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おそらくミュージシャンというのは、決まっておかしな人種なのだろう。笑えるという意味でのおかしさではなく、単におかしいのである。ちょっとズレているというか。
過激派テクノユニット、Static-Xのフロントに立つWayne Staticもその例外ではない。そのことを心に留めてもらったうえで、Wayneとの電話インタヴューがどのように始まったか紹介しよう。
――『Machine』はかなりハードなアルバムですね。
「ありがとう」
――Wayne、あなたは怒れる男ですか?
「内面ではね」
と、こんな具合だ。
それならば『Machine』がWayne Staticの内面を、内側でだけ怒れる男の中身を明らかにしてくれるだろう。 アルバムの11トラックはすべてロードに出ている間、主として寄り合い所帯のOzzfestツアーの合間に書かれたものだ。
「例えば“Get To The Gone”のような一部の曲はロードに出ていることのハイな部分を反映している。ステージで演奏することによるナチュラルハイを描いているのさ。また“This is Not”は、ツアー生活の嫌な部分や家に帰りたい気持ちを表している。それから途中には“Sh-t In A Bag”みたいにクレイジーな感じの曲もある。ツアーバスではションベンできないとか、ばかばかしい緊急事態が起きるとか、ロードでは対処しなければならない奇妙なものごとがつきものなんだ」
なるほど、ロード生活とは思ったほどグラマラスなものではないようだ。
「いやいや、ロードに出るってことはまったく非グラマラスなものだよ。特に僕らのようなレベルでは、とにかくたくさんの野郎どもがバスに乗って、屁をこいたりいびきをかいたりしているだけというのが実態だね」彼は笑って付け加えた。「まったく突拍子もないライフスタイルなんだよ」
ギタリストのKoichi Fukudaは、そのとんでもないライフスタイルのために、バンドが『Machine』のレコーディングを開始する前に姿を消したのだろうか。
「僕らは何週間も彼に電話をかけて、メッセージを残したりもしたけれど、誰も彼の居所をつかめなかったのさ」とWayneは回想する。「彼が死んじゃったんじゃないかと思って、もう少しで警察を呼ぶところだったよ」
ベーシストのTony Camposが彼をつかまえて、バンドは話し合いの場を持ったが、Fukudaは燃え尽きてしまったことが判明したため、WayneとCampos、ドラマーのKen Jayは3人でスタジオに入った。やがて元DopeのギタリストTripp Eisenが加わり、彼らが歩みを止めることはなかった。
『Machine』はプラチナ近くまで売れたバンドのデビューアルバム『Wisconsin Death Trip』に続く作品であり、Wayneは2ndアルバムのプレッシャーに完全にはまってしまったという。
「そのとおりさ。最初のレコードを仕上げたその日に、僕は次の作品の心配を始めたんだよ。信じてほしいんだけど、僕にはそうなることがわかっていたのさ。それで必死に頑張ったんだ」
毎日音楽を書いて過ごし、音楽と寝起きを共にして、作品に磨きをかけていったという。 「作った音楽がガラクタか良いものかを判断するまでには、しばらく時間をかけて音楽と暮らしてみる必要があるんだ」と彼は説明する。アルバムからの1stシングルである“This is Not”もそうした過程を経て作られた。
「この曲の歌詞はたしか朝の6時ごろに書いたんだ。バスが動いているときにはあまり眠れないたちでね。他のみんなは移動中でも子供みたいに寝てるけど。それで僕は道路のラインを見ながら1人で一晩中起きていることがしょっちゅうなんだ。そんな明け方のある時に、こんな生活はあまり好きじゃないなと、ふと思い浮かんだのさ」
彼は続けて言う。「サビの部分の歌詞がすべてを語っていると思うよ。多くの聴き手が共感してくれるだろう。例えば学校へ通っているけど好きになれなかったり、仕事が嫌いだったりとか、どんな立場にあっても“これは自分の人生じゃない、これは自分の家庭じゃない、これは自分じゃない、こんなのいやだ”という具合にね。どんな人でも多かれ少なかれ理解できる気持ちなんじゃないかな」
そう、少なくとも内面では。
By David John Farinella/LAUNCH.com |