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VH1チャンネルは音楽業界の諸刃の刃である。WallflowersやJewel、Duncan Sheikらも、VH1ではしゃれたプロモーションとして機能してしまう。そしてほとんどがそうなのだ。だが時にLyle LovettやFreedy Johnston、Erykah Baduのようなエキサイティングでイノヴェイティヴなアーティストを掘り出してくれる。VH1が、これぞというアーティストを全面的にバックアップすれば、一夜にしてアダルトコンテンポラリーのスターが誕生するのだ。

Des'reeの場合がまさにそうだった。彼女の成功はこのチャンネルに負うところが大きい。'95年春、VH1は、“You Gotta Be”のスタイリッシュなビデオ・クリップを何度となく放映して夏のスマッシュヒットを作り、ブリティッシュR&Bの女王Des'reeを、一躍ソウル・ミュージックのスーパースターに仕立て上げたのである。

'92年、Des'reeをSonyの重役に紹介したのは世界的ポップスターSealだった。Sony側は当時23歳の彼女が歌ったデモテープ“Feel So High”を聴くと、その場で契約し、この曲をシングル・リリース。それがヨーロッパ中でスマッシュ・ヒットとなり、Des'reeは'92年、デビュー・アルバム『Mind Adventures』をレコーディングして発表。ノリのいいヒット・シングル“Feel So High”を中心に、このアルバムは軽いメロディックなR&Bから、ピアノをバックに歌う静かなバラードまでを取り上げている。だが、彼女の自信あふれるヴォーカル・スタイルは余すところなく発揮されているものの、記憶に残るような名曲は1曲もない。

そこで'94年、2ndアルバム『I Ain't Movin'』をリリースし、魅力的なメロディとクリエイティヴなアレンジをフィーチュアした。“You Gotta Be”ではそのシルキーなヴォーカルが冴え、たちまち彼女の代表的ヒットとなった。他にも“Crazy Enough”や“Little Child”は代表曲となりうる出来で、一度聴いたら忘れられないメロディだ。

だが惜しいことに、せっかくのDes'reeの心地よいヴォーカルも、平凡で使い古された文句の歌詞が大きなマイナスとなっている。うんざりするほど単純な歌詞は、まるでHoward Jonesのようにセンチメンタルなのだ。とはいえ、ドライヴの効いた曲と自信に満ちたヴォーカル・スタイルは、この2枚のアルバムの弱点を補って余りあるどころか、アーバンヒップホップと従来のトップ40ポップスの世界をうまく融合させた仕上がりとなっている。Des'reeの最近の快挙は、『Romeo + Juliet』の挿入歌“Kissing You”。このエレガントでドラマチックなバラードが入ったサウンド・トラックはプラチナ・セラーとなっている。