5th AL『夕凪LOOP』インタヴュー
――芸能活動のスタートは子役からだそうですが、いくつのときから?
坂本:8歳からです。
――それは自分で「やりたい!」と?
坂本:そうなんです。両親が舞台関係の仕事をしていて、稽古場に遊びに行ったり舞台を見に行く機会が子供のうちから多かったので、自然に興味を持つようになりました。私が入った劇団は、いわゆる商業的な大きいところじゃなくて、近所の子が集まってやってるようなところで。派手な芸能界に憧れて、というよりは、部活とか習い事の一環みたいな感じで始めたのがきっかけなんですけど。稽古場では怒られてたり泣いてたり、汗かいてたりノーメイクだったり、すごいボサボサな感じで振り乱してやってる人が、本番のステージですごい綺麗に、輝いている姿を見ると、そのギャップというか、ステージの世界には別の力が働いてて、すごい神聖な物みたいな気がしたんですね。それで、あの上に立ったらどういうふうに見えるのかな?って思って。
――小さい頃から活発な子供だったんですか?
坂本:いや、どっちかっていうとあんまり特徴のない子というか(笑)。人前で何かやるのが好きとか、注目されたいとか目立ちたいとかっていうこととはまったく正反対でした。でも、演技の世界を知ってからは、大人しくしてなきゃとか恥かしいとかって思う普段の自分から開放されて、何になってもいいという自由感があって。役に入ることがすごく楽しかったですね。
――演劇を始めてから、普段の自分も変わりました?
坂本:そうですね。日頃、学校とかでの自分は今までどおりに淡々としてたと思うんですけど(笑)。でも、学校だけがすべてじゃないっていうことに、思春期のときはすっごい助けられましたね。小中学校ぐらいのときは学校がすべてだから、そこでイヤなことがあったりすると世界がイヤ、みたいな。学校での人間関係とか成績とか、今思えば大したことじゃないんだけど、そのときは重大問題みたいなことがあったりしたときも「私は別のところにも自分の居場所がある」という意識があったんで、すごく支えられていたと思います。自分が好きなもの、夢中になれるものがはやくに見つかったのは、すごくラッキーだったなぁと思いますね。
――で、そんな夢中になっていた演劇と並行して音楽を始めることになり。
坂本:そうですね。15歳のときに声優の仕事で、アニメーションの主人公の声に決まったんですけど、その作品のオープニング・テーマを歌う人が決まってなくて「デモテープでも聴いてみるか」みたいな流れで作曲家の菅野よう子さんに私の歌を聴いてもらったのがきっかけです。音楽は演技とぜんぜん違う方法で自己表現ができるということを知って、それまでは部活みたいな感覚だったんですけど、「これを仕事にしていくんだな」って意識するようになりました。演じることはすごく楽しかったんだけど、演じていないときの自分っていうものがどんどん……本来の自分ていうものがよく分からなくなってくるというか。自分じゃない何かになることが楽しいのは、やっぱり自分に対するコンプレックスがすごいあるからなんだと思うんですよ。一個の個性として、私ってこういう人間ですって言えるようになりたいっていうのはどこかにあって。演者としてじゃなくて、坂本真綾ってどんな人?っていわれたときに何も答えられない、みたいな。作詞も始めて、自分で思ったことや考えてること、言いたいことを文字にして歌にして発していく方法を知って、やっと自分に向き合えてきたというか。演技はもちろん大好きだけど、音楽をやっているときは、もっと自己中心的で(笑)、自分のことを自分のためにやっている感じがありますね。
――ひょんなことから歌うようになって、歌うっていうことから今度は「自分を表現する」という段階になるわけですけど。作詞を始めたのは最初から作品にするために?
坂本:そうです。それまでは曲に合わせて詞を書いた経験はなかったんですけど。アルバムを出すタイミングで初めて「書いてみようかな」ということで。そのときにどうやって書いたのか、今は思い出せないんですけど。
――今の書き方とは違ってたんですか?
坂本:違ったような気がします。筆が遅いので、けっこう締め切りを過ぎたりとかよくするんですけど(笑)、あの頃はすごい早かったです。だからどうやって書いていたのか知りたいです(笑)。
――ネタ帳に書き溜めてた、とか。
坂本:ぜんぜん。ネタ帳は今でもないんですけど、構想みたいなものはなんとなく頭の中にあって。曲のほうが先にできていることが多いので、その曲の性格によって、自分の頭の中のどのテーマと合わせようかな、みたいなところで。
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