ジャムは今日もアメリカのどこかの町で
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ジャムは今日もアメリカのどこかの町で |
コンサートのチケットは値上りする一方だ。しかもこの日の出演者の何人かのレベルを考えると、汗水たらして稼いだお金を使うのは気乗りがしなかったかもしれない。 けれど、そう言ってられるのは“ジャム”が始まるまでだ。ラップとR&Bの旬のアーティストを集めた“ジャム”がやって来ると、アメリカ合衆国のどんな町でも話題の中心になる。すくなくとも、収容人数15000人以上のアリーナがある町では。 こうしてナッソーコロシアムは、にぎやかなSpring Jam 2000の当日を迎えた。 出演者は、Rah Digga、Canibus、 Black Rob、Carl Thomas、Ginuwine、Nas、Method Man、Redman、そしてEminemである。 この夜最初に現れたのは、ヒップホップの真の伝統を受け継ぐChannel Liveだった。 「おれたち出ることになってなかったんすけど」と、メンバーのTuffyが事情を説明した。 彼らは近日発売のアルバム『Arm A Ghetto』から数曲を披露した。その時間帯はまだ観客がコロシアムを埋めている途中で、会場の反応はあまりよくなかったが、ニューアルバムのいくつかの箇所にはグルーヴを感じた。そのなかから「Mad Izm」に匹敵する彼らの代表曲が生まれるかもしれない。
続いて「Tight」のRah Diggaが登場した。 Bad Boy Recordsの今後を担うBlack RobとCarl Thomasは、次の大物と次の次の大物との間を埋めるただのつなぎでないことがはっきりした。
現在勢いに乗っている「I Wish」では、シンガーのCarl Thomasが舞台にいる必要はなかった。客席の女性たちが、アドリブも含めてすべての歌詞を歌っていたのである。 女性客たちは、Thomasとは一緒に歌うだけだったが、Ginuwineが出て来ると大声で叫びだした。甘い声でささやく「So Anxious」のような官能的バラードを歌っているときも、ミッドテンポのファンキーな「Pony」でも、スウィングする「What’s So Different」でもお構いなく、Ginuwineの腰はたえずくねって、回って、突いていた。それは、照明や小道具と並ぶ歌の演出装置だった。
観客の大半はかつての名曲(「The World Is Yours」「One Love」「It Ain’t Hard To Tell」)に無関心だったし、ヒットチャートに上った曲(「If I Ruled The World」「Hate Me Now」そして現在ヒット中の「You Owe Me」)では、純粋主義者の観客たちが怒りで毛を逆立てていた。
ヒットを狙うNasの姿に失望して、ひとりのファンが鬱憤を爆発させた。「昔のほうがよかったよ。いまじゃヒットしか考えてない。そんなスカスカな曲聴いてられるか」
1時間10分の“短時間休憩”の後Canibusが登場すると、会場は水を打ったように静かになった。彼は完成しきったプロのように、「Second Round K.O.」と「Mic-nificant」そして彼がLL Cool Jに書いた歌詞「4, 3, 2, 1」をこの日もまだ熱演していた。 夜が更けて客席がざわついてきた頃、満場の拍手を浴びてMethod ManとRedmanが登場した。
鏡に写った像のような2人は、エネルギーとカリスマ性と、そしてなにより豊富なヒット曲を会場に持ちこんだ。観客の求めていた火花の散る瞬間が現れたわけだ。 Redmanが「 Time 4 Sum Aksion」で口火を切ると、Method Manが「Bring The Pain」でそれに応じる。言葉の爆弾の応酬は「Tonight’s Da Night」「Method Man」「I’ll Be That」「Judgment Day」と続いた。
この日のヘッドライナーEminemは緊張で固くなっていて、前の2人のステージに続けそうになかった。観客の大半は、彼の有名な主治医兼プロデューサーが出て来て彼に力を与えてくれないものかと望みを抱いていた。しかし、Eminemが「Forgot About Dre」の詞を口にしはじめると、名医は現れないことが明らかになった。
Eminemは主治医に助けを借りてもよかったのだが。 新譜『The Marshall Mathers LP』のリリースを数日後に控えて、まだ「Scary Movie」などの新曲はこなれていなかった。それらの曲は、2か月もすれば、サマージャムの頃にはインパクトのある曲に変貌しているにちがいない。すくなくとも、フォールジャムかウィンタージャムには間に合うだろう。 by DND |





この夜もっとも注目を集めたのは、クイーンズブリッジ出身のネイティヴ











