【インタビュー】ACID ANDROID、yukihiroが語る7年ぶりアルバム『fade into black cosmos』の新境地と揺るがぬ本質「今この時点での、という意味では集大成と言っていい」

■歌詞を書くときは画を思い浮かべることが多い
■言葉から浮かぶ風景みたいなものもある
──ちなみに、なぜ今回のアルバムは英語詞にしようと思われたのでしょうか。
yukihiro:なんとなく“英語かな?”って思ったんです。
──英語へのトランスレートはどのように?
yukihiro:翻訳ソフトとAIを活用しつつ自分で作りました。AIは初めて使いましたけど。
──おお!
yukihiro:上手く使えていたかどうかはわからないですけど、日本語を入れて出てきた英語をもとに“これならメロディにハマりそうな言葉数だな”とか“そういう英語が出てくるなら、こっちの日本語だとどうかな」”とか、細かいニュアンスも自分なりにいろいろ調整しながら書き上げていった感じです。
──「pale fire #2」「idea #2」「demonstration #2」は歌メロもオリジナルとは違うものになっていますよね。それは英語詞になったからですか。
yukihiro: KENTくんに手伝ってもらったからですね。
──それについても伺いたかったんです。今作では8曲中6曲にKENTさんがvocal melody arrangementとして参加されていますよね。その理由を教えてください。
yukihiro:先に配信していてメロディを変えた3曲に関しては、配信リリースするために少し急いで付けたメロディだったということもあって、もうちょっと曲に合ったものにならないかなと思っていたんです。なのでアルバムでは新しいメロディをつけたかったんですけど、自分でやっているとどうしても最初のイメージから離れられなくて、KENTくんに声をかけました。
──どうでしたか、KENTさんが作ってくださったメロディは。
yukihiro:KENTくんっぽいなと思いました。デモでは本人が歌ってくれているし。そこからちょっと整理させてもらいました。
──逆に「let’s dance #2」と「dealing with the devil #2」に関してはご自身がつけた歌メロに納得されていたということでしょうか。
yukihiro:「let’s dance」は、今あえて歌メロを変える必要はないかなと思ったし、「dealing with the devil」はある程度完成しているメロディだと思えていたので、そこは手をつけずにおきました。
──歌録りは1曲につきどれぐらいテイク数を重ねるものなんでしょう。
yukihiro:曲によりけりですけど、1曲に対して1日って感じでした。録ったものを後日聴いて、大丈夫そうだったらそのテイクを使うけど、気に入らなかったらまた録り直して、みたいな感じです。歌詞がイマイチだなと思って書き直して、録り直した曲もありました。
──そうそう、歌詞がまたいいですよね。英語詞になったからなのか、今回はよりSF的な要素を強く感じました。
yukihiro:英語詞だからかはわからないけど、自分がモチーフにするものはそういうところもあるので、自然とそういう歌詞になりますね。
──個人的には「veil of night」の、映画『ブレードランナー』を彷彿とさせるような世界観が特に好きで。
yukihiro:そう言われるなら、否定はしないです。
──でも「wrong regularity」の歌詞は一番心情的といいますか、ご自身の想いに近いものが滲み出てるように感じたんですよ。変わらず世界は美しいけれど、それがとても息苦しい、みたいな……変わらないことへの失望感のようなものを感じて。ただ、yukihiroさんは「あまり自分の感情を歌詞に反映させることはしない」とも常々おっしゃっているじゃないですか。
yukihiro:歌詞を書くときは画を思い浮かべることが多いですね。
──風景もきっとあるのでしょうが、そのなかでもより情緒を伴った言葉のように感じられたというか。
yukihiro:ああ、なるほど。でも、元になっているのはたぶん風景だと思います。いろいろ言葉にしていくなかで、こういう登場人物が出てきた、みたいな感じだったんじゃないかな。
──歌詞を書いているときに思い浮かべる風景というのは、やはりこれまでご覧になってきた映画などの映像作品に由来するものが多いんですか。
yukihiro:あと、言葉ですかね。
──言葉?
yukihiro:言葉から浮かぶ風景みたいなものってあるじゃないですか。
──なんとなくわかる気はします。yukihiroさんの書かれる歌詞には独特の美しさがありますけど、今回は特にそれが極まっていると思ったんですよ。この曲の“each and everything is in silence (あらゆるものが静寂の中にある)”、“each and everything is wrong (あらゆるものが間違っている)”……なんて詩的なのだろうかと。
yukihiro:(笑)。
──yukihiroさんの感情そのものではないとしても、なんとなく心の内側を垣間見ることができた気持ちにもなったりして。
yukihiro:歌詞ですけどね。
──「level 9」の歌詞はまさにSFですよね。
yukihiro:これがさっき言った、歌詞を書き直した曲なんです。最初もSFではあったんですけど、歌ってみたらちょっと世界観が違うなと思って。







