【連載】Hiroのもいもいフィンランドvol.150「日本が大好き!日本には何度でも行きたい…待望の4作目のアルバムをリリースしたArionインタビュー」

2025.07.29 10:15

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2011年ヘルシンキで結成され、これまでに3度来日したことがあるフィンランドのメロディックメタルバンドArionから今年待望の4作目となるニューアルバム『The Light That Burns the Sky』がリリースになった。6月末に開催されたフィンランド最大のメタルフェスTUSKAのバックステージで、Arionのギタリストでソングライターでもあるイーヴォ・カイパイネンがインタビューに応じてくれた。

Pic:Ville Juurikkala

──TUSKAのステージで演奏し終わったところですが、今の気分は?

イーヴォ:とてもいい気分だ。このNORDIC ENERGYステージを今日オープンできたのは楽しかった。ホームタウンボーイズって気分でトップバッターでこのステージに登場して、アットホームな雰囲気を感じたな。観客もたくさん集まってくれてとても素晴らしかったよ。

──今年2月末に4作目となるニューアルバム『The Light That Burns the Sky』がリリースになり、サウンドが以前よりちょっとヘヴィになったように感じたのですが、アルバムを作り始めた時すでにヘヴィ路線にしようと決めていたのですか?それとも制作中にそう決めたのですか?

イーヴォ:最初のアルバムから新しいアルバムがでるたびにヘヴィな方向に進んできてたんだけど、一つ前の3作目の『Vultures Die Alone』はよりモダンにヘヴィになってきてて、この最新作ではさらにヘヴィになるのはあらかじめはっきりわかっていた。この新作はギターとオーケストレーションが全面にでてて自然に生まれた。あまり深く考えずに直感で曲を作って生まれたアルバムで、曲を作り上げる工程はとても自然で楽しかったと言えるな。

──あなたたちのアルバムにはこれまで「At the Break of Dawn」でAmarantheのエリーゼ・リード 、「Bloodline」でBattle Beastのノーラ・ロウヒモ、「In the Name of Love」でCyan Kicksのスザンナ・アレクザンドラと女性のゲストヴォーカリストがお決まりになってきてますが、最新作では「Wings Of Twilight」でスイスのAd Infinitumで知られるメリッサ・ボニーがFeat.で、どういういきさつで彼女に決まったのですか?

イーヴォ:デュエットは俺たちのバンドにとってもう伝統みたいになってきてて、今後も続くと思うな。今回はこのデュエット曲に合うシンガーが必要で、誰がいいか考えてみたところメリッサはどうかなと思い、誰か彼女にコンタクト持ってないかと思っていたところへ、プロデューサーのマティアス(Stratovariusのギタリスト、マティアス・クピアイネン)から「この曲にはメリッサが必要だ!」と言われ、「素晴らしい!俺も同意見だ。」と返事したら、マティアスがメリッサとコンタクトがあり、彼女に曲を送り、この曲にゲストヴォーカルはどうかと尋ねたところ、彼女は曲を気に入ってくれて「もちろん!」って返事で決まったんだ。

──ゲストヴォーカルがいる曲は、その曲を作る段階でヴォーカルが2人いる設定で作るのですか?

イーヴォ:うん、そうだよ。デュエット曲を作るときはいつも最初っから男性と女性のヴォーカルを考えて作っている。上に重ねてっていうか、Feat.が加えられてるのはうまく機能してるように思えない。俺達が2016年にデュエット曲「At The Break Of Dawn」をリリースした後、トレンドにでもなったんじゃないかってぐらいFeat.の曲が過剰なぐらい流れ出てきたように思う。曲が最初っから2人のシンガー用に作られたんじゃなくて、後でFeat.のヴォーカルを加えたようにきこえる曲も多くて、それではポイントがつかめてないように思うんだ。俺たちの曲は最初っからデュエット用に書かれているよ。

──もし可能なら、次のアルバムに誰をデュエットに呼びたいですか?

イーヴォ:考えてみたりしてるけど、う~ん難しいな。先ほどのインタビューでも聞かれたんだけど、フィンランドのポップシンガーはどうかな?とか思ってみたり。知り合いも多いし可能性としてはあるかもしれない。もしかしたらサプライズがあるかもしれない。もちろんヨーロッパには素晴らしいメタルシンガーは数えきれないほどたくさんいる。フィンランドにもShereignバンドのシンガー、サラ・ストロンメルは素晴らしいシンガーで友達でもあるし、ヨーロッパだとEluveitieのシンガー、ファビエンヌ・エルニとかスウェーデンのEleineのシンガー、マデリン・リリヤスタム などが思いつくけど、他にも可能性はあるよ。どうなるか様子見てみよう。

──「Wings Of Twilight」のリリックビデオは映画っぽくてとても感動しました。André Rodriguez Filmがこのビデオを制作してますが、映画風にしようというのは誰のアイデアだったのですか?

イーヴォ:アイデアはこのビデオを制作したアンドレから出た。この曲をリリースする時スケジュールがうまく合わなくて、MVを撮影する時間がなかったんだ。そしたらアンドレからこういうのができるけどどうだろうか?と言われ、そうしたらとてもうまくできたと思う。家に帰還したシーンはちょっと涙ぐんだぐらい素晴らしく出来上がった。

──この中の戦争シーンはこのビデオのために撮影されたのですか?

イーヴォ:あのシーンはサンプル素材を利用したんだ。なので早く仕上がった。以前彼が制作した「Bloodline」のMVにもそういう素材が使われてる。そのMVには演奏シーンもはいってるんだけど。

──通常曲を作る時のアイデアはどこから得ますか?曲はまず歌詞、又はメロディのどちらから出来上がることが多いですか?

イーヴォ:それはいろいろでその時によりけりで作り方もいろいろだけど、芸術を組み合わせるのが好きで、物語がとても好きなんだ。映画を観たり、本自体ははあまり読まないけどよくネットで実話や物語を読んだりした時、その中から心に響いたフレーズをスマホにメモしておくんだ。そういうのがもういっぱいたまっている。他にも絵画とか自然の写真とか。それに対して作曲をしていくんだ。デモ1とかでなくて、映画のコンポーザーが出来上がった映画をバックに曲を作っていく時のような感じで、作曲をする時、曲の各パートに素晴らしいタイトルをつけたりする。作曲している時に歌詞を同時につけることもある。それは曲によるんだけど、ただ何かコンセプトをバックにしてとかじゃなくて、何か思いを見つけてそれを表現していくように曲を作っていく。それが俺のやり方で、俺にとってはベストな方法だ。

──まずギターリフが思いついて、それに曲をつけていくとかもありますか?

イーヴォ:あぁ、それは時々あるよ。例えば「Wildfire」は曲全体にかかわってくる素晴らしいリフから生まれた曲で「From An Empire To A Fall」もそうだな。どちらの曲もギターリフの曲だ。曲が一つにまとまるのはキーとなるギターリフが見つかった時で、そういう曲全体にかかわってくるリフというのは自分にとってとても重要で、それが見つかったらそれを中心に曲がまとまってくる。コンセプトはこんな感じで、物語はこうで、こういうメロディでサビの部分はこうって曲のパートができていて、それをひとまとめにするリフが思い浮かぶと、やった!ってなってそこから曲が出来上がる工程は早くなる。とても重要なことだ。

──今年2~3月にかけてドイツのバンドBrainstormとドイツを中心にヨーロッパツアー、StratovariusとSonata Arcticaと一緒にフィンランドツアーを行っていましたが、国外ツアーで何か大きなカルチャーショックを感じたことはありますか?

イーヴォ:ドイツの文化はここ北欧とそんなに大きな違いはないように思う。俺たちのレコード会社もドイツで、ドイツ人ともうまくいってるし俺自身ドイツは好きなんだ。何かあげるとなると、ほんの少しだけどドイツ人の観客の方が度胸があるかな。でも信じられないぐらい似てる。ヨーロッパでも南部、イタリア、スペイン、南フランスとかだと観客の雰囲気はずいぶん違ってくる。ドイツはなじみのある感じで、加えて新鮮に感じるとこもあり、ドイツは好きでドイツ人もライブするのも好きだよ。

──今年のツアーで面白い思い出とかありますか?

イーヴォ:Brainstormのメンバー達とは初めて会ったけど、すごくいい人達でジェントルマンでもあり、バンドも好きだけど、とってもいい雰囲気だった。新たに契約したレコード会社Reigning Phoenixの人達とも会えて、特に何かが起こったってことはなかったんだけど、ドイツツアーの最終公演がシュトゥットガルトで、翌日フィンランドのタンペレで公演があり、移動に時間がかかり睡眠する時間もなくタンペレ公演の後にヘルシンキまで戻って、あれはかなりハードだった。でもその後はぐっすり寝れたよ(笑)。

──これまでにLoud and Metal Attack、Loud Park、Hokuo Loud Nightと3回来日していますが、次に来日が実現したらどこか行きたい場所はありますか?

イーヴォ:日本に行くことにはずっと興味持ってる。俺自身日本のファンなんだ。ギターも日本製だし、ポケモンも大好きだよ。車も日本のだし、ほんとに日本が大好きなんだ。他のメンバーも日本大好きだよ。食べ物もおいしいし、東京以外の都市を訪れてみたいな。名古屋は訪れたんだけど、大阪、それから他にもいろんな都市に行ってみたい。それから北海道でライブしてみたいな。自然にとても興味ある。南の島もいいな。あと日本の温泉にはいってみたいんだけど、残念ながらタトゥがあるんだ。それは問題なんだけど、文化にも興味あるし、名所もたくさんあると思う。日本には今後何度でも行けることを願っている。

──今日はトップバッターで出演でしたが、このあと残って観たいバンドとかありますか?

イーヴォ:もちろんのこって最後のPowerwolfまでみるよ。明日もきて楽しむつもりだ。

──では最後に日本のメタルファンにメッセージをもらえますか?

「ハロー、日本のファンのみんな。Arionのギタリストでソングライターのイーヴォだよ。知ってると思うけどニューアルバム『The Light That Burns the Sky』がリリースになった。素晴らしいアルバムで早いペースの曲がつまってて、たくさんのギターリフ、素晴らしいソロ、素晴らしいシンセソロ、ギターソロ、ビッグオーケストレーション ハイソロヴォーカル、コーラスなど日本のファンのみんなにとってもベストなスタッフがつまっている。君たちが恋しくてまた会えることを強く願っている。できる限り早い実現を祈っているよ。俺達日本が大好きで、個人的にも俺日本大好きだ。日本は俺の人生の大きな部分を占めていて、日本のいろんなものが好きなんだ。できる限り早い実現を祈ってる。」

Arion メンバー:
・イーヴォ・カイパイネン(Iivo Kaipainen):ギター
・トピアス・クピアイネン(Topias Kupiainen):ドラム
・アルットゥ・ヴァウフコネン(Arttu Vauhkonen): キーボード
・ゲオルギ “ゲゲ” ヴェリノヴ(Georgi ”Gege” Velinov):ベース
・ラッシ・ヴァーラネン(Lassi Vääränen):ヴォーカル

今年のフィンランド最大のメタルフェスTUSKA2日目、NORDIC ENERGYステージの前でトップバッターのArionの登場を待っていると、セカンドアルバムのオープニングトラック「The End of the Fall」がイントロで流れはじめ、メンバーがステージに登場。ニューアルバムからのシングル曲「Like the Phoenix I Will Rise」でスピーディにヘヴィでメロディアスにスタート!

オープニングナンバーから曇り空にパイロの炎が燃え上がり前半は最新アルバムからの曲が多くヘヴィに、後半には1stアルバムからの美しいバラード曲「You’re My Melody」がはいり、アルットゥの奏でる美しいキーボードとラッシのヴォーカルで始まり、途中で他のメンバーがステージに戻ってきて、曲の中ほどのギターソロが中心になったインストルメンタルのパートはまるで映画のサウンドトラックのようだった。後半はラジオでもヘビロテにオンエアーされていた個人的にも大好きな女性ヴォーカルとのデュエット曲が続き、最後は大ヒット曲「At the Break of Dawn」でこの日のステージを閉めた。

ギタリストのイーヴォが曲を作るだけあって、どの曲もギターがかっこよく響き渡り、ヘヴィながらもキーボードがメロディアス感を出し、ラッシは力強く歌い上げる。全体を通して楽しめあっという間に終わっちゃった感じだ。終わった後ラッシはステージに置かれてあったセットリストを拾い集め、自らステージを飛び降り最前にいたファンに配っていてファンサービスたっぷり。

<TUSKA 2025:Arionセットリスト>
1.The End of the Fall(Intro)
2.Like the Phoenix I Will Rise
3.I’m Here to Save You
4.From an Empire to a Fall
5.Bloodline
6.Burning In The Skies
7.You’re My Melody
8.In the Name of Love
9.Wings of Twilight
10.At the Break of Dawn

日本ではReckless Loveでおなじみで、今現在Popedaのヴォーカルのオッリ・ヘルマンと元Santa Cruzのベースでアレキシ・ライホが亡くなる前に結成したバンドBodom After Midnightのメンバーでもあったミティヤ・ミッディ・トイヴォネンがフィンランドの国営放送Yleでポッドキャストを配信していて、オッリが将来国外でブレイクするバンドはもしかしてArionかもしれないと名前を挙げていたのを聞いたけど、さてどうなるか? まずは近い将来来日実現を祈っておこう!

文&ライブ写真◎Hiromi Usenius