【音楽と映画の密接な関係 2001 GW Special!】『天使のくれた時間』

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音楽と映像の密接な関係――。

「たとえ100年離れていても僕らは変わらない」、なんて深い愛を誓ったものの……。

「ONE」(U2)が切なく流れるサウンドをバックに、違う人生を送っていたら、
一体どうなっていたのだろう?という仮定のもとに繰り広げられるラヴストーリー。
愛とぬくもり、フェラーリや高級マンションの価値観はいかに!?

もし、あの時、彼女と別れなかったら…? あのまま結婚していれば…


『天使のくれた時間』
オリジナル・サウンドトラック

「天使のくれた時間」オリジナル・サウンドトラック

AMCY-7232 2,400(tax in)
2001年3月22日発売

1ディス・クッド・ビー・ヘブン/シール
2ウィキッド・ゲーム/クリス・アイザック
3ONE/U2
4ユー・ストール・マイ・ベル/エルヴィス・コステロ
5アイ・ドント・ノウ・ハウ・アイ・ゴット・バイ/エドウィン・マッケイン
6ワールド・ルッキング・イン/モーチーバ
7トゥ・ビー・ウィズ・ユー/MR.BIG
8ワンス・イン・ア・ライフ・タイム/トーキング・ヘッズ
9サイドショウ/ブルー・マジック
10ララ・ミーンズ・アイ・ラブ・ユー/デルフォニックス
11エレス・トゥ/モセダデス
12 女心の歌/ルチアーノ・パヴァロッティ・ウィズ・ザ・ロンドン・シンフォニー・オーケストラ
13天使のくれた時間/ダニー・エルフマン
14プロミス/ダニー・エルフマン




『天使のくれた時間』
(2000年アメリカ)
2001年4月28日より、全国東宝洋画系劇場にて公開!

●監督/ブレット・ラトナー
●脚本/デヴィッド・ダイアモンド、デビッド・ワイスマン
●出演/ニコラス・ケイジ/ティア・レオーニ、ほか
●配給/ギャガ・ヒューマックス

上映時間/125分

Special Thanx to www.angel-time.ne.jp
もし、あの時、彼女と別れなかったら…? あのまま結婚していれば…?

“たられば”はゴルフの禁句である。でも、試しにその辺のゴルフおやじの独り言に耳を傾けてみるといい。「あのパットが入っていれば」「あそこでOBさえ打たなければ」と10人が10人全員つぶやいているのだ。決して思い通りにはならないゲーム。だから大の大人が夢中になるほど面白い。

人生だって同じ。

「あの時、ああしていれば」と思うことは数あれど、思ったところであとの祭り。やり直しがきかないからこそ、人生はスリルとエキサイトメントに満ちている。一瞬一瞬の自分の選択が、人生を面白くしているのだ。いくら映画だからって、その時自分が選ばなかった道の行く先を見せてしまうのは禁じ手のはず…。

と思っていたが、この作品、まさにそこのところを大胆かつあっけらかんとやってみせちゃったのである。ただし、主人公が望んでそうなったわけじゃない、というところがミソ。つまり、ニコラス・ケイジ演じる主人公は、今の人生で不幸なわけでも過去を後悔しているわけでもないのに、ある日突然、否応なしにもうひとつの人生を体験させられてしまうのだ。

たとえ100年離れていても僕らは変わらない」。

13年前、恋人ケイトにそう誓って仕事のためにロンドンへ旅立ったジャック。しかし、その言葉は果たされず、2人は別々の道を歩むことになる。

ウォール街に戻ってきたジャックは大成功を収め、今や超リッチな独身生活を謳歌するエリート・ビジネスマン。マンハッタンを見下ろす高級マンションに住み、フェラーリを乗り回し、特定の恋人こそいないもののセクシー美女には不自由しない。クリスマス休暇よりも仕事を優先するような忙しい毎日だが、彼自身はそんな生活に満足していた。

ところがクリスマスの前夜、彼は不思議な黒人青年との奇妙な出会いを体験する。そして翌朝、ジャックの身には大変化が。目覚めるとベッドの隣にはケイトが眠り、彼は2児の父親になっていたのだ! 突然目の前に突きつけられた自分の“もうひとつの人生”。それは13年前にケイトと結婚していたら実現していたはずの人生であり、そこでの彼は郊外の一軒家で平凡な家庭生活を送るしがないセールスマンなのだった。


▲13年ぶりに再開したジャック(ニコラス・ケイジ)とケイト(ティア・レオーニ)。ジャックはとまどいながらも、彼女の美しさと優しさに惹かれていくのだが…。
当初は妻や子供達との慣れない生活に戸惑い、自分自身の時間や自由を奪われたように感じてしまうジャック。家庭を持つことの大変さにウンザリしながらも、やがて愛に満ちた穏やかな生活に徐々に安らぎを見出していく、そんな男の微妙な心情を、オスカー俳優のニコラス・ケイジが丁寧に演じている。幼い娘とのとぼけたやり取りなど、コミカルな演技もお手のもの。

ケイト役には『ディープ・インパクト』でブレイクしたティア・レオーニ。『Xファイル』でお馴染みのデヴィッド・ドゥカブニーと結婚し、少し前に実生活でも1児の母となった。以前より多少ふっくらとした体型と柔らかい表情が、今回の役どころにはピッタリだ。


▲ 原題「THE FAMILY MAN」のとおり、ひょんなことから家族思いのジャック(ニコラス・ケイジ)の世界に飛びこんでしまう。
アメリカではクリスマス・シーズンに公開されたというだけあって、ロマンティックな真冬のマンハッタンと、雪に覆われながらも家庭のぬくもりを感じさせる郊外の住宅街が対照的に描かれ、U2Chris IsaakMR.BIGらのエモーショナルなナンバーが画面を彩る。

ただし、そうした一見たわいのないラヴ・ストーリーの雰囲気や道具立てとは裏腹に、この映画が問いかける本質的なテーマは実はかなりヘヴィ。それはつまり独身者の結婚や家庭に対する恐怖であり、自分の人生を自分で選び取ることへの不安だ。自由でリッチな独身生活に見切りをつけたとして、その犠牲に見合うだけのものが果たして結婚の中に存在するのか。

映画を見終わってどんな答えにたどり着くかは、もちろん人それぞれだろう。が、それだけに結婚直前のカップルが見るのはリスクが高いかも。だって愛とぬくもりも大事だけど、やっぱりフェラーリや高級マンションは捨てがたいでしょ? 

という私のような人間には、最後まで今ひとつ感情移入のしにくいお話でありました。

文●原 令美/e-fields

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