【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話066「宝鐘マリンとハコス・ベールズ」

5周年にして初の4days開催となる<LuckyFes’26>の3日目:2026年8月10日には、宝鐘マリンとHakos Baelz(ハコス・ベールズ)が登場する。キュートなアイドル群が列挙される9日にBABYMETALが降臨する事実もインパクト100点満点だけれども、野外の夏フェスにVtuberが殴り込みをかけるというエポックメイクなこの日は、今後のライブ・エンターテイメントにおいて記念すべきマイルストーンのひとつになると確信している。

日本のエンタメ業界は、長らくテレビ・ラジオ・新聞・雑誌を主戦場として発展してきた。現在のレジェンドアーティスト/現役アーティストの多くが、4大マスメディアによってその存在感をアピールし、結果、テレビで名を馳せた芸能人/タレント/ミュージシャンが最大級の求心力を持ち、エンタメの中心に存在してきた。その構造は簡単に変わるものでもなく、音楽業界は今もなおテレビの影響の大きさに多大なる期待を抱くところでもある。
でも現実は、多くの人はテレビから離れ、全世代においてYouTubeがエンタメの中心だ。であればこそ、現在YouTubeを主戦場に活動している方々こそ、これからのエンタメの中心になることは疑う余地もない。
例えば幕張メッセは様々な音楽系イベントが行われる巨大会場だけれど、<SUMMER SONIC>と<hololive SUPER EXPO/hololive fes.>は、どちらも数万人の動員を誇るものの客層は全く被っていない。ファン層の質も文化も全く違う。いわば、音楽界隈は渋谷、横浜、新宿系であり、Vtuber界隈は秋葉原や池袋、コスプレ~コミケ文化という印象だろうか。音楽界隈とVTuber界隈は、まだほとんど交差していない現状だけれども、いずれこの巨大な両界隈の境界は滲み、マージされ、エンタメの多様性は広く市民権を獲得していくことになるだろう。さあ、最初の1滴…その源流はどこなのか。LuckyFesはその境界を破壊したい。
推し活が高度に進化しアーティスト/タレントをサポートするというホロライブのファン(ホロリス)の精神性は、音楽業界のアイドルファンと共通するところでもあり、両者のファンダムが混ざり合うリアルな場を創出することは、思わぬ化学反応を生み出す巨大な科学実験場だ。そして音楽フェス好きを自認するフェス民たちにとっても、LuckyFesはHakos Baelzと宝鐘マリンの図抜けたパフォーマンス力を目の当たりにする絶好の機会となる。私が初めてみたあの時のホロメン生ライブの衝撃と感動を、ひとりでも多くの音楽ファンに知ってほしいと心から思った。
長くなってしまったけれど、最後にHakos Baelzと宝鐘マリンの魅力を簡単に記しておきたい。私の目から見た独断と偏見だけれども。
Hakos Baelzは、桁外れの歌唱力と突出したダンススキル…それを裏打ちさせる固い意志と実行力を礎に、その場の空気を一気に引き上げる存在感を突きつけてくれるだろう。卓越した「瞬間的に場を掌握する力」でもって、野外フェスという開放的な環境においても彼女のフィジカルなエネルギーは、観客をぐいぐいと巻き込むことになる。「YouTubeで雑談やゲーム実況をしているようなYouTuberが、なんでこんなに歌がうまくてダンスも凄いの?アーティスト顔負けじゃん」と、ふんわり巣食っていた偏見と固定観念が一瞬でぶち壊されるというわけだ(←実は私がそうだった…)。ちなみにHakos Baelzはオーストラリア人だけど、日本語がうますぎて「なんで英語がそんなに上手なの?」と逆転現象を起こすこと多々あり。ファンからは「ハコ太郎」「べーちゃん」と呼ばれているので、掛け声はそのあたりで。
そして宝鐘マリン。きめ細かい注意力と人を思う温かさ、多彩な知識、頭の回転の良さと極めて高いプロ意識が、大人ネタやミームネタまでをも耳障りの良いエンタメに昇華してしまうVtuber界のモンスターだ。その圧倒的な場の掌握力は、楽曲/MC/演出を通して「計算・完成されたショー」だろうと「ハプニングに見舞われたステージ」だろうと、一級のエンターテイメントに仕立て上げてしまう力を持っている。キュートなMCとその声と身のこなし、比類なきボーカル力は、初の野外フェスという「場違いな場所」においても、今まで誰も見たことのないようなエンターテイメントの髄を見せつけてくれることだろう。我々から彼女への掛け声は「船長」だ。船長はステージ上から「Ahoy!」から始まって「キミたちー」と声をかけてくれる。その時点でもう虜だよ。

さあ、LuckyFesではふたりはコラボをするのか。べーちゃんが場をかき回してカオスを作り、その後に船長が構造化するパターンもあれば、船長が世界観を提示した後にハコ太郎がそれを破壊的に拡張するパターンもあるだろう。ふたりともコントロール能力が高いアーティストだけれども、べーちゃんはカオスを制御し、船長は秩序を描く。この構図は単なる対比に留まらず崩しと回収の関係となるわけで、MCも最大級の楽しみのひとつだけれど、べーちゃんが予測不能なボールを投げれば、船長の言語化能力とツッコミ精度が一番星のようにキラリと輝く。YouTube配信以上にライブならではの化学反応が可視化されるに違いない。
これまでのフェス文化とは一線を画した新たなエンタメの1ページが、8月10日に目撃できる。みなさん、LuckyFesで会いましょう。この日は日本が誇るエンタメの特別な日です。
文◎烏丸哲也(BARKS)







