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──80年代メタルの最高峰である『キーパー・オブ・ザ・セブン・キーズ』をもう一回やろうということになった経緯を教えてもらえる?
アンディ・デリス(以下、アンディ):昨年、来日したときに、レコード会社の担当者が冗談で“次は『キーパー・オブ・ザ・セブン・キーズ』で作ってみたらどう?”って言ったんだよ。それはいいアイデアかもしれないねっていう話になってね。結果的に、自分達が誇れるものができたということで、こういうタイトルにしたんだよ。コンセプト的にもとても満足してもらえると思うよ。
──歌詞では『キーパー・オブ・ザ・セブン・キーズ パート2』よりも、すごく現実的な問題が多くとりあげられている。そのあたりはどう?
マイケル・ヴァイカート(以下、ヴァイキー):今実際に起きていることの方が、みんなの目から見て分かりやすいからね。今は、本当にいろんな事件が起きているから、現実に起きている問題を空想の世界に投影して描くほうが分かりやすいと思うんだ。もちろん、前の『キーパー・オブ・ザ・セブン・キーズ:パート1』『パート2』をリリースした80年代も、いろんなことがあったけれど、今ほどすごい大事件というのは無かったと思う。今の時代は、より怒りに溢れている時代だと思うから、たぶんそういうところが、よりリアリティのある歌詞に繋がっているんじゃないかな。
──サシャにとっては、この『キーパー・オブ・ザ・セブン・キーズ:ザ・レガシー』を作るのは、ものすごくプレッシャーになったんじゃない?
サシャ・ゲルストナー(以下、サシャ):このアルバムを作ることに参加できたっていうのは、自分にとって、とても大きな名誉だし、そして面白いことへのチャレンジだったと思うよ。もちろんプレッシャーを感じることもあった。でも、自分がこのバンドにいるということ自体が、それを受け止めなければならないということだし、変な言い方だけど、自分がある程度の才能を持っているということだから、自分の出来ることを精一杯やったよ。もちろん、みんなと同じように貢献していくことが求められたし、それを自分なりに遂行できたと思う。
──内容に厚みがあって、80分という超大作になったわけだね。もう削ることはできないということだったの?
ヴァイキー:これぞと思って作ったマテリアルだから捨て曲なしっていう感じで、どの曲も削る気持ちはなかったよ。アルバムに入らなかった3曲があるんだけど、それはボーナス・トラック用になっていて、「レボリューション」という曲は日本盤のボーナス・トラックになってるよ。
──このアルバムの面白いところは、コンセプト・アルバムであるにもかかわらず、組曲ではなく、1曲1曲独立した作品が組み込まれているところ。これはあえてそういう形にしたの?
アンディ:確かに今回のアルバムは、全体像としてキーパーという空想の世界のコンセプトがあって、それが現実の世界を反映しているわけだけど、ダークな曲、神秘的な曲、悪魔の歌とかばかりが続いたら、やっぱり僕個人としても、すごくポジティヴで高揚感のある曲が聴きたいって思うよ。そういったメリハリ部分というのは必要で、『キーパー1』でも『キーパー2』でもそうだけど、全部が同じ曲調ではないし、内容的にもいろんな側面から描かれた歌が入った作品になっている。ハロウィンはミステリアス、神秘的な部分にプラスして、陽気な部分、笑える部分があるんだ。そういう多面性が、今回のアルバムによく示されていると思うよ。
ヴァイキー:オペラ的なコンセプト・アルバムで成功したのは、ザ・フーの『トミー』だけだと思う。他のバンドもいろいろトライしてるけど、上手くいっていないんじゃないかな。
──10分を越える曲が2曲も入っている。今流行の音楽事情には逆行してるよね。自分達の意地というか、聴いてくれる人は聴いてくれるという確信がある?
ヴァイキー:『キーパー1』と『キーパー2』の中の曲にも長い曲があるんだけど、ラジオでかかってるんだよ。しかも、エディットされたヴァージョンではなく、長いヴァージョンのほうをね。だから、長い曲が受け入れられるのは、別に大きな奇跡でも何でもないと思うよ。
アンディ:ちゃんとストーリーがあって、いろんなパートがあって、クオリティの高さがあるから、必ずしも一般的に言われてるような“短い曲がかけやすい”とか、そういうことにはならないんじゃないかと思うよ。
──このアルバムの曲のヴァリエーションの豊富さ、表現力の豊かさ、曲の複雑さとかも含めて、ハロウィンはヘヴィメタル・バンドという枠を越えて、もっとプログレッシヴな方向性を示しているのかなという感じがする。
ヴァイキー:今回のアルバムには、今まで自分達がやってきた全てが含まれている。もちろん、そこにはバンドとしての自然な成長や進化もみられるだろうね。長くバンドをやっていると、世代を超えたファンがいるわけだけど、今回のアルバムは、保守的なファンの人達にも気に入ってもらえる要素が多くあると思うし、そうじゃない若いオープンマインデッドな人達にも楽しんでもらえる要素があると思う。若い人達がこのアルバムを聴くことで、自分達が慣れ親しんだサウンドだけじゃなくて、クラシック・メタルの手引書みたいな感じで捉えてくれることもあると思うんだよね。そうしてくれることに自分達の仕事の充実感を感じるところもあるよ。
──昔からのファンを納得させるのは難しいね。
アンディ:一番難しいのは、昔からの保守的なファンの人達をいかに満足させるかということだね。その世代は素晴らしいバンドの音楽を聴いて育ってきてるから本物をすごく良くわかっているんだよ。だから今回のアルバムをすごくネガティヴに捉える人もいると思うし、ポジティヴに捉える人もいると思うんだ。それは、どっちかのリアクションしかないと思うんだけど、自分達のアルバムというのは両方をなるべく受け入れるような内容になっていると思うよ。
──このアルバムの曲をライヴで聴くのがとても楽しみだけど、ライヴでどう再現するのかが気になるね。
ヴァイキー:スタジオ・アルバムと同じ音でやるんじゃなくて、やっぱりライヴ・ヴァージョンでやると思うよ。
サシャ:ライヴでは、アルバムとは異なる感じで、もっとロックンロールっぽい、ハードな感じで再現することになるだろうね。
取材・文●森本 智
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