:横山が言ったように、考える暇もなかったですね。これまでの僕らは……千弘はバンドを引っ張ってくれる存在だったし、千弘が何かを言うことでバンドが動くっていう経験もたくさんしてきたんですよ。そういう存在がバンドから抜けて、じゃあ今度は誰が引っ張るんだ?って考えたら、バンドを主導するようなことを誰もやってこなかったんだなと痛感して。だから俺が頑張ってアクションを動かさないとダメなのかなって、当初は思ってたんですよ。でも誰かが先陣を切るというより、3人でまとまって進んでいくのが合っているバンドなんじゃないかなって気がしてきて。そう思えてからは細かいことを気にせず、チームの人も含めた全員で進んでこられたんじゃないかなって思います。みんなで決めてみんなでいい演奏をすれば、引っ張っていく存在がいなくとも大丈夫だっていう感じでやれてますね。塊感が生まれたというか。
──ここまで話してくれたことは、何よりKOTORIのライヴ感と音楽にも反映されてきたことだと思います。自分達以上にKOTORIのライヴを居場所にしているお客さん達がさらに音楽の中に映るようになってきて、その人達の声や肉体、歓喜を前提にしたソングライティングに変化したんじゃないかなと。『TSUBASA』を聴いて思ったんですよね。
横山:僕は元々、ライヴの景色を思い描いて曲を作るタイプなんですけど。でも『KOTORI』と10周年のツアーを経て、今ままで以上にお客さんが自由に歌ってくれるようになって。僕がどうこう考えずとも自由に歌ってくれることが確定してるから、より一層お客さんを信頼して曲を作れるようになったかもしれないですね。これなら歌ってくれるだろう!っていうより、お客さんはそれぞれ自由に歌ってくれるから、もっと自由に作っても大丈夫だろうなっていうモードになれたと思います。
──横山くんは、何かを伝えたいと思って歌っているのか、歌という人工衛星を打ち上げて、それに向かってみんなで飛んで行くことが気持ちいいと思っているのか。自分の歌をどういうものだと捉えてるんですか。
横山:後者ですね。歌を打ち上げる感覚です。何かを伝えようっていう気持ちはそんなにないのかもしれない。ミドルテンポのバラードとかは自ずと言葉の意味が伝わりやすくなるんでしょうけど、シンガロングが起こるような曲は、何かを伝えたいというよりも『コミュニケーションの手段』として作ってる気がする。歌の先で交信するっていうか。みんなそうだよな、思い切り歌いたいよなっていう感覚のもとに集ってる感じ。
──そういう気持ちのもとに作っていった結果、音楽はどう変わったと思いますか。
横山:さっき話したお客さんへの信頼感っていう部分で言うと、今だったらこれくらい挑戦的なことをやってもいいんじゃないかな?って思えるようになりました。昔は、お客さんはこの感じがわからないかもなっていう気持ちで抑えてるものがあったんですよ。でも今はむしろ、これ面白いでしょ?っていう気持ちで出せば、ちゃんと面白がってくれると思えてる。
──今作で言うと“Bluemoment”と“SKY”がそういう曲だと思いました。“Bluemoment”は北欧のフォークが聴こえてくる牧歌的な楽曲。“SKY”はエレクトロニックなビートと大きなメロディが合致したダンスミュージックになっていて新鮮でした。
横山:シンガロングと言っても、大きく分けたらふたつあるじゃないですか。これまでの俺らのシンガロングは、青春パンク的な『ウオー!』だったと思うんですよ。でも“Bluemoment”ではちょっと神秘的な、自由に打ち上げられるようなシンガロングをやりたくて。特に意味がなくても、気持ちを込められるようなシンガロング。それも一歩間違えたらコテコテになっちゃうから、どれだけロックバンドらしくやれるのかっていうのが大事なところでしたね。たとえば“SKY”を『KOTORI』に入れてたら、これはKOTORIじゃねえだろってなってた気がするんですよ(笑)。でも『KOTORI』というアルバムでロックバンドたる部分を突き詰められたし、ひとつ壁を突破して解き放たれた気がするんですよ。ロックバンドとしての直球を磨けたからこそリミッターを外せたというか。今なら、こんな曲もあるよねっていうふうに面白がれるんじゃないかなと思えたんです。そういう信頼感を込めて作れたのが“SKY”だと思いますね。
──なおかつ、KOTORIというバンドを「3人のもの」じゃなくて「KOTORIを愛する全員のもの」と捉えられると、音楽としての器も大きくなりますよね。
横山:それはあると思います。単純にKOTORIの規模がデカくなった感覚があるので、だったら入れられるだけ入れてしまえ!っていう気持ちも生まれてくるんですよ。
──(笑)。背伸びを経たからこその成長がちゃんと噛み合ってきてるんでしょうね。上坂さんは、ご自身の楽曲に対して何か変化を感じますか。
上坂:横山はライヴを意識して曲を作ると話してましたけど、実際に『ライヴいいよね』『音源よりもライヴがいいよね』ってよく言われるんですよ。もちろんライヴを生業にする人間としては嬉しいことなんですけど、でも音源もちゃんと評価して欲しくね?って僕は思うんです。音源一発で感動できる楽曲も絶対に必要だし、ライヴにはなかなか行けないですっていう人にもアプローチできる楽曲を作りたいと思い続けてるんですよ。そういう意味で、今回は納得できる曲を作れました。
──本作ではさらにサウンドが磨かれて一打一音がズバリと耳に届いてくるミックスになっていると思うんですけど、上坂さん的にはどういう部分に対して納得感がありました?
上坂:中学生の時にヘッドホンでロックバンドを聴いて感動したような、いわゆる初期衝動的なものが今必要なんじゃないかなと思っていて。それを込められたっていう部分に手応えがありました。初期衝動的な音像を作れたなって。僕は最初に衝撃を受けたのがELLEGARDENだったので、ギターがドン!って耳に届いてくる感じを意識したのもあるし、シンプルに一発聴いて『いい曲だな』って思えるものを作れたと思うんですよ。特に“魔法”は、作り終えた瞬間に『いいな』って思えた曲なんです。そういう、理屈抜きの瞬発力みたいなものを入れられた作品だと思いますね。
──“魔法”はシンプルなギターリフがループして進行していきますよね。このフレーズが出てきた時から、ギターで歌えてるなっていう感覚があったんですか。
上坂:そうですね。横山はシンプルなフレーズを上手に活かすタイプのソングライターなんですけど、僕はどうしても小賢しいことをしたくなっちゃうんですよ(笑)。でも“魔法”はイントロのアルペジオからずっとシンプルでカッコいい曲になって。横山に常々言われてた『シンプルでいいんだ』っていうのはこういうことか!って思えた気がします。以前、横山に『アジカンに例えると、俺の作る曲は“ソラニン”で上坂の作る曲は“ムスタング”だよな』って言われたことがあるんですけど、確かにそうだなって思ったんですよ(笑)。
横山:ちょっと根に持ってる?。
上坂:根に持ってはいないよ! ただ、俺だって“ソラニン”作りたいよ!とは思ったから。で、今回やっと作れました。それが“魔法”です。
──「今必要なのはロックバンドに対する初期衝動だ」と思ったのは、どうしてですか。
上坂:時代的にロックバンドが下火になっているとか、ロックバンドの時代ではないっていうことを言われがちじゃないですか。ヒップホップも流行ってますけど、でも僕らはロックバンドをやっているので。当然ですけど、ロックバンドがカッコいいということを伝えたいんですよ。じゃあどうしたらそれが伝わるのかっていうのを考え続けていて。最近その気持ちがさらに強まった瞬間があったんですよ。Age Factoryと話した時だったんですけど--Age Factoryは凄くカッコいいバンドじゃないですか。ロックのシーン以外にも顔を出してるし、いろんなカルチャーを飲み込みながら進化し続けてる。だからロックに囚われない姿勢でやっているバンドのように見えるんですけど、増子くん(増子央人/Age FactoryのDr)と話した時に『ロックバンドが一番カッコいいに決まってるやん』って言ってたんですよ。一見ロックに囚われていないバンドでもロックが一番カッコいいと思ってるんだから、改めて俺らもロックバンドのカッコよさを伝え続けて行こうって。そういう気持ちが特に最近は強いですね。
横山:こんなに楽しいんだから、やったら?って思うよね(笑)。ロックバンド以上に楽しいことはなかなかないよって思う。で、ロックバンドをやるっていうのは、ジャンルに固執するということではなくて。ジャンル自体は手段であって、ロックバンドはそれすら飲み込めるものだなって思う。最終目的は俺らとお客さんが感動することであって、そのために何を鳴らしたいのかっていうのが大事なので。
──音楽に対するシンプル化と素直化って感じですよね。
横山:自分がいいと思うのなら、いいって言えばいいじゃんって感じですよね。昔は、人からどう見られるかを気にしてたんですよ。音楽めちゃくちゃ聴いてます、音楽に対して深いと思われたいですっていう。でも今はそれがない。誰かの言う『いい/悪い』じゃなくて、自分はこんな音楽に感動します!っていうことだけでいいと思うんですよね。自分は全然ダメだ、もっと頑張りますっていう歌を書くことも多かったですけど、10年やってきたことで、それぞれみんな頑張って生きてるんだよなっていう感覚になってきて。自己表現である以上に、自分らしく生きるだけでいいんじゃないかなって思ってます。だから気が楽ですよ。どう見られるかを気にせず、思い切り歌えばいいんですもん(笑)。
──横山くんがそのマインドでいるからこそ、お客さん達も自由に歌いまくるんでしょうね。横山くんの表現に自己投影するというより、勝手に自分の歌にしてしまう。
横山:ああ、そうなのかもしれないですね。
──まさに『TSUBASA』は、KOTORI史上最も軽やかでポップな作品になったんじゃないかなと思います。
佐藤:バンドにとっていろんなことがあったけど、でも横山と上坂からデモが届いた時点で、今は悪い状態じゃないんだろうなっていうことが伝わってきたんですよ。バンド自体の形が変わったことで、それぞれの物事を見る視点が変わったのかなっていう気がしていて。気にかけること、大事にすべきものが広がったというか。それが曲に出ているのかどうかはわからないんですけど、でも視界がクリアなんだろうなっていうことが伝わってくる曲ばっかりだと思います。
──では、上坂さん作曲の“Ghost”と“魔法”から話を伺います。この2曲はリフがキャッチーで、一聴して耳を掴む強さを持っている。その上でメロディが美しい、素晴らしい2曲です。この瞬発力はまさに、上坂さんが話してくれた「ロックバンドのカッコよさを瞬間的に伝える」という気持ちから生まれたものなんじゃないかなと思いました。
上坂:うん、まさにそうだと思いますね。
横山:メロディの部分で言うと、最近は上坂がデモの段階からメロディのガイドを入れてくれるんですよ。前もメロディのガイドはあったっちゃあったんですけど、俺が思いつくメロディじゃないと意味がないと思って、メロディのハードルを上げちゃってたんですよ。上坂が考えてくれるメロディよりもいいメロディを考えなくちゃいけない!って思い過ぎてた。でも最近は上坂のメロディをベースにして考えられるようになってきて。それもまたメンバーへの信頼感であり、自分の歌にしなくちゃいけない!っていうより、KOTORIの歌なんだっていう感覚から生まれてきたものだと思うんですけど。まあ、曲を作った人が思い描くメロディが一番強いに決まってますしね。
──曲の奥にある風景を的確に翻訳できるのは曲を作った人自身だっていうことですよね。
横山:はい。それこそ“Ghost”と“魔法”は上坂のガイド通りのメロディなんですよ。そうなると『誰かの曲を俺が歌っている』っていう感覚になってきて、それもまた気が楽なんですよ。自分だけで書いた歌の場合は、その曲に込めた感情にならなくちゃいけない!っていうふうになりがちじゃないですか。でもそれって割としんどいことが多くて。
──楽しい時でも、歌詞に合わせて無理やり悲しくならなくちゃいけない、とかね。
横山:そうそう。でも人が作ってくれた歌やメロディの場合は、何も考えずに歌に飛び込めばいいだけなんですよ。それも今までやってこなかったことだから、きっといい発見がそこにあると思うんですよね。それじゃダメだと思い込んで切り捨てていた部分に、楽しさがある気がする。
──歌う人間として、自分で背負い過ぎていたわけですよね。でもそうじゃなくて、自分を含めた全員でKOTORIであると思えたから。音楽の単位が「俺である」ということから「全員」になった。
横山:そうです。信頼感が強まったし、責任も3等分だから。俺がダメだったら全部が台なしになると思ってたけど、今は違うんですよね。上坂のメロディがあるなら信頼すればいいし、全員でやるほうが楽しいし、そっちのほうが俺も気が楽だし。
──“Ghost”は、ノスタルジックな景色の中を走っていく少年を描いている歌のように思いました。伸び伸びと歌う感覚と、原風景に還っていく感覚とが両方詰まっているように感じたんですが。
横山:まさに、少年の歌ですね。上坂の曲がどっしり目でオルタナ寄りだったんですけど、メロディを入れてみたらだいぶ印象が変わって。
上坂:横山と10年以上やってると、メロディを作る段階で『横山だったらこう歌うだろうな』っていうのが思い浮かんじゃうんですよ。横山が気持ちよく歌えそうだなーっていうメロディを入れたら、結果的にこうなりましたね。逆に、横山が作る曲にも『俺が弾きそうだな』っていうフレーズが入ってることが多いので。そういう感覚的な部分で、各々のらしさが出ている曲のように思います。
──続いて、横山さん作曲の“ハッピーエンド”について。“トーキョーナイトダイブ”といった代表曲も聴こえてくるようなアルペジオと晴れやかなメロディが印象的なんですが、この曲を解説していただけますか。
横山:順番的にはこの作品のタームの最初にシングルで出したんですけど、今作の楽曲の中では一番最後にできた曲なんですよ。実は一番最初にできていたのは“SKY”だったんですけど、“SKY”だけだと突飛に思われる気がして。“Bluemoment”を作ることによって、音楽的なグラデーションで馴染ませようかなと思ってたんですよね。その上で、レーベルのディレクターさんが『ライヴを想像できる曲はもうある。ライヴハウス外の日常に馴染むような平熱の曲があったら、KOTORIを普段聴かない人にもアプローチできるかもしれないね』って言ってくれて。それで作ったのが“ハッピーエンド”だったんですよ。で、僕が思いつく平熱感のある音楽って、スピッツとか奥田民生さんだったんですよね。
──なるほど! 本当に、着の身着のままで目の前の景色を変えていく歌ですよね。“イージュー⭐︎ライダー”と『インディゴ地平線』をオマージュしたであろうジャケット写真の謎も解けました。
横山:実際、“イージュー⭐︎ライダー”をめちゃくちゃ聴いて研究しましたからね。曲調は全然違うけど。スピッツの平熱感っていうのも、メロディと楽器の練度みたいなところにあるんじゃないかなと思って。そういう音楽と、自分の好きなインディーロックを混ぜてみたら平熱感が出るんじゃないかなと思ってました。
──横山くんの言う平熱感とは、「生活感のある音楽」とニアリーイコールだったりしますか。
横山:近いですね。家で聴くようなシチュエーション、家で聴く温度感っていうのが『平熱感』だと思うので。
──人がライヴハウスの外で聴く音楽というと、たとえば帰り道で聴く音楽とか、仕事に向かう途中で聴く音楽とか、どういう風景をイメージするものなんですか。
横山:うーん……世田谷の住宅街っすね(笑)。要は、自分が暮らしている街の匂いがそのまま音楽に出てくる気がするんですよね。で、自分の生活に近い音楽を作れば、田舎の人にも都会の人にも当てはまるんじゃないかなっていう気がしてました。あくまで自分なんだろうなっていう気がしますし、日々を暮らしている人と自分の間に、かけ離れたものがあるとは思わないんですよ。自分の腹の中にあることを真っ直ぐに書けば、それが人との共通言語になると思ってる。
──<胸にこびりついた/どうでもいい不安は/アイスコーヒーブラックで/流し込むのさ>(“ハッピーエンド”)というのは凄くシンプルな歌詞ですけど、こういった具体的な表現が人にも当てはまるんじゃないかってことですよね。
横山:まさにそうです。<アイスコーヒーブラック>みたいな具体的な表現は、これまであんまり使ってこなかったと思うんですよ。みんなが知っているもの、みんなが常日頃接しているものを具体的に織り込むことによって、それぞれの生活感を擦り合わせたのかもしれないですね。自分の生活の範囲にあるものが、自然と誰かの生活に繋がる。そういう歌を書きたかったんだと思います。
──次に、上坂さんに“Seed”について伺います。これはミッドウェスト・エモとトラップビートを合体させたような曲ですが、どんなコンセプトで作っていったんですか。
上坂:おっしゃる通り、ミッドウェスト・エモとトラップを合体させようと思って作りました(笑)。
──(笑)。
上坂:自分の好きなトゥインクルなギターフレーズを、意外と最近のハイパーポップ界隈が取り入れてたりするんですよ。それを聴いていて、トゥインクル・エモとああいうビート感が合うんだなっていう発見があったんですよね。これをロックバンドとして取り入れたら面白いかもしれないなっていうのが最初でしたね。
──ギターの新しい使い方を逆輸入するっていう。
上坂:そうそう。インターネット発の音楽で用いられているギターの使い方をロックバンドとして取り入れてみたら、新しい引き出しになるんじゃないかなって思ってました。横山が言っていたみたいに、『KOTORI』をリリースしたことによって自分達の地盤を作れて、それによって解き放たれた感覚があったんですよ。どんどん自由に作ってみればいいと思うし、音楽的な遊び心を入れていくことがこの先大事だと思ってますね。
──遊べてるということ自体が、KOTORIの順調さを表していると思う。ロックバンドとして、本気で遊び続けようとしているバンドだと思うから。
上坂:ありがとうございます。楽しく作れていることが、音楽にそのまま映っていたらいいなと思います。
──そして、歌詞について横山くんに伺います。“ハッピーエンド”は3人体制になって初めてリリースされた曲でしたが、<ハッピーエンドは遥か遠い街へ/近道すらないようだから>というラインは、まだまだゴールには早いから進むしかないっていう意思表明なんだろうなと感じました。まだ行くぞ、終わるはずはねえぞっていう気持ちが歌のテーマになっていったところがあるんですか。
横山:そういう気持ちがモリモリですね。この3人になってから、より一層『同じ乗り物に乗って進んでいるんだな』という感覚が強くなってきて。でもゴールが決まってるわけじゃないから。止まることなくライヴをやり続けてるし、今を楽しんでのらりくらりとやって行くだけなんだろうなっていう感じなんですよ。だから明るい曲にできたし、<死ぬまで>っていう表現を使わず、<花束を集めながら>とか<天国>みたいな言葉で未来への覚悟を歌えたと思うんですよね。道中は楽じゃないけど、でも気楽に行こうぜっていう。終わりがよければいいし、先行きを考え過ぎても、不安ばっかり募るじゃないですか。どんなに大変なことがあっても楽しむだけだよなっていう気持ちを歌に込めてます。以前“FOREVER YOUNG”っていう曲を出しましたけど、あれに近いラフさですね。グーッと考えこむより、出てきたものを真っ直ぐに歌う。そういう切り替えができてから、気が楽になりました。こうじゃなきゃいけない!っていうのがなくなってきて、どんどん今に対して素直になってこられた気がします。
──対して“Ghost”は、少年性や原風景に語りかけながら、青春と決別して行くような歌だと感じました。この歌詞は?
横山:実は“Ghost”の裏テーマは『“秘密”の続編』だったんです。姿形はなくなってしまったけど、きみのことを忘れないよって歌ってるのが“秘密”なんですけど、“Ghost”は『あったのかどうかもわからない幻想』を追いかけている少年を思い浮かべて書いたんですよ。上坂からデモをもらった時になんとなく夏っぽいなと思って、ZONEの“Secret Base〜君がくれたもの〜”が思い浮かんだんですよ。本当になんとなくなんですけど。まあ、この作品の中で一番最初に歌詞を書いたのが“Ghost”だったので、お別れみたいなテーマ性が出てきちゃったところもありますね。
──幻のように消えて行く何か、みたいな。
横山:そう、あれは幻だったのか?みたいな感じ。でも結末までは書き切ってない歌なので。あれはなんだったんだろうな?っていう。
──“秘密”もそうですけど、横山くんの歌には、あるのかないのかわからないものに手を伸ばすところがあるじゃないですか。夢とか希望みたいなものも、あると信じているだけであって、本当にあるのか?って聞かれたらわからないじゃないですか。それでもそれに触れたいっていう願いが横山くんの歌の心臓になってる気がするんですけど、これは何を表しているんだと思いますか。
横山:うーん………自分を押し殺しているわけじゃないですけど、でもどっかしら、本当はこうなりたいっていうものが常につきまとってるんでしょうね。こうやってインタヴューすることで気づきますけど。……音楽って、結論を出さなくてもいいじゃないですか。あくまで聴いた人のストーリーになってくれればいいと思う。で、それすらも、言葉で説明できない何かで紡がれていくっていうことだと思うんですよ。なぜかわからないけど悲しくなっちゃうとか、なぜかわからないけどそこに在る気がするとか。それこそ“Ghost”の話ですけど、暑い夏の日、坂道の向こうに積乱雲と青空が広がってて--みたいな。大人になった今、小学生時代の夏休みを思い出すとウッとなりません?。
──なる。夏休みのプールの匂いとか、ラジオ体操に行く時に親が見送ってくれた時の声とかが、脳内にこだましてきて切ない。
横山:ああ、いいっすね。そういうものも全部孕んだ少年心と、そこに在る切なさを“Ghost”に感じてたんだ。今わかった。それっすわ。遊び回って、無邪気で、それを愛してもらっていた自分っていう。
──あと、愛されていた記憶って切ないですよね。
横山:切ないです。なんでここまで愛を注いでくれたんだろうとか、なんでここまで愛してもらえたんだろうとか、考えれば考えるほど切ないですよね。愛を想うほど懐かしい気持ちになって、切なくなる。で、その中に自分の少年時代もあって、それを幻のように見ているのが“Ghost”なんだと思います。
──あの頃の自分、あの頃にもらった愛っていうのは、大事にし続けたいものなんですか。
横山:大事だよね!って言ってるというよりは、人それぞれの愛を想起させたいところはあると思います。正しい愛みたいなものじゃなくて、人それぞれの懐かしい景色の中にある優しさみたいなもの。それを歌いたかったんだと思います。
──『KOTORI』のインタヴューでは「正しさより優しさを選びたい」と言っていただきましたが、その核心が出ている曲とも言えますよね。
横山:本当に。そうなんだと思います。
──最後に、“Bluemoment”と“SKY”の歌の内容について伺います。
横山:問題作ですね(笑)。特に“SKY”に関しては、Coldplayの“Viva la Vida”みたいな曲を作りたいなって以前から思ってたんですよ。で、もう自由に何でもやってもいいわけだし、その方向性で作ってみようと思って。その上で、人にどう思われるかを考えず、自分の性癖だけに刺さる曲にしようと思ったんですよね。ハウスとゴスペルのコーラスワークと、ギターのディレイと。そこに、僕のデモに入れていたビートと。頭の中で鳴ってる音を全部入れてみて、それがそのまま採用になった曲です。俺がKOTORIを知らずにプレイリストか何かで“SKY”を聴いたら、何だこれ!って言って聴き続けると思いますね。それくらい、自分の好きなものを全部足してみた曲。
──最初の話に戻りますけど、本当に、自分個人の表現というところを突き抜けて、「KOTORIという音楽」になってるんですね。だから、KOTORIの音楽を第三者的な目線で楽しめてるところがあるんだろうなと。
横山:本当にそうだと思います。昔は、俺こそがKOTORIだ!って思ってたんですけど。今はそうじゃない。KOTORIが生み出す音楽を俺自身が楽しめてるので。この楽しさを続けていければいいなと思います。
佐藤:結局、頑張ってやって行きましょう!っていう作品ですよね。やっぱり音楽が好きなんだなって、最近は特に思うんですよ。音楽が好きな理由、バンドが好きな理由を見つけようとしちゃいますけど、最終的にはみんなで演奏するのが楽しいだけなんですよね。楽しいね!って思ってます。
◾️最新EP『TSUBASA』
2025年7月2日(水)リリース
2,200円(税込)/ PCCA-06396

[SONG LIST]
01. Ghost
02. 魔法
03. seed
04. ハッピーエンド
05. Bluemoment
06. SKY
▼KOTORI『TSUBASA』配信リンク
http://lnk.to/KOTORI__TSUBASA_digital
▼KOTORI『TSUBASA』CD購入
http://lnk.to/KOTORI__TSUBASA_cd
▼KOTORI『TSUBASA』アルバム特設サイト
https://kotori.ponycanyon.co.jp/tsubasa
◾️<TORI ROCK FESTIVAL 2025>

開催日程:2025年11月1日(土)
会場:東京・豊洲PIT
開場:11時30分
開演:12時30分
出演:KOTORIほか後日出演アーティスト詳細発表
チケット(ドリンク代別):ADV 6,900円 / DOOR 7,500円
◾️7インチシングルレコード「魔法/SKY – Single」
2025年8月8日(金)リリース
2,200円(税込)/ BRKA-00005
<“GIVE YOU TSUBASA” TOUR>会場限定販売
収録曲:
・Side A – 魔法
・Side B – SKY
◾️<KOTORI pre. “GIVE YOU TSUBASA” TOUR>

08月08日(金)@埼玉・越谷EASYGOINGS(18時開場 / 19時開演 )[SOLD OUT]
08月20日(水)@愛知・名古屋CLUB QUATTRO(18時開場 / 19時開演 )[SOLD OUT]
08月22日(金)@福岡・BEAT STATION(18時開場 / 19時開演 )
08月27日(水)@大阪・梅田CLUB QUATTRO(18時開場 / 19時開演 )
08月31日(日)@香川・高松DIME(17時15分開場 / 18時開演 )
09月01日(月)@広島・SECOND CRUTCH(18時30分開場 / 19時開演 )
09月07日(日)@宮城・仙台MACANA(17時30分開場 / 18時開演 )[SOLD OUT]
09月08日(月)@新潟・CLUB RIVERST(18時30分開場 / 19時開演 )[SOLD OUT]
09月13日(土)@北海道・BESSIE HALL(17時30分開場 / 18時開演 )[SOLD OUT]
09月22日(月)@東京・キネマ倶楽部(18時開場 / 19時開演 )[SOLD OUT]
一般発売中
チケット受付URL: https://w.pia.jp/t/kotori-tour2025/
◾️イベント出演
<Sky Jamboree 2025 ~one pray in nagasaki~>
8月24日(日) @長崎・長崎市 稲佐山公園野外ステージ
<山人音楽祭 2025 ~10th Anniversary~>
9月20日(土)@群馬・日本トーターグリーンドーム前橋
<DElicious BUns FESTIVAL2025>
10月11日(土)@愛知・愛知県常滑市りんくうビーチ
<TOKYO ISLAND 2025>
10月12日(日)@東京・海の森公園
<GALAXY PARK>
10月19日(日)@大阪・大阪城ホール
<HEY-SMITH Presents OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2025>
10月25日(土)@大阪・泉大津フェニックス







