【インタビュー】「オレンジ」が導いた海外からの熱視線、YOSUKEが語るSPYAIRの今とこれから

2025.10.30 10:00

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Nagie LaneのmikakoがMCを務めるinterfmの音楽ラジオ番組「TOKYO MUSIC RADAR」は、世界へ羽ばたくべくグローバルな活動を視野に入れたアーティストたちをゲストに迎え、濃密なアーティストトークに花を咲かせる音楽番組だ。

今回番組にやってきたのは、海外からの注目も高いSPYAIRのボーカルを務めるYOSUKEだ。映画『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の主題歌「オレンジ」はストリーミング累計2億回再生を突破し、海外からも熱い視線が注がれている状況にある。9月には河口湖ステラシアターにて単独野外ライブ<JUST LIKE THIS 2025>を成功させ、2026年2月からの全国ツアー<SPYAIR TOUR 2026>の開催も発表された、そんなSPYAIRの魅力に迫ってみよう。

──(mikako)2005年にオリジナルメンバーで結成され2010年にメジャーデビューし、2023年4月にYOSUKEさんが加入し現体制となったSPYAIRですが、SPYAIRの存在を最初に意識したのはいつだったんですか?

YOSUKE:中学校ぐらいの時かな。家族旅行の飛行機の中でたまたま映画「アメイジング・スパイダーマン」を観たら、主題歌が「0 GAME」って曲で「これめっちゃいいな」と思って。で、色々調べたら、それこそ『銀魂』や『ハイキュー!!』の歌を歌ってんじゃん!って知りました。自分は洋楽が好きだったんで邦楽は詳しくなかったんですよね。

──(mikako)洋楽?

YOSUKE:とにかくKISSが好きで。ですけど、当時好きだった「0 GAME」を久々にYouTubeで観ようと思ったら、たまたま関連動画でSPYAIRがボーカルを探してるチャンネルが出てきて(YouTube『スパイエアー、ボーカル探してます。』https://www.youtube.com/@spyair811)。そこから意識しました。

──(mikako)それでオーディションに応募してみようと?

YOSUKE:はい。その頃、元々やっていたバンドが解散してソロでやっていたんですけど、もう1回バンドのボーカルをやれるんだったらトライしたい…っていう感じでした。やっぱりバンドのボーカルになりたくて、これでダメだったら、一旦音楽から身を引こうぐらいの感じではあったので、分かりやすい区切りかなと思ってまずは応募してみたんです。

──(mikako)応募するには勇気がいったでしょう?

YOSUKE:いや、全然。ほんとに。

──(mikako)そうだったんですね。逆にそれが良かったのかも。

YOSUKE:そうですね。どんどん審査が進んでいって「これ、ワンチャン俺かな」ってなったぐらいから、なんかちょっとドキドキしてきた。

YOSUKE

──(mikako)加入決定は、どのように伝えられたんですか?

YOSUKE:審査のひとつということで、「RAGE OF DUST」という曲のレコーディングをしたんですけど、それが終わった後にミーティングがあって「YOSUKEで決まりです」みたいな。

──(mikako)すごい。

YOSUKE:その流れで、「今日録った歌は世に出ます」って。え?「先に言ってよ」みたいな(笑)。加入後すぐに富士急ハイランド・コニファーフォレストで<JUST LIKE THIS 2023>というライブが控えていたんですけど、4ヶ月ぐらいしか時間がなくて、そもそもそんなに曲を知らないから「曲覚えなきゃ」みたいな。

──(mikako)一気に覚えたんですね。短期間でどうやって全曲を覚えたんですか?

YOSUKE:それこそライブ用のハモリやコーラスのデータも録らなきゃいけないので、福岡のスタジオで録りながらやっていました。あとは、その前年はほぼニートみたいな状態で体力もなくなっていたから、ジムに行ったり水泳したり、体力もつけながら。

──(mikako)すごいですね。

YOSUKE:でも、それしかやることがなかったんで。

──(mikako)そもそもそれまでの曲が、自分とキーが合うかどうか、そこも合わせていったということですか?

YOSUKE:最初はもう合わせるしかなかったですね。ライブ映像を観たり聴き込んだり。

──(mikako)自分自身のものにしていくまでには、計り知れない努力があったと思います。もともと洋楽が好きだったとのことでしたが、音楽を始めるきっかけは?

YOSUKE:KISSが好きでずっと聴いていたんですけど、小学校1~2年生ぐらいの時に父親にお願いしてギターを買ってもらって、音楽がスタートしました。KISSを好きになったのは完全に父親の影響ですね。基本的に音楽はそれしかなかったですもん。それこそ1970年代のハードロックと1980年代のポップスも結構聴いていたので、そこがルーツではありますね。

──(mikako)SPYAIRは9月の27日~28日に河口湖ステラシアターで単独野外ライブ<SPYAIR JUST LIKE THIS 2025>が開催されましたが、いかがでしたか?

YOSUKE:いや、大変でしたね。

──(mikako)史上初の2days開催だったんですよね?

YOSUKE:そうです。2日とも全く違うセットリストにしたので、自分としてはリハでめちゃくちゃ仕上げました。ステラシアターという会場の独特な音環境もあったんで苦戦はしたんですけど、でも本当にいい会場で、すり鉢状になっているのでお客さんひとりひとりの表情が1番後ろまで見えるんです。だからお客さんの笑顔に救われました。

──(mikako)違うセットリストで2daysってカロリー使いますよね。

YOSUKE:ほぼ同じセットリストで2日間とかだと、1日目の反省点を2日目で活かすことができたりするんですけど、今回全くそれができなかったんですよね。もう「やるしかねえ」みたいな。

──(mikako)2015年から続いている<JUST LIKE THIS> の10年を振り返っての1日目とSPYAIR歴代のアニメソングセトリにした2日目という内容でしたよね。

YOSUKE:いやもう、めちゃくちゃ盛り上がりました。びっくりするぐらい。普段とも全然違って「待ってたぞ、これを」みたいな。

──(mikako)ファンがアーティストと一緒に歴史を振り返るっていうのは、貴重なものですから。

YOSUKE:そうですよね。1日目は多分皆さんのいろんな記憶が曲ごとに蘇って、涙している人もいたんで、そうだろうなって思いました。2日目はもうとにかく、みんなも知っている曲だらけなので大合唱でした。

──(mikako)セットリストによっては、続けて歌うのはきつい曲順とかなかったですか?

YOSUKE:でも基本的には会場の空気感…ボルテージを優先したいという気持ちがあるんで、自分のそういう都合は二の次って感じですよね。まずは上がるか上がらないかが第一優先。なのでセットリストに関してはかなり考えて、最終リハで順番が変わったりもしていました。

──(mikako)そうして無事成功裏に終わったわけですね。そして9月17日には配信限定で<JUST LIKE THIS 2025>のテーマソング「Bring the Beat Back」もリリースされましたね。

YOSUKE:僕自身、初めてのアプローチの曲で、ブレイクビーツっぽい感じだったり、ちょっとダークなコードで速いテンポの曲って、なかなかやったことがなかったんですよ。だからUZからデモをもらった時はすごい新鮮でした。その中でも好きなことやろうと思って中間でシャウトしたり。

──(mikako)ライブでの反応はいかがでした?

YOSUKE:いや、すごかったですね。すごい盛り上がりました。この曲だけは指定席じゃなくてスタンディングにしてくれって感じで、もう皆さんが身体を動かして。

──(mikako)<JUST LIKE THIS>というイベント自体が、SPYAIRの皆さんにとってもすごく大切なイベントですよね?

YOSUKE:そうですね。僕はまだ3回目ですけど、メンバーはもう10年続けてやっているし。でも僕にとっても最初の大舞台が<JUST LIKE THIS>だったのでその分思い入れも強いんです。ツアーだったりフェスだったりリリースも含めて、活動はいろいろあるんですけど、その中でも<JUST LIKE THIS>があることで身も引き締まるし、ホームのイベントとしてそこで得られる安心感もありますよね。

──(mikako)原点に帰れるみたいな。

YOSUKE:改めて感じさせられますね。

──(mikako)そんなSPYAIRはこれまでも多くのアニメのテーマソングを手掛けてきましたが、映画『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の主題歌「オレンジ」はストリーミング累計2億回再生を突破する記録となりましたね。

YOSUKE:びっくりしましたね。それこそお話をいただいたのが加入してまだ数ヶ月の時だったんで「いいの?」「え、マジかよ」ってなった。だから何度もアニメも見直しましたよね。

──(mikako)歌うにあたって、考えたことなどはありましたか?

YOSUKE:マイク選びとかは結構考えました。いつもは高音がパッと抜けるマイクとかを使いがちなんですけど、「オレンジ」に関してはちょっと温かみのある方が雰囲気が合うねって話になって、マイクを変えて、歌い方もちょっと変えてみたり。

──(mikako)いつもとマイクも違うんですね。温かく歌うことを意識されたんですか?

YOSUKE:そうですね、やっぱり劇場で涙できるような映画って、無作為に攻撃的な歌だとそこで空気が壊れちゃうから、自分の中で最大限できる温かさを出して、でもなおかつ、サビではぐっと前を向いて走っているような、そういう情景が浮かぶ強さだったり。自分の中にある引き出しを最大限出せたのかなって思います。でも今聴くと、結構声が若いですね。

──(mikako)自分でそう思う?

YOSUKE:最近、久々に聴いたんですけど、はい。もう声も変わっちゃいましたね(笑)。

──(mikako)でも、リリースされたのって、まだ去年(2024年)の2月ですよね。お客さんの反応はいかがですか?

YOSUKE:「オレンジ」は「フレッシュだな」って感じます。海外でのライブだったりイベントでも、みんな歌ってくれるんです。日本のライブだと割と静かに聴き入ってくれる感じなんですけど、海外の方はもう俺が主人公だってくらいAメロから歌っているし、曲によってはギターソロも歌っている(笑)。年代問わず楽しめるアニメも増えてきたなと思います。ストリーミングサービスが普及したおかげで、自分たちが好きだった青春時代のアニメを見返したりもできるので、年齢層も幅が広がったなっていうのはありますね。

──(mikako)アニメは年齢も国も超えるということで、「オレンジ」は大ヒットによってSPYAIRの名刺曲のひとつになりましたね。

YOSUKE:それはそう感じます。

──(mikako)2026年には延期になっていた『SPYAIR TOUR 2025 -BUDDY -』の振替公演を経て、2月から全国ツアーが始まりますが、これはどんなツアーになりそうですか?

YOSUKE:ツアーを重ねることって、バンドの底上げになるんです。公演ごとにトライアンドエラーがあって、1公演1公演でいろんな表現ができるように自分たちを磨き上げるものでもある。そういうのがツアーでもあるので、<JUST LIKE THIS>みたく安心感を求めに行くというよりは、「このセットリストで違うライブを見せるから、また来いよ」みたいな感じですね。割と気持ちはアグレッシブです。

──(mikako)挑戦的なものでもあるんですね。YOSUKEさんはアーティスト活動の中で、ライブが一番好きだったりします?

YOSUKE:意外と僕はレコーディングも好きなんですよ。作っていくのが好きだったりするので。ただ、それを目の前で「どういう反応か」が分かるのがライブなので、非日常を得られるのはやっぱライブしかない。そこはやっぱりライブが好きですね。

──(mikako)楽曲って日常で聴いてほしい作品を作るんだけど、ライブでは非日常を味わってほしいですよね。そこで意識してることってありますか?

YOSUKE:アーティストがライブを作るんじゃなくて、アーティストとお客さんが一緒になって空間を作っていくのがライブだと思っているので、僕はやっぱり一緒に歌ってほしいなっていうスタンスです。だからマイクはよくお客さんに向けていますよ。お客さんも爆音で音を体感できて、その状況の中で歌える機会って日常では絶対にないと思うので、それを味わって自由に発散してほしいっていうのがあります。

──(mikako)SPYAIRのライブが気になっている人に対しては…

YOSUKE:「とりあえずおいで」って言います。とりあえず来ないとわからないから。僕たちはステージ上では100パーセントを出すので、それを見てあなたがどう思うかはあなたが決めてくださいって感じ。後ろのほうでゆっくり観ててもいいし、前で暴れてもいいし、真ん中らへんでずっと熱唱しててもいいし。

──(mikako)そんなステージで、YOSUKEさんご自身が喜びを感じる瞬間は?

YOSUKE:アドリブでフェイクとかが、バチはまりした瞬間だったりとか(笑)。でもやっぱ、最初に出ていく時ですよね。あの歓声を浴びながら出ていく瞬間がやっぱり一番。それがないとやっぱパフォーマンスできないかな。

──(mikako)11月からは海外でのライブもありますが、それも楽しみですね。

YOSUKE:異国の地で違うカルチャーを生きている人間が、音楽でひとつになれる空間ってのは、たまらなく音楽の力を実感するところですよね。海外のお客さんはみんなとてつもない声量で歌ってくれるので、それを浴びた時に「すっげえ来てよかったな」って思います。

──(mikako)この先もライブやツアーがたくさん続いていくと思いますが、SPYAIRをどんなバンドにしていきたいと思いますか?

YOSUKE:愛を溢れ出るくらい感じられるバンドになりたいですね。

──(mikako)愛を感じられるバンド。

YOSUKE:第三者が僕らとファンを見て「愛が溢れてんな」って思うようなバンドにしたいです。みんな、2代目ボーカリストでもしっかりと愛情を持って受け入れてくれたし、SPYAIRっていうものに対しての愛が強いので、いろんな人から見て「愛情たっぷりのバンドと言えば、SPYAIRだよね」と思ってくれるようなバンドになりたい。それがもっともっと広まって、その愛情の輪にいろんな人が入ってくれればいいなって思います。

mikako、YOSUKE

インタビュー◎mikako(Nagie Lane)
文・編集◎烏丸哲也(BARKS)

「Chase the Shine」

2025年7月7日配信
https://SPYAIR.lnk.to/cK27rv

<SPYAIR TOUR 2026>

2026年2月14日(土)~2026年3月8日(日)

<2025年公演スケジュール>

2025年11月1日(土) 台中 春浪音樂節 (Spring Wave)
2025年11月16日(日) 韓国 WONDERLIVET 2025
2025年11月28日(金) シンガポール Anime Festival Asia Singapore 2025
2025年12月13日(土) UZ UZ LIVE 2025 “STATE OF RHYMES”
2025年12月17日(水) 愛知 Boo Night Tour 2025-26
2025年12月20日(土) 愛知 MERRY ROCK PARADE 2025
2026年1月17日(土)~2026年1月20日(火) 仙台・東京<SPYAIR TOUR 2025-BUDDY->振替公演

◆SPYAIRオフィシャルサイト