このところのMadonnaはヒット曲よりもコンセプト重視の傾向が見られるが、さすがJanet Jacksonが開始したコンサートツアーのタイトルは「All For You」。もちろん「You」とは観客であるファンのこと。デトロイト郊外のPalace Of Auburn Hillsで行なわれた2回のショウの初日は、1万5000席がソールドアウトとなった。
当の彼女は極めて自信にあふれ、コンサートを通してユーモアを利かせた楽しいショウを軽やかに演じて見せた。まず、ステージ空中にしつらえた台に乗って登場。ステージに降り立つや、過去15年間のヒット曲と、売上げ200万枚の最新アルバム『All For You』からの曲をたっぷりと、手際よく組み合わせて聴かせる。
きらびやかなセットやパイロテクの使用は相変わらずだが、今年のコンサートは、これまで陥りがちだった仰々しさや過剰なイメージからは免れている。とはいえ問題がないわけではない。Jacksonのヴォーカルは、いつもステージではパワフルさに欠け、あの軽快なダンスに比べればどうしても見劣りするものだが、今回はことに細く、意図的にアンプを弱めにしてあるのかと思えるほどだ。ややもするとバッキング・シンガーや、一緒に歌いたがる観客にかき消されてしまう。また、ショウの流れを壊す曲もあった。しかし、そういった不自然な流れも“Trust A Try”でのアヴァンギャルドで華麗なコスチュームや、寝物語の歌“Would You Mind”で、Jacksonが観客の中から「その場で選んだ」という設定の男性をかっさらってステージに上げ、テーブルに縛りつけて歌うという凝った演出が、うまくその場をつくろっていた。
だがショウのハイライトは、驚異的なダンス・アンサンブルをフィーチャーしたミニ組曲やメドレーだ。オープニングセットの“Come On Get Up”“You Ain’t Right”“All For You”“Love Would Never Do (Without You)”は、Jacksonとカラフルなコスチュームのダンサーが風船の小道具の間を踊りまわり、エネルギッシュで楽しさ満載。また“Runaway”から “Miss You Much”“When I Think Of You”“Escapade”への流れもスムースだ。
そして、素晴らしい盛り上がりを見せた“That’s The Way Love Goes”のあとは、“What Have You Done For Me Lately”“Control”“Nasty”などの’80年代のスマッシュヒット。ここでまたコスチュームを変えて、スウィング時代を再現した’90年のヒット曲“Alright”へ。ちなみにコスチュームチェンジは全部で9回あった。
アンコールも同様に、イージー・グルーヴの“Doesn’t Really Matter”から現在ヒット中の“Someone To Call My Lover”と続け、さらにフィナーレは花火で飾った“Together Again”でしめた。’97年にチャートNo.1となったこの曲はJacksonの自作で、他界した友人との再会を願う賛歌だが、今夜ばかりはJacksonとの再会を熱望して踊る観客の願いとなった。