【ライブレポート】BRAHMAN<尽未来祭 2025>DAY2、共にシーンを牽引するフェスの主役たち「失い続けろ。迷い続けろ。それでもやり続けろ」

2025.12.31 15:01

Share

「今日出演してくれたのは、自前のフェスをやっていたり、いつでもデカいところでライヴをやっていたりする、そういうバンドたち。BRAHMANの近年の10年──こういうデカいところでライヴをさせてもらう時に、お手本にしているようなバンドたちなんだよ。<尽未来祭>も、各自がやっているフェスのいい部分を取って散りばめているし、各バンドの見せ方とか、各バンドのクオリティとかもそう。年齢の差を気にすることもあるかもしれないけど、どちらかと言ったら中1から中3くらいの感じで、今の俺たちにとって大事な仲間が集まってくれました。今日出てくれたバンドの誰かがフェスやツアーに呼んでくれたら、俺たちはふたつ返事でOKする。これからも、ずっと一緒にやっていきたいと思っています。いつまでも長く本当はやっていたい。あんたの街のボロボロのライヴハウスで、ボロボロになるまでやっていたい。だけど、終わりがくることもわかってる。ここ数年、俺たちは大事な仲間をたくさん失って、その一人ひとりの終わりを噛み締めるたび、自分は本当にこれをやっていていいのか、こんなふうにしていていいのかって、迷っている。でも迷った時は、大事な仲間が先に行った空を見上げて、俺はどうすればいいんだ?って聞くんだ。そしたら、やつらが言うんだよ。「失い続けろ。迷い続けろ。それでもやり続けろ。泥沼でも何でも、やり続けろ。それがお前の唯一の道だ」って」——TOSHI-LOW

11月23日、<尽未来祭>DAY2を締めくくったのは、TOSHI-LOWのこの言葉から雪崩れ込んだ「THE ONLY WAY」だった。“The only way not to lose, is to keep on losing” “The only way not get lost, is to keep on getting lost”という咆哮が繰り返される「THE ONLY WAY」は、2008年にリリースされたアルバム『ANTINOMY』の冒頭を飾り、そして象徴する楽曲だ。“迷わない唯一の方法は、迷い続けること” “失わない唯一の方法は、失い続けること”── 一見背反したことが綴られているように思える歌だが、そこにあるのは死と生の間で揺れる痛みではなく、“生き続けること”一点を失わないために、迷い、失い続ける覚悟を己に問う眼差しである。なぜ生きて、なぜ死ぬのか──30年前も今もたったそれだけを問うて歌い続けてきたBRAHMANの歴史の中にあって、“死に切ること”以上に“生き切ること”への想いが表出し始めたのが『ANTINOMY』というアルバムをリリースした当時であり、だからこそ2008年の頃は、ステージ上で擦り切れようとするライブに大きな変化が表れ、ここで果てれば本望と言わんばかりの姿勢と“生きて行くんだ”という心の声が大きな矛盾となってTOSHI-LOWの心に大きな揺れが生まれていたのだと思う。『ANTINOMY』、つまり二律背反というタイトルは、その当時の心境と進境を率直に表している。

2008年7月6日に行われた<TOUR「AUTONOMY」FINAL>@JCBホールの最後に紗幕を用いたオープニング演出(この時のライブ冒頭、ダイバーの足が幕に引っかかって演出が失敗してしまった)をイチからやり直して「THE ONLY WAY」を披露し、その時にTOSHI-LOWが放った「失敗したって何回でもやるよ。ありがとう」という言葉。当時はTOSHI-LOWが滅多にMCをしなかったということも含めて、この一幕は今もBRAHMANファンにとってハイライトのひとつだと思うが、泥にまみれてもがき続ける覚悟、目の前の人への感謝、観客も含めた仲間の存在を受け入れ始めたBRAHMANの姿を端的に表すマイルストーンのひとつとして、“The only way not to lose, is to keep on losing” “The only way not get lost, is to keep on getting lost”という歌が象徴しているものは大きい。

1990年代後半に勃興したパンク/ミクスチャーのムーヴメントを足場にして登場し、しかしそのブームの中で消費されることを嫌い、深く潜って己の純粋性を守り、死と生の狭間を旅して命の辺境を覗こうとする心が民族音楽に共鳴し、それを唯一無二のミクスチャーに昇華し続けたBRAHMAN。その修行僧のようなストイックさとオリジナルな音楽性にこそ大きなリスペクトが贈られ、ロックバンド道としてのフォロワーが昔も今も後を絶たない。そうして自分たちに捧げられる愛や尊敬に対してBRAHMAN自身がゆっくりと心を開き、生きるならば仲間と心を交わして歩んでいきたいという心の本音に耳を傾け始めたのが中期10年のBRAHMANの核心なのだろう。

その中期10年を表すコンセプトが設けられていた<尽未来祭>DAY2に集ったバンドたちに捧げられた「これからも、ずっと一緒にやっていきたいバンドたちです」という言葉は、BRAHMANがこれまでのBRAHMAN像を突き破ろうともがいていたあの頃があったからこそ出会えた仲間たちなのだという実感を滲ませるもので、強く在ることよりも折れない生き方を、拒むよりも受け入れる姿勢を、責めるよりも赦す心を──という現在のBRAHMANのフォルムに行き着くまでの重要な季節とその証明が、2日目のタイムテーブル全体に表れていたのだと思う。

2000年代後半から2010年代初頭にフェス文化が台頭していった中で、交流を深めたであろうバンドが多く集ったDAY2だったが、それに伴って盛り上がる機能に振ったライブが増えたかと言うと、その真逆。<尽未来祭>という“フェス”ではなく、ただひたすらBRAHMANに対してどんな信念を見せるのかというステージなのだと各バンドが解釈し、それぞれ音楽的な違いはあれど、迷ったり失ったりもがいたりしながら生きる姿勢をそのまま音楽でぶっ放すことこそがBRAHMANへの最大の祝辞になるのだと言わんばかりに爆走していくアクトが連打されていった。

   ◆   ◆   ◆

【HEY-SMITH】

HEY-SMITH

HEY-SMITHの猪狩はステージ上で「あの音楽性で30年やってきたことが凄い。BRAHMANは今も俺らロックバンドを導いてくれている」と話していたが、BRAHMANがあの音楽性・あのアティテュードでもって30周年を迎えたこと自体が、それぞれがそれぞれのロック道を貫くことを大肯定しているように感じられたバンドも多かっただろう。

メタルとスカを混ぜてメロディックパンクにしていくという、当時のメロディックパンクマナーの中ではオルタナティヴだったHEY-SMITHは今や邪道を王道に塗り替えたバンドであり、その道をガシガシと突き進むライヴを魅せた。

【ACIDMAN】

ACIDMAN

「苦しんで、あがいて、それでも音楽で何かができないかと、ギリギリでも前を向いて。そうして僕らはいつか必ず死んでいく。ルーツも音楽性も違うけど、その思想の部分に共感して、僕らもBRAHMANも同じだと思ってきました。僕らの場合はそこに宇宙が入ってくるんだけど」──大木伸夫

ACIDMANの大木はBRAHMANへのシンパシーとリスペクトと“宇宙”という自分の宝物を語り、命というコアを凝視するからこそ宇宙という無限大に手を伸ばす音楽をどこまでも雄大に響かせた。

【10-FEET】

10-FEET

10-FEETは一切のインターバルを置かず「行け! 行け!」と叫び続け、40分を一気に駆け抜けるライヴを披露した。

終演後にTAKUMAに挨拶をした際には「今日はBRAHMANみたいなライヴをしようと思っていた」という話もあったのだが、一瞬に命の全部を置いていくことで1秒先を望み、今終わっても構わないという姿勢で人生に挑むことがその先の道を描き出すというギリギリ感は10-FEETとBRAHMANに通底するものだ。

【ORANGE RANGE】

ORANGE RANGE

ORANGE RANGEはひたすらヒット曲を連打。ジャンル感や毛色の違う場所だろうが楽曲一発で耳を掴み、誰だろうが何だろうがピースで包み込んで一気に持っていく。

“踊る”という行為に対するサウンド吟味と音楽アプローチがあまりに早かったバンドであるがゆえに勝ち上がっていったバンドだが、だからこそストロングスタイルのロックフェスではアウェーを感じることも多かっただろう。それでも徹底して楽曲の力と盤石のアンサンブルで持っていく姿は本当にカッコいいし、顔は笑っていても、音楽の目は笑っていない。目に見えない部分に浮かび上がるアグレッションは、ORANGE RANGEの生き様そのものである。

【SiM】

SiM

SiMのMAHは『明治ミルクチョコレート』のCMで“♪チョコレートは明治”と歌うTOSHI-LOWを模してイジるというひと幕で(いろんな意味でひやっとしたが)爆笑をかっさらいつつ、パンク、ハードコア、メタルコア、レゲエを混ぜるという曼荼羅のようなミクスチャーを、20年間貫いてきた貫禄を、ドンと置いていく王道ライヴ。

こちらもまた、命の旅が様々な音楽を混ぜる闇鍋になるというBRAHMANとの共鳴点が浮かび上がってくるようだった。

【マキシマム ザ ホルモン】

マキシマム ザ ホルモン

マキシマム ザ ホルモンも、まさにそう。ヘヴィロック、ニューメタル、メロディックパンク、ハードコアのごった煮にJ-POPやダンスミュージックを挿し、根底には漆黒の血が流れている音楽をポップに接続していくという濃厚過ぎる発明を果たしたバンドがホルモンである。ゆえに、パンクと民族音楽を合体させるという独自性を持ちながら常にストロングスタイルでストレートなロックバンドとして走ってきたBRAHMANへのシンパシーは強烈に感じているだろう。

根底にはダークでブルータルなものを持っている一方、時代ごとのポップミュージックの流れを解析し続けて、サウンドの質感をブラッシュアップし続けてきた跡も楽曲それぞれに見える点もまた、ホルモンがトップランナーであり続けている理由だが、そのインテリジェンスな面すら「ハングリー・プライド」で木っ端微塵にして去っていく様を見て、マイクをステージに叩きつけて這うようにステージを降りていた最初期のTOSHI-LOWを想起してしまった。

【MAN WITH A MISSION】

MAN WITH A MISSION

MAN WITH A MISSIONは、ロックのドラマツルギーへの憧憬と敬意を強く持つがゆえに、それらを時代ごとのポップミュージックにフィットさせて“ロックの扉”を作り出す達人のようなバンドである。つまり“ロックバンドとは?”という禅問答を繰を命題としてきたのがマンウィズであり、ゆえにロックを更新するための音楽的なトライを繰り返してきたオオカミ集団なのである。

それは「ロックバンドをやること自体が夢なんだ」と語り続けてきたBRAHMANとも根っこの部分で繋がるシンプルかつ蒼いエネルギーであり、さらに震災以降の復興支援で未来への眼差しを同じくした仲間としても、この日のステージでBRAHMANに捧ぐ想いは強かったことだろう。「Raise your flag」から始まったライヴはまさに、ロックバンドの旗を振り続けるという意志を表現するものだった。

【The Birthday (クハラカズユキ, ヒライハルキ, フジイケンジ)】

The Birthday (クハラカズユキ, ヒライハルキ, フジイケンジ)

The Birthdayはクハラカズユキ、ヒライハルキ、フジイケンジによる新体制での出演。3人それぞれが1曲ごとにメインヴォーカルをとるスタイルはチバユウスケの不在を感じさせるどころか、The Birthdayの楽曲を束ねていた4人の意志を克明に表すもので、フジイとヒライとクハラが心ごと歌にぶつかっていく姿そのものが、楽曲に込められた意志は永遠に輝き続けるということを証明していくようだった。

そこにノスタルジーはなく、ただただ今のThe Birthdayはこれなんだという一撃のライヴ。BRAHMANとの関係がどうとか、そういった説明もなし。ひたすら凄い音と眼光鋭い歌を飛ばすだけ。たったそれだけに、ロックバンドが生きて進んでいくことのすべてが詰まっていた。「誰かが」の“EVERYBODY NEEDS SOMEBODY”という言葉は今日この日を端的に翻訳するものとして響いた。もがき苦しんで生きていくからこそ、隣のやつの痛みと苦しみもまた理解できる。そうして仲間と出会い、支えながら進んできたやつらの祝祭なのである。

【G-FREAK FACTORY】

G-FREAK FACTORY

G-FREAK FACTORYは、茂木がTOSHI-LOWを「兄弟」と呼んでいることからもわかる通り、そしてTOSHI-LOWが茂木に「レベルミュージックを書け」と伝えたことから「ダディ・ダーリン」が生まれたというエピソードが表す通り、時代を表し時代に対峙し続けるパンクバンドとしての矜持をお互いに認め合う関係を背負ってステージに立っていた。

「“TOSHI-LOWに会わせたい”といろんな人から言われてたんだよ。“実際に会ったら犬猿の仲になるかハモるかの二択だろうな”とも言われてたんだけどさ。それでTOSHI-LOWと話してみたら、誕生日がまったく一緒でさ。こうして兄弟みたいな関係になれた」というMCもあったが、改めて、BRAHMANの精神性の部分に共鳴し続けているバンドが今も昔も後を絶たないということが証明されていくライヴばかりだった。アタマからケツまで“心奥をそのまま表すことが唯一無二の音楽を生む”という本質だけをドカドカと置いていくライヴだらけで、それがスペシャルな1日にならないわけがない。

   ◆   ◆   ◆

何より、精神性の部分でBRAHMANへの共鳴と尊敬を捧げるバンドたちだからこそ、その音楽性はそれぞれに異なり、オリジナルなミクスチャーばかりである。音楽的な型ではなく、心の輪郭をそのまま表す姿勢に共鳴し、それこそがロックバンドであるという信念を貫くがゆえの百花繚乱な音楽、音楽、音楽。民族音楽とパンクをフュージョンさせるというBRAHMANの音楽的なフォロワーはシーン全体を見渡しても数少ないが、生きて死んでいくだけの人生を己の手で掴んで離さない姿勢に対する畏敬は30年の間でここまで巨大化してきたのだ。そんなことを感じる、“全員違うけど全員が響き合っている”ライブの数々だった。ただの祝祭ではなく、フェスでもなく、BRAHMANが貫いた生きる姿勢にリスペクトが集まり続けているがゆえの巨大な人間祭。初めから最後まで加速していったあの熱を表す言葉が見当たらないくらい、人と音が交わるほどにピークタイムが更新され続けていく異様な空間だった。

たとえばACIDMANが「ANSWER FOR…」のカバーを披露したり、G-FREAK FACTORYが「ANSWER FOR…」のイントロをSEにしてライブを始めたり、とにかく「ANSWER FOR…」人気が凄かったわけだが、それも、あのオリエンタルなフレーズと爆発、静と動、生と死というBRAHMAN全部盛りの曲だからなのだろう。死生観を音楽にするという普遍的なテーマに向き合ってきたがゆえに、答えが見つからない旅のような趣もBRAHMANの音楽にはある。だからこそ転がり続けていく、その姿勢こそが、これだけユニークな仲間を呼ぶ最大の要因なのだろう。猪狩が「BRAHMANは俺たちを導いていくれている」と語った通り、答えのない旅を続け、ひたすら走り続ける姿勢こそがロックバンドにとっての道になっているのだ。TOSHI-LOWはいつでも「俺らはミドレンジャーみたいなもんだから」と語って、あくまで主人公ではないということを強調する。しかしBRAHMANはいつだって先陣を切って走るランドマークのような存在なのだ。

実際、BRAHMANが先頭を走るからこそ生まれたものはこのシーンの中に無数に存在している。上述した精神性の変化に付随することでもあるが、彼らの中期10年を語る上で最も重要だと言っていいのが2011年の東日本大震災以降の復興活動だ。これはBRAHMAN自身の“生きていく” “助け合っていく” “己を開いていく”という姿勢を決定づけた出来事であると同時に、ロックバンドそのものの指針になっていったことだろう。生きる自由を何のために使うのか? バンドである前にひとりの人間として何をなせるのか? 真っ直ぐ己の心を貫く以外に大事なことはあるか? そんなメッセージを背中でも言葉でも表すバンドとして、BRAHMANはいつだって先頭を走ってきたのだ。音楽だってそう。死生観の旅を民族音楽に託し、自分のありかを探し続ける生き様がパンクに共鳴し、誰にも似ていないオリジナルな音楽に昇華し続けた姿勢は、“自分でありたい”と叫んで転がってきたロックの鏡である。

【BRAHMAN】

BRAHMAN

「初期衝動」「賽の河原」を立て続けに披露してスタートしたBRAHMANのDAY2は、アルバム『THE MIDDLE WAY』『ANTINOMY』『超克』の楽曲を軸にしたものだった。そこに「BEYOND THE MOUNTAIN」や「GREAT HELP」といった最初期の楽曲を挿し、G-FREAK FACTORYの茂木を迎えた「最後の少年」、この日出演したThe Birthdayのチバユウスケへ捧げたのであろう「charon」を歌い上げて爆走していったライブは、単純にBRAHMAN中期の楽曲を並べるのではなく、新たな仲間と新たな変化を起こしていった時代の心を表す楽曲を丁寧に編んでいくようだった。

特に印象的だったのは、「PLASTIC SMILE」で閉じた心を歌ったのちに己の殻を破っていくようにして「Slow Dance」を舞い踊り、「FAR FROM…」と「LOSE ALL」の連打で変わらぬ死生観を改めて示して見せ、ラストの「最後の少年」「charon」「THE ONLY WAY」へと雪崩れ込んでいったライブストーリーである。揺れて、沈んで、迷って。なぜ生きてなぜ死んでいくのかを問い続けても答えが見つからない。それでも人と仲間の存在を指針にして、生きて、出会えば出会うほど増えていく喪失の痛みも受け入れていく──そんなBRAHMAN全史を一気に放出するようなライブだった。

しかし10年前と今とで大きく異なっていたのは、どれだけ深い悲しみを湛えた歌であっても、それを人と共有する喜びに満ちているTOSHI-LOWの姿だった。たとえば「LOSE ALL」は、川の向こう側を眺望するような“生と死の際”を歌っている楽曲だ。それでもTOSHI-LOWはピットにマイクを向けて”Keep on going blue”の一節を観客に預け、観客もまた大きな歌を打ち返した。この10年で、いや、この30年で経てきた出会いと別れの数々によって、この歌の真意が“悲しみ”ではなく“誰もが抱えている心”として意味を広げていったのか。あるいは、最新アルバム『viraha』に込められた“痛みを抱えてもなお、最後の日まで生き続ける”という心によって、悲しみも苦しみも含めてすべてを赦すような歌へと変貌していったのか。死と生を往復しながらひたすら前に突進していくようなライブの中にあって、TOSHI-LOWは笑顔を絶やさなかった。「LOSE ALL」や「PLASTIC SMILE」のように深いブルーを滲ませる楽曲でも、観客は大声を発し続けた。ただBRAHMAN中期を網羅するだけのライブではなく、30年を経て、死という真実を概念ではなく事実として噛み締めた今のBRAHMANが鳴らす“生と死”。そこにあったのが喜びの表情であることに、驚きを隠せなかった。

だが、そこにある真意もまた、冒頭のTOSHI-LOWのMCに込められているのだろう。失い続けても、迷い続けても、命ある限りは行くしかない。終わる時が見えてきた今だからこそ、この一瞬を愛するしかない。そんな腹の括り方と“ゴール”がやってくる未来への視線が、このライブを温かく、そしてこれ以上なく切ないものにしていたのだと思う。

「たとえば余命宣告された人がいたとしたら、その人にとっては、今生きているということがより色濃くなるでしょう。死ぬという事実と同時に、生きている喜びもまた強くなるんだよ。俺らは余命宣告されたわけじゃないけど、死生観という大きなテーマを歌い続けてきたからこそ、終わりに向かうがゆえの生の力が出てるんじゃないかな」

これは、終演後にTOSHI-LOWと言葉を交わした際に聞いた話だ。死という圧倒的な現実を直視するからこそ、今生きている一瞬にひと筋の光が感じられる。それはBRAHMANが最初期から表し続けてきたことだが、そのリアリティと重みは、年々巨大なものになっているのだろう。喪失を多く経験したがゆえに、その人たちへ捧ぐ愛と慈しみを響かせた『viraha』はまさにそうだが、根本は変わらぬまま、しかし“なぜ生きて、なぜ死ぬのか”という人間の永遠の命題に向き合うからこそ、歴史を重ねるたびに今への視線が変わっていく。そんなBRAHMANの“変わらないまま変わっていく”姿が凝縮された1日だった。俺たちは、ただ始まってただ終わっていくだけなのか? いや、そうじゃない。その間に多くの出会いと喜びもあったでしょう? そんな問いかけが、今もまだ心の中に残っている。

取材・文◎矢島大地
撮影◎岸田哲平/三吉ツカサ/山川哲矢/橋本塁/アンザイミキ/浜野カズシ

 

■<尽未来祭 2025>DAY2 / 11月23日(日)@千葉・幕張メッセ国際展示場9-11ホール SETLIST
【HEY-SMITH】
01 Endless Sorrow
02 Be The One
03 Still Ska Punk
04 Living In My Skin
05 Say My Name
06 Fellowship Anthem
07 Don’t Worry My Friend
08 Inside Of Me W.E.E.D -Wanna Enjoy Endless Dreams-
09 Inside Of Me
10 We sing our song
11 Let It Punk
12 I’m In Dream
13 Come back my dog
【ORANGE RANGE】
01 以心電信
02 マジで世界変えちゃう5秒前
03 裸足のチェッコリー
04 ソイソースメドレー
 (Pantyna feat.ソイソース|SUSHI食べたい feat.ソイソース|DANCE2 feat.ソイソース|おしゃれ番長 feat.ソイソース)
05 上海ハニー
06 イケナイ太陽
07 キリキリマイ
【SiM】
01 Get Up, Get Up
02 Amy
03 Boring People, Fucking Grays
04 The Rumbling
05 DO THE DANCE
06 THE KiNG
07 KiLLiNG ME
08 Blah Blah Blah
09 Faster Than The Clock
10 f.a.i.t.h
【ACIDMAN】
01 輝けるもの
02 夜のために
03 SILENCE
04 白と黒
05 世界が終わる夜
06 ANSWER FOR… (BRAHMAN)
07 ある証明
【マキシマム ザ ホルモン】
01 maximum the hormone
02.「F」
03 便所サンダルダンス
04 ぶっ生き返す!!
05 絶望ビリー
06 ロックお礼参り~3コードでおまえフルボッコ~
07 ビキニ・スポーツ・ポンチン
08 ハングリー・プライド
【The Birthday (クハラカズユキ, ヒライハルキ, フジイケンジ)】
01 DISTORTION
02 LOVE ROCKETS
03 愛でぬりつぶせ
04 声
05 Red Eye
06 誰かが
07 COME TOGETHER
【MAN WITH A MISSION】
01 Raise your flag
02 Get Off of My Way
03 REACHING FOR THE SKY
04 Take What U Want
05 Against the Kings and Gods
06 絆ノ奇跡
07 Emotions
08 FLY AGAIN
【G-FREAK FACTORY】
SE: ANSWER FOR… (BRAHMAN)
01 最後の少年 (BRAHMAN)
02 Unscramble
03 WHO UNCONTROL
04 島生民
05 ダディ・ダーリン w/ TOSHI-LOW
06 Too oLD To KNoW
07 らしくあれと
【10-FEET】
01 風
02 スパートシンドローマー
03 ハローフィクサー
04 第ゼロ感
05 その向こうへ
06 RIVER
07 ヒトリセカイ
08 goes on
09 蜃気楼
【BRAHMAN】
01 初期衝動
02 賽の河原
03 雷同
04 THE VOID
05 露命
06 BEYOND THE MOUNTAIN w/ 満 (HEY-SMITH), イイカワケン (HEY-SMITH), UME (HEY-SMITH)
07 GREAT HELP
08 其限
09 PLASTIC SMILE
10 Slow Dance
11 FAR FROM…
12 LOSE ALL
13 警醒
14 最後の少年 w/ 茂木洋晃 (G-FREAK FACTORY)
15 charon
16 THE ONLY WAY

 

■<BRAHMAN tour viraha final>
2026年5月15日(金) 東京・TOKYO GARDEN THEATER
opne18:00 / start19:00
▼チケット
アリーナスタンディング ¥5,980
スタンド指定席 ¥5,980
https://eplus.jp/brahman2026/

■<BRAHMAN tour viraha 2026>
1月13日 千葉 LOOK
1月15日 茨城 水戸LIGHT HOUSE
1月18日 埼玉 越谷 EASYGOINGS
1月27日 三重 四日市CLUB ROOTS
1月29日 徳島 club GRINDHOUSE
1月31日 高知 X-pt.
2月06日 長崎 DRUM Be-7
2月08日 佐賀 GEILS
2月10日 宮崎 LAZARUS
2月12日 大分 DRUM Be-0
2月15日 富山 MAIRO
2月17日 長野 JUNK BOX
2月26日 鳥取 米子laughs
2月28日 山口 周南RISING HALL
3月13日 福井 CHOP
3月15日 奈良 EVANS CASTLE HALL
3月17日 和歌山 CLUB GATE
3月22日 愛知 名古屋ReNY limited
3月24日 大阪 GORILLA HALL
3月26日 滋賀 U☆STONE
4月03日 群馬 高崎芸術劇場 スタジオシアター
4月07日 岐阜 Yanagase ants
4月14日 秋田 Club SWINDLE
4月16日 山形 ミュージック昭和セッション
4月18日 岩手 KLUB COUNTER ACTION宮古
5月08日 岩手 KESEN ROCK FREAKS大船渡
5月10日 宮城 石巻BLUE RESISTANCE
※ゲストあり

 

■PICTURE LP BOX『七梵全書』
2026年3月11日(水)発売
【完全受注生産限定盤 (TOY’S STORE 限定販売作品)】
PPTF-3908~3914 STEREO  33 1/3 r.p.m
¥59,400(税込)
・特製化粧箱仕様オリジナルBOX
・ピクチャーレコード 7枚組
予約リンク:https://store.toysfactory.co.jp/products/pptf-3908
受注期間(完全受注生産限定盤):11月19日(水)18:00~2026年1月30日(金)24:00

▼収録内容
DISC 1. A FOLORN HOPE
DISC 2. THE MIDDLE WAY
DISC 3. ANTINOMY
DISC 4. ETERNAL RECURRENCE
DISC 5. 超克
DISC 6. 梵唄
DISC 7. viraha