●今回の新機軸にはウクレレがありましたが…。 Char: 面白かったなぁ。やっぱ演ってる方が面白くないといかんですね。 ●そして左手対決も。 Char: そう。練習しちゃったりするわけよ(笑)。意外と中盤以降は左プレイもそれなりに巧くなっちゃって、キュイ~ンなんてできたりして(笑)。8ビートもスラッシュメタルだったらベースぐらい弾けるかもしれない、みたいな(笑)。 ●ルートだったら刻めるぞって? Char: 3分間ぐらいなら(笑)。でもさ、普段は複雑なコード進行で変わっていくジャズ・バラードみたいなものがあったする中で、左手だと「カエルの歌」もろくに弾けないって、すごくおっかしいじゃん? 表裏だと思うんだよね。同じ人間なのに見方がちょっと変わっただけで何もできなくなる。しかも2人で。1人で演ったら“馬鹿じゃないの?”だけど。 石田: m7(マイナーセブン)コード、押さえられるようになりたいなぁ…(笑)。 Char: それができる頃にはデビューしよう(笑)。1曲シングル、左だけで。テレビとか出まくろうよ(笑)。 石田: 1曲だけ浅丘めぐみの曲、入れんの。♪わたしのわたしの彼は左利き~(笑)。 Char: くだらねえ(笑)。 ●そんな調子でネタが広がっていくんですね。 Char: 左プレイで1曲できて、それでシングル・カットしてさ、“あいつギターは下手だけど歌はいいよな”って言われたい(笑)。 ●おっかしいなあ。 Char: リハをやってる時から最初の段階でいろんな話があるわけよ やったことのないことも挑戦しようと。で、やってみてつまらなきゃ演らなければいい。 石田: でもおもろいネタは最初一発目から笑いコケるよ。今回も“♪いやんなっちゃった”部分をCharがハモってきた時もコケたもんね。まだ見たこともない才能がひょっこりと出てくる…“コイツまだこんなとこあったんかって。(笑)” ●あのハモりは実に見事でしたね。爆笑でした。 Char: さすがにウクレレを弾くという点では最初は割と否定的だった…っていうか、何もここまで演らなくても…って。 石田: でも俺がネタを出したんね。「サマータイム・ブルース」から牧伸二でええんちゃうかなって。 Char: 詞まで書いてきてさ(笑)、そこまでやられると、こっちも意地があるからふくらませるしかないんだよねぇ。 石田: その意地が凄いんよ(笑)。 Char: 石ヤンのネタを最大限に面白くかつ音楽的に広げるには、もうプライドだとか、そういうものかなぐり捨てて潜在的なものを出すしかないわけ(笑)。それでまあ「サマー・タイム・ブルース」から「ああいやんなっちゃった」をリハで演っていくと、いつしか2人ともあの声(ハワイアンを彷彿とさせるファルセット)になってるわけよ。 ●いやぁ、存分に笑いコケました。 Char: 曲はやっぱり“深さ”だよね…なんてね(笑)。 ●いや、まじめな話“きっちりと美しくハモる”…そのこと自体が滑稽で最高におかしいなんて、かなり高度なこと、音楽的にものすごいスキルがあって初めて成り立つ話ですから。 Char: そこまでいかないと面白くないんだよね。最終的に音楽ってものが首をもたげてくる。 石田: 特別ルールだったけど、音楽的と言えば実に音楽的やね。 ●そう思います。 石田: 「ハイウェイ・スター」(編集部註:かのDEEP PURPLEの大名曲)もね、そもそもこれを4ビートでやったらバカバカしいなと思ってた。ジャズクラブで女性ヴォーカルがピアノトリオかなんかで「ハイウェイ・スター」歌ったらバカバカしいやろ? でも、誰もそんなもんやってくれへんから、BAHOで演ろか、と。そしたらCharが3連のリズムを提示してきて、結局メドレーにまで発展したわけ。 Char: …挑戦してるわけよね。あれはね、練習しないとできない。思いつきだけじゃできないよ。例えベンチャーズ・ネタだって、原曲は目をつぶっても弾ける曲だけども、そこから“ゆき~の白樺…”にいったり「トルコ行進曲」に変化したりするっていうのは、ネタをふったはいいものの、実はすっげー練習しとかないとね(笑)。そこまでやるからおもしろいんだよ。 石田: 本番は結構コワイんよ(笑)。 Char: スイングでディープ・パープル演ったら、めちゃくちゃバカバカしい…けど、さすがに“名曲”っていうのは何かと難しいね。簡単なようで大変。でも完コピしないと面白くないしさ、しぶとく完成させようとするよね。 石田: そやな。“こんな感じでいいじゃん”ってのはない。 Char: くだらないことにかけてはまじめに追求する(笑)。ゴングの“カーン”一発のタイミングも、どこでもいいわけじゃない!みたいな。 ●そうでしょうね。 Char: 結局、テーマがなんであれ、演っている俺達がそこまで盛り上がっていることが重要だし、それがお客さんに伝わってくれればいいなあってところだよね。 石田: 楽しむことを忘れとる時代じゃないですか。それが大事なポイントとしてBAHOの中にはあるんちゃうかな。渋谷公会堂では本番で当然Charが「上を向いて歩こう」をお客さんに歌わせてさ、そのときのみんなって…なんて言うのかな、それこそドリフターズの公開録画番組の客席の顔に似た表情をしてたかもしれないね。 Char: 視聴者参加番組みたいなね。それ大事。ただこれは、あれ位の会場の大きさが限界かな。 石田: 八百長みたいな真剣勝負ですよね。 Char: 俺の基本にあるのは、“パロディ”なのね。でもパロディってのは日本で育たない。それは“タブーがあるから”“やっちゃいけないことだから”。でも、こういう時代になってくると別の情報源で広がってくると思うけどね。 ●音楽でならいくらでもいけるでしょう? Char: 別にブラックユーモアやってるわけじゃないし、政治的なこと言ってるわけでもないからね。音楽にはジャンルなんてものがあって、そんなものは徹底的にパロってぶっ壊せよと(笑)。でも日本でそういうことをベテランがやると…なんつーのかな… ●大人げない! Char: そうそう、大人げないと言われ、若いやつがやると、ふざけてると(笑)。 石田: ゆずのコピーやらせてもらえないかなって、一生懸命コピーしたりして(笑)。 Char: そういうところから「トルコ行進曲」までいっちゃえば、2世紀、3世紀に渉る音楽の歴史みたいなものを非常にパロってるんじゃないかなあ、と。 ●根本思想はそこですね。 石田: ギャグってるんじゃなくジョークじゃなく、俺は…パロってる、かなぁ。それを他人が演ってくれないから、BAHOが演っちゃってる。 Char: そんな気がするね。 ●そのパロディの共鳴度合いが2人同質なんでしょうね。 Char: うん、そうなんだよね。下町的な…気取ったって笑ってくんないし。 石田: つまり大衆芸能。 ●でもパロディって、対象物を全て呑み込んで咀嚼しないと成し得ないことで、実は非常に高度な表現でしょう? Char: そうだね。それを自分達で言ってしまうと終わっちゃうんだけども、ただ自分達も「ハイウェイ・スター」を真剣に…。今さら、だよ!(笑) 石田: 今さらね(笑)。 Char: 今さらそれをフルコピーして、そこからもう一度、シャッフルに変えた時にどうしたらいいか、それを2人でやる上でどこまでどうカッティングして、どこでどのようにハモって…そんなキャッチボールを徹底的にアレンジしていく。その上で成り立っているのかな。 ●そこで初めて“パロディ”が完成する。 Char: そこにある面白い題材をただいじくっているだけとは、ちょっと違うかな。それは“音楽だから”というのもあるよ。映像ならばある映画の1シーンをパクッてパロる。でも、オリジナルを知らないと面白くないでしょ? でも、音楽ってのは元を知らなくたっていいもん。だからこそ、そこで感動を与えるだけの練習が必要なんだよ。 ●完成度を上げないと。 Char: 稽古してね。 石田: 「ハイウェイ・スター」ってのは現実に原曲を知らない人いるやろうけど、3連から急にテンポアップして2人でユニゾンになるとこは、やっぱ誰もが何かおかしいと思うねん。 ●不自然なほどムキになってきっちり速弾きするんですもん。 Char: やっぱり、アレンジ上、あそこは盛り上がんなきゃいけないんだよ。 ●究極のパロディですよ。だってそこまでのアレンジの流れからして、リッチー・ブラックモアの “完コピ突入”はナシでしょ。 Char: まあね(笑)、あれこそギタリスト2人じゃなきゃできないんだけど、逆に言うと2人だけでは絶対に演っちゃいけないことなんだよ、あれ(笑)。 ●2人揃って、ギターキッズのように完コピソロに没頭。その間バッキングがすっぽり抜け落ちてしまう…でもかまわず没頭…というその構図までもが、アマチュア的ナンセンス・ワールド炸裂でしょ? デンジャラスでした。 Char: ホントに御法度だよね。 石田: しかもアコースティックやから、必死やで! Char: 終わった瞬間のあのホッとした気持ちったらないもんな。 石田: まったくや。 ●身体張ってのミュージシャン“BAHO”、まだまだありそうですね。 Char: 題材はまだまだいっぱいね。そこら中にあるんじゃないかなあ。 ●意外と、ロンチのインタビュー終わったら、いそいそと左利きを練習してたりして。 石田: 次回は笑わさないで、人情モンで泣かしたりして(笑)。 Char: 徹底的に浪花節で。 石田: 一部で演るのは“鶴の恩返し”とか(笑)。 Char: “イワンのばか”とか(笑)。ってことは“イワンのBAHO”か? 石田: “言わんのBAHO”? ●しゃべったら減点ですか。 Char: お楽しみに(笑)。
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